ブラック・ブレット 《禍のハジマリ》   作:蟠竜

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天子というのは聖天子の打ち間違いではないです。そこら辺の理由はのちのち…


厄災の足音

天子の家系から双子が産まれるーーー

 

この様な事実は天子の血筋が始まって以来確認されていない。

天子に兄弟がいたことはあったが全て男。

産まれる女はただ一人、()つ真っ白い雪のような美貌を持ってこの世に生を受ける。

それこそが天子の血筋の証でもあった。

 

この双子は何か災いの元になるのではないか?

 

そんな考えを天童菊之丞(てんどうきくのじょう)は頭から振り払った。

己は()()様に仕える身。何があろうとおふたりを守り抜くのが自分の仕事であり誇りだ。

老い先短い我が身だが、存分に使って(いただ)こう。

 

「菊之丞。」

 

太子(たいし)様のお声が聞こえる。

 

「こちらに。」

「車の手配はもうしてありますか?」

「はい。表にて待機させております。」

 

太子様がこの日本を代表する方々の一人であるのは周知の事実だ。

ご公務も多く、お忙しい日々を送っている。

そんな彼女にも休暇は必要だ。と言っても別に遊ぶ訳でもなく気が付けば書類の整理をしていたりと、我が主ながらとても真面目な御方だと思ってしまう。

 

そんな月に3日の休日の過ごし方が変わった。

とある村に出掛けるようになったのだ。

たった3日だが、休暇が近づくと太子様と北斗様の瞳がとても輝いて見える。

 

短い家族団欒であるが、我々役人は出来るだけ長く太子様方が共に居られるように事前に用意し、動く。

 

「いつもありがとうございますね。」

 

もしかすると二十代だと言っても疑われないような、その美貌に我々役人は惚れているのかもしれない。そんな事を考えていると廊下の先に純白のドレス姿が佇んでいるのに気が付く。

 

「おばあ様!」

 

太子様の後ろから北斗様が飛び出してくる。

 

「あらまあ北斗。そんなに急ぐと転んでしまいますわよ?」

北斗様を抱き締めて笑っていらっしゃるのは現在の日本の象徴、天子その人である。

 

自分とそう変わらないお歳でありながら、その衰えない美貌と気品は感動を覚える程だ。まあ少々我が儘(わがまま)なのが玉に瑕と言えるが…

 

「菊之丞、今何か失礼な事を考えているでしょう。」

 

勘も良いから侮れない。

 

「いえ、全く。移動ルートを考えておりました。」

「ふふっ…まあいいわ。菊之丞、2人を宜しくお願いしますね。後これは七星達へのお土産。いってらっしゃい!向こうの方々にも宜しくお伝え下さい。」

 

北斗様達が産まれてから、自分は天子様たってのお願いで太子様付きとなった。

 

それから3年

厄災は確実に近づいていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

七星村は飛騨高山の山中にひっそりとあった。

見た目は閑散とした村だが、その()()は地下にあると言っていい。その地下には巨大な研究機関があり昼夜研究が続けられており、太子様の夫である健吾(けんご)様が研究の第一人者である。

 

「あなた!」

太子様がドレスを翻しながら抱きつく、

「おっと!一ヶ月ぶりだねお姫様。元気だったかい?」

 

「なーなーほーしー!!」

「おねーさまーー!!」

こちらでも熱い抱擁がはじまる。

 

「遠い所お疲れ様でした。」

そう言ってタオルを差し出してきたのは、七星様のお世話をしている我が妻、天童沙羅(さら)だった。

「ありがとう。そちらは変わりないか?」

「そうですね…七星様がなかなか外に出て遊んで下さらないのと、健吾様の食生活の乱れが悩みの種、でしょうか。」

沙羅が柔らかな笑みを浮かべる。

 

「あなたの方は?」

「特に変わったことはないが、色々と土産などを持ってきた。こちらは天子様より預かったものだ。」

「まあ!美味しそうなクッキーですこと。今お茶を()れできますね。」

 

見ればお姫様方はまだくっ付いている。

 

「北斗様、七星様。そんなにくっ付いていて苦しくないのですか?」

 

「苦しくないよ!」

「あったかいの!」

「お姉さまはいい匂いがする!」

「七星のほっぺたすべすべなの!」

 

この調子では帰る時は大変になるだろう。

先月、泣き喚く北斗様を車に乗せ、太子様が涙と鼻水で汚れた彼女のお顔を吹いていたのを思い出し

 

菊之丞は小さく苦笑した。

 

 

 

 

 




ちょくちょく微オリ設定ありますがご了承ください。
なんだか勘の良い人なら流れが分かってそうで怖いです笑
ちなみに太子様とは皇太子様のような立場です。天子様の娘で次期天子様ですね。
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