「とりあえず、拾うか」
俺は手袋をはめ、チャック式の袋を取り出す。そのままガイアメモリの破片を袋に入れる。
ハァーやだなー。あいつらに説明するのやだなー。
そんな億劫な気持ちになっていると、後ろから何人かの足音が聞こえる。
「比企谷!」
………この声。
「照井さん」
赤いジャケットを着て、レーサーみたいな格好をした人が来た。
これでもこの人は刑事。ガイアメモリを扱う風都署に配属されている。
他に何人かの警官を引き連れている。
「これ、渡します」
ガイアメモリの破片が入った袋を照井さんに渡す。
「……遅れてすまない。助かった」
「気にしないでください」
ファングを使わないといけなかったことに少しは恨むけど、それは別の話だ。俺の問題だ。
「あの子らは君の友人か?」
照井さんは雪ノ下たちを少し見る。
「まさか。俺に友人なんていると思いますか?」
「さあ?だが、君なら、いるのではないか?」
「まあ………俺の知り合い、ですよ」
「そうか」
そこで、照井さんはガジェットを取り出し、画面を見る。
「比企谷。明日、時間はあるか?」
「暇ですけど………」
「そうか。君に会わせたい人物がいる。……どうだ?会ってくれないか?」
会わせたい人物か。前々から話を聞いていたが、その人たちだろう。
「――W、ですか?」
「ああ。あいつらも比企谷のことに興味があるみたいだ。それに、その――ファングメモリのことも改めて聞きたい」
そういや、この人と初めて話した時も誤魔化したなー。
「分かりました。明日ですね」
「放課後。君を迎えに行く」
「分かりました」
俺と照井さんは、未だに腰が抜けている雪ノ下たちを見る。
「これからどうします?」
「そうだな。一通り病院で検査してから警察で話を聞こう。…………逃げた人たちもいるんだな」
「はい」
「それは後日、調べるとしよう」
その後、照井さんたち警察は、雪ノ下たちを警察に同行してもらい、全員から話を受けたそうだ。
俺は、受けてないけど。
「ただいま」
あいつらとは別行動をとり、直ぐ様帰宅した。
「あ、お兄ちゃん。おかえりー。どうだった?お買い物は」
こたつでぬくぬくしながら勉強している小町。
俺は小町の向かいに座る。
「どうもこうもねーよ。ドーパントが出て、メチャクチャだった」
その言葉に目を丸くする小町。
「えっ!?ドーパント出たの?……………てことは、お兄ちゃん、変身したの?」
「したよ」
小町は、過去の「あれ」を危惧しているのだろう。
「大丈夫だ。暴走はしてない」
「そう。なら良いけど…………」
小町はシャーペンを机に置くと、真剣な眼差しで俺を見てくる。
「もう、止めてよね。あんなことは。何より、お兄ちゃん自身を大切にしてね」
「……………あぁ、分かった」
かなり心配させたのか。それもそうか。
「それで、小町。明日帰り遅くなるわ」
「?何か用事?」
「おう。風都市に行ってくる」
「へーー。よく分からないけど、いってらっしゃい」
「おう」
そっか。小町はそこまでガイアメモリについて詳しくなかったな。あまりピンと来ないか。
――翌日。放課後。
校門前にて照井さんがバイクに股がり、俺を待っていた。
昨日被害に合ったあいつらは、検査とかで学校を休むと言っていた。
平塚先生は昨日の事件は知っていても、誰が解決したのかは知らず、「大丈夫か?」と言われただけで、特に絡んでこなかった。
「比企谷」
ヘルメットを投げられ、それを受け取る。
「行くぞ」
「はい」
バイクの後ろに股がり、照井さんに掴まる。周りが煩いが、無視の方向で。
ブゥゥーーン。バイクのエンジン音が鳴り響き、バイクは発進する。
そして、数十分後。
「着いたぞ」
そこには、かもめビリヤード場と書かれた店?があった。
「ビリヤードするんですか?」
「そっちじゃない」
「ん?」
あ、鳴海探偵事務所…………こっちか。
扉を開けた照井さんに続く。
扉を通り、俺が見た光景とは…………、
「亜樹子!!ゴキはどこ行った!?」
「ちょ!翔太郎君!そこ!机の下!」
「そこかー!……くそっ。ちょこまかとーー」
「あ!フィリップ君、そっち行ったよ。ほら、叩いて!さあ!」
「ちょっと待ってくれ。亜樹子ちゃん。これには触りたくない」
「うるせーぞ、フィリップ!やれ!やるんだ!」
と、3人vsゴキとの勝負の途中だった。
事の顛末は結局、照井さんが近くにあった靴べらで叩いて終了した。
俺は入り口付近にあるソファに腰掛ける。
「お茶、どうぞー」
「あ、ども」
「にしても君、目が腐ってるねーー。病気?」
「これが普通です」
「…………そう」
そんな憐れみの視線を向けないでほしい。
「あ、自己紹介始めるね。私、鳴海探偵事務所の所長。鳴海亜樹子――改め、照井亜樹子でーす」
「あ、はい」
「反応薄くない?」
「照井さんから前情報は頂いているんで」
「えーー。つまんなーい」
「うっせーぞ亜樹子!それでも、自己紹介はするぞ。俺は左翔太郎。よろしくな」
「僕はフィリップさ。よろしくね、比企谷八幡君」
「お願いします」
「左。俺は仕事が残っている。比企谷の送りは任せたぞ」
「照井さん、話聞くんじゃないんですか?」
「後でそいつらに聞く。じゃ、頼んだぞ、左」
「おい!」
照井さんは、左翔太郎の言葉は聞かずに、そのまま探偵事務所を後にした
「それじゃ、早速だが、見せてもらうぞ。俺も見せるからな」
左翔太郎………左さんでいっか。
左さんは、色々机に置く。
Wドライバー。ガイアメモリ3本。ロストドライバー。
フィリップさんはガイアメモリを3本。それと、噂に聞いていた、自律稼働のファングメモリ。
それと空を舞うメモリ。これは……あれか、エクストリームか。
対する俺は、T2ファングメモリとロストドライバーを見せる。
左さん、フィリップさん、亜樹子さんは目を見開く。
「照井の言ってたことは本当だったか………」
「それも、ファングだよね?もしかしてT2の?」
亜樹子さんが呟く。
「そうですよ。………そういえば、フィリップさんはファングで暴走したと聞きました」
「………ああ、その通りだ。僕は翔太郎のお陰で乗り越えた。比企谷八幡君は、ファングの暴走を乗り越えたのかい?」
その疑問に対し、首を横に振る。
「違います。俺の……理性で無理矢理抑え込んでるだけです」
「ファングをか!?」
翔太郎さんが叫ぶ。
「……それは驚いたね」
フィリップさんは感心する声を出す。
「ファングを抑えるとか……化け物かよ」
「正しく、理性の化け物だね」
ハハッ。そういえば、言われたことあるな、それ。
「それより、これ!どこで手に入れた?」
左さんがロストドライバーに指差し、尋ねてくる。
「翔太郎。僕が検索するよ」
左さんの言葉を遮り、フィリップさんは立ち上がり、目を閉じる。
これが、噂の「地球の本棚」か。地球上にある全てを閲覧できるという…………。
「分かったぜ。キーワードは………先ずは……比企谷八幡」
「やはり人名だとかなり絞れるね。これは興味深い。黒歴史とは何だ?……それに、嘘告白?………本物?」
や、止めて!そんなの見ないで!
「フィリップ。寄り道すんな。……次はファング、それとロストドライバー」
左さんが言ってから、しばし間が空く。
「閲覧は終了した」
フィリップさんがゆっくりと目を開き、俺を見る。
「なるほど。理解した。ファングは君に惹かれ合い――」
言葉を続ける。
「………そのドライバーは大道克己から譲り受けた物なんだね」
続きはいつになることやら…………