境界線上の鍛冶師   作:リクヤ

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ヴァカさん、ジェミニドラゴンさん、感想感謝です。


それでは第二話、ご覧下さい。


第二話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~あ、遅刻だな、これ」

 

 

奥多摩表層部の一角、一軒家に少年がいた。外ハネの入った黒髪の少年だ。

すると、肩のハードポイントから黒猫型走狗が飛び出し、表示枠を開く。

 

 

「今日の一限は……体育じゃねえか。やばいな」

 

『にゃー』

 

「自業自得ってか?」

 

『にゃー』

 

 

こくり、と頷いた自らの走狗…ミヤビに、少年は項垂れる。

 

 

「夕凪さんの所出たのがもう夜明け近かったからなぁ……ああ、まだ寝てたい」

 

『にゃー』

 

「ん~?どした?」

 

 

ミヤビが、グデ~っとし始めた少年に見えるよう、ある一方を指す。

少年はその促しに応え、そちら、窓の外を見ると、

 

 

「げぇ…リアルアマゾネス……!」

 

 

屋根の上を跳躍で進んでいくオリオトライから見えないよう、静也は咄嗟に身を隠す。

 

 

「いや、何で隠れた俺。っと、しゃあねぇ、他の奴らも来たし、さっさと準備して追いかけるか。ミヤビ、中入っとけ」

 

『にゃー』

 

 

一鳴きしてハードポイントに入っていくミヤビを見届けると、少年…篠宮・静也は準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は、経ち、多摩の企業区。浅間・智はオリオトライに向けて弓に矢をつがえ、狙いを定める。

 

 

「―――会いました!」

 

 

放つのは神音借りという術式で高速化と追尾などの能力を付与された矢。

 

 

「行って!」

 

 

対し、長い跳躍で宙に居るオリオトライは長剣を首元に構え、鞘から刃をわずかに覗かせる。

それを見た智は、声を上げた。

 

 

「障害払いの回避性能も添付した矢です! 切り落とそうとしても回り込みますよ!」

 

 

その言葉通り、矢は長剣を回り込み、横滑りに近い形でオリオトライへと向かう。

ペルソナ君の肩から撃ったため、このままでは顔面に当たるが、そんな余裕が通じる相手ではない。

 

……治療をうちで担当すればいいですね。えぇ、もちろん有料で。

 

ともあれ、

 

……やりましたよ父さん! 今日は蛮族教師撃沈祝いで夕飯は豪勢に行きましょう!アイス食べても大丈夫!

 

 

そう思いながら矢を視線で追うと、矢はこちらからちょうど長剣の陰になる位置で光を炸裂させた。

皆が、やった!と声を上げる中、浅間だけが目を見開いて叫んだ。

 

 

「違います! 当たってません、手応えが軽すぎます!」

 

 

 

 

 

 

「――――アイスが!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ズドン巫女パワーを上回るとは…恐るべし蛮族パワー……!!」

 

 

後方の浅間たちに追いついた静也は、浅間を右肩に乗せたペルソナ君に並ぶように走る。

 

 

「誰がズドン巫女ですか誰が!! ―――じゃなくて、今まで何やってたんですか静也君!遅刻ですよ!」

 

「いや、前の寄港地でいい素材が手に入って、一昨日まで何作ろうか考えに考えてたんだが、昨日やっと構想が練れてな?ちょっと徹夜して打ってたんだわ」

 

 

ははは、笑いながら虚空を見上げる静也。

 

 

「笑って誤魔化しても遅刻なのは変わりませんわよ!?」

 

「そうカリカリすんなって、ネイト。ほら、肉巻きお握りをやろう」

 

 

地面を走りながら声を上げたネイト・ミトツダイラに、静也は拳大の包みを放る。

 

 

「え、ちょ……あ、いい匂い」

 

「フフフ、ミトツダイラ、アンタ何餌付けされてんの? そう言うプレイがお好み――!?」

 

「違いますわよ! というか、プレイって何ですの――!?」

 

 

喜美が、そう高笑いを上げながら走る。

 

 

「俺もそろそろ行かないとまずいな、これ」

 

「うん! クロスユナイト君達の分もよろしく!」

 

 

静也がそう呟くと、後ろを走っていたトゥーサン・ネシンバラからそう声がかかる。

 

 

「Jud.ベルさん、ちょっとこれ終わるまで持っててくれ」

 

「う、ん。気、付け、て、ね?」

 

 

ペルソナ君の左肩に座っている向井・鈴に、静也は腰のハードポイントから外した包みを渡す。

 

 

「んじゃ、行きますか」

 

『創作術式:“鳴雷”――起動』

 

 

そう書かれた紋章が両足に現れ、砕けた瞬間。静也は瞬発し、まさに雷光のごとき速さで駆ける。

膝をついている点蔵たちを跳び越え、

 

 

「先に行く!」

 

 

Jud.、という声が聞きながら、更に走る。

 

……居た!

 

先に、オリオトライを見つけた静也は、さらに加速し、もう少しで追いつくところにまで近づく。

 

 

「あら、来たのね遅刻者!」

 

「遅刻した分、取り返させてもらう!」

 

 

静也は二本の長剣を取り出すと、地面を強く踏み、さらに加速を掛ける。

一気に左真横に並び、掬い上げるように右手の長剣を振るう。

走るため、前傾姿勢になっている今の体制では、オリオトライが避ける方法は限られる。

武器である長剣は右肩に掛けて背負っているため、体前面に持ってくるのは間に合わない。

故に、彼女は二つの行動をとった。

 

……跳んだ!?

 

一つは静也の長剣を避けるための体が水平になるような跳躍。

 

もう一つは、背負った長剣の柄を押し出すような手の甲での軽い打撃。

 

結果として、彼女は静也の長剣を避け、勢いのまま空中で一回転。更に長剣の鞘で静也の顔面に向けて打撃した。

 

オリオトライは着地し、後ろに向かって言う。

 

 

「残念だったわね!」

 

 

対して、鞘を左手の長剣を犠牲にガードしたものの、勢いを殺しきれず、地面に背中から倒れた静也はハンドスプリングの要領で跳ね起き、刀身の砕けた長剣をしまいながら言う。

 

 

「あっぶねぇな!? 折れたじゃねぇか! 剣が!」

 

「良いじゃない、替えがきくんだし」

 

「そういう問題じゃあねぇだろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

品川は暫定居住区ヤクザ事務所前、今回の授業についた三年梅組の面々は、此処に辿り着くと同時に倒れこんだ。

 

 

「はいはい、後からやってきて勝手に寝ない。で、えぇと、生きてるのは鈴だけ?」

 

「え? ……あ、いえ、あ、の、私、は、運んで、もらって、いた、だけですので、はい」

 

「いいのよ、それがチームワークとしての選択なんだから。――生存者一名、途中リタイアしたのもちゃんと救護してたみたいだし、二年の時よりはるかにいいわ」

 

 

はあ、と頷く鈴。その時、オリオトライの背後二十メートル、ヤクザ事務所の扉が開き、出てきたのは頭に角を生やし、三メートルはくだらない巨体を持った四本腕の魔神族だった。

それを頭をわずかに後ろにまわして見たオリオトライは、

 

 

「あら、魔神族も随分と地に落ちたわね。――ま、今は空の上だけど」

 

「誰だてめえ!」

 

 

大きく低い声が響き、鈴が身を震わせる。そして倒れていた皆が周りを見て、

 

 

「先生、マジでやんの?」

 

 

オリオトライは答えない。魔神族がしびれを切らしたのか、

 

 

「一体何だてめえら! うちの前で遠足か!?」

 

「ああ、先日の高尾での地上げ、憶えてる?」

 

「はあ? そんなんいつものことで覚えてねえなあ!」

 

 

そう、と彼女は呟き、身体を魔神族の方へと振り向かせ、

 

 

「訳も分からずぶっ飛ばされるのも大変よね」

 

「てめえ……!」

 

 

分厚い筋肉と強靭な骨格を使った時速百キロを超える速度でのチャージ。

それを前に、オリオトライは言う。

 

 

「じゃあ皆、これから実技ね。――先生が手本見せるから、よく見ときなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛮族教師が言葉とともに右足を踏みこんだ。

 

 

「いい? 巨体に筋力、装甲があっても、魔神族には致命的な弱点があるわ」

 

 

それはどの生物にも共通していえる弱点。

 

脳。

 

頭部を揺らせば、頭蓋の内側に脳がぶつかって神経系が麻痺する。いわゆる脳震盪だ。

 

そして頭蓋を揺らす効果的な方法は、頭部に密着しているものを打撃すること。それも、頭部からなるべく遠くにあるもの。

 

人間ならば顎の先端。魔神族ならば、

 

 

「よ、っと」

 

 

角の先端だ。彼女は魔神族のチャージを軌道から逃げて避け、剣を振るってチャージ状態で通過する魔神族の左角の先端を打つ。

 

わずかに魔神族の首が傾げられる程度の打撃。しかし、数歩進んだ魔神族は不意に転倒した。

 

チャージが制御できなかったわけではない。

 

……膝が震えてバランスを崩したか。

 

巨体は甲板を砕き、構造材をえぐって停止した。

 

 

「あ……!?」

 

 

魔神族は立ち上がろうとするも、腰が上がっても膝に力が入らない。

 

魔神族の前に、先生が立った。

 

 

「魔神族や大型の生物なんかは、こうなると脳の代わりに体の各部にある神経塊が働き出すから回復が早いの。だからそうなる前に、落ち着いて対角線上を強く打つ」

 

 

言葉通り、先ほどの対角線上…右顎を右に打った。

 

魔神族は防御もできず、首をぐるりと回して白目をむいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズシン、と音を立てて魔神は木床に倒れ伏した。

 

 

「まあ、ざっとこんなもんね」

 

 

オリオトライは慌てて絞められた事務所の扉を見ながら、

 

 

「あれ、警戒された?」

 

「そりゃまあ、こうも鮮やかにぶっ飛ばされたら警戒もするだろ、フツー」

 

 

静也はそう言いながら疲れた体を起こす。他の皆も同様だ。

対するオリオトライはというと、

 

 

「んー、どうやって突入するかなー。正面は固められてるだろうし、皆を引率するのに屋上から行くのちょっと難しいわねえ……」

 

「あの、引率ってなんですか先生」

 

「ん?社会見学で実技。今、手本見せたっしょ?」

 

「あんな曲芸できるかあ――!」

 

「大丈夫よ。これから嫌でもできるようになるから」

 

 

当たり前のことのように言う口調に、皆が青い顔をした。

 

そのとき、

 

 

「――あれ?おいおいおいおい、皆して何やってんの?」

 

 

少年の声に、皆が一斉に振り向く。そちらに居たのは一人の少年。

その少年の名を、誰かが言った。

 

 

「トーリ“不可能男”葵…!」

 

 

名を呼ばれた少年、トーリは笑みを浮かべながら、

 

 

「うんうん、俺俺。葵・トーリは此処に居るぜ?」

 

 

言った。

 

 

「しっかし皆、こんなところで何してんだよ。あ、皆も並んだのか!?」

 

 

彼が掲げた紙袋に、オリオトライが首を傾げ、

 

 

「さて君、色々言いたいことあるけど授業サボって何してたって?先生に言ってみなさい」

 

「え? まじかよ! 参ったなあ!」

 

 

トーリは紙袋から絵の描かれた箱を取り出す。

それを見た静也は呆れ顔で言う。

 

 

「お前それ、今日発売のエロゲかよ…」

 

「お、さすがシズヤ、分かるかよ! そう、R元服エロゲ“ぬるはちっ!”。しかも初回限定版だぜ!? 欲しいか!?」

 

「いらねぇよ。叩き割るぞ!」

 

「おいおい待て待て、落ち着けよシズヤ! って先生?」

 

 

トーリは肩に置かれた手を見て、笑顔でオリオトライに振り返り、

 

 

「先生、マジ顔してどうかした? あ、そっか、春休みの打ち上げで焼肉屋行ったとき、先生牛と結婚する勢いで肉食ってたの学長か麻呂にばれて教育的指導されたんだな。でも、焼いてる肉弾いてそのまま口に入れるあれ、よくねぇよ。シズヤにも言われてたろ? アンタはカルタ取り名人か! って」

 

 

皆がわずかに腰を引いて退避していく前で、オリオトライは口を開いた。

 

 

「…………あのさ、先生が何言いたいかわかる? ああ、わかんないか」

 

「何言ってんだよ! オッパイ揉ませてくれるんだろ!?」

 

「…………おいこら、君、なんか変なもの見えてない? その目に何が映ってる?」

 

「んー、今はこれだな!」

 

 

そういって、トーリは、オリオトライの両胸を五指で包んで押し上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…あいつ、死んだな。

 

俺は十年来の親友に黙祷を捧げた。

 

…思えばあいつにはいつも迷惑かけられてばかりで…あれ、これ黙祷捧げる価値もないんじゃ…?

 

そう思った俺は近くの奴らに小声で問う。

 

 

「おいお前ら、今トーリが死亡確定したわけだが、黙祷を捧げる価値はあると思うか?」

 

「ううむ、自分、エロゲ貸し借りで世話になっているで御座るが、それ以上に迷惑ごとを持ってこられたで御座るからなぁ…」

 

「拙僧も同じくだ」

 

 

軽く目を向けると、殆どがそんな感じだった。

 

そんな時、先生の胸から手を放して振り返ったトーリが切り出した。

 

 

「―――俺、明日コクって来るわ」

 

 

 

 

 

...next episode





というわけで第二話、いかがでしょうか?

今回は少し長くなりましたが、原作コピペの規約違反にならないか不安です。
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