ソウルワーカー ~愛し愛されたSWたち~ 作:年始ミニ
頭が痛い...
俺の回りで誰かが喋っている。声の数からして四人ぐらい。
頭が痛い...
頭に響くのだ、止めてくれ、と言いたいがまだ目を開ける気になれない。けど、目を開けなければいけないような...
目を擦りながら上体を起こす。
「ん、んぅ?」
「イグニスおはよー!」
そう言った子の方を見ると白っぽい色の髪をし、回りにワンちゃんの幽霊みたいなのが2匹いる、そしてまだ幼そうな女の子だった。そして回りを見ると白に少しクリーム色を入れたような髪の色に、中二病になりかけの服装の男。それと、薄茶色でミディアムボブの髪型の子たれ目で凄く大人しそうで、天然っぽい。
そしてあと一人はトラックで俺を連れて帰ってくれたあの女性。髪の色はさっきの子と同じで、ロングヘアー。肩とか見えてて少し
「えっと...誰?」
「俺はアーウィン・アークライト。アーウィンって呼んでくれ、よろしくな」
そう言ったのは中二病になりかけの男だった。
名前まで中二臭いのはどういう?...
「ハル・エスティアです。ハルって呼んでください、よろしくお願いします」
ミディアムボブの子だな。座りながら礼をするぐらい礼儀正しい所をみると、やはり大人しい子なのだろう。
声的にもかなりタイプだな。
「ステラ・ユニベルだよ。ステラって呼んで!よろしく!」
元気いっぱいの女の子。そうとしか言いようがない位元気がいい女の子で素直そうな女の子。無邪気で、ムードメーカーに足りうる子だな。あと幽霊かわいい。
手を伸ばして撫でようとしたら...
「痛っ!?幽霊噛んできた!?」
「ふうちゃんが見えるの!?」
「ああ、見える。可愛いね、ふうちゃんって言うんだ。抱き締めてもいい?」
幽霊...ふうちゃんはフワフワと飛んできて、俺の体に引っ付いた。
てことで、もうギューって、ギューギューギューって抱き締めた。感触もフワフワでほんのりと冷たく、心地よかった。そしてついでに頭や顎を撫でると、心地良さそうに目を細めた。
「ありがと」
その一言でふうちゃんは腕をすり抜けていきステラの後ろに入っていった。
「最後に私ね?私はスタリーフォレスト連合医療部隊フォーチュン所属のミリアムよ。よろしくね」
最後はあのトラックで助け出してくれたえっちぃお姉さん。名はミリアムで、スタリーフォレスト連合の医療部隊フォーチュンなるものに属しているらしい。
一体なんぞや?そう思って口を開こうとしたら先に制されてしまった。
「難しい話はまた今度よ、あと1人眠ってる子がいるの、起きたらこっちに来るように言うわ。それと、今日、明日は自由にしてて?この敷地から外出許可は出てないけど、この敷地内にもゲームセンターとかあるから行ってみるといいわよ。それじゃあね」
ミリアムはそう言い残して立ち去っていった。今の話は彼、彼女らも始めて聞いたのか若干驚いた様子で聞いていた。
しかも敷地から出せないって、軟禁...か?つってもこの敷地内にゲーセン
さて、俺ちゃんの自己紹介がまだだったな。
「さて、自己紹介がまだだったな。知ってるだろうけど、俺はイグニス・ウィルソン。イグニスって呼んでくれ、よろしく。武器は野太刀、刃渡り110cmの刀だ。ハル達はなに使うんだ?」
そう言って自己紹介兼使用武器を聞いてみようの会。あわよくば更に仲良くなれちゃうかもよ?って魂胆。俺ってばあったま良い~
「私は剣使いますよ。ソウラムソードって言うらしいんですけど、まだ不馴れで上手く扱えないんですよね、えへへ」
「僕はふうちゃん達とこのギター!」
そう言って何処からともなく取り出されたのは少し歪な形をしたギターだった。ふうちゃんが元になっているのか、至るところに隠れふうちゃんが居たりする。
ギターか、暇なときにはよく弾いたものだ。楽器仲間が少なかったから一人でしか弾けなかったが、少しずつ上手くなったいくのが手に取るようにわかり、楽しかったな。ギター...まだ弾けるかな?色んな出来事があったからトラウマになりかけて弾けなかったんだよな。リハビリはしてみたんだか、役立たずで効果なし。もう二度と弾けないのかな?なんか悲し。
「イグニス?ふうちゃんが貸してみると良い!って言ってるから貸してあげるね!」
「ああ、さんきゅな」
そう言ってステラのギターを手に取る。
久々の弦の感触、ネックの太さもちょうど、この重量も久し振りに味わう。
いつもは頭に浮かんだフレーズをそのまま弾いていた為、曲と言うのを一切弾いたことがなかった。
そして久し振りのギターのお陰か色んなフレーズが頭に浮かんでくる。それを自分が思うように繋げて弾いてみるとステラもアーウィンも、ハルも驚いていた。
「なんか、ごめん。独学だからさ、下手くそだったよな」
なんかしょんぼり。
「ううん、全然下手じゃ無かったよ!とても良かった!ね!アーウィンさん、ステラちゃん!」
「ああ、上手かったぞ。あれが独学なんて驚きだぜ、生き生きしてたぞ弾いてるときのお前」
「うんうん!ふうちゃんの言いたいことがよくわかったよ!また今度2人でギター弾こうね!」
3人に励まされている。なんか、変な感じ...
「病院では静かにって習わなかったかしら!」
突如、この広い病室に女の子の大きい声が響く。
静かにしないといけないのはどっちだか...誰もがそう思ったことだろう。
彼女は黒髪ツインテールでジト目が純正らしい。格好や先程の口調、身嗜みからして結構お上品の家の出みたいだな。けど、性格には一癖も二癖もありそうな女の子だ。
「君は?」
アーウィンがキザスマイルを浮かべて歩いてくる女の子に問いかける。彼女は一瞬嫌な顔を浮かべたが、何事もなかったかのようにツカツカと歩いてきて、アーウィンを見たままベッドの前で止まった。
「私はリリー・ブルームメルヘンですわ。リリーと呼んでくださ...お兄様...生きてらっしゃったんですのね!」
おかしい...リリーは俺を見て『お兄様』と言った。ガッツリ目が合った瞬間お兄様って呟いた。俺には妹も弟も、兄貴も姉貴も居なかった完全なる一人っ子。隠し子を作るような親父でも無かったから腹違いでは無いだろう。しかもブルームメルヘンってあの有名な大富豪だろう。
「ブルームメルヘンってあの大富豪の!?」
ハルも気付いたらしい、その次にアーウィン。
ステラは首をかしげ分からない、といった表情をしている。
「リリー?知らない名前だな、兄貴と顔が似てるだけだろう?あんまし馴れ馴れしくしないでくれ」
「いいえ!お兄様の匂いと一緒ですわ!」
こいつは
流石にハルやアーウィンも、ステラもリリーをみてドン引きしている。顔が引きつっている、ステラに限ってはヤバい顔してる。
「はぁ。俺はイグニス・ウィルソン。リリーの兄貴でも、弟でもない。他人のそら似だ、この世界、この大陸に似てる奴は一人二人居るって、それがたまたまここに居るだけだろう?」
「それも...そうですわよね...」
途端にリリーは声のトーンを落とし、表情も暗くした。
ステラがリリーの分の椅子を持ってきて、リリーの袖を引っ張った。
「リリー?座って?」
「ありがとね、おちびちゃん」
リリーはニコッと笑ってステラの頭を撫でる。
ステラはニコニコしながら大人しく撫でられている。ステラはその場の雰囲気に敏感だな。雰囲気が暗くなると明るくなるように頑張ってくれるからとてもありがたい。昔何かあったのだろうか?
それからはリリーの為に自己紹介をして、明日全員で集まって遊びにいくことにした。
夕食はこの病院内にあるレストランに食べに行った。するとたまたまハルが食べてたので近付いていった。
「こんばんは、っていってもさっきぶりだけど。前座っても?」
「ああうん。どうぞ」
「どうも」
ハルはクリームシチューとバゲットを食べており、隣には何かの温かそうな飲み物が、置いてあった。
「なぁハル?今までで一番美味しいって感じたご飯って覚えてる?」
「えぇっと、お母さんの作るハンバーグだったかな。ごく普通の、何の特徴もないハンバーグだったけど、お母さんの作る料理はいつも美味しかったなぁ」
ハルは突然俯いて涙声になる。
「ハルには両親が居たんだ?俺には両親が居なかった。家族と言える人はたった一人、俺を高校生まで育ててくれた人なんだ。俺は子供の頃に捨てられ、何処かのおばさんに保護されたそうだ。
そうだっていうのも、中学1年までの記憶が一切無くてさ、なにも覚えてないんだ。2年になる頃に世界が鮮明に見えたんだ、何もかもね。けどその時には一人だった、机にある程度の金と手紙があってさ、また捨てられたのさ。
残してあった金が尽きかけていたある日、『うちの寮に来るかい?』って訪ねてきたお姉さんが居てさ、その人が俺にとっての母さんだった。二つ返事で着いていったよ、そうでもしないと生きていけなかったから。高校の学生寮だった。進学先も寮の関係で、寮を管理してる高校に通ったよ。
毎日俺の母さん...寮母さんがご飯作ってくれた、あの頃はホントに良かった。話し相手にもなってくれたし、買い物にも着いてきてくれた。
少し下品な話になるけど母さんはまだ20だったからさ、身体の関係も持った。それがバレて俺も母さんも寮を追い出され、路頭に迷った。それが終末の前日だった...朝起きたら母さんは何処にも居なくて、書き置きだけ残して、消えた。必死に探した、昼が来るまで走り続けた。目の前に居た、手を伸ばそうとした瞬間に気付かれてまた逃げられた。そして例の竜巻に飲み込まれたんだ。必死に追いかけたけど周りの人の波に飲み込まれて竜巻とは逆方向に、んで俺も結局は飲み込まれたって訳。別に俺の不幸自慢じゃないよ、そう言っても不幸自慢にしか聞こえないだろうけど」
俺はずっと俯いて話していた。
話が終わり、ハルの顔を見ると更に泣いていた。ハルの後ろにはリリーとアーウィンが立っており、悲しそうな顔をしていた。
「辛かったんだな、お前」
「同情はよしてくれ、あれでも俺は幸せだった。母さんが俺を救ってくれて、俺のために居なくなってくれて、俺を思いやってくれてたんだなって分かるから。
ごめんなハル、気分悪くなるような話して。
おやすみ。みんな」
俺は部屋に走った。エレベーターとか使わず、階段をかけ上がった。そしてだだっ広い病室のドアを開けて布団に潜り込んだ。
このだだっ広い病室にたった一人というのもなかなか堪える。
俺は申し訳無さで頭がおかしくなりそうだった。女の子の前で、しかも今日知り合った子に悲しくなるような話して、あんなに泣かして酷いことをしたもんだ。
明日からどんな顔して会えば良いのか分からない、アーウィン達ともだ。どこから聞かれてたかは知らないが、聞かれてることに間違いはない。
聞いてないのはステラだけ、けどステラと四六時中いる訳じゃないし、話し相手が欲しいってだけでステラを俺のところにずっと居させる訳にもいかないからな。
突如病室のドアが開いた。
布団から顔を出してドアの方を見ると、ハルがお盆に料理をのせて歩いてきていた。
「晩御飯食べて下さい」
ハルはそう言うと俺の机にお盆を置いて、椅子を俺の横において座った。上体を起こし、お盆の上を見るとハルが食べてたのと同じクリームシチューとバゲットが乗っていた。
情けないな、俺。女の子泣かした挙げ句、こんな気まで使わして迷惑かけて、ほんと情けない。
「さっきはごめんな、嫌な話だったろ?無理にとは言わないからさ、明日からも普通に過ごしてくれたら助かる。あとご飯ありがとう」
「ご飯頼まずに出ていったからさ、アーウィンさん達に持っていくように言われたの。
私やアーウィンさん、リリーさんやステラちゃんね、空白に飲み込まれる前の事はちょっとしか覚えてないの。だからイグニスさんがとても羨ましい。私達はお母さんと仲良く出来てたのかも、仲が悪かったのかも覚えてないの。私のお母さんは交通事故で死んじゃったけどね」
ハルはそう言って苦笑いする。
「無理に話さなくても良いよ、辛いこと思い出してほしくないから。て言っても目の前で色んな話したから説得力ないけど」
俺もまた苦笑い。
そして俺のお腹が鳴る。
俺とハルは大爆笑、さっきまでシリアスだったのが、腹がギュルルルルーって鳴ることによって、シリアスの雰囲気を消し飛ばした。
「冷えない内に食べて下さい、シチューは温かいから美味しいんですから」
「確かにな。いただきます」
俺は手を合わせて決まり文句になりつつあるいただきますを言う。
まずまずボリュームがあったバケットとシチューを10分程度で平らげ、まだ食べれそうな程お腹が空いていた。流石におかわりを貰うわけにはいかないため我慢した。
「ありがとう、ハルのお陰で食いっぱぐれないですんだよ」
ハルはニッコリと笑い、どういたしましてと言った。
それから二人で色んな事を話した。これからの事、リリーやアーウィン、ステラの事、あの化け物たちと戦うことについてなどなど。
色んな事を話しすぎて時間が9時前位になってきていた為、俺はハルに帰るように促して、病室備え付けのシャワーで汗と汚れを落とした。そんなこんなで結局9時半位にやっと眠れた。
そして朝起きると6時半位で、布団のなかにはステラが紛れ込んでいた...なんで?
咄嗟にステラを隣の布団に投げて移し、現実逃避兼証拠隠滅を果たしたのであった。
俺はまた寝た振りをしてたら、その後まもなくしてハルが布団に忍び込んできたが、寝返りをうって目を合わすとハルが声にならない声をあげ、ステラを放ったまま帰っていった。
「ステラ連れて帰ってくれよ...」
その呟きは誰にも聞かれることなく、この病室の静寂に掻き消された。