魔法科転生NOCTURNE 作:人ちゅら
ちなみに読み方は「やしき・とももと」です。
2095年4月12日──火曜日、放課後。
その日、部活連から各クラブの部長に集合要請があった。
なんでも「部活連の執行委員」の紹介だという。
聞いた瞬間、なんだそれはとも思った。部活連にそんな役職有ったか?
廊下でばったり会った
要は事務方ってやつだ。
そんなもん巡回のときにでも挨拶させりゃあ済むんじゃねえの?
とも思ったが、誰もが魔法師としての夢を見るこの一高で、わざわざ事務方をやろうという物好きには興味も湧いた。
……まあ二科生に振られりゃ、そんな夢もすぐぶち壊しになるんだが。
「紹介する。
そいつをひと目見て思ったことは。
この一言に尽きる。
なにより何気なく
俺の師匠と同じように、もしかしたらそれ以上に自然な形の
「1年A組、
声もいい。
肚から出た、遠くまで届く声だ。
なにより呼吸が全く読めねェ。化け物かよ。
あいつは絶対、武術をやってる。それも古流だ。
手合わせしてみてェ。
同年代でここまで圧倒的なヤツ、大会でだって見たことねェよ。
「目ざといやつは知ってると思うが、彼は今年の次席入学で、魔法力の基礎スコアも既に国際A-クラスの逸材だ」
魔法力まで有りやがるのか。
制服を見りゃ、一科生なのは分かったけどな。
そうか
「だが諸君には非常に残念なことと思うが、彼の勧誘は無しだ! 彼自身、特定の部活動への参加は考えていないと聞いている」
ああ、専任ってなそういうことか。
部活動の代わりに運営委員になるってことだな。
なんでか知らんが、本人の希望ってんなら仕方がない。
……なんて俺たちが納得すると思ったか!
すぐに「横暴だー」「部活選択の自由の侵害だー」と声を上げるやつが出てきた。
お? こういうノリが好きなのか?
俺も一緒に「部費もっとよこせー」と煽っておいた。
そいつの笑みが深くなった。
ああ、いいなこいつ。気に入った。
「彼は
ふん。なるほど、そういうことか。
入学次席で魔法力も突出してれば、そら
誰がやらんでも俺がやりたかったくらいだし。
つっても
ちょっくら
「服部よう」
「なんだ?」
「話しておくのは良いけどよ。
「むぅ、それはそうか。なら腕章を――」
「却下で」
わはは。あの
まあ嫌だよなあ。
「ならば間薙の勧誘禁止は、今月いっぱいとしよう。5月1日に解禁とする。
十文字がそう切り出す。
いやまあ俺等は願ったり叶ったりだけどよ。
本人……なんか困ってねェか?
* * *
4月18日――月曜日。
講堂で行われた部活動説明会は、まずまずの成果だった。
去年の
去年はもっと面倒だった気がするんだけどな。
ま、上手くいって困ることもねェんだけどな。
上手くいったったら表演もか。
他の連中に恩を売りつつ、きっちり仕事もやってのけた。
まだ連発できねェのが玉に瑕だが、苦労して覚えた甲斐があったってもんだ。
「でな、服部よう」
「なんですか」
「結局、誰が指導すんだ? あの
「またそれですか。自分にやらせろって言うんでしょうけど、模擬戦は禁止ってことで話が付いてるんですから、勘弁してくださいよ」
説明会の表演が終われば、次のイベントは5月末の
高校最後の
「分かってる分かってる。模擬戦でなけりゃ良いんだろ?」
「暴力沙汰は無しですよ? 問題になれば春大に出場できなくなりますからね」
「そんなんじゃねえよ。ちゃんと了解とってからやるさ。
どのみち
そんときゃスッパリ諦めるさ。
「……分かりました。手が空きそうな日に連絡します。こっちから連絡するまで何もしないでくださいね」
「わーってるって。信用ねェなァ」
「もし
「絶対信用できねェ」
「
3年C組・辰巳
あいつの言う「あと一回だけ」に何度騙されたかわかんねェ。「ちゃんと手加減する」と言いつつ
いや、腕は良いし、一科のくせに
* * *
4月21日――木曜日。
服部の方から連絡があったので、放課後すぐに闘技場――第二小体育館――に移動し、今か今かと待ち構える。
……どこから話が漏れたのか、自称
まあなんだ。この数日、ずっと待ち遠しくて浮かれてたからな。ちょっと口を滑らしたりもしたし。それを聞いてた誰かしらがやらかしてくれたんだろうとは思うが、今更気づいても後の祭りだわな。
極秘に済ませようとしてくれてた服部には悪いが――
「
「粛清してやる」
――ああもう、さっさと片付けて無かったことにしちまおう。
古流武術はとにかく生き
だから自分が圧倒的不利な状況、一対多、多対多の集団戦にも慣れはある。
先手必勝。
「フォーメーションC!」とか呑気に指示を出した
ひとまず一人を
その後は「義によって助太刀いたす」とか「オレも混ぜろ」とか「テメェら気に入らねえんだよ!」とか言って入ってこようとする血の気の多い
魔法が使えなけりゃ、
とはいえあんまり怪我させると、あとで服部のやつが煩い。なんなら今回の
なるべくダメージが残らねェよう手加減しながら沈めんの。
ホネ折れるわコレ。
……とかやってたら、ヒョロい野郎が
ふざけんな! それ壊したら
ただでさえ
あーもう面倒くせェなァ!!
なんとか半数くらいは無力化したところで、
視界の端を、開いてゆく自動扉に木刀が飛んでいく。
すっぽぬけたわけねェな。誰かが狙って投げたか。
あァ?
高速で回転しながら飛んでいく木刀が、一瞬で粉微塵に消えた。
今なお絡んでくるアホを無意識にいなしながら、俺の目はその向こうで掌打を構えた一年生に釘付けになった。
……何だあれ! スゲェ!
勢い余って、つい逆技を極めていた手に力が入っちまった。
ボグッ!!
あ、ヤベ……
* * *
あの
いや、アホだからこの騒ぎになったのか?
まあどっちでもいいか。
いくら相手が服部だからって、
そいつは
粛清だなんだと、
それもあの十文字に迷惑がかかる形じゃあなァ。
そんなことより今は目の前のことだな。
念願叶って
なに、理由だって嘘じゃねェ。
服部も十文字も
もし
……なんて思ってたんだけどな。
最初の
こいつ、
こっちの腕を見ながら合わせてくれてるお陰で組手の形になっちゃァいるが……まったく歯が立たねェ。
当たるはずの突き蹴りが、防がれ、流される。
そもそも攻めに出た瞬間に軸をズラされるから、当たってもダメージにならねェ。
焦って雑に手を出せば軽くいなされ、元の位置に押し返される。
俺のほうが指導されてんじゃねェかよ。
こいつ、
やっべ。マジでこんなのがいるのか。
世界は広いわ。世界マジ広い。
なんで今の順突きが躱せンだよ。
……勝ち目がないのが分かっても、体はがむしゃらに手を出していく。
空手家は攻めてなんぼだ。辛いときに一歩前に出られなくて、どうして戦えるってんだ。
俺の一瞬の気の迷いを突いて、
そうしてドアでもノックするように差し出された裏拳が、軽くチョンと胸に触れる。
それだけで骨が
駄目だ……少なくとも今の俺じゃあどうしようもねえ。
「落ち着け」と、その目が語りかけていた。
オーケー分かった。
頭は冷えた。
仕事はちゃんとしろってことだな。
戦いになっても頭に血が上るタイプじゃなさそうだし。
あとは十文字対策か。
見せてやるよ、俺の奥の手。
コイツならあの飽き性に、いっぱい食わせてやれるかもしれねェしな。
感想、評価、お気に入り、ここすき、いつもありがとうございます。
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当初は服部視点で書こうと思ってたんですが、ここで入れとかないと屋敷視点で書く機会が無くなりそうだったので、急遽差し替えました。(ので服部視点での話は先送りに)
次回、十文字との模擬戦が始まる予定です。