ステラを放つその日まで   作:蓮太郎

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堕天使は敵か味方か

 眷属にならないかと誘われてからかなり日が経った。意外と仲良くできてるのが不思議だが、悪いやつじゃなかったな。

 

 でも仲はいいからって隙をみてはちょくちょく眷属に誘うのはやめてほしい。それは生徒会にも言える文句だが仲良く付き合っていくなら当然だろう。

 

 あ、そうそう、オカルト研究部では何やかんやあって新しい眷属が入ったとのことだ。名前はアーシア・アルジェント、2年生として転校だったか?うちの学園に入ってオカルト部に入部した。

 

 そこまでの経緯を聞くと、まあ酷い。兵藤先輩の彼女として一度近づき殺した、つまり兵藤先輩が悪魔になるきっかけを作った女でありアルジェント先輩の神器を命ごと強奪したということだ。

 

 ゼロに近いマイナスな好感度が一気にマイナスになった。ちなみに転生の際に使用した駒は僧侶だ。彼女の神器が種族を問わずに回復できるからものすごく合ってる。まるで運命としか言えないな。

 

 最近は手伝いはたまーにしかせずにオカルト部に寄ることが多くなってる。それでも一般の人たちから見たら「あいつはいい人だからオカ研に居てもおかしくはない」という感じで仲がいい程度の認識だ。

 

 うん、地味に固い人気があるって兵藤先輩が呟いてたのがようやく実感できた。良いことするのは悪い事じゃない。

 

 姫島先輩が淹れた紅茶を飲んでアルジェントさん達と悪魔家業についての雑談をした後で学校を後にした。もちろん俺は1人で帰る。

 

 ふと弓矢のゲーム台のことを思い出した。ふとした時にどうでも良いことを思い出すのはあるが、ハイスコアを更新されてないか気になってきた。久々にあのゲーセンに行ってみるか。

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

「オラオラオラ!」

 

 例のゲーセンに行くといい歳した和装のおっさんが弓矢ゲーをやっていた。野次馬に紛れて後ろから覗き込むとかなりのスコアをたたき出している。あ、今ダメージ受けた。ライフギリギリじゃないか。

 

「くっそ、あぁ!ゲームオーバーだチクショウ!それなりにできると思ってたんだがなぁ」

 

 いやいや、舐めてはいけないぞ。俺も弓矢を扱ってても思うようにいかないことが結構あるからな。

 

「もう一回だ!」

 

 100円を入れてコンティニューを行い再開する。よく見たらこれ最終ステージじゃん。そりゃムキにもなるわな。

 

 そして10分程度でエンディングが流れ始めた。ハイスコア画面では上位5名がアーラシュと入れられていて6番目にアザゼルと記入された。

 

 もうお察しだろう。このゲームをプレイしていたのは人間じゃない。アザゼルってことは堕天使の総督だろうな。見るだけでどれだけ強いのか分かるしトップクラスなんだろうという雰囲気を一般人には分からないが醸し出している。

 

 グレモリーの領地に単独で来たなんて考え辛い。どう考えても厄介事が絡んでるんだろうな。まさか、純粋にこのゲームしに来たとか赤龍帝に興味持ったとかで来たんじゃないだろうな?

 

 ひと段落したっぽいからこっちに来た、のを俺はスルーして台へ向かう。アザゼルがえっ、て顔をしていたが無視して100円を入れる。

 

 ランキングからアザゼルの名前が消えるのは30分も満たなかった。

 

「にゃろ…………」

 

 交代でアザゼルがプレイを始める。その時には野次馬がかなり減っていたが俺のプレイを見て神プレイだと言ってる人しかいなかった。

 

 だがアザゼルは本気を出した。凄まじい速さで弓を操作しながらエネミーに矢を放ちつつ高得点アイテムも狙っていく。これには場も盛り上がった。

 

 ああ、これを見て確信した。悪魔では魔力というエネルギーを見ることができた俺だが、アザゼルはそれもまた別のエネルギーを使っているのが目で見える。ちなみに魔力が見える件についてはオカルト部の面々に協力してもらい見えるようになった。

 

 俺にも射者の英雄(ザ・アーチャー)を使うための魔力のようなエネルギーはあるが一般人より多めで魔術や魔法を使う者からしたらかなり少ないらしい。矢も魔力で生成するが何千何万と放っていたら限界がくるだろうな。

 

 眺めてるうちにゲームは終わった。順位は3位とランキング内に入ってきた。流石は堕天使の総督、ゲームにムキになるもやってくれる。

 

「よし、なんか食いに行くか?奢るぜ」

 

「はっはっはっ、やっぱり積もる話はあるってことか」

 

 あえて仲がよさそうな感じを出してるが俺は腹を探ろうとしている。そして結論としては純粋に話をしたいだけではないかとこっちは思ってる。

 

 こうして見るとただ気前のよさそうなおっさんなんだよな。ただ若干だが兵藤先輩と似たような部分を持ち合わせてそうな…………

 

 そして着いたのは近くにあったファミレス。ついでに晩飯も奢らせよう。俺はチーズinハンバーグとフライドポテトを頼んだ。アザゼルはドリンクバーのみ。俺のフライドポテト摘むとか言ってたがアザゼルの奢りだしそれくらいは許そう。

 

「それで、何の用かいアザゼル総督」

 

「やっぱ正体が分かってたか。単刀直入に言うとしたらうちの陣営に来るか?」

 

「今は悪魔側と一応仲良くしてるんで無理だ。レイナーレの件も聞いてるしな。どうして信用できるかは、聞いても意味ないぞ?」

 

「はーっ、やり辛い相手だな。千里眼でも持ってんのか?」

 

「さぁね?」

 

 ハンバーグを一口食べて水も一口飲む。うん、ここのファミレスのハンバーグは美味いな。そしてまーた勧誘か。前に天使側からも勧誘してきたし、どこも俺を勧誘してくるな。

 

 天使は天使でも最上級の天使だったけどな。なんだ、キューピッドの天使役を頼む訳でもあるまいし。

 

 まあなんにせよ、裏は少なそうな堕天使だな。堕天使のくせに裏が少ないとはいかに。

 

 まあ、何にせよ今は友好的なんだし勧誘するほどだ。どこも有能だという人物は何としてでも手に入れたいんだろう。しかもトップが来るほどだ。俺にどれだけ期待がかかってるんだ?

 

 ただ、アレを試したのはまだ二度だけ、つまりはぐれ悪魔の頭を吹き飛ばした時とグレモリー先輩の使い魔を射た時のみだ。それでも全力ではないから本気がどれくらい出るかわからない。

 

 と、言うのをアザゼルと会話してる時にポロっと、不覚にもポロっと言ってしまったのが間違いだった。

 

「ほぉ?ならウチの施設でちいと試してみるか?用途は少しばかり違うがいいとこあるぜ」

 

 ニヤニヤと笑いながらそう提案してきた。この顔は俺の神器の力を見たいのと俺自身のやり方を見たい、そして面白そうだと思ってる顔!

 

 話の中でアザゼルは神器の研究をしてるということを聞いていたので、一方的に研究されそうで怖いが自分のことを知れるチャンスでもある。

 

 悪魔の契約に天使の誘い、そして堕天使の提案がこう一ヶ月も経ってないうちに来るとかおかしすぎるぜ。俺は神代の英雄でもないんだからさ?

 

 でも、この提案は悪くないと思う。俺の本当の実力を知る機会でもあるが誰かに知られる機会でもある。逆に言えば本拠地で未知数の力を持つ奴に暴れて欲しいと聞かれたら否だ。

 

 わざわざそんな敵を連れ込むメリットとデメリットが釣り合っている。それは俺も相手を知り自分も知ることができるメリットでもあるしな。

 

「よし乗った。どれだけ力持っているか俺も知りたい。だから利用して利用されよう」

 

「よーし、決まりだな!暇な日は何時だ?」

 

 その施設に行く段取りを決めた時に俺の食事も済んでいた。そしてファミレスを出た後、別れ際に弓矢のゲームのコツを弓道をしていた人に聞くゲーマーっほいのも完全に素なのだと、かなり子供っぽく純粋なところはプラス加算となった。

 

 悪魔や堕天使でもああいう人種(?)ばっかりならいいんだがなぁ…………




 アザゼルの提案に乗った新志。だが新志が持つ実力に彼らは度肝を抜かれる!そして吹き飛ばされる戦隊モノの悪役にハマったおっさん!次回、研究施設死す!

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