ステラを放つその日まで   作:蓮太郎

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刺さりは刺さり砕けは砕けて

 芦屋新志はアザゼルに連れられ某所、一応日本圏内であるところに連れて行かれた。ちなみにグレモリー先輩は結婚云々でこちらには気が回ってないんだとか。

 

 そして、それから1時間も経たないうちに惨状が出来てしまった。

 

 砕けまくった壁があれば砕けずに矢がびっしり大量に刺さった壁、それになんか壁に刺さった悪役っぽい衣装を着た堕天使。そして泣き崩れる堕天使。

 

 これは混沌(カオス)と言っても過言ではない。本気じゃなかったが(・・・・・・・・・)はっちゃけ過ぎてしまった…………

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 惨劇が起こる時間より遡る事3時間、昼を過ぎて約束の時間が来た時の事だった。堕天使総督であるアザゼルが俺のアパートまで迎えに来たのだ。

 

 俺はこう、はっきり言ってやった。

 

「すっごい今更だが首領(ドン)が堂々と敵地に単独で入るってどういう神経してるんだ?」

 

「悪魔と契約とはいかないが、それなりに仲良くやってるお前が俺とコソコソ会ってついて行こうとしてるお前はどうなんだ?」

 

 どっちもどっちだったという事が証明されてしまった。俺も人じゃないが他堕天使の事も言えないようだ。

 

「ただ、内緒にしたかったんだが面倒くさい奴が聞き耳立ててたらしくな、多分行くとこに既に入ってる可能性がある。悪い奴じゃないんだがな」

 

 堕天使の幹部が悪い奴じゃないとはどういう事だ、誰か説明してくれ。

 

 さて、ここから先の記憶は…………正直言ってほとんどない。戦隊モノにハマった堕天使がいるというのを聞いてたが、本格的すぎてほとんど流す感じで対応していたおかげか名前をすっかり忘れてしまったからだ。

 

 あと何を喋ってたのかすら忘れた。

 

 戦隊オタクの話を聞き流しながらも着いたところは実験場の試作機を扱う広い場所だった。そこには鉄板のような板状の物がぶら下がっていたり壁に貼り付けてあったりしていた。

 

「現状、少ない予算で作れる最大の硬さを誇る金属板です!材料はナニと申しませんが並大抵の弓矢の神器で壊れる事はありません!」

 

 ものすごく自信満々に答える鉄板の製作者であろう研究員。だが、目の前にいるのは並のアーチャーではなかった。実はうろ覚えでもあった転生の内容を思い出してきたんだ。

 

 アーラシュ・カマンガー、それが俺の肉体の元となった人物であろう神代の人間の名前である。あらゆる病や毒に侵されず、数多の戦で傷一つ負うことが無かったという最高ランクの頑健スキルを持ち、山をも削り取る威力を持った矢を、視認できないほどの超遠距離から高速射撃できる超人だ。

 

 その一矢が下手な宝具を上回るほどの威力を持ちマジな意味で宝具いらずというほどだ。その技術も試して分かったがまだまだいける感じだった。本気を出せば空を矢で覆うほどの量を放てる事を確信するほどに。

 

 そして、ステラが何かも思い出した。本当にとっておきで一回限りだが、本当にB++なのかと疑うほどの威力を持っている。流石に死ぬのでここでは撃たない。

 

 そして、データを取る準備が終わったところで開始の合図があり試し打ちを開始した。そこから先はお察しだ。

 

 まあ、一度は説明しておこう。悪役にハマった堕天使が何故か堂々と立ちふさがったので4発ほど同時に撃ち込んだら吹き飛ばされて壁に頭から突き刺さって動かなくなった。

 

 アザゼルは溜息を吐きながら(冷や汗をかいてたのを見逃してはいない)頑丈だから続けて構わんと言ったので、どれだけ連射できるか試したところ壁から矢が生えてるんじゃないかというほど連射できた。

 

 そして、敢えて放置してあった金属板に向けて矢を構える。並大抵の弓矢の神器なら壊せない自信作と言っていたから強度に期待していたのだ。

 

 結果はアッケナイモノヨ。少し力強く矢を引いて射ると金属板を粉砕、そして壁も破壊しながら飛んでいった。それを一瞬で全部の金属板に当たるように連射したので大きい爆発音が鳴り響きまくった。

 

 そして矢が大量に刺さった壁、幹部が刺さった壁、粉砕された金属板、自信作を呆気なく壊されて泣く研究員が存在する空間になってしまった。

 

「マジで収拾がつかなくなっちまったぞこれ…………」

 

「今の総督様の心の中では後処理面倒だと考えてると見た。流石に俺もこれは想像以上だったというか予想外というか…………」

 

「下手すりゃ神滅具(ロンギヌス)に届くぞこりゃ。それにまだ何か持ってそうだしな…………」

 

 渋面を作り何かを考えている素振りを見せるアザゼル。こう黙っていたら渋いおっさんで人気が出そうなんだよな。

 

 待機時間にアザゼルが独身だってのを漏らした堕天使に灰皿が飛んできたから事実だんだろうけども。

 

 さて、かなり破壊してしまったが弁償しろとか無しだよな?こういう所で賠償金代わりにこっちサイドで働けとか言わないよな?そうなったらどこにも後ろ盾のない俺にとってはぐうの音も言えないんだが…………

 

 逃げようにも転移系の何かでこの場所に着いたのでここがどこか見当もつかない。北海道とか沖縄だったら完全に詰みだ。

 

「まー、なんつーか…………舐めてた。こりゃ手痛い被害だが勉強にもなったな」

 

「はぁ?勉強にって…………?」

 

「人間舐めてたらこうなるってこった!アルマロス、生きてるよなー?」

 

 壁に刺さっていた堕天使に声をかけると、壁を破壊して飛び出てきた。一体どうやってあんな事しているのか?あと、なんか悪の組織云々に勧誘されて丁重にお断りした。

 

 弁償は要求されなかったものの電話番号を要求された。それくらいいいだろうと番号を交換したのが大きな失敗だったと後悔する日は近かった。

 

 その後はたまにゲームしようぜというアザゼルに送られて帰宅した。随分あっさり過ぎて怖いんだが信用はできるように感じた。悪魔はグレモリー先輩らの所しか知らないが、堕天使のトップがアレだと慕うのも多いんだろうな。

 

 その日の晩はネットを通じて堕天使の事を調べた。そしてトップが信用できるという理由が何となく理解できた。

 

 アザゼル達は人間臭いんだ。その探究心やモノに注ぐ愛情、それが天使として合わないために堕天使になったんだと、俺はそう思っている。

 

 どうせアザゼルの事だから女の尻を触って堕天したとか変な理由で堕天してるわけないだろうが、かなり俗世的な部分を施設で垣間見る事ができたのは大きい。

 

 でも、流石に黙っておこう。どうせアザゼルがあそこに出没したとなれば何かあるのは間違いない。特に赤龍帝の周りは、な。

 

 しっかし、俺の弓はアーラシュと同じだとは思い出さなければ気づかなかったな。明らかに最強のサーヴァントの部類に入る英霊だし、宝具縛りを解いたら命と引き換えに全てを救えるほどの威力を持つ矢を放てる。

 

 俺はその日が来ない事を願うばかりだ。死にたくないし、友も死なせたくない。いや、友というより誰かを死なせたくないが正しいか。

 

 俺はこの日、堕天使の事を調べたあとにすぐに眠りについた。明日は学校もあるから早めに寝ておきたかった。

 

 翌日に学校に登校するとグレモリー先輩の結婚話は兵藤先輩が潰したというのをオカルト部に行くと散々聞かされた。

 

 いつの間に終わってたのやら。人間の俺が参加できることのないレーティングゲームを見たかったと言ったら苦笑いされた。また今度見せると言ったのでそこに期待しておこう。

 

 楽しい悪魔との貴重な雑談の時間が過ぎていった。




 サラッと二巻をすっ飛ばしましたが、主人公を参加させたら大番狂わせな上に一誠の禁手が出来なくなると踏んだので飛ばさせていただきました。
 アーラシュはマジでバランスブレイカーだからね!

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