藍い苺の咲く頃   作:鶉野千歳

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未完成艦

パーティーから1か月が過ぎた頃。

大湊鎮守府はすっかり冬の装いだ。

既に何度か雪が降り、白い街と化している。積雪は1から2cmと言ったところか。

遠く南に八甲田の山々が、白くなっているのが見える。

 

基地は日次で哨戒任務、資源獲得のための出撃とこなしていた。

今までの艦隊編成を次のように改編した。

○大湊鎮守府所属(便宜的に700番台を名乗っている。)

  第701戦隊:金剛、榛名

  第702戦隊:扶桑

  第703戦隊:青葉、衣笠

  第704戦隊:鈴谷、熊野

  第711航空戦隊:蒼龍、飛龍

  第712航空戦隊:祥鳳、瑞鳳

  第721水雷戦隊:名取、阿武隈

  第722水雷戦隊:天龍、龍田

  第731駆逐隊:朝潮、村雨、五月雨、涼風

  第732駆逐隊:漣、潮、朧、曙

  第733駆逐隊:秋月、夕立、睦月、如月

出撃に際しては、1艦隊6隻に調整して行っている。

今は、

  第1艦隊に第701戦隊、第704戦隊、第712航空戦隊

  第2艦隊に第703戦隊、第711航空戦隊、第731駆逐隊(朝潮、村雨)

  第3艦隊に第721水雷戦隊、第732駆逐隊

  第4艦隊に第722水雷戦隊、第733駆逐隊

  警備隊に第731駆逐隊(五月雨、涼風)、大淀、扶桑、明石

との割り当てである。

 

数日後。

出撃していた艦隊が帰ってきた。

 

「提督、本日午前の日本海側への哨戒任務、無事帰投いたしました。全艦異常ありません。」

 

と報告してきたのは、

第3艦隊旗艦名取だった。

 

「こちらが報告書です。ご確認をお願いします。」と。

 

続いて太平洋側への哨戒任務に就いていた第4艦隊旗艦龍田が入室し報告してきた。

こちらも「敵イ級2隻と会敵。これを撃破いたしました。こちらが報告書です。」と。

 

「両艦隊ともご苦労様。 無事で何よりだよ。 補給、入渠は、大丈夫かな?」

 

「はい、両艦隊ともすでに補給作業に入っております。 入渠もできております。まもなく完了するかと。」

 

と報告するのは大淀である。

 

「よし。 大丈夫だね。」

 

しかし、立華の顔はすぐれなかった。

 

「どうかしたの、クソ提督?」

 

「どう思う、曙?  ここ数日、下っ端のイ級程度だぞ? なんか変じゃねぇか、と思うわけだが?」

 

「変と言われれば、確かに、少ないわね。」

 

「大淀さんは、どう思う?」

 

「・・・・・はい、確かにそうですね。 そんな感じがします。」

 

「やはり、敵の攻勢が予想される、か?」

(低速艦の改造をしておいて正解だったかな・・・・。それと、もう1隻戦闘艦が欲しいな。)

 

立華の発案で、低速艦の扶桑に対して、機関出力増大の改造工事を行っている。

機関の更新をすると数か月かかるため、機関の改造を行っているのだ。これなら1か月程度で終わると見積もられたからだが。

(僅かでも出力が上がればいいんだが、せめてあと5ノットは欲しいところだがな・・・・。

 あとは、アレもやってみるか・・・・。)

 

「曙、大淀さん、夕食後、皆に話があるから、残しておいてくれるかな?」

 

「はい、了解しました。」

 

「よろしくね。」

 

夕食後、立華が皆の前で話を始める。

 

「皆、毎日お疲れ様。急な話だが、俺の予想になるが話しておきたいことがあるので、残ってもらった。みんなも気づいているかもしれないが、最近、敵の出現が少ないようだ。佐世保の時の出現実績からしても明らかに少ない。奴らが何を企んでいるか・・・・はっきりとは言えないが、奴らの攻勢があるかもしれない、と考えている。」

 

「じゃあ、提督はどうするのさ?」

 

「艦隊編成を変えてみようかと思っている。更に、駆逐艦で改修可能な子の対空改修工事をやっておきたいとも思っている。今工廠と検討中だよ。」

 

「それだけ?」

 

「いや、更に、敵の攻勢に備えて、警戒レベルを1段階上げておこうと思っている。基地哨戒機を含めて、太平洋側、日本海側に24時間の監視体制を敷きたいと思う。 過度の負担を掛けるが、攻められる側としては、やれることはやっておきたいからね。それと、建造用ドックが空いているから、今度、横須賀の方から未完成の艦を1隻廻してもらおうと思ってるんだ。それも大型艦の。」

 

『未完成艦??』

 

シンクロした一言が響く。

 

「未完成艦って何よ? 艦娘用じゃなくて?」とは霞。

 

「うん。 元々は軍用艦に転用可能な商船として設計されているらしいんだが、建造途中で放棄されていたヤツなんだ。商船改造空母の飛鷹なんかの様なヤツだと思ってもらうといいかもしれないな。と言っても。全長は200mを超えるデカさなんだけどね。艦体の工事はほぼ終了しているらしい。魚雷や砲撃の標的艦として使う予定だったらしいんだが。」

 

「こっちで空母に改造するの?」とは鈴谷。

 

「俺の計画は、航空巡洋艦なんだけどね。」

 

『航空巡洋艦?』

 

「それって、最上みたいな?」と熊野が聞く。

 

「う~んと、ちょっと違うかな。最上は巡洋艦に後部飛行甲板を取り付けた感じだよね? そうじゃなくて、空母甲板を巡洋艦を合わせた感じ、かな。」

 

ふ~~ん、と納得したか、してないか、分からない雰囲気になった。

 

「Meたちは、提督の意見に異議を挟むつもりはないネ。完成したら真っ先に見せてよネ、提督?」と金剛が言った。

 

「ああ。 今日は以上だ。」

 

 

立華は、以前からやってみたい事があった。

艦娘用ではない、艦を、それも今までに建造した事の無い艦を作ってみたいと思っていた。

建造後に、新たに現れた艦娘と同調できれば、それも良し、だし、同調できる艦娘がいなければ、特務艦として輸送に使えると思っていた。

立華の描いた設計図は、航空巡洋艦。

艦の前部甲板に20.3cmの連装砲塔2基、その後ろに対空機銃か両用砲を。

飛行甲板を斜めに配し、対潜対水上の哨戒機、護衛戦闘機ら30機程度を搭載する、艦隊随伴の、艦隊防空任務を行わせる航空巡洋艦だ。

軽空母でもよかったのだが、やはり、空母と戦闘艦との差は、その防御力と攻撃力だろう。

巡洋艦としての装甲を施すことで重量は増えるものの、防御力は格段に上がるハズである。

空母にも、砲を積むことはあるが、主に防御用だ。敵を攻撃する能力、

その点を大きく期待しているのであった。

数日後、2隻の駆逐艦に曳かれて”未完成艦”が大湊に来た。

確かに、艦体は出来上がっているが、上部構造物はもちろん、機関も積まれていない。

ドック作業員の声が響く。

<ドック内へ入渠完了!>

<ドック閉鎖>

<ドック閉鎖確認!>

<艦体固定用意!>

<ドック内、排水開始!>

ドック内の水が排出されていく。

徐々に水位が徐々に下がっていく。

<ドック内固定用意!>

<固定位置確認! そのまま排水どうぞ!>

版木に艦体が乗っかっていく・・・・・。

<固定確認!>

<艦体のバラスト排水!>

<ドック内完全排水完了!>

未完成艦の固定が完了した。

これから数か月を掛けて建造作業が続くことになる。

2隻の駆逐艦は、”未完成艦”を引き渡すとすぐさま横須賀へ帰って行った。

 

 

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本州最北端に位置する大湊鎮守府。

基地がある陸奥湾を出ればそこは津軽海峡だ。目の前は北海道。西に向かえば龍飛岬を経て日本海に至る。東に向かえばもうそこは太平洋である。

深海棲艦が、津軽海峡を通って、西や東に行くことは確認されていない。されてはいないが、太平洋側からの侵攻あるいは日本海側からの侵攻も考えられるため、

ここ大湊の基地は重要度は高い。

更には、北部太平洋の拠点たる幌延や単冠湾の後方支援基地としての位置付けも併せ持つ。その意味でもこの基地の充実化を図りたいと立華は考えていた。

(艦隊による哨戒や小規模相手なら何とかなるだろうが、大規模となると、艦船もそうだが、基地航空隊も増強しないと・・・・。)

大湊にいちばん近い基地航空隊は、三沢の航空隊だ。

もちろん、大湊にも飛行場はある。

あるにはあるが、大きくは無いし、しかも在泊の空母艦載機だけで飛行場は手狭なのだ。

三沢の基地では訓練も併せて行われているが、今では専ら太平洋側方面の哨戒が中心となっている。

 

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