ノッてきたのでこちらを投稿します。三人称視点は難しい。
比企谷八幡のその身は、白く覆われ、目は紅く、触ったら手が切れそうなくらい刺々しい躰になる。
「ひ、比企谷?」
この学校の教師である平塚は教え子の変貌に、目の前で起きている出来事に混乱している。他の生徒も同様に。
由比ヶ浜結衣と葉山隼人、戸部翔だけがギリギリ理解している。
――比企谷八幡がこれからまた闘うということを。
「すいません、先生。教室少し壊します」
八幡はそれだけ言うと、自身の敵を見る。
その姿はさっき財団Xと名乗った綺麗な女性とは似ても似つかない変わった姿である。
ナスカメモリはゴールドメモリと分類される。ガイアメモリの中でも最上級だ。そのメモリを腰に付けてあったバックルに差し込み、ナスカドーパント、レベル2になった。
八幡は軽く跳び、ナスカの首を勢いよく掴みそのまま外に力任せに放り投げる。
ナスカはそれに反応せず、受け身をとる。が、勢いがありすぎて教室の窓を突き破り、校庭に落下する。
「ひ、ヒッキー………」
「比企谷………」
結衣と隼人の心配そうな声が八幡に届く。
それに応えず、八幡は壊れた窓から校庭に飛び降りる。
立ち上がったナスカに、
「……ここから出ていけ」
低い声でそれだけ言う。その直後、思いきりナスカの腹を力を込めてぶん殴る。
その様子は急いで決着を付けようとしているようだ。
実際に八幡は早く追い出そうと急いでいた。急ぐのには理由があった。
ファングメモリはあまりの狂暴性を持ち合わせているメモリである。その力を理性で抑えているのが八幡の現状。
時間が経ちすぎると、その理性が徐々に削られ暴走する危険が高まるからだ。八幡の台詞で言うなら、波に呑まれる。
加えて、その正確な時間が分からない。
「残念ですが、それはできない相談」
しかし、余裕そうに八幡の攻撃をナスカは自分の剣で衝撃を受け流す。
「だったら力ずくだ」
八幡の右手首から約1mの鋭利なブレードが生成される。右手を前に構え、一気に飛びかかる。
ガキィィンッッ!!
八幡のブレードとナスカの剣が激しくぶつかり合う。火花が散り、互いにつばぜり合いみたいに踏ん張る。
その状態で攻撃をいなしながらナスカは八幡の腹に蹴りを入れる。
「ぐっ!」
思わず八幡は後退する。
例えファングの方が力も速さも上。でも、戦い慣れているのはナスカ。体捌きがナスカの方が圧倒的に上手い。
その差があるのは今の攻撃で八幡は理解した。
八幡がこの姿に変身した回数は僅か4回。
まずミーナと会った日。
次に照井竜に最初変身した時について後日詳しく事情聴取された日。裏ルートのドーパントが街を襲っていた。
その時は竜がサポートしながら八幡にドーパントを倒させた。
3回目は奉仕部+サッカー部と出掛けたあの日。
そして、4回目は――今。
本来、一般人の八幡には必要のない経験。それでも、この場で必要とされている戦闘の経験が足りない。
八幡には格闘技や武道も経験がない。
――――だったら、もっと速く、速く。強く、強く。
八幡の出した結論はごり押し。
今、自分のできることをする。文化祭や体育祭、修学旅行でもそうしてきた。そう自分に言い聞かせる。
手首からのブレードが消えると、空中にまた出現し、手に持ち換える。
「ふっ」
手に持ったブレードをブーメランの要領で投げる。
ナスカは真正面に飛んできたブレードを剣で弾く。ブレードは大きく上に軌道を変える。
――が、
「なっ!」
ここで初めてナスカがろ驚きの声をあげる。
何故なら、弾かれたブレードがナスカの背中を斬ったから。
その隙を逃さず、八幡は単調だが、一般人なら目に捉えられないスピードで蹴りを繰り出す。
ドゴオオォォォン!!!!
ナスカは腹にモロに蹴りを喰らい吹っ飛ばされる。
蹴りをした体勢を整えると、八幡の手に戻ってきたブレードを持つ。
このブレードは八幡の思い通りに動かせる。しかし、それに気を取られると、今度は八幡自身の動きが疎かになる。まだ自由にブレードと体を操れるほと程こなせない。
だから、斬ったら、動く。動いたら、斬る。その思考の使い方を竜から教わった。
「何故、俺を狙う?」
警戒は解かずに、先程の蹴りでかなり吹っ飛んだナスカに近づく。
「それを答えても意味があるのですか?もし答えても、君が我々に付いてくるわけないですよね」
「もちろん。ただ、俺なんかに興味を持つとはバカな奴らもいたんでな。気になっているだけだ」
「そうやって自分を卑下するのですか。……貴方は貴方の価値を知らないんですね」
「俺の価値?……ハッ!仮にそんなもんあったとしても、ゴミみたいなもんだろ」
「実に勿体ない。やはり実力行使しかないみたいです」
「だな。……っ!?」
それを口にした瞬間、ファングにより研ぎ澄まされた耳が何かの音を捉えた。
――――これは、エンジン音?
率直に八幡が思ったことがそれだ。
「おや、来たようですね」
「いやいや、マジかよ……」
その30秒後に総武高の校庭に3台の大型トラックが突っ込んでくる。
そこから八幡は知らないが、全員がマスカレイドドーパントが降りてくる。スーツ姿に覆面を被っている格好。数は100人以上。
八幡は唖然とする。
「増援か」
「すいませんね。私が早く来すぎたみたいです」
「おい!!」
野太い男の声が八幡の耳に届く。
「……はぁ。遅いですよ」
トラックの他に、この校庭に高級そうな車で来ている男がいる。
小太りだが、かなり筋肉質な男だ。
「悪い。カーナビが壊れて迷った。つーか、お前が早いんだよ。少しは協調性を持て!」
その男は叫びながらナスカに不満を漏らす。
「……おぉ!目標はこいつか!本当にファングになってらぁ!!」
財団X特有の白いスーツからメモリを取り出すと、マスカレイドの集団の中から、
『ビースト』
メモリの音声が鳴る。
その男はコネクタ手術を施されている部分にメモリを差す。
青い、獣のような姿になる。
ナスカにマスカレイド多数、それに八幡は実力も能力も知らないビーストがいるこの状況に一言、
「ヤバい……」
と、呟く。
持ち時間内に全員倒しきれるかどうか、残りの持ち時間も正確に分からない。窓から八幡たちを覗いている野次馬の生徒や教師も守らないといけない。
気持ちが逸る。焦る。
ゆっくりとマスカレイドとビーストは八幡に近づく。
「さて、比企谷八幡。こーんな状況ですし投降しますか?」
平気そうに立ち上がったナスカが提案する。
「……断る」
「果たして、本当にその選択は正しいのですか?」
「この学校の奴らを守りきれるか……ってことか?」
率直に思ったことを尋ねると、
「いいえ、違いますよ」
八幡にとって予想外の返事がくる。
「ここは進学校なのですし、1つ問題を出しましょう。我々が貴方を知ったのは8月頃です。何故我々は貴方を特定するのにこんなに時間がかかったのでしょうか?」
――8月。それは八幡が初めて変身した日のこと。今は2月だ。こんなに長い間空くとはおかしい。そう考える。
「答えは、なかなか貴方を探せなかった、です。我々も色々な仕事があるものでね。人員を貴方の捜索に割けなかったからですよ」
――ちょっとショック。俺ってそんなに影が薄いの?
しかし、次の一言で八幡の気は変動する。
「なので、慎重にバレないように貴方を調べた。…………時に、比企谷八幡、貴方はとても大事な妹がいるそうですね?」
「何を急に………………って、まさか……お前!!」
ナスカのその言葉で全てを察した。
――――妹が、小町が狙われている。財団Xに。
「………っ!!!」
突如沸き起こる怒りや焦り、不安の感情に理性が揺さぶられる。冷や汗が流れ始める。
このままでは我を忘れて目の前の相手に、後ろに集まっている集団や目の前のナスカに襲いかかってしまう。
でも、その選択をしてしまっては取り返しがつかなくなる。
暴走という波に呑まれそうになる八幡は無理矢理、理性を働きかけてその場に踏み留まる。
「……ガッ!……ハァ……ハァ……」
マスカレイドの集団はそんな八幡を取り囲む。
ナスカの隣に立ったビーストは、
「おい、俺の出番こんだけかよ」
「すいません。その代わり給料は多めにしますから」
「……ったくよー。せっかくだし、暴れたかったぜ。ファングと闘う機会なんざねーのによ」
ビーストの文句を聞き流し、ナスカは八幡に向き直る。
「………で、比企谷八幡。今度こそ、とうこ―――」
いきなりナスカの言葉が途切れる。それと同時に八幡も気づく。
――――上空から、何かが、来る!
見事にこの2人の意見は一致する。
「『トリガー・フルバースト!!!』」
突然降ってきた数多の光弾がマスカレイドに命中し、数を1/3減らした。光弾に当たったマスカレイドは地面に倒れている。
八幡、財団Xの前に現れたのは、仮面ライダーW、ルナトリガー。
Wは自身のバイクを飛行形態にしたハードタービュラーから降りる。
「おお!これがロストドライバーでのファングの姿かー。お前が八幡だよな?」
「この声……左さん?」
「おう」
『それにしても、本当に理性を保っている。驚きだ。だけど、少し危ういね』
「フィリップさん……?」
竜から話は聞いていたが、変身した姿を見るのは八幡は初めてだ。
『その通り。僕達は2人で1人の仮面ライダーさ。照井竜に聞いているだろう?』
「はい。……でも、スゴい違和感が」
「だろうな。ま、気にすんな。さあ、相棒。仕事だ」
『了解だよ、翔太郎』
そこでWは右半身は赤色に、左半身は銀色に変わる。ヒートメタルにメモリチェンジした。
「それにしても、早いご登場ですね。仮面ライダー」
ナスカが声をかける。
「まあな。見張らせてたし」
「えっ!」
思わず八幡は驚く。
翔太郎は八幡と別れてから今の今までずっとメモリガジェットに属するバットショットを用いて監視させていた。もしもの事を考えて。そして、悪い方向に的中した。
「良いのですか?今、攻撃すれば比企谷八幡の妹の命はないですよ?」
冷静にナスカは言う。が、翔太郎は同じく冷静に返す。
「八幡の妹には怖いお巡りさんがついてるんでね。ちゃんと保護してくれたよ」
その言葉で八幡、ナスカ両方は察する。
「えっ………。照井さんが?こ、小町は無事……?」
『もちろん。照井竜も君には世話になったと言っていたからね。このくらいは当然のことさ』
「良かった………」
心から安堵する八幡。その様子を見ながら、フィリップはナスカに問いかける。
『こちらからも質問がある。もう財団Xはガイアメモリから手を引いたのでは?』
「それを答えても我々に利益はありません。……ですが、別にいいでしょう。簡単ですよ。コストが良いからです」
「あ?コスト?」
と、翔太郎。
「ええ。コアメダル、セルメダル、アストロスイッチ、ガシャット………。我々が開発、またその手伝いをしていた物は軒並み金がかかるのでね。その点、ガイアメモリは設計図もあり我々なら簡単に製造できます。もちろん、他にも理由はあるのですが」
コホン、とナスカは咳払いをする。
「では、また別の研究を見せましょうか」
そこから取り出したのはその形状はまるで、
「…………錠前?」
八幡の疑問にフィリップが思い出すように、
『翔太郎、沢芽市でのあれに似ているね』
「あぁ。ロックシード……だったな」
そのロックシードと呼ばれる錠前が開かれる。
ジイイィィィ。ファスナーが開くような音がする。音の発生源は上空。何個も森のような空間への割れ目が存在する。
そこから出現した怪物は沢芽市で初級インベスと認知されていた。
数はマスカレイドのおよそ半分――50体以上ははいる。
「おいおい、多すぎねーか?」
あまりの数に翔太郎は文句を垂れ流す。
『そこまでして比企谷八幡を手に入れたい理由は何だ……?』
「フィリップ!それは後でだ。戦えるか、八幡?」
「はい」
小町の安全を知ったおかげでかなり落ち着いた。
八幡の脳内での波の勢いは変わってないが、踏ん張れる状態。まだどうにかファングを使えると判断する。
ブレードを再び構える。
――――第2ラウンドの始まりだ。
ええ感じの!サブタイがー!思い付かない!