季節は3月に入った。
降雪は時々見られる程度になり、気温が徐々に上がり、積雪量も日々少なくなっていた。
ここ大湊は、恐山の麓にあるとはいえ、東側、北側には高い山は無いため、比較的雪の量は少ない地区だ。青森や八戸に比べると、であるが・・・・。
大湊を含む下北半島では、藍い苺・ブルーベリーの路地栽培を行っている農家さんが多い。
寒暖の差が大きいこの辺りは、栽培に適しているらしい。
今年もブルーベリーの収穫に向けての作業が始まろうとしていた。
この時期はまだまだ枝だけであるのだ。
雪の重みで折れた枝を刈ったり、肥料を与えたり・・・と。
その畑の中を1台の車が走っている。乗っているのは、立華と秘書艦の曙。
今日は、完成した新しい航空基地の式典参加のため向かっている。
「この辺りは、ブルーベリーの畑か? 結構広いな。」
「そうね。もう少しすると白い花が見られるわよ。 そうすると結構きれいよ。」
「ブルーベリー・・・・藍い苺ね・・・・ そういや、ジャムや冷凍は食べたことあるけど、摘みたてはないなあ。曙はあるのかい、摘みたてを食べた事?」
「ん? あるわよ。手隙の時にみんなで、摘み取りに来たことあるわよ。熟れると甘酸っぱくておいしいわよ。 そういえば、基地内にも木があるわね。種が飛んできたのか、誰かが植えたのかは知らないけど。」
「そうだっけ?」
「半年近く居るのに、気が付かなかったの、クソ提督?」
(う、容赦ないな、相変わらず。)
「ちゃんと見ておきなさい。いいわね?」
そうしているうちに航空基地に到着した。
まだ配属の航空隊は到着していない様だったが、整備中隊が着任しているようだった。
基地司令と整備中隊長から挨拶を受けた。
「この大湊第2飛行場の基地司令、中島大佐です。これより、立華少将のご支持を仰ぐこととなりますので以後、よろしくお願いいたします。」
「同じく、整備中隊の石川中佐です。よろしくお願いいたします。」
「大湊鎮守府の立華です。以後、よろしく。」
基地司令は大佐、中隊長は中佐であった。
この日までに立華には軍令部から通知が来ていた。
それは、大湊鎮守府の航空隊を立華の配下に置く、というものと、立華を少将に任ずるというものだった。
別に立華は昇進には興味は無かったが、航空隊が自分の配下になることは、海空一体運用が出来る事となるので、有りがたく受ける事としたのだった。
「建設中から見てはいるが、改めてみると、2500mは長いなぁ。」
「ジェット推進機の離発着が可能な設備ですからね。」
「おまけに、管制塔も高い。遠くまで見通せる。ここは気象レーダーや着陸誘導装置も完備だっけか。」
「そうですね。気象レーダーだけではなく、遠距離レーダーもありますし、その他いろいろな最新設備を揃えています。もちろん、空母航空隊の訓練も常時可能ですし。」
「それは、結構なことだ。」
そんなとき、
”南方より接近する所属不明機探知! 数は15から20! 各員警戒されたし!”
と警報が鳴った。
暫くして・・・・
”接近中の所属不明機は友軍。繰り返す、接近中の所属不明機は友軍。”
とアナウンスが流れた。
「うん、よく探知できたな。」と感心する。
一通り見回ったころ、エンジン音が遠くから聞こえてきた。
「あれか、さっきの所属不明機?」
「配属予定の空母航空隊の第1陣が来たようです。空母翔鶴の艦戦隊ですね。以後、1週間程度を掛けて全機が着任する手はずになっています。」
「あれは、烈風か?」
南の空から、1機また1機と雲の間から降りてくる。
第1陣は16機のようだった。
16機は編隊のまま飛行場を大きく一回りしてから、1番機から着陸態勢に入った。
「おお! 本州最北端の基地にしちゃあ、立派な飛行場じゃあねぇか!!」
「滑走路も長いですねぇ、隊長!!」
とか、言ってたりする。
「翔鶴、瑞鶴、龍鳳の改修工事が完成すれば、早速、航空隊の発着艦訓練だな。 それまではこの基地で訓練か。 全機の着任までは待っていられないから、後は基地司令に任せるよ。 では、曙、戻るか。」
「ええ。」
車に乗って航空基地を後にする。
着陸した烈風は滑走路から誘導路へ入り、整備場へと入っていった。