ダーティ・ウェイストランダー   作:たまごねぎ

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八話

 設定していた時刻に達すると腕部に嵌まるPip-boyがけたたましい音を鳴らす。それを聞き意識が覚醒した私は跳ね上がるようにして椅子から体を起こし右手のピストルを正面に向けた。

 

 ここ数日間で染みついてしまった動作。二百年前とは違い寝起きする時も安全が確保されてはいなかったので、この動作を身に付けざるを得なかった。

 

 銃をホルスターにしまうと私はパワーアーマーを装着し準備が終わった事を伝えにダンスの元へと向かう。

 

「起きたか。準備はできたのか?」

 

「ああ」

 

「では今から任務を開始する。目的地はアークジェットシステム。目標はディープレンジ送信機を無傷で回収する事だ」

 

 女性隊員と言葉を交わしたあとダンスは扉を開けて警察署の外へと出て行く。彼の後に続きネイトも外へと出た。

 

 時刻は四時。東の空から昇ってきた太陽が荒廃した大地を照らし出す。ヘルメットの口元にあるフィルターから入ってきた冬の冷たい空気を吸い込み頭と体に残っていた眠気と倦怠感を吹き飛ばす。

 

 先に外へと出ていたダンスは警察署前に並べられているレーザーライフルが置かれた遺体を収めたと思しき数個の袋に一瞬、視線を送ったが直ぐに外す。

 

「今から目的地へと向かう。私の後についてこい」

 

「了解した」

 

 彼の後に続いて私は予想外のアクシデントが起こらないことを願いつつアークジェットシステムを目指して歩を進める。

 

 

 ■■■■

 

 

 

「逃げろ!パワーアーマーを着たヤツに勝てる訳ねえ!!」

 

「時間稼ぎだ、モングレル犬共を離せ!」

 

 ネイトたちの姿を見るや否やレイダーたちは隠れていた場所から飛び出し逃走を図る。時間稼ぎのために使い潰されるモングレルにネイトは僅かばかりの憐れみを覚えた。

 

「来るぞ!」

 

 無論、向かってくるからには容赦はしない。ネイトは来襲した犬の群れにライフルを掃射。飼い主の逃げる時間を稼ぐ使命を果たしてモングレルたちは死んだ。

 

「惨い真似をする。キャピタルよりはマシだが……救いようのないヤツの集まりと言うのは変わらないな」

 

「……そうだな」

 

 

 ■■■■

 

 

「着いたぞ。アークジェットシステムだ。外部に保安機構は確認できないな、正面から進むとしよう」

 

「了解だ」

 

 犬たちとの戦闘から数十分のあと、私達はアークジェットシステムへと到着した。そして私達はディープレンジ送信機を回収するため施設内へと足を踏み入れた。

 

 Pip-boyは何の反応も示していない。たが気を抜く事はせずライフルを構え周囲に何か異常がないかを確かめる。

 

「パラディン、パワーアーマーの索敵機能に何か反応は?」

 

「いや、今の所は検知されていないな。だがこの施設に何者かがいるのは間違いないようだ。床を見てみろ」

 

 ダンスは床を指差す。床には積もった埃の上に複数人の足跡が残されていた。いや───人間の足跡にしては靴の裏の痕が無く形も四角い。この足跡の主は“人”なのだろうか。

 

「これは……」

 

「形から見て人間ではないな。……恐らくは第一世代の人造人間か」

 

「何だと?人造人間がいると言う事はインスティチュートの奴らもここにいるのか!」

 

 私の息子を連れ去ったと思しき集団に関係する名前を聞き、私は思わず声を荒げる。ダンスは私の言葉に否定の言葉を持って答えを返した。

 

「いや、その可能性は低いだろう。奴らが直接地上に出てきたと言う話は聞いた事がない。奴らは自分達の代わりに人造人間を使って何らかの目的の為に動いているからな」

 

「人造人間を捕まえて情報を吐かせる事はできないのか?」

 

「無理だな。我々も以前遭遇した人造人間を捕らえて情報を引き出そうとしたが、何をしようが情報は引き出せなかった」

 

「……そうか」

 

 ダンスの言葉を聞いた私は熱された心が徐々に冷めていくのを感じながら落胆の吐息を漏らした。冷静に考えてみれば捕まえて情報を吐かせようとした人間は必ず存在した筈、情報を引き出せていたら今頃インスティチュートは正体不明の組織などとは言われてはいない。

 

 胸の内に溜まったモノを息と共に吐き出し、私達は再び施設の探索を進める。一階を全て確認し目的のディープレンジ送信機がない事を確かめると私達は他の階層を探索することにした。  

 

「行き止まりのようだな。この扉を開ける手段がないかどうかこの部屋を探って見つけるぞ」

 

 肯定の頷きを返し、私は扉を開ける手段がないか探し始める。そして直ぐに扉の上部と配線で繋がっているターミナルを見つけた私はターミナルのロックを解除するとキーボードを操作し扉を開く。

 

 直後、開いた扉から金属製の人体模型に配線や機械の部品を取り付けたようなモノ────人造人間と呼ばれるモノが奥に複数体佇んでいるのを私は視界に捕らえると同時にPip-boyが敵性反応を検知する。 

 

 人造人間たちがレーザーライフルらしき銃器を構える前にネイトはグレネードを投じ、素早く近く遮蔽物に身を隠した。

 

 爆音が響く。人造人間たちがどうなったかはヘルメット内のモニタが教えてくれた。しかし今の爆発を聞きつけ増援が来たらしく敵性反応を示す赤い光点が接近してくる。

 

「私が先陣を切る!後に続け!」

 

「了解した!」

 

 ダンスは私の返事を聞くと同時に遮蔽物に隠れている人造人間たちの元へ走り出した。人造人間たちは自分達の元に突撃してくるダンスを優先的に排除すべきと判断したのかレーザーの青い光線がダンスへと集中する。

 

 しかし光の雨はダンスのアーマーに目立った損傷を与える事は無く青い弾雨を潜り抜け人造人間たちの元へとダンスは到達した。

 

 一番近くにいた人造人間の頭部を握り潰すと、機能を停止した人造人間を盾にしながらレーザーライフルを片手に熱線で彼らを仕留めていく。

 

 彼の後に続いてネイトも援護射撃を行いながら通路を進んでいく。

 

 そして熱線と銃弾によって複数体の人造人間たちはその全てがスクラップと化した。空になったマガジンを取り替えるとネイトは床に転がる人造人間の内の一体が所持していたレーザーライフルを拾う。

 

 試しに構えてみるが、どうにもしっくりこない。しかし光学兵器を所持しておらず只でさえ弾薬に困窮しているネイトには回収しない選択肢はなかった。

 

 二人はレーザーライフルの使用弾薬であるエナジーセルを回収すると人造人間の残骸を後に再び施設の探索を続ける。

 

 数十分の探索の後、私たちは施設の最上階へと辿り着いた。見る限りでは部屋は一つだけ、加えて今までの道中念入りに探しても見つからなかった事から目的の物がある確率は高い。

 

 ネイトのpip-boyが敵の反応を検知、モニタに表示されたマップに位置を表示する。通路の曲がり角から三体の人造人間が姿を現すのと同時に彼らの足元にグレネードが転がってきた。

 

 爆発の瞬間、一体の人造人間が上に覆い被さった。己の身体を緩衝材にして爆発の衝撃を緩めた人造人間は破壊されたが、他の人造人間は装備したアーマーによって健在だ。

 

 少し進んだ先の場所に隠れた相手を引きずり出すために二体の人造人間が進軍を開始する。しかし進軍してくる相手に彼らが何の対策も講じていないはずがない。

 

 通路を進む彼らは数秒後、仕掛けておいた地雷によって吹き飛ばされた。人造人間の残骸を踏み越えダンスの後に続いてネイトはショットガンに新しい弾薬を装填する。

 

「任務の障害となる存在を検知。排除に移ります」

 

 目的地へ辿り着いた二人を熱線の弾幕が出迎える。待ち伏せされていることに気付いていた二人は部屋のドアが開いた瞬間に近くに置かれていた分厚い金属製のデスクに飛び込むようにして身を隠した。

 

 空いている手で腰のホルスターから散弾銃を引き抜くと電磁警棒を片手に接近してくる人造人間に狙いを定める。

 

 装填されていたのはスラグ弾。頭部を吹き飛ばされた人造人間はそのまま床に倒れる。ダンスも人造人間が隠れる遮蔽物へと突撃を仕掛ける。

 

 人造人間のライフルから放たれるレーザーの出力ではダンスの装着するパワーアーマーの装甲を貫通することはできない。

 

 しかし人造人間もそれは理解しているらしく、最上階に来るまでの戦闘で奴らはパワーアーマーの弱点となる間接部に攻撃を集中してきた。

 

 ダンスはそれを踏まえて突撃する際に身を隠せる大きさの金属製のデスクを盾にしながら突撃する。二人は一方的な戦闘を終えると部屋の奥に備え付けられたショーケースへと歩いて行く。

 

 トラップが仕掛けてない事を確かめたダンスはターミナルを操作してロックを解除するとショーケースの中からディープレンジ送信機を取り出し、使える状態であるかどうかを確認する。

 

「使えそうか?」

 

「ああ。目標のディープレンジ送信機は回収した。一旦地上に出るぞ」

 

 私たちはエレベーターを使い施設の最下層から地表へと出た。施設に入ってから既に数時間が経過しておりオレンジ色に染まった太陽が施設を照らしていた。

 

 施設内の陰鬱な空気に嫌気が差していた私はヘルメットを脱ぐと外のひんやりとした空気を大きく吸い込む。

 

「任務完了だ。君の協力に感謝する」

 

 その言葉のあとダンスは手を差し出してきた。

 

「任務の際に君には何度も助けられた。私一人では数の暴力に屈していたかもしれない

 

「いや、私がいなくてもパラディンなら何とかなったと思うが」

 

「謙遜しなくても良い。お前の協力があったからこそ、この任務は達成できた」

 

 差し出された手を握る。そして固く握手を交わすとダンスは任務の助力に報いようと言い彼自身が改造を加えたレーザーライフルを私へと差し出した。

 

「感謝する。大事に使わせてもらうよ」

 

「当然の報酬だ。それよりも私から一つ提案がある」

 

 私がその提案とは何かを尋ねるとダンスは提案─────B.O.Sに参加しないかとの提案を持ちかけてきた。

 

「任務中のお前の活躍を見る限り、B.O.Sの一員になれる資質がある事は疑いようもない。どうだろうか、B.O.Sに入りこの世界に生きた証を残してみないか」 

 

 ダンスの提案を受け私はB.O.Sに入隊した場合どのような事をするのかを質問した。私の問いに対しダンスはB.O.Sに入隊した場合、私はダンスの部隊に配属される事になり戦前のテクノロジーの収集や地上に蔓延する人に仇なす化け物たちを倒す任務が課せられる。

 

 そして入隊し、実績をあげればダンスが纏うパワーアーマーなどの強力な兵装を使用する事も許可されるらしい。

 

 一考に値する提案。そして考えを纏めた私はダンスに答えを口にする。

 

「すまないダンス。貴方の申し出は嬉しいが俺にはやらなければならない事がある。その事に決着を着けた時にまた考えてみるよ」

 

「分かった。少なくとも私は当分の間、ケンブリッジ警察署に留まることになるだろう。良い返事をもらえることを期待している」

 

「ああ」

 

 ダンスは深く頷く。二人は別れの挨拶を交わすと各々の道を進み始めた。去り際にネイトが入隊してくる時を楽しみに待っていると言い残すと部隊の仲間が待つ警察署への道を歩いて行く。

 

 そして、私は再びダイアモンドシティへの旅路を進み始める。目的地までは、あと少し。

 

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