IS整備士志望の僕がISを動かしてしまった 作:モップー
僕があの検査でISへの適性を示した後、IS学園入学の手続きがなされた。
検査官の女性は、まさかもう1人のISに乗れる男子が現れるとは思っていなかったのか、お世辞にも迅速とは言えない対応をしてくれた。
その後俺は、黒塗りの車に乗せられて一時身柄を拘束された。
まあそりゃあそうだ。 自惚れでもなく、貴重な男性IS操縦者なのだから。
その後IS学園長なる人と会って、入学が決定。
僕の親族は要人保護プログラムを受けることになるらしいが、僕には親族が1人もいない。 いるのは親代わりの院長ぐらいだ。
そして僕は、卒業式を終えた日からこのIS学園の寮に住むことになるそうだ。
2名の男性IS操縦者のうちの1人はブリュンヒルデの弟… あ、ブリュンヒルデってのはISの世界大会のあらゆる部門での優勝者を示す。 織斑一夏くんの姉、織斑千冬さんがブリュンヒルデなのだ。
そしてもう1人… つまり僕は一般的な中学三年生。
どちらが狙われるのかは考えずともわかる。
そして、卒業するまでの間も僕にはボディーガードがつくそうだ。
やりすぎかと思うかもしれないが、世界に2人しかいない存在なのだ。 これも自惚れでもなく普通の対処だと僕は思う。
僕はそんな、入学前から息の詰まる思いをして卒業式を迎えた… いや、迎えてしまった。
卒業証書を受け取り、後輩たちに見送られて体育館を出て行く。
僕は家に帰って、すでに整理された荷物をIS学園の用意した運送車に乗せて送ってもらい、ある孤児院に向かった。
僕が小6まで暮らした最初の家でもある。
呼び鈴を鳴らして少し待つと、中から見覚えのある老人が出てきた。
その人が俺の父親代わりである、院長の乾 源治さんだ。
「おお、京司くんか。」
「ええ、久しぶりですね、乾院長。」
乾院長は昔を懐かしむように目を細め、その優しい目で俺を見た。
「昔はあんな泣き虫だった君が… こんなに成長して… 中学校を卒業して… もうとっくに私の背も追い越してしまうとは… 月日が経つのは早いものだ。」
「乾院長も随分とお年をとられて、まだ孤児院を続けるんですか?」
「ああ、私がこの子たちの面倒を見なければならないのだから。 …京司くん、君は大丈夫かね? ニュースを見る限りではかなり大変なことになっているようだが…」
僕の情報は、当然ニュースで流れまくった。 おかげで俺は毎日朝のニュースで自分の顔を見る羽目になったのだ。
「ええ、まあ大丈夫です。 おっと、もう電車の時間か… では僕はこれで失礼します。」
「また休日にでも来てくれ、京司くん。 元気でな。」
「乾院長こそ。」
一礼をして背を向ける俺だが、乾院長が何かを思い出したかのような声を上げた。
「もう、IS学園長にはあったかね?」
「ええ、会いましたよ。」
「そうか… 轡木 十蔵、IS学園長の亭主であり、実質IS学園を支配している人物だ。 彼とは古い友人でね、何かあれば頼るといい。 私の名を聞けばきっと、力になってくれるだろう。」
「はい、ありがとうございます!」
今度こそ、乾院長に手を振って駅に走る。
ホームに着くと、ちょうど電車が来たところだった。
すぐに乗り込み、近くの席に座る。
通勤、通学の時間帯からは外れているので、会いた席が結構あるようだ。
ここから乗り換えまでは30分程度だ。 カバンから本を取り出して読み始める。
乗り換え駅が来たので、降りてからモノレールに乗る。
初めて乗るよ、モノレール。 なんか怖い。
本でも読んでるか…
『次はIS学園前、IS学園前』
車内アナウンスを聞き、本をしまう。
もう少しで僕のりょうぐらし!が始まるわけだ。
1.2.3年で寮が分けられているから、人に会うことは殆どないだろう。
IS学園の生徒はこの時期にはもう部屋替えを行って、1つ上の学年の部屋に移動しているらしいから部屋も空いている。
電車から降り、すぐ目の前のIS学園に向かって歩く。
足取りは重い。 当たり前だろう、ISに乗れるのは嬉しいがここから先完璧に女だらけの空間なのだ。
織斑一夏はしばらく自宅通学らしい。 憎い、あまりにも憎いよ織斑。
などと、不条理な憎しみを心の中でもう1人の男性操縦者にぶつけながら量の中に入る。
すでに手続きは完了しているので、あとは寮監の先生から鍵をもらって部屋に行くだけだ。
ちなみに、一年の寮監は織斑千冬先生らしい。 ブリュンヒルデ殿が寮監とはありがたいが、めちゃくちゃ怖そうだ。
学園寮の扉を開け、寮の中に入る。
うわっ、凄い。
寮の中はなかなかに豪華で、まるで高級なホテルのようだ。
「君が閏 京司だな?」
後ろから聞こえた声に振り返ると、そこにいたのは黒いレディースのスーツを着た、黒髪の女性。
間違いない、織斑千冬その方だ。
「あ、どうも、僕が閏です。 あなたは織斑千冬さんでよろしいですか?」
確定だが確認はとっといたほうがいいだろう。
「いかにも、私が織斑千冬だ。 織斑先生と呼んでくれ。 さて、ついてきてくれ、君の部屋に案内しよう。」
そう言って、背を向けて歩き出す織斑先生についていく。
やっぱりテレビ越しと生だと違うんだなぁ… なんてことを考えていたら、織斑先生が話しかけてきた。
「なあ、閏。」
「なんですか?」
「もう1人のIS操縦者… 織斑一夏のことだが、私の弟なんだ。 仲良くしてやってくれないか?」
「ええ、いわれずとも。」
「そうか… ありがとう。」
そこから会話は無く、織斑先生は僕の部屋まで案内した後に、鍵を預けて去って行った。
入学のシーズンだ。 多忙なのだろうな。
ガチャリと鍵を開け、部屋の中に入る。
2人部屋のようで、部屋の左側にベッドが2つ横に並んでいる。
その他には扉の左横にトイレとユニットバス、右側にキッチン。
部屋の右側には机とパソコンと本棚。
さらに両方のベッドの横には棚がある。
部屋の隅には、おそらく僕のものと思われるダンボールが3つ置かれている。
広い、とても広い。
そして、おそらく相部屋になるのは織斑一夏くんだろう。
とりあえず窓際のベッドをもらうとしよう。
ベッドに腰を下ろし、そのまま後ろに倒れて一息つく。
「よっと。」
足で勢いをつけて起き上がり、ダンボール箱を1つ開く。
中に入っているのはIS学園の制服に、私服が数着。
自分の方の棚の中のハンガーを使い、衣服を収納する。
あと2つのダンボールの中には教科書や参考書や本が入っていた。
本棚に収納する。
すごいな、この寮。
IS学園の財力の凄さをもう一度実感しながら、ベッドに倒れこんだところで、部屋の電話が通知を鳴らす。
「はい、208号室です。」
『閏、織斑だ。 連絡し忘れていたことがあった。』
「なんですか?」
『今日から三日後に、君のISの試験を行う。 この学校のアリーナで、君のIS操縦を見せてもらいたいんだ。 三日後の午前10時に第一アリーナに来てくれ。』
「はい、わかりました。」
『では、失礼する。』
電話が切れて、部屋に静寂がこもる。
ちらり、と壁にかかっている時計を見る。
「5時か… 買い出し行かないと。」
のっそりと立ち上がり、財布の中身を確認して部屋を出る。
もちろん鍵もきちんと閉めて。
一学期が始まるまでの間、この寮の食堂は使えない。
だから俺は一学期が始まるまでの間2年の寮の食堂を使うことが許されている。
実家に戻らずに、春休みを寮で過ごす人もいるらしく2,3年の食堂は春休みでも開いてるんだとか。
まあ、僕に先輩からの好奇の視線に耐えながらご飯を食べる度胸はないので、自分で食材を買ってきて料理をすることになる。
金については問題ない、両親と祖父母の残した遺産が十分に残っている。 よほどの贅沢をしなければ3年間、バイトをしなくても不自由無く暮らせる。
確かIS学園からモノレールに乗って、すぐのところにショッピングモールとスーパーあった。
多分そこで買えるだろう。
少しモノレールに乗っていると、すぐに着いた。
そこから少し歩いて、ショッピングモールに向かう。
-25分後-
安い。 え?なにこれ、安い。
ショッピングモールの食品店で、僕は驚いていた。
なんせ、そこらにあるものがものっそい安い。
「今日の晩御飯は… 唐揚げにしよう。」
メニューを決めて、必要な品々を集める。
ついでにカップ麺や、冷凍食品、食パンなどを買い揃える。
僕はそのまま、上機嫌でモノレールに乗ってIS学園に帰って行った。