ソウルワーカー ~愛し愛されたSWたち~ 作:年始ミニ
昼下がりの公園は、眠気を誘う心地いい日差しに照らされ、いつもと変わらずのんびりとした時間が流れていた。
しかし、この平凡な日常はすぐに消えた。
近くの駅から急に人々の叫び声が聞こえたかと思うと、雲が暗く曇り始め、若い女性の悲鳴のような、空気を引き裂く強い風が吹き荒れた。
人類がかつて経験したことの無いような巨大な竜巻が起こったのだ。
竜巻は瞬く間に駅周辺のビルを薙ぎ倒し、道路を破壊し、大型マンションは木っ端微塵となった。
竜巻は、まるで何かの生き物が息をするかのように、破壊した建物や人々を飲み込んでいった。
ほんの数分前までここにあった公園は、跡形もなく消え去っていた。
竜巻は駅前の交差点で止まり、今までみたこともない奇妙な生物を大量に吐き出し始めた。
竜巻は数時間この異生物を吐き続け、最後には力尽きるように消えていった。
世界の破滅と彼らの物語はここから始まっていった。
俺は気が付くと、建設途中なのか、修理途中なのか分からない建物に囲まれた場所に立っていた。
「ここは?一体どこなんだ?」
その問いに答えるものは居らず、建物の間を吹き抜ける風の音だけが聞こえていた。
「なんだこれは、一体どうなってるんだ?」
やはりその問いに答えは聞こえてこず、聞こえるのは相変わらず風の音だけだった。
『こっちだ』
遠くから声が聞こえる...
少し不審がりながら、遠くを見ると半透明の幽霊擬きが浮かんでいた。
「誰だ」
『早くこい』
「見たことあるような気がするな。あの生意気なガキ」
そんなことをぼやきながら、俺は幽霊擬きの横まで走っていった。すると奴は瞬間移動しており『こっちだ』、とまた言っていた。
また奴の近くまで行くと目の前にはでっかい鉄の橋みたいなものが道を塞いでいた。高さ的には約2メートル。
『ここを飛び越えろ、飛び越えたらあそこに上れ』
そう言って幽霊擬きが指を指したのは5,6メートルはある足場だった。約2メートルごとに足場はあるがそれを飛び越えろとは無茶なことを言うもんだ。
そう思ってた時期が俺にもありました...
俺は軽くジャンプしてみると3メートルは飛び上がった。1度着地し、驚きを隠せなかったがほんの少し助走をつけて乗り越える。
そして足場をジャンプして上る。
するとあの幽霊擬きが突然横に表れた。
『来るぞ、準備しろ』
「来るって何が!?てか準備って!?」
そういうと俺は背中を蹴られたか殴られたかで、6メートルの高さから頭から地面に垂直落下。
頭から着地したが、首の骨が折れたり、脳震盪等で死んだりすることは無いようだ。痛みもゼロ。
いつの間にか右手で野太刀を握っており、いつでも戦闘準備が出来ていた。
すると目の前で黒い霧が集まり始め、狼の形をとり始めた。
俺は一呼吸して、奴らのところに突っ込んでいった。そして横一閃、軽く野太刀を振り回すと奴らは全て倒れていた。
「なんだこの力は...」
『この力は異界の存在に対抗するためのも、お前のものだ。立ち向かえ、彷徨し復讐の相手に...』
その声を遮るようにして聞こえてきたのは女性の声だった。
「早く!こっちよ!」
声がした方に視線を向けると女性と男性が立っていた。男の方はトラックに凭れて腕を組み、顎に手を添えている。女の方は普通に立っており、手を振っていた。
「おいガキ?」
どうしようか指示を仰ごうかと思い声をかけるがいつの間にか居なくなっていた。俺は立ち止まっていても仕方がない、ということであの女性のところに駆け出した。
「この子も、『空白』から落ちてきた?」
「おい、どういう事だ?空白って一体なんだ?」
その問いかけの答えは返ってこず、代わりに雷らしき物を纏い、左右で白黒に色が分かれたデカイワンちゃんが表れた。
「詳しい話は後よ!早くトラックに乗って!ここから離れるわよ!」
俺はトラックに乗せられ、奥に押し込まれる。
「急いで!覚醒体が追ってくるわ!」
その声と同時にトラックは急発進し、ワンちゃんから逃げようとする。
男の方が手をかざすと道路の一部が隆起し、ワンちゃんの行方を阻もうとする。が、ワンちゃんは華麗に避けて、さらにスピードをあげて追ってくる。
ワンちゃんが飛びかかってくると、女の方が手をワンちゃんに向かって付き出す。するとオレンジ色の光を放つ、そして急にトラックがジャンプした。そしてまた男が手をつきだし握ると、隆起した道路でワンちゃんの動きを止めた。
だが、すぐに抜け出し、またトラックに飛びかかってきた。
突然世界がフリーズする。
すると目の前にはアノ生意気なガキが立っていた。
『俺はお前、お前は俺。俺は誓約を証明する存在としてお前を守る。忘れるな、俺はお前、お前は俺。だから約束しろ、必ず俺を見つけ出すってな!』
そう言った途端にガキはワンちゃんに向かっていき、ワンちゃんを仕留めたようだった。
「今のは、一体...」
隣の男が呟く、呟いた途端に緊張の糸が切れたのか、俺はトラックの上で気を失った。