城下町の低身長   作:かるな

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皆さん明けましておめでとうございます

年明け初のダンデライオンです!

昨年感想・評価・お気に入りしてくださった皆様は勿論、読んでくださった皆様、大変ありがとうございました!

これからも「城下町の低身長」をよろしくお願いします!!


PS:もうすぐこの作品は一周年ですね(威圧)!


のんびり

「あったけぇ~」

 

 

「あーつーいー...」

 

 

「アンタ達何やってんのよ」

 

 

 

時刻は昼の12時過ぎ。葵姉さんの誕生日&クリスマスを終えて正月を迎えた俺達は、現在休暇を満喫中だ。

 

リビングのソファで特番を見るのもその一つ。芸能人格付けチェックみたいなものを見ながら、妹の光と談笑している。

 

余談だが、俺の膝の上には光が座り、俺が腕を回して抱いている。

 

完全に湯たんぽ代わりである。

 

他の兄妹達は何をしているかと言うと、送られてきた年賀状を仕分けし、各々がそれに対して年賀状を書いている。

 

櫻田家では、自らが年賀状を送ることは少ない。

 

何故なら全国民に書きたがる王様がいるからだ。なので基本は来たらきちんと返す。自分が送りたい場合は勿論書く。なので、正月明けは忙しいのだ。

 

忙しい兄妹立ちとは違い、年賀状を後回しにしてだらけきった俺達に呆れるような目を向けてくるかなねぇ。

 

 

 

「年賀状、ちゃんと書いときなさいよ。後でみんなの分纏めて出すんだから」

 

 

「ほーい」

 

 

「かなちゃん助けて~...あーつーいー」

 

 

 

俺の腕の中でもがく光が、かなねぇに助けを求める。

 

妹からのSOSを受け取ったものの、面倒臭いのか光には同情の眼差しが向けられただけだった。

 

 

 

「優、茜に見られても知らないからね」

 

 

「ぐっ...!だって寒いし...」

 

 

「寒いなら暖房付けなさいよ」

 

 

「付けてるけど、設定温度が23℃じゃ寒いよ!」

 

 

 

櫻田家には、何故だか知らないが夏は26℃で冬は23℃というルールが存在する。

 

もし、これ以上下げたり上げたりしようものならば、母さんと葵姉さんに......考えただけでも恐ろしい。

 

 

 

「優が寒がりなのは知ってるけど、光で暖を取らなくても...」

 

 

「夏場は俺がアイスで助けてやってるんだ。これぐらいどうってことないだろ光!お兄ちゃんは寒くて死にそうなんだ!」

 

 

「う~、なら仕方ないかも...」

 

 

「仕方ないんかい!」

 

 

 

兄が妹に甘ければ、その妹も兄には甘いらしい。

 

呆れたかなねぇは、小腹でも空いているのか先日大量に買った切り餅を探し始めた。

 

 

 

「あれ?お餅結構あったと思ったんだけど、もう無くなってる」

 

 

「「あー、昨日全部食べちゃった」」

 

 

「今すぐ買ってこい堕落兄妹!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うー寒っ...」

 

 

「流石に街中で抱きついてこないでね、優ちゃん」

 

 

「妹にここまで拒絶されるとは...」

 

 

 

あの後俺達はかなねぇに罰として夕飯の買い出しを命じられ、光と2人で近くのスーパーに向かっている。

 

だがまぁ、今週の買い物当番は俺なので問題は無い。

 

だがその道中、昼間と言ってもやはり冬。

 

肌を刺すような寒さが襲ってくるが、風が無いのが唯一の救いだろう。

 

 

 

「そんなに寒いの?」

 

 

「寒がりだしな」

 

 

「うーん...。ねえ優ちゃん、ちょっとしゃがんで」

 

 

「ん?こうか?」

 

 

 

光の言われた通りにしゃがむと、俺の顔が光よりも低い位置に来た。

 

すると光は、自分の首に巻いていたマフラーを外し、俺の首へと巻く。

 

元々俺はマフラーを巻いていたため、本来よりも高い位置。

 

つまりは口元にマフラーが来ていた。

 

 

 

「むふっ...」

 

 

「じっとしててよ優ちゃん...よしっ!できた!」

 

 

 

想像して欲しい。首にマフラーを巻いているにも関わらず、更にその上にマフラーを巻いている男の姿を。

 

しかも口元が隠れているため、サングラスとニット帽を付ければ、女子小学生を連れた不審者の出来上がりだ。

 

しかも光のマフラーから女の子特有のいい臭いが...。

 

 

 

「はっ!危なかった...」

 

 

 

急いでマフラーを下げ、遠のいていた意識を戻す。

 

 

 

「どう?あったかいでしょ!」

 

 

「あぁ。ありがとな、光」

 

 

 

しゃがんだまま光の頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細める光。

 

そんな妹の可愛い表情をしばらく堪能した後、目的地であるスーパーへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと...切り餅、長ネギ、白菜、水菜、しいたけ、豚肉、うどん、あとは...」

 

 

「卵とダシだよ優ちゃん!」

 

 

「おっとそうだった」

 

 

 

スーパーに着いた俺たちは、渡されたメモを見ながら買い物をしていた。

 

メモから察せられるように今日の夕飯は鍋。葵姉さんが食事当番になると何故か盛大な夕食になるんだよなぁ...。賑やかで楽しくなるからいいけど、盛り上がり上がりすぎてやらかしそうな者の顔が数名思い浮かぶ。

 

そう考えていると、丁度すぐ隣の筆頭候補に目についた。

 

 

 

「光、さっき入れたお菓子を戻してこい」

 

 

「うっ!バレてた...」

 

 

 

悪事がバレた光は、渋々と言った表情でカートの籠からお菓子を取り出す。

 

ざっと見た所10個程あったが...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、これで全部だな。にしても光の奴遅いな...もしかして迷子か?」

 

 

 

光がお菓子を戻しに行ってから20分が経った。トイレに寄っているとしても遅い。

 

 

 

「久しぶりに能力使うか」

 

 

 

他の兄妹達が日々能力を使う中、俺の能力(念話)はあまり使われることがない。

 

なぜなら、純粋に使い時が無いからだ。

 

携帯が普及しまくっているこの時代に、わざわざ念話で会話をしようという者はいないだろう。

 

だが今回は光が行方不明?なので、使い時である。

 

 

 

(ひか...)

 

 

 

能力を発動させ、光と念話しようとしたその時、不意に後ろから肩を叩かれる。

 

 

 

「遅かったなひか...うおぉっ!桜ちゃん!?」

 

 

「明けましておめでとうございます、先輩」

 

 

「お、おめでとう...あれ?桜ちゃん髪切ったの?」

 

 

「はい!この時期に切るのはどうかと思ったんですけど、スッキリしたいなと思いまして...」

 

 

 

年末までは髪をサイドテールにしていた桜ちゃんだが、今は肩に掛からない程の長さになっている。

 

桜ちゃんが言っている'時期'というのは、彼女が置かれている立場の事である。

 

中学3年生の彼女は丁度受験期真っ只中。しかも最後の追い込みを行う時期である。その時期に髪を切るのは縁起が悪いとされており、もしかすると少し引きずってしまっているのではないかと心配になる。

 

 

 

「でも、縁起とか気にしてる余裕無いので、逆に開き直ってます」

 

 

 

どうやら杞憂だったらしい。

 

 

 

「余裕が無いと思えてるんだったら、大丈夫かな。いやー、てっきり失恋しちゃったのかと...」

 

 

「は?」

 

 

「何でもないです...」

 

 

「優ちゃんってホントにデリカシー無いよねー」

 

 

 

俺が桜ちゃんの威圧に萎縮していると、彼女の後ろからひょっこりと光が現れた。

 

どうやら隠れていたらしい。

 

 

 

「遅かったな光」

 

 

「途中で桜ちゃんに会って話し込んじゃったの!」

 

 

「なんであれ、迷子じゃなくて良かったよ」

 

 

 

光の無事が分かり、安心した声で話しながら光の頭を撫でる。

 

光は俺が心配してた事が分かったのか、しっかり「ごめんなさい」と謝ってくる。

 

 

 

「では先輩、光ちゃん。私はこれで失礼しますね」

 

 

「あ、桜ちゃん!夜予定とかある?」

 

 

「え...?特には無いけど...」

 

 

「じゃあさ、ご飯食べに来てよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「え!?」」

 

 

 




いつもよりほんの少し長かったですね。

実はお正月らしい話にしようと思ってたんですが、全然そんなことなかったです(苦笑)


では皆様、評価・感想・お気に入りお待ちしております!

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