IS整備士志望の僕がISを動かしてしまった 作:モップー
カーテンの隙間から陽の光が入る部屋の中。
僕はアラームを叩いて止めながら起き上がって目をこする。
「あれ、ここは… あ、寮か…」
寝起きは極度に頭が悪くなる僕は状況を飲み込むのに少しの時間をかけ、IS学園寮での初めての朝を迎えた。
気だるい体を無理やり起こし、布団を剥ぎ取ってベッドから立ち上がり、歯を磨くために洗面台へ向かう。
しばらくボーっと歯を磨き、洗面台へ水を吐き出して歩きながら服を脱ぐ。
そのままタンスの中にあるジーパンとシャツとパーカーを着て、ベッドに座り込む。
「あ、コーヒーないや。」
僕は朝は小食で、ホットコーヒーを一杯だけ飲めば昼まで十分だった。
しかし、昨日の買い物でコーヒー関連の品を買い忘れてしまった。
今から行っても空いてないだろうし、自動販売機はあるが缶コーヒーでは物足りない。
「2年の寮に行こうかな…」
さすがに長期休みに家に帰らない人はそうそういまい、それにコーヒー一杯飲んで帰るだけだ。
財布を持ち、部屋の鍵を掛けてゆっくりと廊下を歩く。
スカスカの学園寮はなかなか面白い、左右にある部屋から全く人の気配を感じないからだ。
寮の一階まで降りて、自販機のコーナーを通る時に織斑先生を見つけた。
「あ、おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
昨日と変わらず、レディースのスーツを着ている。
「…何故自販機の前で腕を組んで仁王立を?」
「いや、ブラックと微糖どっちにしようか迷っていてな。」
「へえ…」
「そうだ。 この際君に決めてもらおう。」
「…え? いや、なんで僕が。」
唐突に買うものを決めろと言われましても、そもそも何故僕に。
「自分では決まらないのなら他人に決めてもらおうと思ってな。 頼む。」
「…じゃあ、僕が昔先輩に教えてもらったやり方で。」
「どうするんだ?」
「まずは、適当に選択肢の片方を買っちゃうんですよ。」
そう言いながら、僕はブラックの方を押す。
「ブラックか。」
「ええ、それで人間は拮抗してる選択肢の片方を選んだ場合、選ばなかった方を欲しがるようです。 ですから… どうぞ。」
会話をしながら120円を自販機に入れ、微糖を購入して織斑先生に渡す。
「選択肢を二本とも買って、選ばなかった方を渡すんです。 2人いないとできないのが難点ですけどね。」
「なるほど、確かに微糖が欲しくなったな。 ありがとう。」
そして、この方法に付き合う際に自分の飲みたいものを先に選ぶのがミソだ。 適当に選んだように見えて、僕は自分が飲みたいものを最終的に選ばれない方にしたのだ。
ホットでもないし缶コーヒーだが、この際よしとしよう。
「ああ、そうだ。 午後からアリーナの使用許可を取っているからIS操縦の練習をするか?」
「え、いいんですか?」
「構わん。 アリーナは空いているし、試験の前にISに乗っている生徒なんてごまんといる。」
「指導は誰が?」
「私が、と言いたいところだが代理を頼むことになった。 用があってな。 一時半に第一アリーナに行くといい。」
「そうですか。 ありがとうございます。」
「うむ。 ではな。」
織斑先生は飲み終わった缶をゴミ箱に捨てて、帰ろうと歩き出す。
「あ、そうだ。 織斑先生、体育館は使ってもいいですか?」
「む? 別に構わんが… 何をするのだ?」
「ちょっとアップをして行こうと思いまして。」
「感心だな。」
「ありがとうございます。」
暇だから午後までバスケでもしていよう。
織斑先生と別れて、再度自分の部屋に戻りシューズとボールを取ってくる。 水道はあるだろうから水筒はなくてもいいだろう。
僕はボールをくるくると指先で回しながら、体育館に向かった。
ちなみに、飲み物の決め方は実際に自分のやったことです。 まあ相手がいないので1人で二本買って飲むだけですが。