艦隊これくしょん w/ BIOSHOCK INFINITE   作:焼き鳥タレ派

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Stage:2 Similar Existences

「なんべん言わせりゃ気が済むんだ!いい加減ショック・ジョッキーぶっ放すぞ!」

 

「ブッカー落ち着いて!大切なことだから確認が大事なの!」

 

エリザベスになだめられて椅子に戻ったが、正直俺はイラついていた。

化け物との戦闘から戻るなり、この執務室に連れてこられて、

白い軍服を着たコマンダーらしき人物から何度も同じ質問を繰り返されていたからだ。

やれその手の力は何だ、だの、コロンビアは実在するのか、だの、

どうやってその天空都市に行ったのか、だの。

もしエリザベスにしょうもない“確認”とやらをぶつけていたら

スカイフックで奴の顔を細切れにしていただろう。

 

「借金返済のために変なロケットに乗せられて!コロンビアに行って!

ビガー飲んで超能力身につけて過激派、狂信者、殺人ロボと戦った!これで満足か!?」

 

「すまない。ただあまりにも我々の理解を超えた話だから、

なかなか飲み込むのが難しくてね。何度も当事者たる君の話を聞いてみないと、

正直信じることができなかったんだ。彼女達の不安も解消しなければならないしね」

 

後ろを振り向くと、開け放たれたドアから艦娘とか呼ばれている少女たちが

大勢ひしめき合い、不安げに俺の左手を見つめていた。

苛立ちの余り、つい青白い電流を握り込んでいた。

 

「俺に言わせりゃお前らのほうが妙ちきりんだ!人造人間に大砲持たせて

変な化け物と戦って当たり前のように生活してるお前らのほうがな!」

 

「……ブッカー、彼女達を人造人間と呼ぶのはやめて。

生まれ方が違っただけで、みんな人と同じ。何も変わらないの」

 

「エリザベス……お前ともちゃんと話をしたかった。

そもそもどうしてお前がここにいる?俺達は、“終わった”はずだ……」

 

「あなたと大体同じよ。気がついたら海岸の砂浜に立ってた。

そこを通りかかった艦娘の女の子に声を掛けられたの。

私に行くあてがないことを知ったら、快く鎮守府に迎えてくれた。

そういう優しさを持っているのよ、みんなも」

 

「……どこまで話したんだ、俺達のことを」

 

「私の力とカムストックと戦った経緯を大まかに。

あなたが“彼”だったことは……まだ」

 

「横から失礼。カムストックなる人物の名は彼女から聞いたが、

あまり詳しい人物像はまだ知らない。良ければ彼のことについて

詳しく教えてもらえないだろうか」

 

「うるせえぞ!」

 

「ブッカー!!すみません、提督。

彼、まだ知らない土地で目が覚めたばかりで気が立ってるんです。

ねぇ、ブッカー。お願いだからちゃんと答えて」

 

俺は頭をボリボリと掻いて鬱陶しさを隠さずに答える。

 

「……カムストックってのは、コロンビアの指導者だ。科学者に発明させたマシンで、

異次元から盗んだ超技術を見せびらかして預言者を名乗り、

頭のおかしい狂信者をけしかけて俺達を殺しに来たクソ野郎だよ!」

 

「なるほど……それなら空に浮かぶ都市も、君の超能力も納得が行くな」

 

「納得が行ったならさっさとこのタコ部屋から出せ!」

 

「わかった。疲れているのにすまなかったね。今日はもう休んでくれ。

ちょうどエリザベス君の隣の部屋が空いている。同郷の者同士、

積もる話もあるだろうから、語り合うのもいい。眠るにはまだ早い時間だしね」

 

「ああ、そりゃどうも!」

 

俺とエリザベスは狭苦しい部屋から出ると、詰めかけた艦娘をかき分けて

自分の部屋へ向かおうとした。

 

「みんな、通して!彼を部屋に案内したいの!」

 

「おい、邪魔だ。どいてくれ」

 

 

“何なのあれ、魔法なの?”

“先輩達の報告だと、カラスを召喚できるんですって、彼!”

“深海棲艦に催眠術も掛けられるらしいわよ、信じられない!”

 

 

戸惑いと驚きの目で俺を見つめる少女達の群れからやっと抜け出ると、

一人の少女が近づいてきた。ふさふさとした茶色のロングヘアに

水兵のような服を着た艦娘。ああ、俺が砲弾の盾になったあの娘だ。

彼女は、戦場でのスピーディーな動きとは対称的に、

よちよちとした歩調で俺に近づいてきた。

 

「ああ、君は……」

 

「球磨だクマ。さっきは助けてくれてありがとうだクマ。おじさんすごいクマ。

人間なのに深海棲艦の攻撃を受け止めるなんて」

 

「こいつのおかげだ」

 

俺はパンパン、と胸を叩いた。ウィンターシールド。

コロンビアで拾った、歪に進化した文明の一つ。この“ギア”と総称される防具を

身体の各所に装着すると、例えばこのウィンターシールドなら、

スカイラインから飛び降りるだけで数秒間あらゆる攻撃を受け付けなくなる。

 

「すごいクマ~球磨も“ころんびあ”に行ってみたいクマ。空飛ぶ街なんて素敵クマ!」

 

「思ってるほどいいところなんかじゃねえぞ。一見華やかだが、薄皮一枚剥がすと、

人種差別に、金持ちと労働者階級の格差が横行してる見せかけの楽園だ。

白人じゃない君が行っても楽しくない目に会うのがオチだ」

 

「……そっか、残念だクマ」

 

「じゃあな。お互い生きてて何よりだ」

 

球磨と別れた俺達は部屋に向かいながら階段を上る。

 

「なあ、さっきの球磨って娘だが、テディベアが好きなのか?

やたら熊にこだわってたが」

 

「ああ……それは、よくわからない。とにかく球磨さんは、ああいう人なの」

 

「艦娘ってのは変わったのが多いんだな」

 

そして3階に上がると、ホテルのように赤いカーペットが敷かれた廊下に面して、

いくつも部屋が並んでいた。おそらく来客用のフロアなのだろう。

エリザベスがその一つの鍵を開けてくれた。

 

「ここよ、あなたの部屋。当分はここでお世話になるわ。忘れないで」

 

そう言って彼女は俺に鍵を渡した。……部屋の時計を覗く。まだ寝るには早い。

 

「なぁ、エリザベス。ちょっと話さないか」

 

「……ええ、いいわよ」

 

俺達は場所を空が見えるテラスに移して、手すりに身を預けた。

……話をしようと持ちかけたものの、何から話していいのかわからない。

そう言えば蘇ってから二人きりになるのは始めてだ。

とりあえず俺はここでどういう関係でいるべきか決めることにした。

 

「エリザベス……いや、本当の名前か、俺はどっちで君を呼ぶべきなんだ」

 

「そうね……ここではエリザベスとブッカーでいましょう。

わからないことだらけだし、私も心の整理が着いていないの」

 

「そうか、そうだな。そもそも俺に……」

 

アンナと呼ぶ資格などない。借金のカタに赤ん坊のエリザベスを売り渡したのは俺だ。

 

「どうしたの?」

 

「ああ、なんでもない。今更だが変なところだここは。

日本版コロンビアつってもいいくらい変だ!ひょっとしたら

世界中でパラダイムシフトが起こってるのかもな」

 

「フフ、そうだと愉快ね、深海棲艦さえいなければ。

……私からも聞かなきゃいけないことがあるの」

 

「なんだ。正直答えられることは少ないと思うが」

 

「率直に聞くわ。私の事……恨んでる?」

 

洗礼の川の事か。あの時、俺は最後の灯台の扉を開き、妙な神父の手を振り払い、

カムストックを殺した。そして自分の正体を知り、

数多の平行世界のエリザベス達に出会い、彼女らの手で川に沈んだのだ。

 

「退役したとは言え、元軍人が女の子3人を押しのけられないと思うか?

あれは俺の意思だ。全てを終わらせる、そうすべきだと俺自信が思ったから、

運命に身を任せた。それだけだ。自分を責めるんじゃない」

 

「だけど……」

 

「それに、そうすることでお前の存在も消えることはわかっていたんだろう。

お互い悲劇を終わらせるために、自らをなかったことにした。

誰にもその決意を否定はさせねえ」

 

「ブッカー、ありがとう……」

 

俺達はしばし互いに見つめ合った。やはり言葉が見つからない。

俺達の物語にこんな続きがあるなんて思っても見なかったから。

 

 

シャッ……カシャッ、シャッ……カシャッ

 

 

なんだこの音は。俺達は音のする方を探してみる。すると……あいつらは!

赤レンガの工廠の屋上で、何やらキャッチボールしている二人組。

何度も見た、奴らは借金の取り立て人で、

別次元から借金のカタにアンナを連れて行った双子の科学者!

 

 

 

「日本のキャッチボールは難しいね。コントロールが利きにくい」

「これはキャッチボールじゃないの。“オテダマ”っていう日本の伝統文化よ」

「じゃらじゃらするけど何が入っているんだろう」

「なんでも豆が入っているらしいわ」

「豆?どうしてわざわざ豆を?遠くに投げたいなら安定性の高い物体を入れるべきだ」

「あなたが間違ってるのよ、遠くに投げるものでもないし、

そもそも2人でやるものじゃない」

「2人じゃ足りないのか。それじゃあ、3人?」

「半分正解。だけどやっぱり誰かに投げるものじゃないわ。1人で投げるの」

「3人で遊ぶのに投げるのは1人?矛盾してる」

「矛盾してるけど矛盾してないの。そろそろ帰りましょう」

「そうしよう。この矛盾に対する解を模索しなくては」

 

 

 

二人は歩いて屋根の向こう側に消えていく。俺は思わず手すりから身を乗り出していた。

 

「待て!なんでお前らがここにいる!この変な状況はお前らの仕業か!?

答えろ、おい、おい!!くそっ!」

 

結局二人はこちらを無視したのか聞こえていなかったのか、戻ってくることはなかった。

いつもこうだ!わけの分からんことを言って勝手に消えていく!

 

「ブッカー、冷静になって。今の二人の言葉、よく思い出してみて」

 

「奴らが仲良くキャッチボールしてた話か?意味なんかねえよ、

行き過ぎたインテリなんざキチガイと変わらねえ!」

 

「人数のこと。彼らは3人で遊ぶのに投げるのは1人って言ってた

……ねぇ、これって私達のことなんじゃない?」

 

「俺達だと?」

 

「そう。まだ確証はないし断言もできないけど、

投げる1人はブッカー、あなただと思うの」

 

「俺が、この妙な状況に対して何かするってことなのか?

でもやつらは3人って言ってたぞ。俺とエリザベス。後の一人は誰だ?」

 

「おそらく……カムストック」

 

「!! 奴が、奴も、この世界に来てるってのか!?

いや、ありえねえ、カムストックは……俺なんだからな!!」

 

「私もそんなことありえないってことくらいわかってる!

でも、なんだかさっきの兄妹の話を聞いてから胸騒ぎがするの……」

 

「忘れろ、なんで俺達が蘇ったか、日本に変な技術があることも、

全部忘れて今度こそお前だけの人生を歩むんだ!そうだ、パリを目指そう!

ニューヨークの事務所なんか知った事か!

二人でフランスに行って新しい生を楽しむんだ!」

 

「ブッカー……」

 

俺は彼女の返事を待つ。

しかし、カンカンカンと駆け足で階段を上る足音でそれは中断された。

艦娘の一人が俺達に走ってくる。

 

「エリザベスさん、ブッカーさん、急いで作戦司令室まで来てください!」

 

「何があったんですか!?」

 

「とにかく来てください、何者かが通信回線に侵入して、あなた達を呼んでるんです!」

 

「ブッカー、もしかしたら……」

 

「心配いらない、どっかの馬鹿のいたずらだ。……待たせた、案内してくれ」

 

嫌な予感を振り払い、俺達は別棟の作戦司令室へ駆け込んだ。

そこには提督と秘書らしき女性2人がいて、黒のロングヘアの通信士と思われる女性が

コンソールに着いていた。提督が話しかけてくる。

 

「ああ、来てくれたか。正体不明の人物が、君達との接触を求めている。

済まないが、とにかく話をしてくれないか」

 

「わかった……」

 

「くそっ!我が軍の暗号通信が破られるなど、考えられないのに!」

 

秘書のうち、黒髪の女性が口惜しそうに親指を噛む。

 

「どうぞこちらへ!」

 

通信士が着けていたヘッドホンを貸してくれた。

俺は鼓動が早まるのを感じながら席に着いた。するとモニターに一瞬ノイズが走り、

男の顔が浮かび上がった。せわしなく拍動していた鼓動が止まるかと思った。

長いあごひげを蓄えた老人。見覚えのありすぎる顔。

俺が消えることで本当の決着をつけたはずの存在。

奴が、奴の顔がオレンジ色のモニターに浮かんでいる。

奴は笑うでもなく怒るでもなく、ただこちらを見つめている。俺は思わず叫ぶ。

 

「カムストック!!」

 

“久しぶりだな、偽りの羊飼い。お互いこうして蘇ったのは私としても驚きの一言だ”

 

「黙れ、出てこいどこにいる!今度こそ完全に殺してやる!」

 

“慌てるな、じきに再び相まみえよう。ところでエリザベスはどこにいる。

彼女とも一目会いたいのだが”

 

「誰が会わせるかクソ野郎!あいにく日本にコロンビアはねえぞ、

どこぞの野っ原で野垂れ死ね!」

 

“……まあいい。いずれ直接会うことになる。お前達は私を止めようとするだろう。

その時こそ彼女は私のものになる”

 

「何がしたいのかは知らんが、今度会ったらデビルズ・キスで焼き殺してやるよ!」

 

“その時を楽しみにしているよ、ではいずれ”

 

「おい待て!てめえには聞きたいことが……おい、おい!くそっ!」

 

カムストックが一方的に通信を切った。俺は通信士にヘッドホンを返し、

彼女の邪魔にならないよう別の椅子に座り込んだ。そんな俺に提督が話しかけてきた。

 

「今のが、カムストックなる人物なのか……?」

 

「ああ、奴がカムストックだ、奴も蘇ったんだ。

俺が、俺がこの手で殺したはずなのに!!」

 

指令室内の空気が一瞬冷たくなる。だが、そんな空気も通信士の叫びで吹き飛んだ。

 

「確かなんですか!?誤報の可能性は?再度確認を!

……はい、はい、間違いないんですね。了解、通信終了。……提督、大変です!」

 

「どうしたのかね、大淀君!」

 

椅子にだらんと座っていた俺は、そのやり取りをぼんやり聞いていたが、

通信士の次の言葉に耳を疑った。

 

「伊豆大島が……伊豆大島が浮上しました!!」

 

 

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