艦隊これくしょん w/ BIOSHOCK INFINITE   作:焼き鳥タレ派

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Stage:7 True Blue

鎮守府外れの射撃演習場。今日もブッカーと“移動要塞”金剛は演習に明け暮れていた。

金剛から遠く離れた場所にガタン!と的が描かれた標的が2つ立ち上がる。

彼女はすかさずスナイパーライフルを構え、スコープを覗き、息を止め、2発発射。

結果、1発が中心から3段階離れた位置に命中。もう1発は標的を外してしまった。

 

「下手くそが!脇を締めろと言っただろう!」

 

「ソ、ソーリー、サー!」

 

「5秒以上狙いが定まらなかったら一旦諦めて遮蔽物に隠れろ!

目のフォーカスがぶれてもう狙撃は無理だ!

おまけに、スコープに日光が反射して1km先からでも気づかれる!」

 

「イエス、サー!」

 

「次にお前の戦い方だ。確かにお前の41cm砲は強力だ。

だが、会敵したときにいきなりぶっ放すのはよせ。なぜだかわかるか」

 

「ノ、ノー。サー……」

 

「お前のでかい武器にはメリット・デメリットがある。

メリットは今話した通りの攻撃力。デメリットは、その大砲の硝煙と着弾時の爆煙で

味方の視界が遮られる。煙の向こう側から敵が隊列を組んで銃を構えていても、

とっさの判断ができなくなる。戦ってるのはお前だけじゃない。

上官の命令があるまでは絶対に撃つな!」

 

「イエス、サー!!」

 

あれ以来俺は、“移動要塞”金剛の陸上戦闘における教官として、

今まで以上に体力が必要になることを踏まえ、彼女に過酷なトレーニングを課し、

武器の使い方、戦術を厳しく叩き込んでいる。もう彼女は殺しにビビる女じゃねえ。

 

 

 

 

 

先日も、通りすがりの民間人を装い、こちらをチラチラ窺っている

カムストック派のスパイを発見したが、金剛は鍛え上げた脚力で

すかさずスパイに飛びつき、腕を捻り上げ、取り押さえた。

 

「いでででで!離せ、離しやがれクソが!」

 

「ブッカー、怪しいやつがいたネ。ずっとこっちの様子を見てた」

 

「ああ、わかってる。お前、スパイとしては素人以下だな。

目標の間近でメモなんか取るんじゃねえ。頭に書くんだ、間抜け」

 

「ねぇ、こういう時はどうすればいいのカナー?」

 

「こいつにいくつか“質問”する必要がある。……よし、誰も見てねえな」

 

俺はスパイに猿ぐつわを噛ませ、引きずるように地下の倉庫に運び、

適当な椅子に座らせた。そして背もたれにスパイを縛り付ける。

そして、腰に差したコンバットナイフを鞘ごと金剛に渡した。

俺はポケットからしわくちゃになったタバコとライターを取り出し、1本咥えた。

ふぅ、と奴の顔に紫煙を吐き出す。むせたスパイが俺を睨みつけた。

 

「ブッカー、これってもしかして……」

 

「ああ、いつかお前に教えようと思っていたが、いい練習台が見つかった。

これからお前は奴に“質問”を行うんだ。

……おい、これから彼女がお前に()()をする。

素直に答えれば痛い思いをしなくて済む、可能性がある。言葉は慎重に選べ、以上」

 

「ふざけんな、俺は何もしゃべらねえ……あづあああ!!やめろ、やめろ!ぎゃああ!」

 

「Stop it, Booker!! What are you doing!?」

 

俺はタバコの火を奴の頬に押し付けた。焼けただれるスパイの頬。

金剛も突然の俺の蛮行に驚き、思わず口調が完全に英語になる。

 

「バカが、言葉は慎重に選べってヒントをくれてやったのにもうこれだ。

……ああ、金剛。見ての通りだ。今からお前にもこいつを拷問してもらう」

 

「拷問……?」

 

「そうだ。カムストックの野郎がどんな情報を集めているか知る必要がある」

 

「で、でも!捕虜の虐待は国際法で……」

 

「戦場で律儀にそんなもん守ってる奴はいねえ。そうだな……この膝のあたり。

ここなら出血量が少ないからすぐには死なねえ。そいつでまっすぐにここを刺すんだ。

終わったら次の指示を出す。ほら」

 

「そん、な……」

 

両手でナイフを持ったまま青ざめる金剛。スパイの顔はもう涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。

酔狂な奴は1秒だけライターで頬を炙ってみろ。奴の痛みと恐怖が手軽に味わえる。

 

「やめろ、やめてくれ……」

 

「ほら!彼もしゃべるって……」

 

「だめだ。まだこの段階では、その場しのぎの適当な嘘をつく可能性が高い。

完全に反抗の意思を挫く。ほら」

 

「ノ、ノー!私には、私には!」

 

「拒否するならお前にはもう何も教えない。俺が教えているのは

全部実戦で必要になることだ。まず、こいつが何を探っていたか聞き出せ」

 

「……お願い、早く喋って」

 

金剛は恐る恐るコンバットナイフをまっすぐに、スパイの膝の皿手前に突き立てる。

僅かに先端が刺さり、血が漏れ出す。

 

「いてええ!!」

「ひっ!」

 

スパイの悲鳴に驚き、思わずナイフを引っ込める。

 

「なにやってる、さっさとしろ。それともじわじわ甚振るのが好きなのか」

 

「違う!やるわよ!あなたも、さっさと喋りなさい!」

 

意を決して金剛はスパイの足にナイフを突き刺した、

よく研がれたコンバットナイフを通して、プルプルと肉が裂け、

ブチブチと腱がちぎれる感触が伝わってくる。狭い地下倉庫にスパイの絶叫が響き渡る。

 

「ぎぃえああああ!!いだいいだい!やめて、やめてえ!

なんでもしゃべりますからぁ!」

 

「はぁーっ、はぁーっ……ブッカー?ねぇ、これでいいの……?」

 

「よくやった。金剛、ここに書いたとおりに尋問しろ」

 

俺はメモ帳を取り出し、文章を一つ殴り書きにして金剛に見せた。

回りくどいと思うだろうが、彼女自身が聞き出さなければ意味がない。

 

「ヘイ、あなた……一体何を探ってたネ」

 

「うう……鎮守府の、戦力配備……艦娘、警備兵の配置を朝昼晩ごとに調査してた……」

 

「嘘だったらその足切断することになるぞ」

 

「本当だよお!メモ見てくれよ!本当だから!!内ポケットに入ってる!」

 

俺は泣き叫ぶスパイから乱暴にメモを奪うとページをめくった。

確かに鎮守府裏手から見た景色と、警備兵の巡回コースが矢印で描かれていた。

 

「なるほど、嘘はついてないらしい。こいつの偵察兵としての技量から考えても、

重要機密を狙っていたとは考えられないだろうな。よし、お前は用済みだ」

 

「じゃ、じゃあ私は彼を追い出してくるヨ……」

 

「何を言ってる。殺すんだ」

 

「「!?」」

 

絶句する金剛とスパイ。

 

「ちょ、ちょっとブッカー、何言ってるのカナー?」

「そうだよ!俺ちゃんと喋ったじゃないか!!」

 

二人を無視して俺はホルスターからハンドキャノンを抜き取り、金剛に渡した。

 

「お前が処刑しろ」

 

「私が……処刑?」

 

「そう。こいつを生きて帰せば、カムストックのプロパガンダに利用される。

“海軍は捕虜の拷問を行う残虐な組織だ”とかなんとかな。

それにひょっとしたら他にも情報を盗まれた可能性もゼロじゃない。

殺さないほうが良い理由のほうが少ない」

 

「頼むよ姉ちゃん!あんた艦娘なんだろ!?

本当はこんなことするようなやつじゃなかったんだろ?こいつを止めてくれよ!」

 

「耳を貸すな金剛!てめえ、うるせえぞ!」

 

俺は膝に刺さったままのナイフをグリグリと回した。

 

「いぎえあああ!!ああ!あああー!やめで!

ごめんなさい、ごめんなさい!いだい!!」

 

涙に濡れる目でその凄惨な光景を見つめる金剛。手にしたハンドキャノンが震える。

そんな彼女を俺は振り返る。

 

「金剛、お前が艦娘を辞めた理由を思い出せ。望んで陸上戦力になった時点で、

もう戦うべきものが増えちまったんだよ。

どれだけ汚い手を使い、その手を血に染めようとな!」

 

「戦うべき、もの……」

 

「ハンディマンを生み出し、日本を征服し、エリザベスの能力すら奪おうと企む

カムストック!ああ、そりゃ確かに奴らが現れたのは俺のせいさ。

罰を望むならいくらでも受ける、ただしカムストックを殺してからだ!」

 

「……そう。彼を殺したのは、私!でも、彼をあんな姿にしたのは……お前達だ!!」

 

激高した金剛はスパイに向けてハンドキャノンを構える。

怒りの形相で大型拳銃を向ける金剛に怯えきった奴は、小便を漏らしながら命乞いする。

 

「ううっ……やめろよぉ、やめてくれよぉ……ここに送り込んだハンディマンのことか?

あいつは望んでああなったんだ。シベリアでワイヤートラップに引っかかって

寝たきりになったあいつは、いつも“また母ちゃんと畑仕事がしてえ”って……

そこにカムストック様が現れてあいつを救ってくださったんだ。

そうだよ、あれは大天使様の救済だったんだよ!あいつもきっと幸せだったはずだ!

また二本足で歩けるようになって……」

 

「何が救済だ!お前が、彼の苦しみを語るなぁ!!」

 

ズダァン!!

 

咆哮、そして、銃声。金剛はハンドキャノンでスパイの頭を撃ち抜いた。

強力な大型拳銃で奴の脳が頭蓋骨ごと飛び散った。

そして彼女は銃を構えたまま何度も大きく深呼吸していた。

 

「よくやった。今日の課題は終わりだ。死体は俺が片付けとく。お前はもう帰れ」

 

「……お先に失礼するヨ、ブッカー」

 

金剛は俺にナイフとハンドキャノンを返すと宿舎へ帰っていった。

遠距離狙撃はまだまだだが、比較的近距離の飛び道具ならもう外すことはない。

俺は倉庫の収体袋に頭が弾けたスパイの死体を詰め込み、

とりあえず人気の無いところに仮置きした。

シミになる前に倉庫の血痕を掃除しなければ。

細かい肉片はマーダー・オブ・クロウに任せ、俺は掃除道具を取りに本館に向かう。

……そして、俺を離れた工廠の影から忌々しげに見ている少女がいたが、

俺は知らないふりをした。今更言い訳など無意味だしするつもりもない。

ただ金剛の生存可能性を1%でも高めるだけだ。

 

 

 

 

 

「はい、どうぞー。今日はエリーちゃんの好きな筑前煮よ」

 

「ありがとう、おばさん。いろんな具が入ってて美味しいから大好きなんです」

 

食堂。昼食時はやはり大勢の艦娘たちで賑わう。

友人たちとおしゃべりしながら食べる者、好きな小説を読みながら

マイペースで食事を取る者。エリザベスはカウンターで配膳係のおばさんから

食事のトレーを受け取ると、大きなテーブルの隅に座った。

仲の良い艦娘はいるが、今日はなんとなくのんびり1人で食べたい気分だったので、

特に声を掛けなかった。

 

「いただきます」

 

一言告げて手を合わせる。日本で身についた習慣。

アメリカでは食べ物をお恵みくださった神に感謝するけど、

日本では苦労して米や野菜を作ってくれた人々、人間のために命を捧げてくれた

動物たちに感謝するのね。エリザベスが味噌汁を一口飲み、筑前煮の人参を

ひとつ口に運ぼうとすると、前の席に、ダン!と乱暴にトレーが置かれた。

肩口の開いた白い着物を着て、緑のチェックのスカートを履いた艦娘が

冷たい目でエリザベスを見下ろしている。

 

「……ここ、いいかしら?」

 

「え、ええ。もちろん」

 

そして少女も食事を始めたが、二人は会話を交わすこともなく無言だった。

艦娘が明らかに友好的でない雰囲気を放っていたから、

エリザベスも戸惑いながらもどうしようもなかった。

目の前の少女はこちらを睨むように見つめながら飯をただ口に運んでいる。

あからさまな敵意を向けられ、せっかくの好物も味がしない。

 

「この純白の着物はね……」

 

エリザベスが耐えかねていたときに、ようやく艦娘が口を開いた。

 

「私達、四姉妹の絆の証だったのよ!」

 

「……」

 

「それをあの男に汚された!真っ黒な軍服に!艦娘としての誇りもろともね!!」

 

バン!彼女は叫んでテーブルを叩く。賑わっていた食堂が一斉に静まり返った。

 

「あなたのお姉様のことは、提督から聞いたわ。

ブッカーが、とんでもないことをしたことは、本当に申し訳ないと思うし……」

 

「他人事みたいに言わないで!そもそもあなた達が現れたから

お姉様が戦う羽目になったんじゃない!申し訳ないなら出てってよ!

全部元に戻してよ、日本も、お姉様も!!」

 

立ち上がって叫ぶ比叡。その目には涙が浮かんでいた。

エリザベスは返答に困り、うろたえるばかりだ。そんな時、

 

「みっともない真似は止めてください、比叡さん」

 

紫の制服にロングヘアの艦娘が、黒いパンプスを鳴らしながら近づいてきた。

 

「……何よ、あなた関係ないじゃない!」

 

「いいえ。大いに関係あります。あなたは、艦娘全体の恥です」

 

「なんですって……もう一度言ってみなさいよ!!」

 

「ご希望とあれば何度でも。言い返せないとわかっている相手を一方的に責め立てる。

五省に外れた恥ずべき行為。これ以上、艦娘の名に泥を塗る行為は止めてください」

 

「あんたに何がわかるっていうの!!大好きな姉から艦娘としての誇りを奪われて!

素手で死体掃除をさせられて!殺人マシンに仕立て上げられて黙ってろっていうの!?」

 

「それでエリザベスを責めるのはお門違いです。憎いならその犯人を糾弾すべきです」

 

「……ああ、あなたはいいわよねぇ、足柄。

愛する妹を奴に可愛がってもらったそうじゃない。

ちょうどお姉様もあの男に“可愛がって”もらってる最中よ!」

 

“なぁにケンカ~?”

“重巡と戦艦のガチバトル?ヤバいんじゃないの、コレ”

 

上位艦娘2名の言い争いに周囲が騒然となる。

皆、止めるべきか迷っており、それはエリザベスも同じだった。

 

「あの、お二人とも、どうか落ち着いてください。

比叡さん、私達の今後についてはブッカーと今夜話し合いますから……」

 

「今夜と言わず今からでも行ってくればいいじゃない!

さっきブッカーが本館へ戻っていったわよ!」

 

「いい加減になさって。何度も言いますが、姉上の境遇に不満があるならブッカーに。

この子を狙い撃ちするのは卑怯です」

 

「いい子ぶらないで、反吐が出る!もし羽黒がお姉様と同じ殺し屋にされてたら、

あなた同じことが言えたのかしら?どうなのよ!?」

 

「彼女の意に反して兵士にされたなら、その犯人を殺していたでしょうね。

でも金剛さんは自分の進むべき道を自分で選択した。

その時、彼女はこんな風に、あなた方妹に助けを求めたのかしら。

“こんなに苦しいけど、兵士にもなりたくない。どうすればいいの”」

 

確かに……確かにお姉様は苦しんでいらした時に私達を頼ってくれなかった!

ずっと一人で抱え込んで、私達は何もできず、結果

艦娘としてのご自分を捨ててしまった。でも!どうしてそれを

こんな女にとやかく言われなければならない!所詮は他人事のくせに!

 

「くっ、お前に……お前なんかに何がわかる!!」

 

比叡は足柄にコップの水を浴びせた。騒ぎはますます大きくなる。

どこかから“提督呼べ!”と声が聞こえてきたが、二人は気にせず、

足柄はハンカチでとりあえず前髪を整えた。

 

「頭を冷やしたほうが良いのは、あなたの方ですね」

 

パァン!と乾いた音が広い食堂に響く。今度は足柄が比叡の頬を張った。

 

「二人共もう止めてください!!」

 

叫ぶエリザベス。しかし火が付いた二人はもう止まらない。

 

「やったわねこの狼ババア!!」

 

今度は比叡が手加減なしで足柄の鼻を殴った。

並んだ椅子を巻き込んで後ろに倒れ込んだ足柄は手で鼻を拭う。白い手袋が赤く染まる。

 

「……自制心のない戦艦こそ、ただの破壊ロボットよ。覚悟なさい!!」

 

続いて足柄が左フックを食らわせる。

そしてすかさず比叡の髪を掴み、腹に蹴りを入れる。

 

「ぐはっ!!この野郎……調子に乗るな!」

 

そして比叡は足柄の胴に飛び掛かり、彼女と共に床に転がり、

馬乗りになって何度も殴りつける。

 

「お願い誰か二人を止めて!」

 

エリザベスの叫びも虚しく、食堂の騒ぎは大きくなる一方だった。

悲鳴を上げるもの、遠巻きに応援するもので、もはやパニック状態だった。

床の上で争う二人も、つかみ合いひっかき合いでもみくちゃとなっていた。

そこにようやく軍服の男が現れ、ポケットから警笛を取り出し、吹き鳴らした。

比叡たちも動きを止め、皆が一斉に彼を見る。

 

 

 

 

 

「自分達が何をしたのか分かっているのか!この大馬鹿者が!!」

 

提督の怒りが執務室に轟く。エリザベスも自分のせいではないのだが、

落ち込んだ様子で聞き入っている。

 

「すみません……」

「申し訳ありません……」

 

もちろん当事者の二人は神妙に説教を聞いている。

 

「どっちが先に手を出したかなど、どうでもいい!

君達は駆逐艦や軽巡の手本となるべき我が艦隊の主力なのだぞ!

それをなんだ、あの醜態は!子供のケンカそのものではないか!」

 

「それは……足柄が、彼女が言いがかりを」

「水を掛けてきたのは彼女です」

 

「馬鹿者!!くだらん言い訳を聞くために呼んだのではない!

君達は重要なことを忘れているから今一度言っておく!

そこにいるエリザベス君とブッカー君は客人であり仲間だ!

私は同じ過ちを二度繰り返す者を受け入れるほど寛容ではないし、

同じ説教を繰り返すほど暇でもない。

また彼女達をくだらん言い争いに巻き込むことがあれば、

もう執務室に呼ぶことはしない。ただそういう者だと解釈して付き合っていくから

心しておくように!」

 

「そんな!」

「待ってください提督!今回の件はお姉様の人生をメチャクチャにした

あの男に原因が……」

 

「恥を知れ!!」

 

「……っ!」

 

「ならばエリザベス君のせいであの巨人兵が攻めて来たとでも言いたいのか!

全てはたまたま同時期にこの世界に生まれたカムストックの欲望が原因だ!

本質を見誤り、本来無関係な少女に当たり散らすとは何事か!

もういい、二人共、埠頭で五省を百回叫んでこい!

ここまで聞こえるほど大きな声で!

……よもや忘れてはいるまいな。メモを見るなら五百回だ!走れ!」

 

「「了解、失礼致します!」」

 

二人が慌てて出ていった後、提督は喉を揉みながら椅子に座った。

普段怒鳴ることなどあまりないのだろう。何度か咳払いをし、声を整えた後、

エリザベスに声をかけた。

 

「……すまなかったね、エリザベス君」

 

「いいえ。比叡さんの怒りと悲しみは、もっともだと思いますから」

 

「わかっているとは思うけど、本当に、金剛のことは君達のせいじゃない。

我々は一丸となってカムストックと戦う。そう決めたじゃないか。

君もそれは忘れないでくれ」

 

「……はい」

 

「それと……比叡を許してやって欲しい。

一番、姉を、金剛を慕っていたのは彼女なんだ。

嫌なことがあっても周りに当たるような娘でもなかった。

きっと、彼女自身やり場のない憤りにどう向き合っていいか、

まだわからないんだと思う」

 

「もちろんです。今夜、ブッカーとも、彼女達との付き合い方を話し合ってみます」

 

「それは助かるが、特別なことをする必要はないよ。

君達は今まで通りでいてくれれば十分なんだ」

 

「ありがとうございます……ここの人は本当に優しい方ばかり。

ここに生まれ変わって本当によかったです」

 

「まぁ、海以外は何もない所だけどね、ハハ」

 

「ウフフ、コロンビアにはこんなに大きな海はありませんでした。十分、素敵です」

 

そして、語らう二人に“しせーにもとる なかりしかー”という

二人の声が聞こえてきた。

 

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