森久保ォ!ヒーローになるぞ森久保ォ!   作:うどんこ

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見切り発車。
何か書きたくなったから書いてみます。


雄英目指すぞ森久保ォ!編
第一話


 個性とは一体なんだろうか。

 

 辞書を引いてみたらこう書いてあった。

 

 

 【個性】 (こ せい[ゐ]) [名詞]

 

 ・個人または個体・個物に備わった、そのもの特有の性質。

 ・個人性。パーソナリティー。

 ・先天性の超常能力。

 

 

 自分が産声をあげた世界では、全世界の人口の8割が辞書で言う3番目の力を持っている。

 それは生まれ持って人類が持っていたものではなく、ある日を堺に、唐突に持つようになったという。

 そして普遍的な意味での個性が十人十色であるように、その"個性"も十人十色だ。

 

 ありえない怪力。

 火を操る力。

 空を飛ぶ力。

 鉄のように固くなれる。

 触らずとも物を浮かばせる。

 

 それは本や映画で見る超常と遜色ないもので、

 人々は降って湧いた力に戸惑いながらも迎合していった。

 

 その結果として二種類のタイプの人種が生まれることになった。

 

 他人を助けるために力を振るう[正義の味方]、ヒーロー。

 法を犯してまで欲望のまま力を振るう[悪役]、ヴィラン。

 

 ありえるはずもない絵空事の世界が始まり、人々は混乱した。 

 だが、人間とは慣れる生き物だ。

 時間が過ぎるにつれ[現実]は[架空]に侵略され、[超常]は[日常]になっていった。

 今やヒーローが居ることは当たり前で、ヴィランが居る事も当たり前なのだ。

 

 しかし、私にとっては当たり前ではない。

 人々が慣れるよと言い張ろうと、無理なものは無理なのだ。

 私にとって超常は、超常でしかないし、超常は恐怖でしかないのだ。

 

 

 [超常]なんて要らない。

 [日常]でいい。

 

 

 ふとすれば、人を容易く傷つけてしまう"個性"なんてなくなってしまえばいいと私は思う。

 第一、今まで人々は"個性"なんて持っていなかった。

 だが、そんな"個性"がなくても生活は出来ていたのだ。

 

 確かに"個性"がもたらす力で、人々の生活は格段に向上した。

 折角持っている力を活用しようという気持ちは分からなくはない。

 個性を暴力ではなく、人の為に役立てようとする人には、私も尊敬の念を感じる。

 

 だが全員が全員、人の役に立つように使う、と言う訳でもない。

 モラルがある人ならまだしも、そうでない人にも平等に"個性"がもたらされるのだ。

 そしてモラルの有無に関わらず、その気がなくても、一つの切欠でヴィランに転ぶ事だってある。

 それは恐ろしい事であり、非常に不幸な事である。

 

 世界には、そんなヴィラン候補が何十億人も居るのだ。

 いつどこでヴィランが襲って来るのかと思うと、私は気が気でない。

 

 今、人に求められるのは強力な"個性"ではない。

 個性を使わないという"風潮"だ。

 今こそ人は元の人間に、元の日常に戻るべきなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕暮れ差し込むとあるシンプル過ぎるほどの部屋で、少女と男が白い机を挟み、向かい合って椅子に座っていた。

 

 長髪で無精ヒゲのくたびれた外見をした男は、冷たい目で手元の紙に目を通している。

 対する茶髪で、おどおどした様子がひと目で分かる少女は、膝に手をついて俯き、時々男をちらりちらりと見ては、また俯くのを繰り返していた。

 

 やがて、男がふぅ、と一息つくと、少女に対して紙を突き返す。

 少女はその挙動に肩を弾ませて怯えると、しっかりと紙を受け取り……おどおどしながら男の顔を覗き込んだ。

 男は逡巡する事もなく、さくっと少女に対して結論を告げた。

 

「再提出」

 

「ふぇっ!? ……え、う……な、なんで、ですかぁ……。

 自分の伝えたいこと……ひっ、ちゃ、ちゃんと伝えられてませんです……か」

 

 これで三回目の再提出。

 今までは男が発する圧力に、ただ言われるがままに書き直していた少女だったが、彼女にはもうどこを書き直すべきかが分からない。

 はっきりと、怯えながら男へと質問をした。

 

 一回目は一瞥して読むに値しないと言われて突き返され、二回目はポエムにするなと言われて突き返され、そして三度目はこれである。

 だがこんな内容でも、少女は試行錯誤して頑張ったのだ。

 自分が考えるヒーロー像を、気持ちを余す事なく紙に綴ったのだ。

 内心に不満を抱えながら、視線を合わせないように男へ伺う少女に対し

 男は冷たい目で見据えて返答した。

 

「確かに前二回に比べて多少マシになった。

 お前が考えている事も伝わって来ている。それは間違いない」

 

「じゃ、じゃぁ……いいんじゃ……」

 

 

「だが、一番駄目な部分がある。 

 ――ヒーロー養成学校への入学理由で、何で個性廃止論を論じてるんだお前は」

 

 少女の書いた小論文へ最大の欠点を突きつけると、少女は俯き呻くしかなかった。

 

 

「うぅ、だ、だって……わ、私そもそもヒーローになりたくないんですけど……」

 

「一番合理的な判断が『雄英』への入学だと言っただろう。

 お前にとってメリットが多いといろいろな先生からも説明されただろうが。

 それが嫌なら施設しかないぞ」

 

「ふ、普通の高校でいいんですけど……」

 

 ちらりと再度男の顔を覗き込むと、認められないと。と男の顔にはっきりと書いてあり、

 少女は頭を抱えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 少女の名前は森久保乃々。

 

 これは、彼女が最高のヒーローになるまでの話である。

 

 

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