目がさめると何かがおかしかった。家に帰ってから道着のまますぐに寝たせいで道着がくしゃくしゃだ。
でも、道着はしばらく使わないからしまっておこう。今日は祝日で学校は休みだから洗濯でもするか。うーん、清々しい朝だな。
腹が減ったが作るのが面倒で飯はカップ焼きそばを食べた。そして道着をネットに入れて洗濯機で洗う。しばらく放置だな。
しかし、変な夢を見た気がするな。化け物と戦った夢だったんだが、この弓で頭を吹き飛ばしたんだよな。そう、いつも使ってた弓がなんかデザイン変わってて…………
変わったままだから夢じゃないってのがよく分かるか。なんだこれ、シンプルな赤い弓だが引いてみると十分に威力を出せそうな弓だ。昨日はこれで競技用の矢を放ったが、あそこまで威力が出るものなのか?
考えても仕方ない。使う機会もないけど元の弓に戻って欲しいな。と念じてみたら弓が消えた!?待て、出現しろ!今度は出ろと念じてみたらさっきのままの弓が手元に現れた。
もしかしてこれ、ヤバイやつじゃないのか?一度、弓を窓際に置いて玄関まで行って来いと念じてみたら瞬間移動したかのように手元に現れた。
間違いない、この弓は特殊な力を持ってる!とはいえ昨晩のような使い方しかできなさそうだ。お蔵入りだから今は消しておこう。
…………現実逃避がてら外に出るか。ついでにあの時に壊したままのはずのところを見るのを兼ねて外に出る。
ちゃんと鍵を閉めてと、よし。
「にょ、芦屋くんおはようにょ」
「よおミルたん、おはようさん」
ちょうどお出かけのお隣さんと鉢合わせしたから挨拶はしておいた。いつ見てもインパクト凄すぎて違和感を感じるお隣さんだ。どう見ても武を極めてるだろこの人。
そんなやり取りがあったくらいで昨晩の化け物がいた位置についた。人通りは全くなく、そして化け物自体はもちろん、血痕や壊れかけのブロック塀すら見当たらない。
ああ、錯乱してた時に言ったような(口には出してないが)まるで
ああ、やはりというか当然というかこの付近に何か仕掛けられてる。人が全くいないのもこのせいだ。何で俺は効かなかったのか何て言われたら、まあ鍛えた肉体のおかげかね?
何処にいるかはもう分かってるが、こちらが見られてるだけで何もしてこないならいい。けれどもそれは甘いと思う。視線は上から来ているから少なくとも人が見てるわけじゃなさそうだ。
ここから高い建物なんてせいぜい3階建ての住宅だ。昨晩の化け物を処理した奴がここを監視してるとみた。
監視されてる源を撃ち抜けるか?的はまだ目視してないが小さいものだと勘が囁いている。
ちょうどいい、相手が誰だか知らないがこう観察するように見られるのは不愉快だ。一泡吹かせるか!
即座に監視源がある方へ向き弓を出現させる。矢はどうする?と思ったがイメージするだけで矢が手元に現れた。そして矢を弓の弦にかけ引き絞り、渾身とも言える一矢を放った。
ゴォォォッ!バビュン!
擬音に表すとこんな感じで旋風を撒き散らしながら飛んでいった。明らかなオーバーキルとも思えるほどだ。誰かが巻き添え食らわない、よな?そこは考えてなかったが…………視線は消えた。
一体誰だったのか、それは後々接触してくるかもしれないがついでに買い出しをしておこう。一人暮らしだと何が無いか自分で思い出さなきゃいけないのが苦労だな。
さて、買い出しのためにスーパーへ向かう間に考え事をしていた。そう、弓の名前だ。
いつまでも無名の弓として扱うのはどうかと思う。そして頭の中で思いついた名前が『
なぜか頭の中で1本の矢で山を削り取ったり空を矢で覆い尽くすことができるイメージが湧く名前だ。ああ、エジプトの神殿も破壊できる自信が湧いてきた。この高揚をどうしてくれようか?
とは言っても何もないから買い出し行って一度戻ってゲーセン行くか。確か近くのゲーセンに弓矢の模型みたいなのを使って遊ぶシューティングの台が出たって聞いたから行ってみよう。
誰にも超えられないハイスコア叩き出してやる!
〜●〜●〜●〜●〜
いやー、楽しかった楽しかった。予想以上に弓が軽くて扱いづらかったけどエイムの修正が強かったから楽にスコアをたたき出せた。
500円使って5回ともエンディング見ちまった。ストーリーはそこまで面白くなかったけどなかなか見ないタイプだったから面白かったな。
ハイスコアを5連続で叩き出してゲーセンを出てすぐにこの街じゃあまり見ないシスター服を着た女性を見かけたが、特に困った様子なく誰かと一緒に歩いていたのを見たくらいだ。
さて、思ったより早く来たか。今思えば感覚がかなり鋭くなってるのが良く分かる。まるで千里眼を手に入れたような感じだ。後ろにいるのに場所がしっかり分かる。
「やあどうも。こんな所で会うなんて偶然ですね」
振り返ると意外にも、立っていたのは3年生で美人と有名なリアス・グレモリー先輩だった。また人の気配がない所で会うなんて、本当に偶然と言い難い。
「ええ、こちらからしたら初めましてね」
「ははは、それで何の用ですかね?どう見ても偶然何て思えませんね」
よく考えたら今この場所は化け物を射殺した化け物の死体が転がってたはずの場所だ。ついでにピリピリと嫌な感じが肌に刺さる。
そして遠目で見ることはあっても近くで見ると明らかに人と違うってのが分かる。もう間違いないだろう、昨晩の後処理にリアス・グレモリー先輩が関わってる。
じゃなきゃここまでお膳立てできるわけがない。あ、そういえばグレモリー先輩はオカルト部というよく分からない部活動に入っていたはずだ。活動場所は確か旧校舎…………そうか、通りで明かりがついてたわけだ。
「グレモリー先輩、貴方もあの化け物の類いだったか」
「それは失礼よ。確かに悪魔だけど私達は汚れた悪魔とは違うわ」
「へぇ、悪魔だったのか。その言い方だとアレは間違いなく敵対関係だったようだ」
もう敬語を捨ててるのは気にしない。そしてペラペラと情報を喋ってくれる。この言い方だと他にも悪魔がいるってことだろうな。おそらく旧校舎に居た、というよりオカルト部全員が悪魔だろうな。
俺の思考が可笑しいほど回っていくのが不気味になっていく。これも『
さっきの弓矢ゲーのお陰で一瞬で構えるコツは掴んだ。重さはかなり違うが何やかんやゲームでも感覚は掴めるもんだな。
「そろそろ本題に入るべきね。明日の放課後にオカルト部にいらしてくれる?」
「…………え、結局話は後回し?しかもそっちの拠点に来いなんて言われても困るんだけど」
「それもそうね。でも私達は貴方の敵じゃないことは信じて欲しいの。そもそも仕事を横取りしたのは貴方で下手したら死んでたはずなんだけど…………」
「あいつのなぎ払いなら食らったが、別に大したことはなかったぞ?」
「……………………はぐれ悪魔とはいえ
「せきくり…………?もう一回言ってくれないか?」
「はぁ、そこのところもついでに明日来るならそこで話すわ。尤も、来る以外の選択肢は貴方の中にはないんじゃないの?」
だが断る!何て言えるはずもない。立場が上としてもこっちは弓だけで悪魔のことなんてさっぱりだ。しかも仕事とか言ってたからには俺が何かに巻き込まれたのは確かだろうな。
最後の返事は聞かずにグレモリー先輩は立ち去っていった。向こうの事情も知るためには敵地となるかもしれない場所に足を踏み込まなければならない事を、今実感した。
もし敵対した時は、俺は生き延びられるだろうか?弱気になってはダメだ、生き延びるんだ!それに悪魔とは言っても悪い奴とは限らない!根拠は無いが勘がそう言っている!
明日の放課後に悪魔の巣窟であり謎が多いオカルト部に行く決意を固め家に帰って飯作って風呂入って早めに寝た。
*新志が「せきくり…………?」と言ってる部分は誤字ではありません。素で聞き間違えてます。
*2/24追記
たくさんの人から『ザ・アーチャー』ではなく『ジ・アーチャー』だという指摘を受けましたがFGOや型月wikiでは異名はアーラシュ・カマンガー。英語表記すればアーラシュ・ザ・アーチャーとされており、そこから『ザ・アーチャー』と名前を取りました。