藍い苺の咲く頃   作:鶉野千歳

10 / 19
生き残り艦隊、到着

翌日の正午ころ、龍飛崎監視所から連絡が入った。

 

「南西より接近する艦影あり」とのことだった。

この日の日本海は低気圧の影響でいつもより波が高く、雪が吹き付ける中、続報が入る。

 

「空母らしき大型の艦影3、巡洋艦らしき艦影1、駆逐艦らしき艦影3。」

 

どうやら、佐世保から来た、生き残り艦隊らしかった。

大湊鎮守府より、第731駆逐隊が迎えに出て行った。

夕刻になって、第731駆逐隊と合流した、第2佐世保の生き残り艦隊が陸奥湾入口に達した。

荒波の日本海から凪いだ陸奥湾に入ってホッとしたのか、みな安堵の声を上げる。

 

「ようやく帰ってきたわ。酷い波だったわね。」

 

「もう大丈夫。翔鶴さん、瑞鶴さん、もう少しよ。」

 

陸奥湾に入って小一時間。

大湊鎮守府の前まで各艦が到着した。

翔鶴、瑞鶴、利根、龍鳳はそのままドックへ向かう。

駆逐艦たちはひとまず桟橋へ接岸する。

 

瑞鶴に支えられた翔鶴、よたよたと歩く龍鳳や利根たちが出てくる。

皆、1日以上傷ついたまま寒く荒れる日本海を航行してきたのだ。

息も絶え絶えで。

 

「翔鶴さん、瑞鶴さん 大丈夫? 利根さんも、龍鳳さんも、照月ちゃん、秋雲ちゃん、巻雲ちゃんも!!」明石が声を掛ける。

 

「お世話を掛けます・・・・・。」

 

「挨拶はいいから! とにかく入渠するわよ! みんな、運んでちょうだい!!」

 

翔鶴が言い終わらぬうちに運ばれていく。

皆で支え合って。

 

もう日が暮れる。

その頃になって、ドックから報告が来た。持ってきたのは明石だった。

 

「大破の翔鶴は3か月はかかりそうね。龍鳳、瑞鶴、利根は2か月あればなんとかだけど。駆逐艦たちは、機関は大丈夫だったし、上部構造物の被害はすごいけど、艦体自体の被害は比較的浅いから、現状でもある程度の修理は可能よ。」

 

「そうか。ありがとう。 んで、空母なんだが、この際、うちの空母と同じく、装甲甲板化と、低速艦の機関改修を頼むよ。多少入渠期間が掛かってもいいからさ。」

 

「そんなことしてどうするの?」

 

瑞稀を抱いた曙が質問する。

 

「彼女たちをこのまま大湊所属として迎えるのさ。」

 

「了解ですッ!」

 

明石が細く微笑んで返事をした。

(佐世保には悪いが、こちらも戦力の増強はしたいからなあ。。ついでに低速艦の高速化をしておいて、っと。)

 

その時、入渠(お風呂、だよね)し終わった7人が入ってきた。

 

「失礼します。 第2佐世保所属、航空母艦翔鶴、瑞鶴、重巡洋艦利根、駆逐艦照月、秋雲、巻雲、参りました。」

 

「ご苦労様。身体の方はなんともないかい?」

 

席を立ち、7人の前に進み出る。

 

「はい。ありがとうございます。 ですが・・・艦体の方でご迷惑をお掛けいたします。貴重なドックを使ってしまって。」

 

7人を代表して翔鶴が詫びる、が、その隣で瑞鶴がジッと立華を見つめている・・・

 

「提督さん?? やっぱり、提督さんだあ!!!」

 

叫びながら立華に抱き着いてきた。

 

「「「?!!!」」」

 

「佐世保を出てったあと、軍令部に行ったって聞いてたから、もう会えないんじゃないかって思ってたよ!!」

 

瑞鶴の頭を撫でながら立華が応える。

 

「そうか。 とにかく、無事だったか、瑞鶴? 久しぶりだな。」

 

瑞鶴の眼が曙を、瑞稀を見つける。

 

「えっ? 瑞稀ちゃん? 大きくなったねぇ。 瑞鶴お姉ちゃんだよ---、覚えてるぅ? 今は曙ちゃんが面倒をみてるんだあ。」

 

瑞稀は「??」と怪訝そうな顔をする。

 

「お前は、第2佐世保での最初の大型艦だったもんな。 翔鶴もよく無事で。」

 

「提督、お久しぶりです。 こんな形で再開するとは思ってもみませんでしたけど。」

 

「それじゃ、詳しく聞こうか・・・・。皆座って。」

 

皆に着席を促し、瑞鶴、翔鶴達の話を聞いた。

最初のコンタクトは遠征艦隊の帰投中だった。

帰投中を発見されていたらしく、追尾を受けていたこと、

振り切れず、鎮守府に接近を許したこと、鎮守府に打電し救援を求めたこと、

救援艦隊を出したものの、鎮守府近海まで侵攻を許してしまい、まともな艦隊の展開が出来ず、

期せずして総力戦になってしまったこと、鎮守府施設にまで攻撃を受けてしまったこと、

そして、味方に損害が出てしまったこと・・・・・

旗艦に乗っていた提督ごと艦が沈んでしまったこと・・・・・。

話しながら、瑞鶴、翔鶴の声が涙声になり、目には涙が溢れてきた・・・。

 

「・・・・そして、ごめんなさい・・・・皆を守れずに・・・鎮守府も守れずに・・・・ 私たちだけ生き残って・・・ごめんなさい・・・・う、うぅぅぅぅっぅ・・・・」

 

翔鶴と瑞鶴が抱き合って泣いている。

利根も龍鳳も俯いて肩を揺らしている。

 

「すみません! 私たち駆逐艦がもっと・・・もっと・・・・・」

 

もっと活躍出来ていたら、なんて言いたいのだろうが、それを立華が止める。

 

「それ以上言うな。今ここに、居るだけでも、良かった。 被害はあったが、君たちが残ったじゃないか。」

 

確かに、数的に半数が沈んだ。

第2佐世保は、壊滅した。

立華の後任となった提督も戦死した。

 

「大変な目にあったな。 ご苦労さん。 沈んだ皆に哀悼の気持ちを捧げよう・・・」

 

瑞鶴、翔鶴らを撫でながら、

 

「今は、思いっきり泣いて。気が済むまで、ね?」

 

そして

 

「大淀さん、今の話を簡単にまとめて報告書にしてくれるかい?」

 

 

しばらく、泣くに任せていたが、時刻は1900を過ぎていた。

 

「さあ、涙をふいて。 お腹がすいたろう? 夕飯にしよう。 まずは、腹ごしらえだ。 部屋割りは、食事の後でいいよね、曙?。」

 

「ええ、いいわよ。」

 

泣いてもお腹がすく。

皆、ガッツリ食べてそれぞれの部屋へと入っていった。

 

夜、立華は瑞稀を眠らせ自室応接間で一人、紅茶を飲んでいた。時間は2330。

コンコンと執務室からの扉を静かに叩く音がした。

静かに「どうぞ。開いてるよ。」と。

 

「お邪魔するわよ。」

 

と入ってきたのは曙だった。

 

「ん、どうした? 休まないと明日に響くぞ?」

 

「この時間まで起きておいて、人に言える事なの? クソ提督?」

 

「・・・・・・」

 

「様子を見に来ただけよ。夕方、佐世保の話を聞いて、落ち込んでいるんじゃないかと思ってね。」

 

「・・・・気にかけてくれたんだ。 ・・・・ありがと。

 ん・・・・確かに、落ち込んでいるよ・・・。 正直言って、自分の過去を、実績を消された、と思っちゃうのよね。あれだけやられると。 思い出も何もかも・・・・無くなっちまって・・・・。どうしていいか分からん。 でも、これだけは言える。 生きようって。」

 

立華は率直に今の心境を語る。

 

「そうよ。瑞稀もいるし、あの子の為にも生きてもらわないと困るわよ。」

 

「曙はいいのか?」

 

「あ、あたし?」

 

頬が赤く染まる。

 

「あたしも、アンタが居ないと、困るわよ。 だって・・・・」

 

「だって?」

 

更に赤くなる・・・・

 

「いいでしょ? 困るものは困るのよ! 分かった? クソ提督! じゃ、寝るわ!!」

 

と言って部屋を出ていく。

(ふふっ、相変わらずだねぇ。)

と苦笑いしつつ、ベットに入っていった。

 

日付が七草粥の頃になって、ようやく軍令部から佐世保の今後について指示が来た。

結果は・・・・

・第2佐世保は被害が大きすぎるため、当面再建しない。

・第1佐世保は第2佐世保を吸収し、新・佐世保とする。

・呉、舞鶴で入渠中の生き残り艦は、速やかに修理を完了させ、佐世保へ転属させること。

・生き残り艦のうち、大湊在泊の艦はそのまま大湊所属へ転属するものとする。

と、相成った。

大湊は、立華が強く要望したものだが、その通りとなった。

立華は、大湊の艦隊を次のように振り分けた。

結局、戦艦の建造は行わなかったのだが・・・。

○大湊鎮守府所属(便宜的に700番台を名乗っている。)

  第701戦隊:金剛、榛名

  第702戦隊:扶桑、利根

  第703戦隊:青葉、衣笠

  第704戦隊:鈴谷、熊野

  第711航空戦隊:蒼龍、飛龍

  第712航空戦隊:祥鳳、瑞鳳

  第713航空戦隊:翔鶴、瑞鶴

  第714航空戦隊:龍鳳

  第721水雷戦隊:名取、阿武隈

  第722水雷戦隊:天龍、龍田

  第731駆逐隊:朝潮、村雨、五月雨、涼風

  第732駆逐隊:漣、潮、朧、曙

  第733駆逐隊:秋月、夕立、睦月、如月

  第734駆逐隊:照月、秋雲、巻雲

そして1月が終わる頃、扶桑の機関出力アップ工事の最終試験・公試が完了していた。

これで全艦が30ノット以上を出せる艦へと変わっていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。