毒々の国のアリス   作:柏木祥子

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 時間は永遠に続くように思われました。世界は暗闇に包まれ終焉に達しようとしていてそれを防ぐ者はおらず、ただただ太陽を侵食するそれを眺めるばかりでした。炭を垂らすようにじわじわと広がる黒。それはこの先の不吉の予兆でした。

       

 公衆トイレから出てきた二人はひどい恰好をしていました。一様に髪はぼさぼさ、額や頬に数本の髪が張り付き、服はぐちゃぐちゃで事後にしか見えませんでした。片方は黒髪に似合わないアリスワンピースを着ていて方が半分はだけているのをふらふらしながら直していました。アリスワンピースの裾から滴が滴っていて、寝ぼけているのか小声で歌っていました。らいらららいらららいらららいらららいらららっぱっぱー、もう片方は背の低い童女でこれまたふわりとした白い服を着ていましたがところどころにシミができています。特に背中には黒ずんだ斑点がいくつか浮かんでいます。顔は真っ赤で肩を上気させていました。こしこしと口元を拭きました。「ん~、足の調子がいいわ。休んでよかったわね」アリスは云いました。白兎の手を取り、歩き出そうとします。白兎はびくりと体を震わせました。今さらながらとんでもないことをしてしまったという意識が浮上してきていてまともにアリスの顔を見ることができません。後悔しているはずなのに、なおアリスの手の感触を悦ぶ自分を白兎は叱咤しました。そしていつか父親が唱えていた呪文を唱えました。色即是空色即是空……。上でアリスが悪魔の呪文を歌うのでありがたい効果はもらえそうにありませんでしたが、白兎の気持ちは紛れました。

 気まずさを宿してアリスを見上げると、さっき見た時よりも舟をこぐような調子で頭をゆらゆらと揺らしていました。何で倒れてないのかというほどでした。

「さあ行きましょうか」「は、はい」淀みない声でした。淀みなく、しかし張りはありませんでした。

 白兎はアリスがどう思っているか気になりました。なにもかもをどう考えているか不思議でなりませんでした。さっき適当に納得してしまったなんもかもを気にすべきなのではという気になりました。「お姉さん、そんな感じでしたっけ」

「こんな感じじゃない?」「いっつも鼻歌を唄いながら帰ってくるのはたびたび見てましたけど、澄ました顔で唄ってた気がしてなんだか…」「なんだか?」「無理してません?」

 アリスはん~と首をかしげて考え始めました。細い指を髪に埋めて関節の頂で頭皮をぐりぐりやりました。ふらっとよろけました。「うん、うん、無理はしてないよ、うん」

「そうは見えないんですけど…」やっぱり具合悪いんだこの人と白兎は思いました。白兎は意を決して言いました。「お姉さん、もう帰りましょう」「なんで?」「なんでって…」白兎はくいくいアリスの手を引っ張りましたがびくともしません。困った白兎は周囲を見渡しまし、OKを見つけました。白い頭にOKを乗せた巨大な建物がそびえたっています。車道のほうを走る車のほとんどはあの場所に向かっているように思えました。

 全ての答えを孕む場所、OK。白兎は思いました。あそこに行けばだいたい何でもそろっているだろうし、この人の問題も解決できるかもしれない。

 白兎は歩き出しました。アリスはその横でクエスチョンマークを浮かべていました。

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 立体駐車場入り口を横切って二人はOKの前までやってきました。OKは大きい建物でした。入口がそこかしこにあるのでどこから入ればよいのだろうと白兎はとんちんかんなことを思いました。

 みんなが二人を見ていました。大概にも大概な風体だったからでした。二人の後ろから子供連れの両親が警察呼んだほうがいいかしらと云いながらOKに入っていきました。途中具合の悪そうな清掃夫にぶつかって夫のほうが怒鳴りました。

 白兎はもちろんそれに気づいていました。アリスは相変わらずらいらららいらららいらららいらららいらららいらららっぱっぱーでした。白兎はアリスの手を引いてOKに入ろうとしましたが、アリスがそこから動こうとしませんでした。

「どうしました?」白兎は尋ねました。アリスは唄いながら建物を見上げていました。胡乱気な顔つきでした。白兎の問いかけにも応えず、アリスは唄っていました。ようやく口を噤んだかと思うとそれは伴奏だったようでしばらくするとまた唄い始めました。白兎はタイミングをつかめず「ここで動かず待っててくださいね」と云いながらOKに入っていきました。

 アリスは入口の前に残されました。人波がアリスをじろじろ見ながら建物に入っていきます。アリスはそんな視線など気にも留めず、歌を唄っていました。アリスは唄いながらここイトーヨーカドーじゃねえなと思っていました。

 唄い終えると、不機嫌な顔でOK、オールカインダーフッド、と呟きました。うつろな頭で答えを出そうと必死になっているように見えました。

 その頃白兎はOKの中を走っていました。店内は程よく冷房が効かされ、外から来た白兎の体温を奪いました。白兎は肩をぶると震わせ、走りました。OKの中は巨大でした。まず、鮮魚コーナーが四レーンあって、野菜コーナーも同じ数だけありました。肉はその二倍ありました。そのほかに菓子に調味料、スプレーガンなどが売っていました。その間をところ狭しと人やカートが行き交い、体の小さい白兎にとってもひどい通りにくさでした。

 白兎の目指すところはお客様サポートセンターでした。サポートセンターは一階と二階両方にあるらしく、三階は立体駐車場入り口でした。白兎は一階のサポートセンターが人で埋まっているので二階を目指していました。階段とエスカレーター、白兎はまずエスカレーターを目指しました。どちらもギュウギュウ詰めでそれなら歩かなくとも上に行けるエスカレーターに乗ったほうがいいと考えたからでした。

 人がバケツの肉塊のように商品棚に群がっていました。みんな安い商品に目を血走らせ商品を手にとってはカートに突っ込んでいました。遠くのほうで罵声が聞こえた、と思うと近くで「それ私のよ!」と大きな声が聞こえました。そうした波に逆らって業務を続ける店員は見るからに憔悴しているように見えました。白兎は大変だなと思いつつも肉をかき分けて行きました。そうすると、引っ込んでいた汗が復活するのを感じました。じっとりとした肉の壁に白兎はアリスを思い出しました。「ちょっと!気をつけなさいよ!」白兎が足でも踏んだのかひどい形相の女の人が喚きました。白兎は気おされ、のけぞりましたが気を引き締めてさらに突き進みました。「クソガキ!アバズレ!」無視された女の人はひどいことを叫びました。それを聞いた別の女の人がなんだと!と女の人をぶん殴りました。よろけた女の人が男の人にぶつかりまた殴られました。今度は鼻の折れる音が聞こえました。「あああああ!」女の人は叫びました。叫び声につられて振り返った大根を持った女の人が鼻血に滑って転びました。頭をしたたかにうち、呻いているところを百貫デブに踏まれて悲鳴を上げました。

 悲鳴は波及しました。ひどくひどく波及しました。襲う波のような悲鳴が悲鳴を呼び、店内の客を包みました。店員はなぜか笑っていました。虚ろな顔でした。

 白兎は逃げるようにしてエスカレーターを目指しました。白兎にはやはり逃げるように足の浮いた人たちが大勢いて、みんな一様にエスカレーターを目指していました。上の商品は日用品が主でした。文房具やニスなどが売っていました。白兎はエスカレーターにどうにか乗り込みました。黒と黄色のボーダーの床に乗って動くがまま任せました。上からアナウンスが降ってきました。『ただいまより三十分間、総菜コーナーのから揚げが200円になります。先着順になっておりますので、皆さん落ち着いて一列になってください』白兎にはどこらへんが‘ので’なのかわかりませんでした。200円のから揚げが安いかどうかもわかりませんでした。でもやっぱり求めている人は多いみたいで登るエスカレーターから牧羊犬に追い立てられた肉みたいな綺麗な方向転換が見えました。下りのエスカレーターに「どいてどいてどいて!」と駆け降りる影がいくつも見えました。エスカレーターとエスカレーターの間を滑っていこうとする者もおり、駆け降りる誰かが起こって殴りつけました。殴られた滑る人は上りエスカレーターを過ぎて向こう側へ落ちていきました。殴りつけた人は結果的に手助けした形になったのでした。

 OKって戦場なんじゃないかもしかしてと白兎は思いました。

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 アリスはゆらゆら揺れていましたが、それに飽きると階段の中ごろで座っていました。俯いてやっぱりゆらゆら揺れてアリスは考えていました。といっても思考力の低下から、もっぱら期待されるのは単語の羅列からのひらめきでした。

 ドリトス(ナッチョチーズ)。コーラ。メレンゲ。OK、オールカインダーフッド、白兎、トキシィックアベンジャァーッ。「…………」

「ここイトーヨーカドーじゃないな。OKだよここは」

 アリスは立ち上がりました。立ち眩みがしたふらふら揺れました。片足が半円を描き、転びそうになりましたが耐えました。「イトーヨーカドーじゃないと…」アリスは歩き出しました。右手をわしわしやって少し不思議そうな顔をして「OKじゃダメだよ~」と唄いながら歩きだしました。そのとき、アリスに声をかける影がありました。

 男は言いました。「今何て言った?」

 アリスは振り返りました。それは清掃夫でした。目に強い怒りを感じました。モップを持つ手がぷるぷると震えていましたが、よく見ると震えているのは全身でした。

 アリスはこの人どっか悪いのかしらと思いました。思うとぱっと頭?と単語が出てきたので、アリスは微笑みました。

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「つまりその女の人は具合が悪そうなんだね?」サポートセンターのおじさんは云いました。禿頭でした。

 サポートセンターは二階の端っこにありました。事務所のようなところでした。タイムセールのおかげで二階の客はそれほど多くなく、大した苦も無く白兎は辿り着けました。

「はい」白兎は云いました。「それもすごく悪そうで…」

「外にいるんだよね、今。とにかく見てみないと、店的には救急車何て呼びたくないだろうからね、案内してくれるかな」ハゲのおじさんは云いました。なんか目が変だなと思いましたが白兎は気にしないことにしました。

 ハゲのおじさんは事務所の後ろの扉を開き、手招きしました。「えと、そこから行くんですか?」「ああ、下は邪魔が多いからね」おじさんは笑いました。「後ろに非常口があるから、そこから行こう」白兎は迷いました。おかしいような気がしましたがどうおかしいのか白兎は納得のいく説明ができませんでした。強いて言うなら警鐘とでもいうべきかもしれません。早鐘のように胸が音をたてましたが走ったせいでもなければまして恋でもないだろうとおじさんが聞けばツンデレだツンデレだとはしゃぐようなことを白兎は思いました。白兎は渋い顔をしました。「表から出ないと、案内できないかも…」「どうしてだい?」「非常口の先を知らないから、知らないところに出ても知ってるところには行けないから」

「はは、中々哲学っぽいことを言うね、おじさん好きだよそういうの」

 はははとおじさんは笑いました。白兎はひどい気分になったと思いました。実際、眉間に不快を覚えていました。振り払いたくなる感でした。

 空調の廻る音が聞こえました。サポートセンターには椅子と机、机の上には大量の資料と粉袋が置かれていてその向こうに扉がありました。おじさんは白兎の斜め前に立っていました。エアコンディショナーの風が何を運ぶのかこびりついたなにかを払うように自分の禿頭を撫でました。涼しい気のはずなのに顔がてかてかと光っていました。油でした。

 白兎は落ち着かない思いを感じていました。時間が止まっているような気がしました。黙っておじさんを見つめる自分と笑ったままのおじさんとあまりの動きのなさでした。背後から走る客の声が聞こえました。飾られたテレビの音が近くに来たように思えました。「わたし、先に下に降りてますね」白兎は支離滅裂なことを云いました。背後の扉に手をかけました。「はは、何を言ってるんだい。非常口から行ったほうが早いよ。さあ行こう」気づいたらおじさんは扉の前に立っていて開かないように抑えていました。素早い動きでした。それ以前に白兎の背筋に冷たいものが走りました。逃げなくてはと頭の中を暴れまわりどうしようもないと白兎は思いました。おじさんはニコニコしていました。

 白兎は賢かったので悲鳴を上げようとしました。鈴の断末魔のような声がサポートセンターの中を飛び跳ねました。「ここ防音加工なんだよね。駄目じゃないかそんなことしちゃ」

 おじさんが笑いながら白兎の口を抑えようとしました。その前に白兎は自分で口を抑えました。口に触られたくないと思ったからでした。おじさんは残念そうに手をひらひらさせると、言いました。「そうしてなさい」白兎の肩に手をかけました。

 手で口を抑えたまま白兎はアリスに助けを求めました。なぜアリスに助けを求めてしまうのかと白兎は思いましたが、どのみち聞こえる話ではありませんでした。

             

「だからっ!今何て言ったかって聞いてんだよボケガキ!」

 清掃夫はアリスを怒鳴りつけました。横に飛んで行った白い泡を見送り、アリスはぼうと立っていました。突然のことにアリスは戸惑いを覚えていました。さっき何を云ったかと問われて思い出すのは悪魔の呪文でしたがそれは違うだろうなと考えていました。

 アリスは清掃夫に絡まれていました。第三者的に言うとその原因はアリスがOKを軽視する発言をしたからですがアリスは覚えていませんでした。

「はあ、ええと、らりぱっぱー、です」アリスは取り敢えず言いました。

「違う!よしんば言ったとしてもそこじゃない!もっと後だ!」

「らいらららいらららいらららいらららいらららいらららっぱっぱーです」

「ホーカスッ!ポカス!おめえ頭おかしいんじゃねえのか!?俺はッ、お前が何の権利があって俺の職場を悪く言ったのか聞いてんだ!」激高した清掃夫はじだんだを踏みました。変な揺れ方もしていました。らいらら?とアリスは思いました。そして思い出しました。「イトーヨーカドーのほうが好きなんだもの」

「イトーヨーカドーだっ?は、あんなとこ。高すぎて庶民向けじゃねえ、お高く留まってるわりに品質が高いわけでもねえ、クソだろ」

 アリスはなんだか知らんがカチンと来ました。ふらっふらの足で地面を踏みしめアリスワンピ―スの尻についた砂粒を払うと言いました。

「you(fuckin)stupid,(fuckin)bastard,(fuckin)bitch,(fuckin)asshole.Mother fucker.

did you want digging me? did you want digging me? Huh? Pretty cute ass.bitch.」

 アリスはあらん限りの罵倒語を繰り出しました。日本語で罵倒すると回りくどくなりそうだからでしたが失敗でした。清掃夫はマザーファッカーしかわからなかったのです。

 清掃夫は一瞬気圧された顔をして一瞬青くなって次の瞬間、顔を真っ赤に染めました。アル中の鼻頭のような顔色になりました。

「なんでうちの母ちゃんのこと知ってんだ!」清掃夫は殴り掛かりました。モップを振り上げ、アリスの頭を粉砕せんと振り下ろしました。

 アリスは空を見上げました。思えば遠くまで来たような気がすると思いました。足がガックガクです。さっきまで座っていたのにガックガクでした。空にモップの影がかかりました。いやにスローモーなモップを見て、アリスは自分の脳漿の色を思いました。脳漿の色は赤という映画と、灰色であるという映画の両方をアリスは見ました。どっちが正しいのかは知りませんでしたが、毀れるならその色は赤だろうと思いました。そう言えば脳には痛覚がないのだということも思いました。なら頭痛とはどこから来るのだろうか、頭のどこが痛くなれば内側からぶんなぐられるような風になるのだろうか。

 殴られた衝撃は一度ではなくて、まず表面的な接触部から中に衝撃が伝わる。衝撃は波となっていろんな箇所に影響を及ぼす。頭なら衝撃波で脳が揺さぶられて意識を失うか、それに近い状態に陥る。酷いと脳挫傷という症状を引き起こして、最悪死ぬ。次に抵抗が起こる。殴ったらその分の反動が殴った側に伝わる。殴ったんだなとわかる。拳なら壊れるかもしれない。モップなら折れるかもしれない。アリスは思いました。

 しかしモップが折れたところで自分の頭が破裂することに変わりはないな。

 モップが振り下ろされる。暗転。暗転。瞼を透けた太陽が、瞳をほんの少し痛ませる。キャッチャーミットのような音を立てて、モップの先が何者かの手に握られていました。

 その肌は奇妙に焼けただれ、緑色になっていた。上半身は裸、身に着けているのはバレエのセパレート。盛り上がった筋肉が列をなし、象徴するは正義の心。

 

 清掃夫は毀れそうなぐらい目を見開いていました。アリスは、恐る恐る目を開きました。モップの柄をつかむ、緑色の醜い手が見えました。

「やっぱり付いてきてよかった…大丈夫?アリスワンピースの人」

 トキシィィィックッ!アヴェンジャーッ!

 アリスは目を見開きました。「毒々モンスター!毒々モンスターじゃないの!助けに来てくれたのね!」「まあ似たようなものかな。君ほんと話聞かないね」毒々モンスターはふ、と笑いそれから清掃夫に向かいました。モップがぎりぎりと空中で動いていました。毒々モンスターは一瞬で清掃夫の手からモップを奪いました。

 彼はモップをしげしげと眺めた後、前戯のごとく振り回した。風切り音が鳴り、ほこりやら泥水っぽいのやらが飛び散る。獲物を失った清掃夫はカーゴからナイフを取り出した。刃渡り45㎝、立派な銃刀法違反だった。

「さて」毒々モンスターは言った。「お掃除の時間だ(it's a cleaning time)」

 清掃夫が奇声を上げ毒々モンスターに突っ込んでいく。毒々モンスターは白刃を横に避け、その手をつかんだ。そして力任せに振り回し、清掃夫を階段の下に叩き落した。嫌な音、あれは肋骨がイッた音に違いない。誰もが終わりを感じたが、その意に反し、清掃夫は立ち上がった。右手に謎の錠剤を持っていた。「くそっ(domn it)」清掃夫は錠剤をのんだ。とたんにだらしのない背筋がピンと立ち、目に生気が宿った。

「あれはまさかヤバい薬ッ!?」

 清掃夫はにやりと笑い、突然飛び上がった。だいぶん自信を含んだ声で手すりを駆け上がり、曲芸じみたその動きにアリスは目を疑う。ナイフを後ろ手に忍者のような動きで手すりを駆け上がった清掃夫は手すりのdead end で毒々モンスターにとびかかった。毒々モンスターは前に出て清掃夫の足をつかみ、地面に叩き付けた。またしてもヤバい音がしたが、清掃夫にはもうヤバい薬を使うことができなかった。Knock down だ。

「ふう」毒々モンスターはモップを左手に掴み、息を吐く。そしてアリスのほうを向いた。「それで?白兎の姿が見えないけど、どこに行ったの?」「付いてきてたんじゃ…」「トイレ行ってたんだよね」毒々モンスターはいい笑顔だった。

 

 おじさんは日よけを降ろしてことの顛末を見守っていました。清掃夫の敗北を見届けると、これ見よがしに舌打ちをしました。「奴め…やはりあれぐらいではダメだな…」おじさんは机の上の無線機に手を伸ばしました。「各自に通達、汁を使え。人員をかき集めてあいつを迎撃するんだ」おじさんは疲れた顔で椅子に座り、部屋の隅に目を向けました。そこには白兎がさるぐつわを噛まされて転がっていました。

「まさか毒々モンスターが現れるとはね。予想外だ」白兎はふごふご言いました。「白い肌に白い服…君が白兎だね…?やれやれ、僕のyarakで有効活用しようと思っていたんだが、取りあえず君にはホステージになってもらおうかな」こいつトルコ系かと白兎は思いました。おじさんは引き出しからタウルスを取り出し、カートリッジの弾を確認しました。タウルスを腰にしまったおじさんは言いました。「アピールしやすい場所に行こうか」

 

 


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