藍い苺の咲く頃   作:鶉野千歳

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お風呂で

ある日、午後の仕事を片付けた立華は、大淀に後を任せ、秘書艦の曙とともに瑞稀をキッズコーナーに連れてきた。

瑞稀が這いまわる程度だから、2人は寄り添って瑞稀を見つめている。

曙を「ボーノマーマ」と呼び、立華を「トト」と呼ぶようになった瑞稀を見ている。

 

「すまないな、曙。 母親代わりをさせてしまって。」

 

「別に、瑞稀に言われるなら、気にしないし。」

 

「正直言って、曙や大淀がいなかったら、倒れてかもよ、俺。」

 

「何弱気な事言ってんのよ!」

 

「・・・・・・・」

 

しばらくの沈黙のあと、曙が口を開いた。

 

「クソ提督? あんた、どうすんのよ?」

 

キリッとした眼が立華を見つめる。

 

「ん? なにを??」

 

「この子、瑞稀の事よ。 ずっとここで、このままでやっていくの?」

 

「・・・・まだ何にも考えていないよ。とりあえず、今を生きるのが精一杯。」

 

と答えて曙を見つめ返す。

視線が合って、曙がプイと横を向く。頬は少々赤み掛かっている。

 

「そう。 でも、いい加減、考えておきなさいな。」

 

「そうだな・・・・。」

(とは、言うものの・・・・ 提督であるうちは、この状況は変わらんだろうし、提督を止めたら時間は出来るがメシが食えなくなるからな・・・)

 

そんなうちに時間は1800を過ぎた。

 

「じゃ、夕飯にするか。」

 

「そうね。」

 

立ち上がろうとしたその時、コンコンと扉をノックする音が。大淀だった。

 

「どうぞ。」

 

「提督、そろそろお夕飯のお時間ですよ。」

 

「なら、3人で行くか。」

 

と腰を上げて食堂へ向かう。瑞稀は立華が抱いている。

 

曙がミルクの哺乳瓶を持って執務室を出て行った。

ミルクをあげつつ、夕飯を済ませ、さあ、風呂だぁ---、と立華が言う。

 

普段、提督用浴場に立華が先に風呂に入り、途中から曙か大淀が瑞稀を抱いて風呂に入ってきて立華に渡すのである。

今日もそのつもりであった。

立華が先に入り、身体を洗って湯船に浸かった。

その頃を見計らって、曙が声を掛ける。

 

「クソ提督? もういいかしら?」

 

「ああ、いいよ。」

 

脱衣所の扉が開かれ、曙が瑞稀を抱いて入ってきた。

今は着物を着て、襷掛けをして、エプロンをしている。

その恰好でも十分に可愛らしい。

瑞稀の身体を洗って、立華に渡す。

瑞稀がキャッキャ言いながら動いたので、2人の手からすべり落ちてしまった。

ドボン! と湯船に。

 

「あわわっ!!」「きゃっ!!!」と声を挙げても遅かった。

 

跳ねたお湯が曙に容赦なく掛かった・・・・。

頭からお湯を浴びてしまったのだ。

瑞稀は立華がすぐに救い上げたので、大事には至らなかったが・・・・。

その場で固まっている女の子が一人・・・・・。

立華と瑞稀は、裸なので、濡れようが構わないが、曙は、顔が引きつっている・・・・。

 

「あ、曙?」

 

「あああ! もう! なによ!! ったく!!」

 

(!!!)

 

「そうだ!! 曙、ついでだ。 お前も一緒に入ろう。」

 

顔が一気に赤くなった。しかも耳まで。

 

「はぁ?! なんで一緒に・・・ あたしの裸を見たいんでしょう?! このクソ提督!!!」

 

「ああ。見たい。見てみたいなぁ。  曙も俺の裸見てるから、お相子だろ?」

 

立華も言って顔を赤める。

 

「はぁ?!」

 

お互いを見つめたまま、双方固まっている。

 

「じ、じゃ、今回だけね。 頭から濡れちゃってるし。」

(冗談だったんだけど、マジに受け取られた・・・・・)

 

そそくさと脱衣所へ出て、シュッ・・・っと着物を脱ぎ始めた。

しばらくして、タオルで身体を隠すようにして曙が入ってきた。

顔を赤くして。

長い髪は頭の上でお団子にしている。そして一言。

 

「こっち見んな! クソ提督!」

 

と言いながら掛け湯をして湯船に入った。・・・・立華の傍に。

また2人の視線が合う。

 

「曙の肌は、綺麗だな。 白くてすべすべしてそうだ。」

 

「そ、そりゃ、そうよ。 乙女の身だしなみよ、これくらい。」

 

頬が、いや、顔が耳まで赤いとは、このことだろう。真っ赤である。

「ボーノ、ボーノ」と言いながら瑞稀が曙に行こうとする。

 

「ほい、曙。」

 

と瑞稀を曙に預ける。

受け取る曙。

嬉しそうな瑞稀を見る2人。

傍から見れば、親子の様に見えるかもしれない。

 

そこへ、バタバタと走ってくる足音がする。

ガラっと脱衣所の扉が開いた。大淀だった。

 

「提督!! 何があったんですか?!! 

   「わあああああ!!!」

   「きゃああああ!!!」

 叫び声が聞こえ・ま・し・・・た・・・・が????」

 

湯船の2人が抱き合って、驚いて、声を挙げる・・・・

 

「失礼しましたあ!!!! ご、ごゆっくりぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

その陰から・・・パシャ!!

 

「青葉、戴いちゃいました!! スクープです!!!」

 

「「あ、青葉----!!!!」」

 

二人の声がハモる。

ガラッピシャ!と扉が閉まった。

そして・・・廊下の方から声がする。

 

「スクープです!! 提督と曙があああああああ!!!!!!」

 

浴場に残された3人は・・・・溜息をつきながら湯船に再び浸かった。

 

「はあ、なんなんだ??」

 

「何よ、一体・・・・」

 

目を合わせて苦笑いをするだけだった。

 

「さて、そろそろ上がるよ。俺が先に出て瑞稀を貰うよ。」

 

と湯船を出ようとしたとき、

 

「ねぇ・・・」

 

「ん?」

 

顔を赤くした曙が言う・・・。

 

「・・・キス、して。」

 

「・・・・・・・・ ごめん、それにはまだ、応えられない。まだ、アイツが心にいるから・・・・。」

 

「・・・・・・そうなの・・・・・・」

 

「だから・・・・」曙の額に口付けをする。

 

「・・・・・・・しょうがないわね。」

 

「ありがと。」

 

「そう思うなら、さっさと行きなさいよ! のぼせちゃうわ?!」

 

「ああ。」

 

立華が先に出る。着替えて瑞稀を受け取り、先に浴場を出ていく。

一人ゆっくり湯船に浸かった曙は、後を追うように浴場を出て行った。

 

ただ・・・・出たとたん待ち伏せを喰らった。提督との関係について、質問攻めにされた。

(後で、青葉をとっちめてやるんだから!)

そう思う曙だった・・・・。

 

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