フェバル〜少女の行き先〜   作:月白弥音

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15.み、ミリアさん!?

 魔力測定が終わってからは私のお洋服を買うためにたくさんお店を回ることになった。

 うん、それはもう本当にたくさん。

 私も最初は楽しかったんだよ?

 お洋服見るのはやっぱり楽しいし、今まで見たことないようなお洋服もたくさんあったから。

 ミリアさんのおすすめのお店に連れてってもらった。

 お金持ちさんが多いからなのかな、ミリアさんみたいなフリフリしてるお洋服が多かったけど……

 私はTシャツとかワンピースとか着やすいもの欲しいって思うのに……可愛くて好きだけどやっぱり私が着るのは緊張しちゃう……

 なんて思っていると……

 

 「セレイルの希望ならある程度は考慮しますが、その前にこれも着てみてください」

 

 私の思ってることを見透かしたみたいに渡されたのはフリフリ、どころかフリフリフリフリしてる本当にお姫様みたいな服。

 

 「み、ミリアさん!?」

 

 「きっと似合うと思うんです。一度でいいので……」

 

 お願いします、を控えめに、でもいやとは言えない雰囲気で差し出されちゃったらもう着るしかないよね。

 でもこんなの私には絶対似合わないと思うんだけどなぁ……

 

 「わ、わかりました、試着だけ、してみます……」

 

 「はい、お待ちしていますね」

 

 試着室のカーテンを閉めて改めて自分と抱えてるお洋服を鏡越しに合わせてみる。

 全体的に淡いピンクの生地に白いレースがたくさんついてるワンピース。

 背中には大きいレースリボンがついてる。

 うん、すごく可愛い。

 でも着る勇気が……

 

 「セレイル? 着方わかりますか?」

 

 なかなか出てこない私を心配してくれたのかミリアさんから声がかかる。

 とにかく着てみよう、うん!

 

 「だ、大丈夫です!」

 

 そう答えておいて私はもともと着ているワンピースを脱ぐ。

 そういえばこれも朝、私がうまく着れなくてミリアさんに教えてもらったんだっけ。

 一回教えてもらったから今回は簡単に脱げた。

 多分、こっちも着方はおんなじだよね?

 えっと……ここをこうして……あれ? あれれ……?

 こうだったかな……んと、わかんなくなってきちゃった……

 どうしよ……ミリアさんには大丈夫って言っちゃったし……

 

 「セレイル? ふふっ、やっぱり困ってましたね」

 

 「え、ミリアさん、どうして……?」

 

 声に振り返るとカーテンから少しだけ顔を覗かせていた。

 

 「いえ、だんだん唸っていたのでもしかして、と思いまして。入ってもいいですか?」

 

 「は、はい……お願い、します……」

 

 もう覗いてるのに聞いてくれるミリアさん。

 優しいな、と思いつつも申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

 「申し訳ないと思わなくていいですよ。これは私のわがままで着てもらっているものなので」

 

 「でも、またこうやって迷惑を……」

 

 「迷惑なら何もやっていません。私がセレイルにしたいだけなので」

 

 前の世界でもそうだったけど、みんな優しいな……

 そう思って、また思い出してしまう、あの、ひどい……

 

 「セレイル? ほら、みてください」

 

 「え……」

 

 呼ばれて顔を上げるとそこにはドレスを纏った私がいた

 

 「ほら、やっぱり似合うじゃないですか。可愛いですよ」

 

 「えへへ、そうかな……」

 

 自分ではわかんないけど……

 恥ずかしいけど似合うって言ってもらえるのは嬉しいな。

 

 「そういえば迷惑をかけてるって話をしていましたね」

 

 「え、はい……」

 

 「では、そのお礼ということでもう少し私に付き合ってください」

 

 ミリアさんの目が怪しく光った気がした。

 

 そこからはもう大変で、さっきのフリフリフリフリしたお洋服みたいなのをたくさん着せられて、私が欲しかったきやすいお洋服の試着もたくさんして、着せ替え人形みたいになっていた。

 ミリアさん、大人しそうな感じに見えたのに……

 もしかして実はいたずら好き?

 

 「お待たせしました、買ったものは全てうちに届くように手配しましたので帰りましょうか」

 

 「ありがとうございます。すみません、全部お願いしてしまって……」

 

 「私も楽しませていただきましたし気にしないでください」

 

 あ、やっぱり楽しまれてたんだ。

 いろんなお洋服、特に私が絶対に選ばないようなのが多かったし、楽しかったは楽しかったけど、緊張しちゃって疲れちゃった……

 

 「すっかり暗くなってしまいましたね。この辺りは明るいですが、急いで帰りましょう」

 

 「はい、急ぎましょう」

 

 

 

 

 

 ミリアさんの家に帰ってテレリアさんに魔力測定の結果を報告した。

 

 「あら、うちの子よりも高いなんて少し妬けちゃうわね」

 

 「す、すみません……」

 

 「ふふ、冗談よ。よかったわ、魔力値が高くて。私がねじ込んだ甲斐があった」

 

 ねじ込んだ?

 ネジか何かかな?

 私の魔力値と何の関係が……

 

 「お母様、まさか……」

 

 「ミリアと魔法学校に通えるように申請を出したの。こんな形でも一応貴族の端くれだからある程度顔は効くのよ?」

 

 「お母様……ある程度予想はしていましたが……」

 

 「私も一緒に……?」

 

 「ええ、ミリアと一緒に……通えるかはミリアが合格すれば、なんだけどね」

 

 「必ずします。今の話からしてセレイルは試験なしなんですね」

 

 「一応あるわ、面接だけね。魔力値が高くて暴発する危険が高いから制御の方法を学ばせて欲しいって伝えたら面接以外は全部免除してくれたの」

 

 「もし普通だったらどうするつもりだったんですか……」

 

 「ほら、その時はその時よ」

 

 「お母様は本当に……」

 

 ミリアさんとテレリアさん、やっぱり似てるなぁ……

 魔法学校……私も、そこならみんなを守れる力が……

 

 「セレイル、試験がないとはいえ何も知らないのも良くないと思うので私と明日から勉強しましょう」

 

 「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

 

 


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