萃香と一緒に行動し始めて更に数時間が経った。
日もあと少しで完璧に沈む、濃い青色に染まりつつある空に星と太陽のコントラストが美しい。
しばらく感傷に耽って立ち止まって居ると、萃香が何かを見つけたのか、こちらに手を振ってくる。
次第に周囲が暗くなりつつあるのに、萃香の姿がハッキリ見えるのは月の灯だけではないのかもしれない。
「鬼々〜!私の友人の家が見えてきたぞ〜!」
と萃香が遠くから呼んでくる。
俺は少し困った顔をしていたんだろう、萃香は俺の顔を見るなり頰を膨らませた。
「また不機嫌な顔してる。そんなに私の事が嫌いか?」
と、身長差も相まって上目遣いで訪ねて来る。
まるで妹か近所の小さい女の子を見てる気分だ。
親戚のおじさんとかの気持ちが分かったような気がしなくもない。
「そんなんじゃないよ。ただ、夜中に大声を出されると辺りに響くだろ?それに他の妖怪だって寄って来るかも知れない。」
自分なりに萃香の事をフォローしたつもりの返事をしてみた。
それを聞くなり萃香は少し機嫌が戻ったのかくるりと回って前へ歩き始めながら、いつも通りの明るい声音で返事を返してきた。
「大丈夫だよ。この辺りは私の友人のテリトリーだし、何より鬼に勝負を仕掛けてくるお馬鹿さんは居ないよ。何より私が居るしね!」
相変わらず楽観的な奴だな、まあ確かに鬼にわざわざ勝負を仕掛けて来るやつも居ないか。
そして更にしばらく歩くと階段が見えてきた。
上を見上げると立派な石段に昔神社であっただろう建物が見えた。
すると萃香が神社に住んでいるだろう友人の名前を呼んだ。
「お〜い!遊びに来たよー!勇儀〜!!!」
すると、奥の方からのそのそと人影が歩いて出てきた。
立派な赤い角、鬼の象徴たる其れは見るものに畏怖を覚えされる。
「なんだ、萃香じゃないか!久しぶりだな!」
見た目とは裏腹に人柄は良さそうだ。いや、鬼だから鬼柄か?
そんな事を考えて彼女を見ていると、先に彼女から口を開いた。
「なんだ?そこの奴?人間か?また闘いでも挑みに来たのか」
さっきまでの空気を凍らせる様な冷たい視線が此方へ飛んでくる。
ゾッとした、まるで蛇に睨まれた蛙の様だった。
只者じゃない、目を合わせただけで強者とわかる。
そんな得体の知れない説得感が彼女から醸し出されていた。
固唾を飲み込もうとした時、隣に居た萃香が口を開く。
「こいつは私の友人さ、それに人間じゃない。私達と同じ鬼だよ」
萃香の言葉を聞き納得したのか、いつのまにか冷たかった視線は無くなりさっきまでの穏やかな表情に戻っていた。
「そうか!悪かったな!最近人間が良く闘いを挑んでくるんで間違えたみたいだ!」
笑って謝罪をしてくれた。
聞き分けが悪い鬼では無いらしい。
「それにしても、お前はなんて言うんだ?あと、鬼なのに角が見当たらないけど、どうしたんだ?」
心配する声と共にさっき俺を人間と間違えたであろう理由も言ってくれた。
「どうも、俺の名前は「
自己紹介を終えると、勇儀さんが神妙な顔になり口を開いた。
「ふ〜ん、よろしくな!鬼々!それで、角は折られた訳じゃ無いんだな。」
角を折られる?誰に?鬼より強い妖怪か?
答えは勇儀さんの口から帰ってきた。
「いや、さっきも言ったと思うけど最近人間が闘いを挑んでくるんだ。鬼の角を狙ったりね。あたし達も人を攫ったことは有るが殺した事は無かった。」
続ける様に萃香が口を開く。
今までの萃香からは考えられない様な口調で。
「だけど、人間は私達を騙して仲間を殺した!酒に毒を盛り眠らされた所に首を跳ねられるんだ。」
「そうしてあたし達から仲間を奪い、仲間の身体の一部を戦利品として奪っていった。」
「それが、鬼の角さ。人間には私達鬼に勝ったことの証明になるんだ。」
「あたし達は、ただ人間と真正面から勝負がしたかっただけだ!人間の可能性があたし達は好きだった!だけどアイツらはあたし達を裏切った!アタシ達鬼は嘘が嫌いだ。だからあたし達鬼は人間に失望した」
「鬼々も薄々気づいて居たんじゃないの?山の鬼達が最近騒がしいことに、やたら皆が何処かへ行ってしまう事が、気になってたんじゃないの?」
確かに、最近山から鬼が少なくなっていってる気がしたけど、それと何の関係が……
口を開こうとすると、先に勇儀さんが言葉を発した。
「あたし達は、山から降りる。山から下りて人間とはもう関わらない。そして人から一切姿を消す」
「だからね、鬼々。だから私は鬼々を此処へ連れてきたんだ。」
萃香が俺に向かっていつもより真面目な顔で俺に話掛けて来る。
すると、勇儀さんが階段をゆっくり降りてきてこう言った。
「後は、地上に残ってる鬼を連れて行けば地上から鬼は居なくなる」
続いて萃香も口を開く。
「だから鬼々、私達と来ないかい?君の好きな空は見えないけど、悪いところじゃないよ。私が保証する」
「もし、もし付いていかないって言ったら……?」
まだ、俺には確かめたい事がある。
それにやりたい事も。
「たしかに、鬼々は角がない分鬼とはバレないかもしれない、でもだからと言って君を行かせる訳には行かないんだ。」
すると勇儀さんが階段の側からこちらへ寄って来てこう言った。
「あまり、仲間相手に気は進まないけど、無理矢理にでも連れて行くよ。」
「っ!勇儀さん!俺は闘いたくない!」
「なら!私達についてきな!それが出来ないならせめて私を楽しませな!」
「くそっ!なんで闘わなきゃいけないんだ!」
「いつまでごちゃごちゃ言ってるんだい!来ないならあたしから行くよ!」
勇儀さんの足の周りにヒビが入った。
刹那、勇儀さんの姿が消えていつのまにか俺が宙に浮いている。
肺から空気が押し出され、息が逆流する。
痛みが後からやってきて、更に苦しくなる。
宙に浮いた状態のまま数回攻撃されたのか石垣へ身体が埋まる。
何が起きたのか分からなかった。
すると、勇儀さんが姿を表して話しかけて来る
「そういえば、言ってなかったね。あたしの能力は「怪力乱神を持つ程度」の能力だよ!」
俺はこんな化け物と闘わなくちゃいけないのか……
今日は飛んだ厄日だ!
本当は使いたくないけど、使うしかない。
俺の能力を……!!!
眠いです。また失踪するかもです。
感想まってます。