神様は過保護   作:茶ゴス

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「というわけで君には佐藤和真の面倒を見てもらう事になったんだ」

「お主にはこの間イエス君が持ってきたゲームに似た世界で出来ることは何でも出来るように、何でも使えるようにしておいたからそこまで難しい仕事では無いじゃろう」

「と言ってもあんまりやりすぎると今度は世界が壊れちゃうから、そこら辺はエリスちゃんの言う事をしっかり聞くように」

「はい、わかりました」


第一話

 それはキャベツ収穫祭という冒険者にとってはとても嬉しいイベントが発生した翌日のことだった。

 

 

「ですから、登録料は1000エリスなんです!確かに精巧な作りで貨幣としての価値はありそうですけど、他所の国のお金を出されても困ります!それにゴールドなんて聞いた事ありませんよ!」

 

 

 冒険者ギルドの受付ではある騒動が起こっていたのだ。

 当事者は二人、金髪で大きな胸を持ったギルドの受付であるルナと、ローブを身に纏い、大きな杖を持った男だった。

 

 

「それは困ったな……」

 

「世界共通の通貨であるエリスの方が一般的なのに、それ以外の物を持ってこられてもこちらの方が困ります」

 

「…………」

 

 

 言い合いの内容はギルド登録に関する手数料の事。男が差し出した金貨はこの国で扱うものではないが、明らかに貨幣として扱われる代物であった。

 時代が違うものかもしれない。もしかしたら物凄い値打ち物かもしれない。しかし、そう判断するのは質屋であり、受付ではない。だからこそどれだけ価値のあるものだろうとこの場においては無意味であった。

 

 しかし、男が懐からあるものを取り出した所で状況は変わる。

 

 

「なら、この槍を」

 

 

 明らかに懐から出すにはおかしい大きさのもの。青い矛先に金色の刺繍と赤色の宝石が埋め込まれた見るからに高そうな槍。実際にとんでもない特殊効果や攻撃力を秘めた槍だが、男はそれを躊躇なく手数料として差し出そうとした。

 

 

「ちょっとまったぁ!!」

 

 

 背後からスパン!と綺麗な音を奏でた平手打ちが男の頭に炸裂する。

 何事かと視線を向けてみればそこには息を上げる女が居た。

 

 

「こっち来て!!」

 

 

 そのまま女は男の腕を掴み受付から離れる。男の方は特に抵抗もせず、転ばないように女性に合わせて足を動かした。疑問符を浮かべたように頭を傾げながらだが……。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

「流石にそんな武器を差し出しちゃったら問題になるよ!」

 

「安くても15000G(ゴールド)で売れるんですよ?1000エリスくらいの価値はあると思ったんですけど」

 

「ありすぎるよ!寧ろ売ったらいけないレベル!」

 

 

 そんなに凄いのか…と呟く男を見て女は深い溜め息を吐くと金貨を2枚、男の掌に乗せた。

 

 

「今回は私が貸すよ。面倒を頼まれているからね!だから、君の持ってる武器は売っちゃだめだよ?」

 

「いや、何本もあるんだから別にいいんじゃ……」

 

「ダメ!神器レベルの武器まであるんだから大変な事になるでしょ!お金なら自分で稼げばいいよ!」

 

 

 息を荒らげる女に男はそれもそうか、と呟いて受付へと向かう。女はなにやら心配そうに男の後を追った。

 既にギルドに登録している身でありながら男の面倒も見なければならない女にとって、男は不安要素の塊であった。なんせ、あの面白いことには目がない神が関わっているのだ。普通であるはずがない。

 

 

「これでいいか?」

 

「はい。丁度1000エリスですね。では説明します。冒険者には各職業と言うものがございます。そしてこれが登録カード」

 

 

 受付が男の目の前に差し出したのは一枚の茶色のカード。色々と項目が書かれているがそれらは全て空欄となっていた。

 

 

「冒険者がどれだけ討伐を行ったかも記録され、レベルがあがるとスキルを覚えるためのポイントが加算されていきます。こちらの水晶に手をかざして登録を行います。どうぞ、かざしてみて下さい」

 

 

 男は受付の指差す水晶がハマった機械を見て、右手を水晶の上にかざしてみた。

 

 水晶が淡く光り、機械が少し動いて下にセットされたカードへと情報を刻んでいく。

 

 

「これで貴方のステータスが分かりますので、その数値に応じてなりたい職業を選んでくださいね」

 

 

 ものの数秒で刻み終えたようで、機械が停止したと同時に受付はカードを手に取った。

 

 

「えっと、リュウジン・セイヤさんですね。ステータスは………はぁぁ!!?」

 

 

 突然受付が大きな声をあげ、男は勿論、ギルド内に居る人たちがビクッと肩を震わせて受付へと視線を向けた。

 

 

「全部のステータスが大幅に平均値を超えています!ありえないですよ!スキルポイントもとんでもないくらいにありますし、これなら今すぐにどのクラスでもトップクラスになれますよ!」

 

「そうか……」

 

「クラスは何にでもなれますね。なりたい職業はなんですか?」

 

 

 受付に問われ男は困った顔をした後、後ろに居た女へと視線を向けた。

 

 

「えっと、エ……クリス様、どのクラスがいいのですか?」

 

「そ、そんなの私に聞かれても困るよ。まあ、彼のパーティの穴埋めをするならバトルマスター、あ、でもある程度色んなクラスを体験して色んなスキルを覚えられるなら覚えたほうがいいかも。転職は可能だしね」

 

「結局どれにすれば……」

 

「レンジャーとかオススメだよ!」

 

「じゃあそれで」

 

「わ、わかりました。ではカードをどうぞ」

 

 

 男は受付から渡されたカードを確認する。

 

【リュウジン・セイヤ】

 職業:レンジャー

     力:999

    体力:999

    魔力:999

 器用(知性) :999

    敏捷:999

     運:999

     SP:990

 

 

「どれくらい凄いかがわからない」

 

「……あの方達はやりすぎ……」

 

 

 思わずそう言葉が漏れてしまった女を誰が責めれようか。

 男はそんな事はどうでもいいとばかりにギルド内をぐるりと一瞥して、緑色のジャージを着た男が料理の乗った机の前に座っているのを見つけた。

 

 

「えっと、クリス様、あの方がそうなんですよね?」

 

「そうだよ。隣にいるのが女神アクア様だよ」

 

 

 誰にも聞こえない程の声量の言葉に男は頷いてその机へと近づいていった。

 ぐんぐんと近づいてくる男に気付いたのか、机に座っていた者は怪訝そうに男へと視線を向ける。それでも男は特に気にすること無く、大きな袋を緑のジャージを着た男、佐藤和真の前に置いた。

 

 

「食べてください」

 

「は?」

 

 

 袋から漏れたきのみや種を横目に和真は男の顔へと視線を向ける。見た目からして年は10代後半と言ったところ。黒く長めの髪を後ろに結び、真っ白なローブを身に纏っていた。

 

 

「あ、貴方は?」

 

「私は龍神聖也です」

 

「はぁ、これはどうもご丁寧に」

 

 

 どう聞いても日本人の名前に和真は隣でキャベツの割合が多い野菜炒めを頬張るアクアの肩をつかみ、聖也に聞こえぬように小さく声を発した。

 

 

「(どう聞いても転生者だよな?あれ)」

 

「(ちょっと和真さん?私今ご飯食べてるんですけど?邪魔するとかどういうつもり?)」

 

「(いいからあいつを見ろって!)」

 

 

 二人して聖也の方へと顔を向ける。

 銀髪の盗賊、クリスに何かを言われている姿がそこにはあった。

 

 

「(名前が龍神聖也って言うんだよ!もろ日本人じゃねえか!)」

 

「(なら新しい転生者じゃない?でも、それがどうしたのよ)」

 

「(いきなりきのみを食えって言ってきたんだよ)」

 

「(へぇ、和真さんが余りにも不憫だから食料を恵んでくれたんじゃない?それかお前はきのみ食ってるのがお似合いだって感じかも)」

 

「(それだったら、性格悪すぎだろ)」

 

 

 クリスとの話も終えたようで、二人の元に歩いてきた聖也に和真は恐る恐る声をかける。

 

 

「いったい、どういったご用件で?」

 

 

 悲しきはまるっきり初対面の人物を相手にした日本人の下からの対応。それを特に何とも思わずに聖也はコホンと咳払いをして朗読するかのように声を発した。

 

 

「佐藤和真様、何も言わずに貴方の上げたいステータスを10回分言って下さい」

 

「はぁ?」

 

 

 ますます意味がわからなかった。というよりも結局何の目的で話しかけているのかもわからない親切に。何よりも名前を知られている事に違和感を感じた。

 

 

「ほら、あれですよ。ゲームで言うステ振り値って感じです。それを10回分行えるんですよ」

 

「なるほど」

 

 

 何となく言っている意味はわかったが、どうにも怪しいと和真は思う。

 確かにステータスなんていうものがあるゲームらしい世界だが、そんな簡単にステータスを操作出来るのだろうか。よしんば出来たとして、人の不幸は蜜の味という言葉を残す程の日本人が親切にステータスを上げてくれるのだろうか。言ったら最後、全ステータスが初期値に戻るとかも十分に考えられる。

 

 

「…………じゃあ、この駄女神、いや、アクアの知性を一回分上げてくれ」

 

「……はい、わかりました」

 

 

 一瞬言いよどんだ男は袋から何かを取り出し、アクアへと差し出した。

 

 

「アクア様、これを食べて下さい」

 

「なに?私への貢物?いらないわ、そんな物。そんな貧相な物じゃあ私の祝福は与えられないわ」

 

「どうしましょう、和真様。拒否されました」

 

「アクア、黙って食え」

 

 

 うへぇ、と言いつつ手に乗せられた紫色の種をしぶしぶと口に含んだアクアはボリボリと種を噛み砕いた。

 

 

「………案外いけるじゃない。もっと無いの?」

 

「そんなことよりアクア。ちょっとお前のカード見せてみろ」

 

 

 どういうことよ、と呟きながら差し出すアクアからカードをひったくり、和真はステータスを確認した。

 

 

「…………ホントに上がってる!?」

 

 

 あのアクアの知性が!?と驚く和真を横目にアクアも自分のカードを覗いて驚愕する。

 知性が以前見た値よりも1だけ多くなっている。

 

 

「完璧な私のステータスが更に強くなってる!?」

 

 

 これ以上ステータスが上がることはなかった筈だったためその驚きは大きく、女神と言えど動揺は隠せないようだ。

 カードをさっさとアクアへと渡した和真は聖也へと詰め寄った。

 

 

「そ、それで後9上げてくれるのか!?」

 

「ええ。あ、でも一回カードを見せてもらえますか?」

 

「あ、はい」

 

 

 おずおず差し出された和真のカードをそのまま覗き見た聖也はふむ、と呟いた。

 

 

「レベルが9、それなら8回足して、後17回あげますよ。あ、スキルポイントでもいいですよ」

 

「お、おぉ!!」

 

 

 これぞまさに天命と言わんばかりに和真は歓喜の声を上げた。

 そして、どれが良いのかをしっかりと考えてから答えた。

 

 

「敏捷7,スキルポイント10で!」

 

「は、はぁ。ではどうぞ」

 

 

 今度は朱色の細長い、どこか唐辛子を彷彿とさせる種と丸い大きめの種を渡される。それを柿の種か何かだと思い込み、和真は一気に口に含み、噛み砕いた。

 

 

「ん……まずくはないが、さして美味しいというわけでもないな……」

 

 

 まあ、味にはさして期待をしていなかった和真は早速と言わんばかりにカードを確認する。

 

 

「おぉ、敏捷が21、スキルポイントは50も上がってる!」

 

「ほぅ、さすがですね。スキルポイントは固定ですが、敏捷の上昇値が全部最大とは」

 

 

 どうやらあの種の中には上昇量のバラツキがあるという口ぶりに、己の運の高さに良かったと声を上げた。

 そんな和真をほっときアクアは聖也へと詰め寄り、もっと出せ!とばかりに詰め寄った。

 

 

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