城下町の低身長   作:かるな

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今回は長いです

岬サナさん、感想ありがとうございます!


GW&登校2

「ね、眠い…」

 

 

「珍しいな、お前が眠いだなんて」

 

 

そう、ほんとに珍しいのだ。

普段から早寝遅起きという生活を送っている俺は、睡眠不足などまずありえない。

葵姉さんにより宿題が終わるまで寝れず、何とか終わらせたときには夜中の3時だった。

俺と同じ時間に寝て俺よりも早く起きた葵姉さんはいつも通りだったので、やはり長女というものは恐ろしい。

 

 

「今日寝たら、全国にお前の寝顔が広まるぞ」

 

 

「くっそー、なんで音楽会なんてあるんだよ」

 

 

今俺たちは、毎年恒例の音楽会に参加している。

男性陣はタキシードを着ており、ドレスを着る女性陣の準備が終わるのを待っている状態だ。

 

 

「それについては同感だな。お、全員そろったみたいだぞ」

 

 

修兄が顔を向けて方を向くと、ドレスを着終わった女性人たちが歩いてきていた。

 

 

「どう? 優ちゃん、似合ってる?」

 

 

光は俺を見つけると小走りで寄ってくる。

 

こらこら、ころんだらどうするんだ。

 

 

「かわいいぞ光」

 

 

「えへへー///」

 

 

褒めながら頭を撫でてやると、気持ちよさそうな表情をする。

 

 

「むう…」

 

 

頬を膨らませた茜がこちらを睨んでくる。

こういう茜は機嫌が悪いので、何とか褒める点を探そうと茜のドレス姿を観察する。

 

 

「スラッとしてる体にドレスがよく似合ってて……ごふっ!」

 

 

「優のバカ!!」

 

 

能力によって強化された拳が俺の腹に打ち込まれる。

おかしい、ちゃんと褒めたのに…

 

 

「優ちゃんってさ、わざとやってるよね?」

 

 

光にまで冷たい目で見られる始末。

 

後で茜のフォローしとかないとな…

 

 

音楽会ではもちろん睡魔に耐えられず寝てしまい、今度は母さんに怒られましたとさ…

 

 

 

 

 

GWが終わり、またもや忙しい日々が始まった。

 

 

「う、うるさい…」

 

 

いつもより早い時間にアラームが鳴り響く。

今日は委員会の集まりがあるのだ。

 

俺はとくに委員会に入ってはいないのだが、書記の人が休みらしいので代わりにやってほしいとかなねえに言われたのだ。

 

 

「準備するか…」

 

 

部屋から出てリビングに向かう。

 

 

「おはよー」

 

 

「おはよう優。ごめんね、急に頼んじゃって」

 

 

丁度かなねえが朝食を食べていた。

 

 

「別にいいよ、どうせ暇だし。いただきます」

 

 

席について俺も朝食を食べ始める。

 

 

食べ終わったので洗面所で歯を磨き、玄関で待っているかなねえの所へ行く。

 

 

「お待たせかなねえ」

 

 

「大丈夫。じゃあ行くわよ」

 

 

靴を履いてると、ドタドタと足音が聞こえてくる。

 

 

「かなちゃん! 待ってー」

 

 

食パンを片手に走ってくる茜。

まさか加えたまま登校したりしないよね?

 

 

「玄関で大声出さないで」

 

 

「何でこんなに早く出るの? まだ時間あるよ?」

 

 

「あんたと一緒に行くのが嫌だからよ、時間かかるし」

 

 

「そ、そんな~……あれ?優も委員会?」

 

 

「そうだよ、書記の代わり」

 

 

「なら起こしてよ! いつも起こしてあげてるじゃん!!」

 

 

「悪い悪い、茜がクラス委員ってこと忘れててさ」

 

 

「同じクラスでしょ!!」

 

 

「「いってきます」」

 

 

「奏様に優様、おはようございます」

 

 

「「おはようございます」」

 

 

茜を置いて家を出ると、近くを通りかかった人に挨拶をされる。

自分たちが王家という身分なので、たとえ全く知らない人からでも挨拶をされることは多いのだ。

 

 

「今日はお早いんですね」

 

 

「臨時で生徒会の招集がありまして、わたくし副会長なものですから」

 

 

「大変ですね」

 

 

「生徒会の活動は好きでやっていますので」

 

 

でた、かなねえの外面モード。

満面の笑み、丁寧な言葉遣い、そしてさりげなく副会長アピール。

この完璧な化けの皮を瞬時にして被るかなねえに白い眼を向けざるを得ない。

 

 

「まって~!」

 

 

そして突然食パンを加えながら飛び出してくる茜。

当然こちらにも白い眼を向ける。

 

少しは周りを気にしてほしいものだ。

 

 

 

 

 

「背後霊みたいにくっついてこないで」

 

 

いつものように背後に隠れる茜。

今日は俺の後ろに隠れないからと言って寂しくはない。

これ重要。

 

 

「いい加減監視カメラぐらい慣れなさいよ」

 

 

「む、無理だよ! でも、私が王様になったら無くすもん」

 

 

「王様なる気あったんだ。でも、王様になったらもっと注目浴びるんじゃない?」

 

 

「あ、それもやだ!」

 

 

「それにしても、人見知りがよくクラス委員なんてやってられるわね」

 

 

「あ、同感。茜って真っ先に立候補してたよな」

 

 

「だって学校の皆は知り合いだもん」

 

 

「あっそ、なら世界中の人と知り合いになれば、あんたも楽になるんじゃない?」

 

 

あ、これかなねえちょっとイラッとしてるな…

あんまり刺激しない方がいいかも。

 

 

「あはは、何言ってるのかなちゃん、国民が何人いると思ってるの?」

 

 

笑いながら返す茜。

やばい、かなねえキレそう…

でも茜にしては結構面白い返しだな。

まずい、堪えきれない…

 

 

「ププっ……いでっ!」

 

 

吹き出すとかなねえに頭を殴られる。

 

理不尽だ…

 

 

 

「そもそも、何でクラス委員なんてやってるのよ」

 

 

「何でって、クラスにはまとめ役が必要でしょ? でも皆やりたがらないし、それにクラス委員なら全員に目が行き届くし、皆が困ってるならそれに応えたいでしょ?」

 

 

「そんな風に考えてたのか、すごいな」

 

 

性格は全く向いていないが、潜在的な王族の血がそういう考えにさせるのかもしれない。

性格さえどうにかなれば、かなねえを脅かす存在になるかも。

 

 

「そうだ! かなちゃんの能力でリムジンとか生成してよ。それで登校しよう!」

 

 

「あ、それありだね」

 

 

「あのね、あんた達は姉にリムジン買ってって揺すってるの。分かる?」

 

 

「かわいい弟や妹のためにリムジンを買ってやる姉。支持率向上間違いなし!」

 

 

「…………嫌よ」

 

 

「「今少し考えたよね?」」

 

 

「うるさい」

 

 

なんだか最近、かなねえが支持率のためなら何でもやってきそうな気がして怖い。

料理に毒盛られたりするのかな…

 

 

 

 

 

「みてみて、仲いい!」

 

「ほんとだ!」

 

「あら、仲がいいのねぇ」

 

 

住宅街を抜け商店街のなかを進んでいると、朝だがやはり人は多くなってくる。

そんな中、妹が姉に後ろから抱き着いて登校してる姿を見るなという方がおかしいだろう。

 

 

(かなねえ、流石に恥ずかしいんだけど)

 

 

(私もよ。全く…。優、代わってくれない?)

 

 

(代わりたいけど、クラスの奴らにバレでもしたら俺は血祭りにあげられるからなー)

 

 

(代わりたいんだ…)

 

 

かなねえにドン引きされるが…

 

妹に後ろから抱き着かれて嬉しくない兄なんているものか!

たとえ背中に当たる感触が小さくともな!!

 

 

「優、なんか失礼なこと考えてない?」

 

 

「気にするな」

 

 

これが女の勘というやつなのか。

鋭すぎる。

 

 

「茜、この手だけでも放してくれないかしら?」

 

 

「嫌だよ、話したら走って逃げる気でしょう?」

 

 

「こんな人前で全力疾走の方が恥ずかしいわよ」

 

 

確かに、朝っぱらからいきなり全力疾走してる奴なんて正直引く。

 

 

「じゃ、じゃあ…」

 

 

ダッ

 

 

「あ、まってかなちゃん!」

 

 

「は~…」

 

 

自分で言ったそばから走るのかよ…

かなねえらしい逃げ方だけどさ…

弟を置いてくか?

 

まあ時間に余裕はあるから、ゆっくり行くか。

 

 

 

 

 

のんびり歩いていると、信号が見えてきた。

何やら少し騒がしい……事故でもあったのか?

 

少し目を細めて見てみると、横断歩道の上には茜とかなねえがいた。

その側にはかなねえが作り出したと思われる大きな壁と、それに突っ込んだトラックがあった。

 

 

何やってるんだあいつら!

 

 

トラックの運転手が二人に怒鳴っており、かなねえがそれに謝罪しているのは見て分かった。

もうちょっと詳しい情報が知りたかったが、いかんせん距離が遠い。

 

うーん……あの茜とかなねえが信号無視をするとは思えないしな…

 

何か理由があるのかと考えていると

 

 

「優先輩?」

 

 

「ん? 桜ちゃんか、おはよう」

 

 

不意に横から声がかかったので顔を向けると、バイトの後輩がいた。

 

 

「おはようございます……じゃなくてですね!!」

 

 

「え? あ、うん」

 

 

「あそこにいるのって茜様と奏様ですよね?」

 

 

「そうだけど、桜ちゃんはあれについて何か知ってる?」

 

 

「はい、一部始終を見てたので。トラックに轢かれそうになった猫を茜様が助けに向かったんですけど、トラックのスピードが速くて茜様も轢かれてしまいそうだった所を奏様が助けたといった感じです」

 

 

「成程な、ありがとう桜ちゃん」

 

 

「はい…はぅ///」

 

 

お礼ついでに頭を撫でてやると、顔を赤くしてうつむいてしまった。

 

中々かわいい反応だな…

 

 

「さてと、あいつらの弁明してあげないとな」

 

 

能力を使って先程から怒鳴っている運転手に話しかける。

 

 

(突然すみません。王家の次男、櫻田優と申します)

 

(な、なんだ!? 声が! それに、王家の次男だって!?)

 

(落ち着いて聞いてください。あなたが先程から怒鳴っている彼女たちは、道路に飛び出した猫を助けようとしていたようなのです。彼女たちの優しさに免じて、見逃してくださいませんか?)

 

(い、いくら王家の頼みでも許さねぇぞ!! 危うく轢きそうになったんだからな!!)

 

(それについては申し訳ありません。ですが、あなたが運転していたそのトラック、いささか速度制限を超えていたという目撃情報もあります。あくまで目撃情報なので確証はありませんが、幸いここには監視カメラもございます。検証するには十分かと)

 

(くっ……わ、分かりました)

 

 

そう言うと、トラックの運転手はしぶしぶと引き下がった。

 

突然黙ってしまった運転手を不思議に思ったのか、周りを確認するかなねえ。

 

俺と二人の距離はお互いが見える程には近いので、目が合う。

 

 

(危なかったね、かなねえ)

 

 

(優、あんたが収めてくれたのね、ありがとう助かったわ)

 

 

(お礼は後で何かおごってくれればいいからさ。それよりも、いつまでそこにいるつもり?)

 

 

俺に言われてから思い出したのか、かなねえは急いで茜を連れて横断舗装を引き返す。

 

 

「あの、先輩。わたしは学校がありますので、これで失礼しますね」

 

 

「うん……あ、ちょっと待って。桜ちゃん、少しだけ時間貰っていい?」

 

 

「 はい、大丈夫ですけど…どうしたんですか?」

 

 

「今回のことは桜ちゃんがいなかったら収集がつかなくなってたかもしれないからさ。あの二人にもお礼を言わせないと」

 

 

「そ、そんな! いいですよ、お気になさらず!!」

 

 

「俺の気が済まないからダメ。ほら、行くよ」

 

 

「あ、ちょっと先輩!?」

 

 

桜ちゃんの返事を待たずに、手を引いて二人の元へ向かう。

 

 

「優! かなちゃんから聞いたよ、助けてくれてありがとう!!」

 

 

「礼なら俺じゃなくてこの子に……あれ?」

 

 

おかしいな、さっきまで一緒だったのに…

あたりを見回してみると………いた。

 

そろ~りそろ~りと抜き足差し足忍び足で逃げようとする後輩。

 

 

「二人ともちょっと待ってて」

 

「う、うん」

 

 

(どこに行くのかな、さくらちゃん?)

 

(ひゃっ!! せ、先輩!?)

 

ゆっくり動いていた桜ちゃんの体がビクッと反応する。

 

(戻っておいで、いいから、はやく)

 

(で、でも...)

 

(桜ちゃん?)

 

(はい……)

 

これでも俺はバイト先の先輩であるため、怒らせでもしない限り、彼女は基本的に言うことを聞いてくれる。

 

そそくさと戻ってきた桜ちゃんを俺の横に立たせる。

 

 

「優、この女は誰?」

 

茜怖っ!! めっちゃ怖いんだけど!!

しかも何? その浮気相手かどうか確認するような聞き方!

ほら、桜ちゃん怖がってるじゃん!

 

 

「この子は俺のバイトの後輩で、桜ちゃん」

 

 

「は、初めまして 加藤 桜です…」

 

 

「櫻田 奏です、よろしくお願いします加藤さん」

 

 

「櫻田 茜です! よ・ろ・し・く・ね!!」

 

 

茜…どんだけ敵視してんだよ…

 

いつも人見知りであまり喋らない茜だったが、このときだけはなぜか好戦的であった…

 




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