外史に降り立つ   作:男治ーさん

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プロローグ ~外史に降り立つ~

英雄が、悠々と姿を現して歴史に名を刻んだ時代。戦争の歴史で、一、二を争いほど有名な時代。その歴史に憧れては、多様の文書を残して空想を描いた時代。

人々は、その時代をこう呼んだ

 

『三国志』と――

 

勇猛なら将軍から、龍の生まれ変わりと呼ばれた人物もいれば、知略に長けており世を見据えた者と。

憧れるのは当然、神に崇められる者もいる。三国志は、その時代を生きた人たちが、この世に存在したと証明するために、現代にある。

蜀の劉備は、大徳と人々に呼ばれては、義を重んじる君主と民に慕われており、その配下たちは劉備の道を信じ続け、潰えていった。

魏の曹操は、時代の革命者である。曹操が動かなければ、三国志はただの茶番に成り下がっていただろう。己が覇を唱え、時代を巻き込み天へと上った。

呉の孫策は、戦いをこのむ猛獣と呉の人たち全てを愛している、二面性を持っていた。孫の一族は強靭であり、時代を駆け果てた。

 

この三国があってこその、三国志。理想を掲げ、反する理想の国と争うことが、三国志。大空の下で、武と知を繰り広げ、大陸を納める時代こそ、三国志である。

三国志は崇拝されるものであり、歴史の教訓でもあった。だが、いつしかその三国志の歴史に、何かが触れてしまった。それがなんなのかは、わからず。黒いものでも、白いものでも、色付きでもない。大きいのか、小さいのか、それすらもわからない。ましてや、それが人なのか何かなのかすらもだ。

私たちが知っている三国志は、何も起きらず歴史には支障をきたさなかった。そう、私たちが知っている、三国志は。

触れたときの衝突に、歴史がもう一つ増えてしまった。そのまま、三国志の歴史が、もう一つできあがってしまった。しかも、この増えた方の三国志は可笑しいのだ。簡単に言えば、バグを発見した。このバグは、全ての三国志を覆してしまう可能性がある。そこまでの、脅威がこのバグが物語っている。

 

三国志の英雄たちが、全員女になっているなど――

 

全員である。男と語られていた英雄たちが、今では女と性を逆へと変換してしまっていた。すぐさま、この増えた方の三国志(以下、外史)と、元の三国志(以下、正史)を分離させ、外史を隔離へと成功した。

正史の方では、間一髪のところで歴史の異常なところは見られなかったが、やはり問題の点は外史に向けられた。外史は隔離されているが、また例の事が起こってしまったら収集がつかなくなってしまう。今の外史は強制的に停止をさせており、歴史が進んでいない。

このまま何もせず、放置してしまうという考えもあったが、それは危険な行為でもある。歴史が止まるという事は、こっちの正史の方でも影響してしまう恐れがあるのだ。外史は正史のコピーでもあり、もしかしてはその歴史の命すらも共同の可能性が存在する。

すぐに歴史を進ませればならないが、この外史の三国志はこのまま本来の通りに進むのか? 全く違う物で、刻む場合もある。

いや、むしろこの外史を勝手に進めるのは得策ではない。一度、その外史の命を止めるのがいいのではないか。

無駄な議論が、議論を起こしている。飛び交う言葉に、それを拾っては言葉で返す。無駄なことをし続けるのが最も良くないと分かっているが、それでもやってしまう順応の遅さ。

静かなところでは、この現状を目のあたりにしてか、呆れた息が漏れている。冷静な判断ができており、この場では正解を出せないと半端諦めている者がちらほらと。

この喧噪の中で、誰もが悠長に口を動かしている中で、スッと誰かが腕を上げた。争っていた者から、諦めていた者すべたが、その腕を上げた男に釘づけだ。

 

「ここは、彼に任せてみてはどうでしょうか」

「彼…。まさか、奴のことではないだろうな」

 

腕を上げた男性は、深く被っていたフードを外し顔を晒した。綺麗な顔立ちであり、知的な眼鏡をかけている。口調から察するに、先ほどまで口論していた者たちとは違い、理に適っている人と判断で来た。

その彼の発言に、少しだけ眉間に皺を寄せて聞き返している老人。『彼』というワードが、どうやら気に入らないようだ。

 

「笑いをとろうとするな、小僧。奴が、いままで我らに対してどんな蛮族のような真似事をしたか、貴様も知っておろう。奴に任せるだと? その意味は、正史と外史の危険性が深まるばかりだ。発言には気をけろ」

「たしかに、その件につきましてはこちらも理解しております」

「理解しておるのなら、何故奴を進めた」

「何故進めたか……。至極、簡単なことです」

 

老人は彼に悪態をついているが、それすらも気にせず流暢に言葉を述べる。次に彼が発言するのがこの場にいる人が気になり、ジーと見つめる。彼は一回だけ咳き込み、喉の調子を一、二度整えこう言った。

 

「彼が、大の三国志好きですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこだ、ここ……」

 

目を開ければ、そこは知らない天井…ではなく、よく晴れている快晴の天気だった。背中が妙に痛いと思えば、地面に寝転がっていたのか……。

って――

 

「そうじゃなくて!! え、ここどこ!? なにこれ、やだこれ!」

 

急激に筋肉が上半身を起こして、当たりを見渡せば絶句もんであった。そこはコンクリートてできている都会でもなければ、田舎の砂利道でもない。

大地はところかしこか真っ赤な血が付着しており、傍を見れば槍や剣やら地面に刺さっている。臭いは腐敗しているような嫌な臭いがしだい、鼻をつまんだ。

見渡せば見渡すほど、ここにはそれしかない。まるで、映画や写真で見た戦争の跡のようだ。

 

「なんだよここ…。戦争にしては、ちょっと原始的じゃねぇか。銃もないなんて、まるで――」

 

と、言葉を続けようとすると遠くから、何かがやってくる音が聞こえる。

まさか、ここで戦争とかしてた奴等じゃねぇよな…。そうだったら、俺と鉢合わせしてみろ? すぐ、引っ捕らえるか、首の上からスパーンとか。

やべぇ、気分が悪くなってきた。

ここが日本ではないとわかり、急激に体温が下がっていく感じがする。実際に下がっているかもしれないが、頭の先からスーッとだ。言葉が分からなきゃどうしよう、危ない人たちならどうしようと、ネガティブな事を考えてしまう。

えと、あれだ……死んだふりか? バカ、相手は熊じゃねぇんだよ! いや、もしかしたら熊みたいな凶暴な奴等かもしれないけどさ……。

脚を動かそうとも、恐怖で震えてろくに動こうともしない。口も若干呂律が回っておらず、下手に声をあげれば癪に触ってしまうかも。

 

「あぁ、えぇと……と、とりあえず!」

 

その言葉と共に、体全体を虚無感に染め上げ力が入らない様に、そして本当に死んでいると思わせるために、その場を倒れた。むろん、顔面からだ。

このまま運よくいえば、厄介な奴らが去ってくれる。そう、何事にもポジティブに考えろ俺。ポジティブだ、ポジティブシンキングだ俺。頭を、ハッピーセットにしろ俺!

無我夢中で考えている中、地面に倒れているおかげで地響きが体に伝わる、どうみても、これは5,6人ではない。下手をすれば50人以上いるか…。

気づいてしまったが、地響きはして音もだんだんと聞こえるが、これは車のエンジン音ではない。なんか、リズムよく何かが弾んで来ている……のか。まるで、何かの足音。

足音が大きくなるにつれ、大地が目でわかるほど揺れている。それにつれて、俺の心はバクバクと飛び出すんじゃないかってぐらい、激しく動く。足音が近づき、必死に目を堪えるが現実というのは無情にもやってくる。

耳では、足音と共に何かの動物の声も聞こえる。しかも、この声は聞きなれてはいないが、一度以上は聞いたことがある。足音がどんどんと鳴りやみ続け、パカラパカラと周辺にはそんな奇怪な音が聞こえた。地響きもない、というと――

 

「占いでは、たしかここ等へんよね。春蘭、秋蘭! 目ぼしいのがいたら、死体でもいいから連れてきて頂戴」

「「ハッ!」」

 

今のは、女の子の声か? しかも、言葉が分かるっていうと、やはりここは……いや、待て! もしかしたら、と考えてしまうのは悪い癖だ! 予想はしているものの、全くの見当はずれっていうのがある。冷静に判断し、クールに決めるのが俺流だ。

多少の問題が晴れ、ちょっとだけ片目を開けた。

 

「本当にいるのかしらね、その『天の遣い』っていうのは」

 

黒い馬に優雅に跨っている、金髪の女の子がそこにはいた。髪型はお洒落に、両側をツインテール風の巻き髪にし、それを止めているアクセントの髑髏の髪留め。服装は少々露出気味だが、彼女に相応しいと思うほど、似合っている。

目が離せなく、ずっと彼女を見つめている。目を瞑るのすらダメだと驚きながらも、ただただ身を任している。一目ぼれではない、だがなんだこの感じは……胸が躍る、この心は。

左腕を無理に動かし、心臓付近に当て服ごと強く握る。だが、それでも確かめられない。心臓ごと握らない限り、この意味はわからないだろう。もっと見たいと、体が少しずつ彼女のもとまで引きずりながら進む。

 

「あともうちょ……」

 

彼女の顔が見たいがために進んでいったが、俺全体を覆う影が突然現れた。

見渡した時には快晴で、雲一つなかったのにろよりによって出てきたのか。これじゃあ、彼女の顔が暗くて見えないじゃねぇか。

右手を地面に食い込ませながら、イラつきで力強く握ってしまった。

ここまで来たんだ、とりあえず顔をずらして見られたらいっか。少しだけ顔を上げ、彼女が居ると思うそこを見た。

 

だが、そこはただの水平線。荒れた大地が、限界まで広がっていた。見失ったと慌てながらも、また顔を地面に付け、いったん死んだふりを続けた。彼女を探すのは、一旦やめて近くにいる奴らが彼女に声をかけたら、その声がある先に進めばいい。

どこまでも彼女に執着し、考え込んでいる。

 

「ねぇ、もしかして貴方じゃない? 『天の遣い』って」

 

後方から、彼女の声がした。しかも、凄い近くだ。体が一瞬硬直してしまったせいで、次に力を入れたら勢いよく立ってしまった。

 

「あら、やっぱり生きてたのね。最初に見た時には、死んだかと思ったわ。芝居、得意なのね」

 

後ろを振り向けば、華麗に構えている彼女がいた。馬の手綱を握り、俺を見下している彼女が。

俺を覆っていた影は、あの馬の影だったか……。これで一つの問題は解決した、次の問題は解決しそうにはないけれども。

 

「言葉が通じないのかしら。もう一度聞くわ、貴方は『天の遣い』なのかしら」

 

言葉が理解できないと勘違いされた。いや、理解もできるけれども、その『天の遣い』っていうのには反応できないんですよ。だって、そんな可哀想な名前じゃないし、俺。

言葉を返そうとも、緊張で言葉が出せず、傍から見れば素っ気ない対応を取っている。彼女はそんな俺に嫌気がさしたのか、言葉を荒げる。

 

「これ以上無駄な時間を、私に過ごさせないで。さぁ、最後よ。これに答えなかったら、貴方の人生はここまでと知りなさい」

 

彼女は懐から鎌を取り出し、刃の部分が太陽の光が反射している。その反射しているのでわかり、この鎌がどれほどの切れ味を物語っているのかを。対する俺には、最後の質問を答えなければ、すぐさっきの想像通りに、首の上とお別れしてしまう。

ここで答えなきゃ、せっかくここまで生きてたのにもう終わりかよ!! こんな女の子に殺されるなら、本望とかじゃねぇんだよ。ただ、俺は普通な人生を送って普通に余生を過ごしたいのに、ただの質問を返さないだけで、殺されるとかふざけんなよ!

彼女は鎌をこちらに向け、質問を投げた。

 

「貴方は、『天の遣い』かしら」

「ち、ちが……!」

 

渾身の答えを、彼女に返そうとした瞬間。

内臓が何かしらの不快を受けて、そこから何かが逆流しだし喉を一気に通過していった。両手で口元を抑えたが、もう遅い。やつらは今、母なる大地に帰ろうとしている。

でも、今はちょ!?

 

「ゲヴォォォォ!?」

 

俺の口から、光で七色に輝く液体が弧を描きながら、彼女が乗っている馬の足元に無事着地した。デカいのが飛び出したおかげで、頭がスッキリして全体を把握できる。でも、この場合は把握したくはなかった。

彼女を見ると、もうゴミを見るような目つきで俺を睨んでいる。鎌を力強く握り、少しでも動かせば空を切る音がする。これはもう、完全に怒っていますね。

 

「……そういえば聞きそびれたわね、あなた名前は?」

「え…」

「名前って聞いてるの。名前ぐらい、人間ならあるわよね?」

「は、はい……お、俺の名は「そう、嘔吐物っていうの」そう、俺の名は嘔吐物……は?」

 

彼女が重ね、なんか知らんが下呂という名前と、半端強引に宣言された。

彼女はニコやかな笑顔ながらも、手には凶悪な鎌を携え馬を進める。ちゃくちゃくと、俺に恐怖を与えるようゆっくり。

体を動かそうにも、まだあれの産出のせいでグロッキーであり、動けばそのまま倒れてしまう。俺のことは構わず、彼女は告げる。

 

「じゃあ、嘔吐物。貴方には、私からの贈り物をあげるわ。――――死、よ」

 

不吉な言葉とともに、彼女は鎌を勢いよく振り刃の先が俺の首を捉えようとした。

ふっ、これが俺の人生最後のゲロか…。しかも、何故か嘔吐物の命名されちまったし、本当……碌な思い出がねぇな。

事の惨状を理解したくないがため、目を瞑り後の始末を待つ。

どうか次は、女の子が山ほどいるところで、目が覚めますように――

 

 

 

 

 

 

「どう彼が動くのか、見ものですね」




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