艦隊これくしょん w/ BIOSHOCK INFINITE   作:焼き鳥タレ派

5 / 7
Stage:5 Bon Voyage

「遠征に行ってはもらえないだろうか?」

 

「ああ?」

 

執務室に呼び出されたと思ったら、提督に唐突な話を切り出された。

 

「遠征ってどういうことだ。わかりやすく説明してくれ」

 

「うむ。我々は深海棲艦と戦うだけでなく、必要な資源を各所から融通してもらったり、

産出地から回収するために定期的に艦隊を派遣しているんだ」

 

「艦隊って、やっぱり艦娘達か」

 

「もちろん。通常の艦船では航路に棲みつく深海棲艦に歯が立たないからな」

 

「運び屋か……俺は構わねえが、エリザベス次第だな」

 

「あら、私は構わないわよ。お世話になっているんだからこれくらい」

 

「そんなことを気にしなくてもいいんだが……やってくれるなら助かるよ」

 

「なら決まりだ。それで、どこ行きゃいいんだ?」

 

提督がデスクの海図を指差す。和歌山南端辺りに砦のマークがある。

 

「この海軍基地から資材を受け取ってきてもらいたい。

まだカムストック派の妨害も考えられないから安全に航行できるだろう。

もちろん資材は艦娘が運ぶ。とても人では持ちきれない量だからね。

詳しい位置は彼女達についていけばわかる。まぁ、今回の遠征は

君達に海に慣れてもらうことと、念のための護衛と考えてもらいたい。

君は運び屋と言ったが、そんな危ない代物じゃないさ、あはは」

 

「それじゃあ、とっとと行ってくるか。他のメンバーは?」

 

「既に出撃ドッグから飛び出し、母港で君達を待っている」

 

「行きましょう、ブッカー。みんなを待たせちゃ悪いわ」

 

「では諸君、健闘を祈る!」

 

「わかってる。お家に帰るまでが遠足だからな」

 

提督が大げさに敬礼してきたので、ふざけて返してみた。

 

「ブッカー、真面目にやって!これも立派な任務なのよ!」

 

やっぱり怒られた。わかっているのにやってしまうことを

“魔が差す”と言うんだろうな……

 

「ああ悪かった悪かった。俺達はワカヤマに行って資材を受け取ってくる、

これが作戦内容でいいんだな?」

 

「うむ、よろしく頼む」

 

「必ず成功させます、提督」

 

「……ところで、提督」

 

「ん?」

 

「金剛は、どうしてる」

 

「……まだふさぎ込んだままだ。あの日、彼女の部屋を尋ねたが、

泣いているようだったから、そっとしておいた。今日も会いに行ったが、

あまり私とも話したくない様子だったから、早めに切り上げて帰ってきたよ」

 

「そうか。こればっかりは時間に任せるしかねえからな。

あんたにしんどい役回り押し付けてすまねえ」

 

「いいんだ。艦娘の心のケアは提督の仕事だからね。それじゃあ、頑張ってくれ」

 

そして3人ぽっちのブリーフィングを終えた俺とエリザベスは母港へ向かった。

そこで4人の艦娘が俺達を待っていた。中には知った顔もいる。

 

「待たせて済まねえな、さっさと出発しようぜ」

 

「遅れてごめんなさい、提督から今お話があったばかりで……」

 

「気にしないで。私達も今来たばかりだから」

 

龍田。俺が蘇った時、治療に当たってくれた艦娘だ。

やはりハイロゥのような頭に浮かぶ輪が目を引く。

さらに、今日は腰にミニチュアの艦橋のような艤装も身につけている。

 

「あんたが噂の魔法使いか。オレの名は天龍。フフフ、怖いか?」

 

天龍とかいう、両耳に近未来的なヘッドホンを付け、腰に刀を差した女性。

背中にはやはり艦橋だ。だが、俺が一番気になったのは。

 

「俺はブッカー・デュイット。今日はよろしくな

……あんた、戦場で目をやられたのか?」

 

左目に巻いた眼帯。本当に目を失ったやつが着けるそれとは違い、

何というか、悲壮感や戦場の残り香のようなものがまるで感じられないので、

少しつついて見ることにした。彼女は遠い目をして語りだした。

面白いことになりそうだ。

 

「ああ……あの激戦は今でも忘れられねえ。オレが戦艦2、空母1、重巡3の大艦隊と

この愛刀で死闘を繰り広げていた時だった。オレは深海棲艦どもをバッサバッサと……」

 

「伊達眼帯だろ、それ」

 

「なっ!?て、適当なこと言ってんじゃねえよ!ぶっ飛ばすぞこの野郎!」

 

「ガキの頃のクラスメイトに、あんたみたいな女の子がいたぜ。

舐められまいと男みたいに振る舞って、カッコつけて

無理に低い声で喋って一目置かれようとしてた。

俺、その子にいたずらで蜘蛛を投げてみたんだ。どうなったと思う?

“キャア!”ってまさに女の子らしい悲鳴を上げて泣き出したんだ。

その後、俺は教師に罰として物置小屋に閉じ込められたが、小屋の中で大笑いさ。

さっきあんた、自分が怖いかと聞いたな?俺の回答だ。“可愛いぜ”」

 

「てんめえ……!マジで殺す!ぶっ殺す!!」

 

天龍の顔がどんどん真っ赤に染まっていく。

 

「ハハハハハ!図星かよ!」

 

天龍が俺に掴みかかってきたので彼女の頭に手を当て押し返す。

こんなに笑ったのは生き返ってから初めてだ。龍田とエリザベスが止めに入る。

 

「天龍ちゃん、落ち着いて!」

 

「ブッカー、なんてこと言うの!彼女に謝って!」

 

「アハハ、悪りぃ今は無理だ!笑いが止まらねえ!」

 

「上等だこの野郎!魔法使いだかなんだ知らねえがオレの刀の「天龍ちゃん……?」」

 

その時、龍田が天龍の顔に両手を当て、彼女を諭す。

 

「あのねぇ?駆逐艦の娘達が見ている前でみっともないことをしては駄目なの。

わかった?」

 

「わ、わかった……」

 

優しい口調だが、背中から何か異様な威圧感を放っている。

現に天龍の真っ赤な顔が逆に青ざめていく。むこうを向いているから

どんな顔をしているのかわからないが、見たいとも思えなかったのでちょうどよかった。

が、今度は龍田が俺の方に振り返り、右肩を掴んだ。なんだこりゃ、すごい力だ!

艦娘だからとかじゃねえ。指先から怒りの感情が流れ込んでくるようだ……

貼り付いた笑顔のまま、龍田は俺にも語りかけた。

 

「ブッカーさんも、あんまり天龍ちゃんをいじめないで?

これ以上あの娘を刺激したら、その舌、ひっこ抜きますから」

 

「あ、ああ……悪かった」

 

最後の一言が冗談に聞こえなかったので大人しく従った。

どうやら龍田は本当に怒らせたらヤバいタイプのようだ。

 

「謝るなら天龍ちゃんに、ほら、天龍ちゃんも仲直りっと」

 

龍田は強引に俺達の手を掴んで握手させた。やっぱりその細腕からは信じられない力だ。

 

“てめえ、後で覚えとけよ……!!”

 

“おお怖ぇ怖ぇ。蜘蛛の準備が必要だ”

 

「さ、ブッカーさん、エリザベスちゃん。

駆逐艦の娘達にも自己紹介をお願いできるかしら」

 

「ああ、馬鹿騒ぎで待たせて悪かったな。俺はブッカー・デュイット。

今日は皆と一緒に遠征に行くことになった。

そうは言っても俺がやれることはたかが知れてるが」

 

「みなさん、よろしく。エリザベスよ。みんなの足を引っ張らないように頑張るわ」

 

「貴方達が噂の魔法使いさんですね、三日月です。どうぞお手柔らかにお願いします」

 

駆逐艦三日月。黄色い瞳が特徴的な女の子だ。シックな黒のセーラー服が似合っている。

左手に小さな砲を抱えているが、あれなら俺でも持てそうだ。

何か俺に装備できる艤装がないか今度提督に聞いてみよう。

 

「響だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ」

 

駆逐艦響。落ち着いた雰囲気と青白いロングヘアがよく合っている。

彼女のセーラー服は上着が白で、錨マークのキャップを被っている。

 

「じゃあ、お互い自己紹介も済んだ所で、目的地に案内してくれねえか。

俺達はスカイラインで皆の後ろに付く」

 

「はい~それじゃ、私が先導しますね。みんな付いてきてくださ~い」

 

艦娘たちは港から海に飛び降り、不思議な浮力で2,3センチほどホバーしながら

海面を駆けていった。エリザベスも空に手をかざしてティアを開き、

別次元から10メートルほどのスカイラインを呼び出した。

俺達も飛び乗り彼女達の後を追う。エリザベスは進むごとにレールの先を伸ばし、

後ろを消すというキャタピラ的方法で長い航路を進んでいった。

海は明るく何事もなく凪いでいる。少し暇になった俺は、

エリザベスにレールの高度を下げてもらい、響という艦娘に話しかけた。

 

「深海棲艦なんてバケモンがうろついてるなんて嘘みてえだな、響!」

 

「今回の編成は4人だけ。多分、提督が特に安全な航路を選んでくれた」

 

「そいつはありがてえ。まぁ、来たら来たで殺すがな!」

 

「貴方は少し話し方を柔らかくした方がいい。他の娘達が怯える。

特に“力”を持つ貴方は」

 

「すまん、軍人崩れの悪い癖だ。努力はしてみる」

 

俺はレールの高さを戻してもらい、再びワカヤマへとフックを走らせた。

一応上空警戒も仕事のうちだ。彼女達の安全を上から確認……って気持ちわりぃ!

水死体だ。髪を伸ばしているから多分女だろうが、入水自殺でもしたのだろうか。

俺達と同じ方向へゆっくり流れていく。十字を切ったが、日本の神に通じるだろうか。

嫌なもん見ちまった。幸先悪いぜ。

 

 

 

 

 

ブッカー達が話に夢中になっている間に、

すぐそばをボートに乗った二人組が語り合っていた。ルーテス兄妹である。

 

「やっと3人揃ったわ」

「プレイヤーは揃ったが、やはりオテダマの解が見つからない」

「もっとマクロ的視点で捉えて。そもそもなぜ3人揃ったかを考えるべきよ」

「“あれ”に3人巻き込まれたとしか考えられないが、何故3人だけ?

地球上には70億人もいるというのに」

「次元観測の結果だと、ビッグバンが起きた原因のそばに、

偶然3名の死亡した人間が居たとしか思えない。その“存在”が、

時空変動のずれで重なり合った別次元に飲み込まれて具現化したと推測されるわ……

でも、わざわざビッグバンなんて大掛かりなことをしなくても、

次元転送装置を作ったほうが早いのに。量子力学は得意じゃなかったのかしら、“彼”」

「しかし、理論物理学の権威である可能性は高い。

137億年の時を遡りビッグバン前の無に戻り、

今度は更に強力な宇宙創生を引き起こした。E = mc^2を完全に無視している。

ワームホール理論でもカー・ブラックホール理論でも説明がつかない」

「いずれにせよ、別次元に飲み込まれた存在が、存在を失った3人として

形を持って再び生を受けた。これでプレイヤーの完成、というわけね」

「僕らは引き続き考察を続けよう……

ところでそろそろ代わってくれないか。腕が疲れた」

「女性の役目じゃないわ。ほら頑張って」

 

 

 

 

 

「あの野郎、何が“危ない代物じゃないさ”だ!」

 

俺はワカヤマの海軍基地で補給物資を輸送用のゴムボートに運び入れながら愚痴った。

ドラム缶満タンの可燃性液体に弾薬類満載の木箱。ああ肝が冷える!

ちょっと手ぇ滑らせてみろ、俺ら全員粉々だ!

俺が慎重にドラム缶や木箱を運んでいると、エリザベスが走ってきた。

 

「手伝うわ、ブッカー」

 

「よせよせ、こいつはかなり重い。落っことしたらドカンだ」

 

「そう……悪いわね」

 

艦娘達は軽々と運んでいるが、重量のある危険物を運ばせるわけにはいかない。

気持ちだけもらってエリザベスにはボートで待ってもらうことにした。

帰りは龍田達がボートを曳航することになっている。

 

「それでは、本当にありがとうございました~」

 

「気にしないでくれ。共に戦う同士じゃないか」

 

龍田が基地の司令官にお辞儀をしている。そろそろ帰る時間だな。

俺はエリザベスの待つ桟橋へ行こうとした時、三日月の悲鳴が響く。

 

「敵襲です!敵潜多数!どうしてこんなところに!?」

 

基地のサイレンが響き渡る。俺は桟橋に走ると、とんでもないものを見た。

さっきの水死体が、群れを成して基地周辺を浮いたり沈んだりして漂っているのだ。

 

「くそったれ、あれも深海棲艦だったのか!」

 

「ブッカーさん、ここは私達に任せて。

潜水艦は私達駆逐艦、軽巡洋艦の爆雷が有効なんです!」

 

三日月は腰に下げた大きな缶詰のような爆雷を海に投げ込む。

爆雷は一泊置いて海中で爆発。更に間を置き、立ち上ってきた爆煙で海面が弾けた。

凪いでいた海は一気に荒れ、資材を積んだゴムボートが激しく揺れる。

海面を覗き込む三日月に聞く。

 

「殺ったのか!?」

 

「……いえ、命中はしましたが致命傷には!」

 

「横から口出ししたくはないんだが、ボートに当たると基地ごと吹っ飛ぶ。

なるべく慎重に頼む!」

 

「わかりました!」

 

龍田達は既に海上に出て三日月と同じく爆雷攻撃を始めている。

 

「死にたい艦はどこからしら~ウフフフ」

 

物騒なことを言いながら両手に持った爆雷を楽しそうに投げる龍田。

やっぱりヤバい女だ。

 

「ちくしょう、これじゃオレの刀も役に立たねえ!出てきて戦え、この野郎!」

 

「興奮しすぎないでください、それでなくても爆雷は命中率が高くないから」

 

艦娘達が戦っているが、俺にできることがねえ!

銃は効かねえし、可燃物の近くでぶっ放したくもねえ!あと出来ることと言えば……!?

俺は周囲を見回す。すると重要な事に気づいた。

 

「おい、天龍後ろだ!奴がなんかで狙ってるぞ!」

 

 

“ううううう……”

 

 

水死体野郎が何かを抱えて海面近くまで上昇し、

手だけを海上に出してそれを天龍に向けて放った。

 

「なんだ……って魚雷だ!うわっとー!危なかったぜ」

 

「こいつら魚雷撃ちやがるのか!?」

 

「潜水艦なんだから当たり前だろー!」

 

「ボートに当たるとやべえ!頼む、早く片付けてくれ!」

 

「こっちだってやってんよ!数も多いし、浮いたり沈んだりで

爆雷がなかなか当たんねえんだ!」

 

なんてこった!魚雷が直撃する前になにか手を打たねえと、

俺はさっき見渡した周りの景色を思い出す。

……ん!?突き出た岩、浅瀬、島とも呼べない小さな陸。これなら……!

 

「全員聞いてくれ!爆雷を深深度で炸裂させて、死体野郎共を海上に叩き出してくれ、

できるか?」

 

「いいわよ~爆雷深度150に設定~」

「Урааааа(ウラー)!」

「当って!」

「考えはあるんだろうな?やってやるけどよ!」

 

「当たり前だ、それと、爆発したらすぐ陸に逃げろ!」

 

「なんなんだよ、何がしてえんだよ!」

 

「説明してる時間がねえ、とにかく頼む!」

 

「ま、まぁお願いされちゃあしょうがねえな。ほらよっと」

 

彼女達が爆雷を撒き散らすと同時に、俺も下ごしらえの準備に掛かる。

左手に精神エネルギーを込め、手の中のエネルギーを更に凝縮する。

そして解き放たれる事なくエネルギーの塊となったビガーを、

目に見える浅瀬、岩、陸地に投げつける。

同時に、深海のあちこちからくぐもった爆発音。それを聞いた皆が桟橋に飛び上がる。

 

「おーし、言ったとおりにしてやった……っておい、何だこれ!」

 

「いいから、水上戦闘の準備をしとけ」

 

俺は目を凝らして海面を見る。

……来た!怒った死体共が魚雷を持ち上げてどんどんこっちに上がってくる。

艦娘が陸にいる今、きっとボートを狙ってくるはずだ。

資材が積まれているのはゴムボート。積まれているのは木製パレットの上。

よし、問題ない。後は俺の配置がうまく行けば、

 

 

“ううう……ううう……”

 

バチバチッ!……バリバリバリバリ!!

 

“うううう……う?ギャアアアアア!!?アアアアア!!”

 

 

「なんだなんだ!?」

 

ビンゴだ!ソルトを凝縮してトラップ化したショック・ジョッキーを

付近の岩場なんかに置きまくった。

バチバチと電気を帯びた結晶から放たれた高圧電流が、潜水深海棲艦達を刺し貫く。

全身を駆け巡る電気ショックで動けなくなった水死体共は、ぷかぷかと海面に浮かび、

放たれる寸前だった魚雷は電流を浴び、海中に落ちて爆発した。

 

「今だ、殺っちまえ!!」

 

俺の掛け声とともに、艦娘達が水上で痙攣している深海棲艦に飛びかかる。

 

「よーし、天龍様のお通りだ!うっしゃあ!」

 

天龍が愛刀で敵の心臓を貫き、

 

「あら~、もう声も出ませんか?」

 

龍田が零距離で敵潜の顔面に砲撃をぶちかます。ブシャッっと海面が青黒く染まる。

 

「……当たって!」

「さて、やりますか」

 

駆逐艦達も水上目標となった敵に何度も砲撃を繰り返し、確実に敵を仕留める。

一気にその数を減らす深海棲艦。全滅は時間の問題。

もう問題はないだろう、積み荷は無事。とんだ遠征だったが、結果オーライだ……

と思ったら、俺の足元、桟橋に1体深海棲艦が流れ着いていた。

俺はスカイフックで奴の首を体ごと掴み上げ、レバーを力一杯引いて強引に回転させた。

 

 

“う、ううう!あががが! ゴキッ…… ”

 

 

「今度はちゃんと死ねよ」

 

最後の一匹であろう敵を処刑すると、皆が駆け寄ってきた。

 

「助かりました、ブッカーさん。おかげで楽しかったです~」

 

「なんだよ~あんな隠し玉あるなら最初から言えよな」

 

「言う暇あったと思うか?勝てたんだからいいじゃねえか」

 

「貴方の力、やっぱり本物なんですね……初めて見ました」

 

「Спасибо(スパスィーバ)、厄介な潜水艦を楽に倒せた」

 

「みんな無事?力になれなくてごめんなさい」

 

よし、司令官と一緒に避難してたエリザベスも来て全員集合だ。

 

「そんじゃあ、用も済んだし、帰ろうぜ」

 

「うっせ!何お前が仕切ってんだよ!」

 

「文句があんなら眼帯外してみろ」

 

「くっ!……やっぱ殺す!こいつ「ふ~た~り~と~も~?」」

 

「よし天龍!一緒に帰投準備に掛かろうじゃないか!」

「ああ!俺は積み荷の再度固定、あんたはエアポンプの点検な!」

「よしよし」

 

「なんか、やっぱり龍田先輩もある意味凄いです……」

 

「私としては、ブッカーのお目付け役ができたみたいで、なんだかホッとするわ」

 

そして俺達は、本来楽な仕事になるはずだった運び屋業務を終えて、

鎮守府への復路に付いた。帰ったら提督へどんな文句を言ってやろうか、

俺はスカイラインを滑りながら考えていた。

 

 

 

 

 

ゴムボートを曳航する艦娘達に、空を駆ける2人の男女。

茂みに隠れ、望遠鏡でその姿を覗く兵士は、フィーチャーフォンの電話帳を開き、

通話ボタンを押した。ルルルルル……という呼び出し音が鳴ると、すぐに応答があった。

 

「こちらシルバー、作戦結果を報告する」

“こちらイーグル、どうぞ”

「偽りの羊飼い暗殺には失敗なるも、深海棲艦の誘導には成功。以上」

“ビガー拡散正弦波シグナルのテストには成功……と、了解した、以上”

 

通話していた兵士は互いに通話を切り、茂みに隠れていた男は足早に立ち去った。

 

 

 

 

 

俺達がワカヤマから帰投した時には、もう日も沈みかけていた。

ゴムボートを母港に横付けした後は、積み荷の荷降ろしは

工廠の人間らしき者達に任せて、俺達はそれぞれの部屋へ戻るところだった。

ちなみに、今“人間らしき者”と言ったのは、彼らが両手のひらに乗るくらいの

小人であり、とても人間とは思えないからだ。

しかも何も喋らないのにこちらの言うことは理解しているから、

この世界はよくわからない。

本気を出せば鎮守府もコロンビアを作れるんじゃないか、と真面目に思ってしまう。

と、くだらないことを考えている場合ではない。

提督に作戦結果の報告、もとい今日の騒ぎについての文句を言いに行かなければ。

本部に歩みを向けると、宿舎に向かっていた天龍と鉢合わせした。

今は龍田もいないからケンカの続きも出来るのだが。

 

「……お前の剣さばきは本物みたいだな。正確に急所を突いていた」

 

「あ、当ったりめえだろ!オレはこの相棒と幾千万の修羅場を……」

 

「悪かったよ」

 

「あ?」

 

「からかって悪かったって言ってんだ!」

 

「なな、なんだよ、急に……調子狂うじゃねえか」

 

「なんで隠すんだ、目」

 

「えっ、それはその、なんというか……」

 

急にもじもじしだす天龍。今までの男勝りな態度とはまるで様子が異なる。

 

「本当に戦場で失ったのなら謝る」

 

「あ、いや、ちが……ああそうだよ!ファッションだよ!

なんか箔がつくんだよ、見ろよ!あるとないじゃ全っ然違えだろ!」

 

彼女はやけくそになって眼帯を外した。そこには右目と同じく美しい琥珀色の瞳。

 

「違わねえ」

 

「何だと!?」

 

「右と左、どっちも同じ、綺麗な目だ。隠す方が損だと思うが」

 

「なっ、ば、ばっかじゃねえの!何言ってやがるこのオッサン!

……そうだ、オレも見せたんだ、お前も見せろ!」

 

「見せる?スカイフックが珍しいのか」

 

「違う!……羽黒に聞いたぜ、魔法使いのショーやったらしいな!

オレも眼帯の秘密見せたんだ、今日のバチバチみたいにド派手なマジック見せやがれ!」

 

なんだ、そういうことか。

 

「ふっ、怪我しても知らねえぞ」

 

そして、俺と天龍は人のいない広場を探して歩き出した。

二人共、その後派手に打ち上げたデビルズ・キスの音がうるさいという

苦情を聞きつけた龍田の襲撃を受け、後悔することとなったが。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。