また凶悪なものを…
◆◇
昼過ぎ、教導院前の階段で行われていた臨時の生徒会兼総長連合会議…静也曰く『意味不明会議』若しくは『謎会議』の途中、彼らの後ろ、校舎側から二つの影が現れた。
「酒井学長……」
少年たちの呼ぶ声に、おう、と返す猫背気味の初老の男性―酒井・忠次。そして、もう一つの影に喜美が声をかける。
「ミトツダイラ、アンタ酒井学長と一緒に三河に降りるの?」
かけられた影、ネイトは首を横に振り、いえ、というと、
「私、松平分家の水戸松平の領主ですけれど、それ以前に
成程…と皆が小さく呟いているところに、声がかかった。
「呼んだか?」
「うわぁ!?」
ネイト達の反対側、階段下から現れた静也に皆は驚きの声をあげ、静也は顔を顰める。
「そんなに驚くところか、これ?」
「そうじゃあないけど、タイミングよすぎるんさね、お前は」
静也と直政がそんなやり取りをしていると、トーリが酒井に言った。
「
「昔の仲間の呼び出しでね。――――酒飲んで帰ってくるつもりさ。三河はただでさえ新名古屋城のおかげで怪異でまくりだってのに、最近悪い噂有るから、長居しすぎて聖連に睨まれんのもねぇ」
と酒井がそこまで言ったとき、静也が思い出したように言う。
「というか、今さらだが何で俺まで呼び出されてんの? 忠次さんだけで十分だよな」
「十年ぶりに顔見たいんじゃないのかねぇ。お前、結構可愛がられてたろ、こっち来るときになんか貰ってたし」
ああ、そうだったね…と明後日の方向を見ながら言った静也に、長身の少年―シロジロ・ベルトー二が声をかける。
「篠宮、ついでで構わんから三河の流通を見てきてくれ。―――今年の三河は売りに徹していて、今も輸入業者が倉庫の取り合いをしている案配でな。駄賃は払おう」
「分かった。お前ら、三河で買っといて欲しいものとかあるか?」
静也が周りにそう問いかけると、
「自分に金髪巨乳物のエロゲを!」
「拙僧、姉物のエロゲをだな…」
「幼女! 幼女をお願いします!」
その他、化粧品や筆などの要求を表示枠にメモした静也は、トーリと酒井の話に耳を傾ける。
◆◇
トーリは笑みを浮かべて言う。
「最初はさ、もし彼女がホライゾンなら、俺は“彼女に近づく資格も無い”って、そう思ってたんだよ」
「…でもさ、彼女を見てたら、“いてくれるならそれだけでいい”と思って、んで、話をしたいとか、手を繋ぎたいとか、そう思って…」
「…一年見てたら、昔とかどうのとかは関係なくなって、彼女の頑張ってる姿に惹かれて、今はこう思ってるんだ」
「もし彼女がホライゾンじゃなかったとしても………何も出来ねえ俺だけど、一緒にいてくれねえかなあ、って、そう思ってんだ」
…そうか
静也は人知れず息を吐く。
…お前は、やっと折り合いをつけたんだな…
願わくば、彼の告白が上手くいかんことを。
願わくば、この平穏が崩れ去らんことを。
…俺にできるだけのことはするさ…
◆◇
「ま、頑張れよ。…俺らは三河だから。静也、行くぞ」
Jud.Jud.、と言いながら、静也は忠次を追って階段を下りていく。その背に、トーリが声をかけた。
「シズヤ~、夜八時からここで騒ぐんだけど、来られるか?」
「どうだろうな…。まあ、できるだけ早く帰ってこれるよう努力はするが」
「そっか。あ、セージュンにも今の聞いといてくれ」
「Jud.」
足を止めていた静也は階段の下にいる酒井のもとへ走っていく。
「何の話だ?」
「今日の夜、教導院で騒ぐんだとか。正純に来られるか聞いといてくれって頼まれた」
「…修繕が必要ないと良いねぇ」
「あいつらがただで終わらせると?」
「「…………」」
沈黙した二人の耳に、背後からネイトの叫び声が響いた。
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今回は文量少なめ。
前書きのは本屋で手に取った瞬間思わずつぶやいた言葉。
さ~、次回はどうなるだろうな~