夏休み、それは学生にとって課題さえ終わらせていれば余程のことがない限り自由になる長期間の休みだ。
三大陣営の和平締結後、すぐに夏休みの時期になった。当然ながら学生である俺も夏休みだ。課題は割とすぐに終わりそうだけど、もっと重要なことがあるからな。
この夏休みの間は外に出ることが多くなる。それ故にいつ、どこで、何回敵と接触するというリスクも大きくなる。流石に街中じゃ始まらないだろうけど、本当に用事が無ければ場所を変えて殺し合うことになるだろう。
下手すれば例のテロリストやらが接触してきて所構わず戦闘になりかねない。全くもって嫌な時期だ。
流石に空いた期間がかなり長かった故にセイバーがうちの近くまで来て戦いに来た時はヤバかった。セイバーが宝具を解放しようとした直前でミルたんが近くを通らなければやられていた。
その後はセイバーがミルたんを問い詰めつつ何処かへと行ったんだが…………それはまた別の話。
そう言いつつも今、買い物で外に出なきゃいけないんだが…………
そんな考えをしていたら携帯に電話を知らせるメロディーが流れ始めた。相手は…………またアザゼルか。あんた三日に一回の頻度で電話をかけてくるなよ。
「もしもし?また軽率に電話してって怒られるぞ?」
『何で知ってんだ…………まあ今回はちょっとした用件だ。冥界に行く気はないか?』
「死ぬ予定なんてないんだが?」
『それは冥府行きだ。俺が言ってんのは悪魔の領地の方の冥界だ』
あ、冥府もあるんだ。冥界と冥府ってなんか似たような感じがするけどかなり違うんだろうな。
「いや、悪いけど遠慮させてもらう。俺に興味ある人達はいると思うけど、誰かの眷属になるつもりもないし、例の関係者がそっちにいかないとは限らない」
『…………ああ、アーサー王とセイバーの時みたいにか。確かにあれは俺たちでも気づかないほどだったからな。分かった、俺が話しつけといてやる』
「ところで何でいつもアザゼルが俺の連絡係みたいになってるんだ?オカルト部顧問になった訳だしリアス部長でもいいんじゃないか?」
『それは無理だな。お前らの件は俺たち上層部が預かることになってる。イッセーにもそこら辺の口止めはしてあるから簡単に聖杯戦争の情報は漏れないはずだ』
「そっちでも探ってるんだろうけど、まあ結果はないか」
『神器の捜索だけでも難航してんのに神器じゃない聖遺物を堕天使に向かって探せはキツイぜ?』
だろうな、と一応言っておいた。故聖書の神とやらは自身ですら殺す物の管理すらまともに出来てない杜撰な奴だと思えた。天使も信徒も割と杜撰なところあるんじゃないかなーと思うこともしばしばだ。
ゼノヴィア先輩とか勢いで悪魔になったりとかしてたし、本当に大丈夫なのかと何度も聞き直したくなるほどだ。
『引き続きこっちでも例の物を探す。そっちでも何かあったら知らせてくれ』
「ああ、分かった」
用件はそれだけで電話が切れた。さて、そろそろ買い物にでも行くとするか。
異例だろうけど異形が蔓延っているせいか随分と長期にわたる静かな聖杯戦争だ。ほんと、いつ誰が襲い掛かってくるか警戒し続けないといけないし精神が擦り切れるかと思うよ。
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アーチャーこと芦屋新志が拠点としている駒王学園から約100km離れた某所の街の夏休みに入ってすぐの事である。
「ここら辺はスイーツ店が多いですね。流石に全部は回りませんよ?スイーツは特例がない限り1日5回までです」
「我、あのクレープ食べてみたい」
「ずいぶんバナナやリンゴを盛ったクレープですねぇ。まあ、今日はまだ何も食べてないですしいいでしょう」
白スーツ姿でサングラスをかけたキャスターとお供(?)のオーフィスが街を歩いていた。
キャスターは街を歩くことについて迂闊だと進言はした。しただけでオーフィスを止めることはしなかったので保護者としてついていくことにした。
まずオーフィスが金銭を持っていないことと、幼い姿をとっているもあり下手に目を付けられてオーフィスを警察に連れて行かれるのは後が面倒だからだ。
なお、オーフィスの服装はキャスターが用意したゴスロリ調の物で彼女だけでも目立つのにお付きがついてはようでさらに目立っている。
そんな中で屋台のクレープを買おうとしているのだから神経が図太いとしか言いようがない。
「すみません、この夏限定フルーツ盛り盛りクレープアイス付きを一つ」
「いえ、それを二つでバナナクレープを一つ追加です」
キャスターの横に割り込む形で知っている声が勝手に追加注文をしてきた。
「奢りですよねキャスター」
「いや、何で貴女が割り込んでくるんですかねぇ?」
もう既に店主がクレープ生地を三つ分作り始めているので手遅れだがキャスターが予想していなかった人物がいた。
それはもちろん腹ペk…………ではなくランサーである。さすがに鎧姿ではなく現代に合わせた私服だ。
「まず貴女別のところにたはずですよね?確かヨーロッパあたりに」
「あそこにライダーがいると聞いたので旅行ついでにで行ってきました。私たちが着いた時には既にアフリカ大陸へ移動してましたが」
「旅行、というのはあの少年とですか」
ランサーがただ一人で来てきたわけではない。彼女の隣に一人の少年がついてきていた。赤毛でまだ中学生くらいで特殊な力を保有していて、心のどこかが死んでいる少年とキャスターは判断した。
「私が彼と一緒にいることは貴様には関係ないことだ。手出しするなら分かっているな」
「おお、怖い怖い。貴女の聖槍は恐ろしいですからね。現代だと私、かなり弱いですし」
緊迫感が強くなっていく中でクレープが出来たらしい。支払いは全てキャスターだった。
本当に遠慮がないと呆れつつも律儀に支払うキャスター。そのクレープを少年とオーフィスに渡すランサー。まるで養子二人を連れた夫婦にも見えた…………
もちろん、そんなフラグは微塵もない。立つとすればランサーと少年だ。
しかし、キャスターはランサーと少年の様子を興味深く観察していた。実はランサーとセイバーから計6回ほど殺されている判定を受けているのだが、その中で明らかに手を抜いていたのがランサーだった。
戦いに消極的な部分を不審に思って調べてみたが結果はなし。偶然にもここで出会ったことにより理由は分かったのだ。
「ランサー、貴女しばらく本気で戦うつもりはありませんね」
「さて、何のことだか。行くぞシロウ」
「ちょ、待ってよアル姉!」
夏限定フルーツ盛り盛りクレープ(アイス付き)を食べつつ少年を置いてけぼりにしようと歩き出し、少年はその背中を追う。
「やれやれ、思った以上に長くなりそうですね。ライダーは今アフリカにいると言ってましたが、アサシンとバーサーカーはまだ行方が分かっていないですし」
目立つような戦う力のない彼は普通の時はもちろん、特殊な聖杯戦争故に念入りに準備を行わなければならない。自身が現れてから
「まあ今は英雄派をこっちに引き込むことを優先すべきですかね」
「はむはむ、甘い」
「まあクレープですからねぇ。そういえばランサーに肝心なことを聞き忘れてました。
ま、答えてくれるはずないんでしょうけど、と最後に付け加えた。敵同士でペラペラと情報を喋る者などいないのだ。ランサーの場合はほぼ真名がばれている為あまり気にしていない節もあるが、アーサー王の信仰がかなり大きすぎるのは確かだ。
その子孫を名乗る一族を調べた結果、カリバーンに値するものがあったらしい。もしかしたらそれも回収しているのかもしれないとキャスターは踏んでいる。
「キャスター、次はあれ」
「はいはい」
このあと4時間街を歩いて食したスイーツは12個。キャスターと縁を切るという脅しを覚えたオーフィスは5個の約束を軽く破ってたくさん食べたのでした。
「結局私の財布が打撃を受けただけのオチにすり替わってませんか?割と重要なこと入ってた筈ですけど」
術「最近、私ネタキャラ化してません?」
無限龍「しらない」
術「前触れなく殴り飛ばされたり脅されたりで踏んだり蹴ったりですよもう」
帝都狂「だったらオレを出させろ!強いやついっぱいいるだろうが!」
術「貴方もお帰りください。書き手が帝都好きなのは分かりましたから、オーフィスさんやっちゃってください」
帝都狂「グハァッ!オレが幼女に一撃で倒されるだとー!?」
突如現れた帝都狂、オーフィスのパンチで心臓消滅して撃沈。