プロローグ
サーカステントの中にある舞台の真ん中で燕尾服を着てシルクハットを被り、使い慣れたステッキをクルクル回しながら観客全員に告げる。
「ようこそ! 今宵限りの楽しい
“トリックスター”は爺ちゃんが所属していた組織らしいんだけど、僕が生まれるずっと前に滅びたって聞いた。
だけど旗印の道化が描かれた旗は遺品として僕に引き渡されている。
他にも色々と引き渡されているが、それは追々説明しよう。
「ふう、ほとんどのショーに参加するのはさすがに疲れたなぁ」
「もうダンチョーはやり過ギだよー。さすが二ボクもビックリだ」
午前0時。ショーが全て終了し、観客が皆帰った後、スポーツドリンクを飲みながらタオルで汗を拭き取っていると、ボールの上に一輪車で乗りながらジャグリングをするという曲芸を行っていたピエロがやってきた。
「そう言わないでよピエール。僕はこのサーカス一座のトップだけど仲間に仕事を押し付ける気がないだけなんだから」
「そういうのは君のお爺ちゃんにソックリだよ………。
「そうなんだ」
ピエロ―――ピエールは爺ちゃんが召喚した悪魔で血は繋がっていないけど大切な家族の一人。
爺ちゃんと両親を事故で亡くし、一人ぼっちで泣いていた僕を立ち直らせてくれた恩人だから感謝している。
「そうそう。そろそろテントを収納しナイと。ボクとダンチョーで塗りつぶして騙した光景二違和感を持ツ人ガ出たら厄介ダヨ」
「そうだね。
キーワードを唱えてテントと舞台を一つの小さなキューブにさせる。
そこには植物が僅かにあるだけの荒野が広がっていた。
「うんウン。手際が良イ上に便利なギフトだね。あれ?」
「どしたの?」
「あの手紙、舞台を展開スルまでにはナカッタよね」
「確かに……」
舞台を展開するまでにあったなら気づいているか、舞台に潰されてくちゃくちゃな状態になってるはず。
それなのに手紙は皺がない綺麗な状態だった。
「ピエール、一応シルクハットの中に隠れて。油絵具の引火性が出たらヤバいから」
「オッケー♪」
シルクハットは護りのギフトがあるので日中などはピエールの避難場所の一つになっている。
シルクハットを含めて僕が持っている物は僕とピエール、機械式動物でしか扱えないようになっているし、盗られてもしばらくしたら僕の手元に戻るようになっているから安心だ。
まあ説明はこれくらいにしよう。今は手紙だ。
手紙を拾って封を切り、中に入っていた文章を読む。
「えーとなになに、『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その
突然の浮遊感と落下する感覚。
気づいた時には僕達は異世界に飛ばされていた。
ピエールは外伝版と違って元“トリックスター”のメンバーです。