初めて彼女を見たのは、組み分け帽子が歌を歌っている時だった。
今更聞く必要もないだろうと思い周囲を見渡していると、期待と不安で何とも微妙な顔をしている彼女が目に留まった。
普段とは違い少しだけおめかし(と言っても髪を下ろしたくらいだが)をし、黒いローブに身を包んでいる彼女は、何だか目が離せないほど綺麗に見えた。
そして私は恋に落ちたのだ。
――所謂“一目惚れ”というやつだった。
彼女の名前はミネルバ・マクゴナガル。生憎私が入った寮と仲の悪い、グリフィンドール寮の生徒だ。
その寮に選ばれたのならば、私とは違い彼女は勇敢であるのだろう。
そして頭がよく、運動も出来、努力も怠らない。彼女が純血だったなら、婚約を申し込む輩が跡を絶たなかったことだろう。言っては彼女に申し訳ないが、彼女が半純血で良かったと思ってしまう。
それでも彼女を狙う輩は多いのだが。
「やあ、ミネルバ。今日も綺麗だね」
「あら、リアン。朝にいるのは珍しいわね」
「君に会えると思うとドキドキして眠れなかったんだ。残念なことに、君と私の寮は授業があまり合わないからね」
そう言いながらミネルバの隣に座る。彼女も来たばかりらしく、皿の上にはサンドイッチが三つほど乗っていた。
「リアン、ここはグリフィンドール寮の席よ」
「少しでも君と一緒にいたいんだ、許してくれ」
「私に迷惑をかけるつもりなのかしら?」
ミネルバはため息をつきながらそう言った。彼女に嫌われたくないので潔くスリザリン寮席に移る。勿論彼女が見える席だ。ここは譲らない。
ミネルバの後ろ姿を見ながら食事を開始する。家にいた時よりも美味しく感じるのはやはりミネルバがいるからだろう。この前は初めて空が美しいと思った。
ミネルバのことを考えながらサンドイッチ(無論ミネルバの皿にあった種類のものだ)を食べていると、何人かのスリザリン生に睨まれる。暫くするとそのうちの一人がこちらを見ながら口を開いた。
「スリザリン生の癖に半純血のグリフィンドール生に話し掛けるなど、スリザリンの誇りがないのかあいつは」
「ふん、没落のウォルサムは余程優秀な血が欲しいのだろう」
「それに若い女の血を好むというだろう、
変身術の授業はとても有意義な時間だ。頭が良いなりに考えさせる授業をする先生と、ミネルバがいる。
ミネルバは優秀だ。術の理論を理解し、どうしたら早く習得できるか考えた末、杖の振りを正確にそして速くすることで授業中に魔法が使えるようになる。
出来たら前の授業の復習のためにまた杖を振り、先生に許可をとって予習をし、杖を振り、コツを教科書に書き込む。
ミネルバを見ながら(隣に座ろうとすると先生に寮側の席に戻される)私も杖を振る。私は魔法はそこまで得意ではなく、ミネルバのようにその日の授業中に出来ることは少ない。先生に一度相談したところ、「君が愛に溺れているからじゃ」と言われたが意味はわからなかった。
ミネルバを見ながら杖を振る、振る、振る。もう一度振ろうとしたとき授業が終わった。
明日は楽しい防衛術の時間なのだが、ミネルバがいないというだけでやる気が出ない。
恋とは怖いものだ。
マクゴナガル先生の旦那さんとは関係ありません。
主人公
リアン・ウォルサム
男
恋に恋したいお年頃