幻想郷は夢を見る。   作:咏夢

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書いてたら3000字を越えるという……。恐ろしいなアイツ……っ!

誰のことかはご想像にお任せします。
何にせよ少し遅くなりましてスイマセン。


残酷な星空の闘い

「わっ!そっち行ったよ!」

「分かってる!前見ろ前っ」

 

まだ飛ぶのに慣れない燐乃亜を心配するどころか、本当に危なっかしいのは私の方だった。さっきから燐乃亜に指摘されてばかりだ。

 

「にしても、いつまで続くんだこれ……」

「うん……耐久スペルとはいえ長いよねぇ」

「「…………」」

 

黙っていられない私達は、とりあえず弾幕の来る方に攻撃をしてみる事にした。

 

「"爆風シャイニーズフレア"っ!」

「"新月オールラウンド"!」

 

私と燐乃亜の放った光は混じりあって、一つの光線になった。威力は正直言って、一人分くらいにしか生らないだろう。

それでも数メートル先で、小さな爆発が起きた。私達は顔を見合わせ、ゆっくりと近づいていく。

 

アイツ――黒いローブの男がいた。

異常な程広がった口、夢で見たままの微笑。

そんな事も知らずに、燐乃亜は男に突っかかる。

 

「おい、あんたか?私らに意味も無く弾幕を飛ばしまくってたのは?」

「ククク……」

 

いかにも悪役な含み笑いに、燐乃亜は怪訝そうな表情で同じ問いを繰り返そうとする。が、男は口を開いた。

 

「あぁそうさ。私だよ、君と遊んでいたのはね」

「遊んでいた?私と?」

「あっはっはっ!本当に気づいていないのかい?どうして君がこの世界で、いきなり強大な力を手に入れたのか!?どうして無意識に人里を襲っていたのか?!」

「えっ……?」

 

無意識、だったのか。道理で非人道的な訳だ。本人に悪意など更々無かったのだ。男は、動揺する私達を弄ぶように次々とネタアカシをしていく。

 

「未熟な夢の迷い人のお前を操るのはとても簡単だったよ。それに君は……」

 

――死にたがっていたじゃないか。

 

その言葉を、燐乃亜が聞いていたのかは分からない。けれども、彼女の瞳は揺れていた。まるで何かに怯え、押し潰されるように。

 

――捨てろ!その生への渇欲を!

 

どうして気付かなかったんだろう。

どこか哀しい唄に、魂の叫びに、悲鳴に、どうして気付かなかったんだ。今更な後悔に襲われ、私は動けずにいた。男は厳かに続けた。

 

「さぁ、人数が多い方が楽しいだろう?君のお仲間さんも呼んであげるよ」

「な、かま……。!」

 

私が気付いた時にはもう遅く、霞んだ空中に幾つもの影が浮かび上がる。

私の仲間達は、この地に落ちるやいなや、思い思いに話し始める。

 

「こんな所にいたのか!」

「お二人とも無事ですか?!」

「ここは、無縁塚……?!」

「何でったってこんな所に……」

 

その他にも、驚きや戸惑い、色々な声が上がっていたが私には上手く聞き取れなかった。まるである思考に囚われたように、仲間を見つめる事さえままならなかった。

それに気付いた魔理沙と妹紅がそっと近寄ってくる。

何か勘づいているのか、魔理沙は私の肩を包むだけだったが、妹紅の方で事は起きた。

 

「えっ、と……大丈夫?」

「触るな……っ!」

 

あろうことか、燐乃亜は妹紅の手をはね除けた。その拍子に星がぶわっと舞い、妹紅は後ずさる。

当の燐乃亜はやはり目を見開いて、己の行動に恐怖を滲ませていた。

 

「おい、どうなってるんだよ魅空羽……」

「少し説明が必要よ?」

「え、あっ……うん、実は……」

 

事細かに説明する時間は無いかと手短に話したのだが、霊夢や妹紅はすべてを理解したようだった。

 

レミリアと美鈴は完全に臨戦体勢にあり、フランは魔理沙に分かりやすい説明を求めていた。

そして最後に咲夜の方を見ると、懐中時計を見つめていた。一見何をしているのか分からないだろうが、ここ数日紅魔館に居た私は知っていた。咲夜はいつも時計を見るフリをして周りをシャットアウト、考えに浸るのだ。美鈴が教えてくれた時は変わったクセだと思ったが、その冷静さが今は心強かった。

 

「話は済んだかい?お嬢ちゃん」

「はい。それと、お嬢ちゃんって気持ち悪いんですけど」

「おや、そうかい?」

 

いちいち鼻につく男だ。耐えきれなくなった私は、いっそ此方から仕掛けてやろうかと思った。その想いは伝染し、魔理沙と霊夢が臨戦体勢になる。

妹紅は少し迷っているようだったが、アリスが肩を叩いた。無言の訴えはあっさり受け入れられ、迷いの無い瞳が男に向けられる。

 

「さっさと終わらせましょ、これが目的じゃないんだし」

「それもそうだな……霊夢」

「……合わせなさいよ!」

 

刹那、二人は弾幕と共に飛び出していき、男は光の中で最期を迎えた。悪役には、それが当たり前の運命だ。誰もが手を下ろした中で、レミリアだけが不安そうな目をしていた。今朝の表情とはまた違う、運命を視る者の瞳に私は吸い込まれそうだった。

 

"イレギュラー"だ。男を表すならこれしかない。

私はそう思った。幻想を破った土埃に目を凝らすと、魔理沙が地面を抉って叩きつけられていた。霊夢もかなり弾かれたのか、私の頭上にいた。

 

「あり得ない……」

 

そう、あり得ないのだ。もはや光速と化した二人を弾き飛ばす等という奇行は。そんなこと、許されないと言っても過言では無いのだ。

 

「貴様……っ!」

「待てアリス!早まるな!?」

 

表情を歪めた魔理沙の制止も聴かずに、無数の人形と金髪青眼の少女が宙に舞う。そして散る。この間わずか一秒にも満たない。

 

言葉を発する間もなく、焔の塊が跳び上がって飛んだ。それ――妹紅は迂闊に近づく事はせずに、不死鳥を象る炎を立て続けに飛ばしていく。固唾を呑んで見守る中、男はそれを片手で振り払った。そして我が物顔で炎を操り、妹紅を燃やし尽くした。思わず小さく悲鳴を上げてしまうが、十秒も経った頃私の後ろで火柱が上がって妹紅が悔しさを滲ませて現れた。

 

「はあぁ……しょうがないわねぇ。行くわよ咲夜!」

「畏まりました!」

「あっ、私も行きますよ~!」

「ずるいよめーりん~!」

「全く……こあ、あれを」

「はい!これですね♪」

 

これだけの場景を見ても決して動じない三組の主従は、一気に空へ舞い上がる。

ふと美鈴の周りの空気、いわゆる"気"という物が違う事に気づく。いつも私と気さくに話している時も、寝ながら門番をしている時の微かな気とも違う。

ほんのりピンク色の霧は拳に集まり、渾身の一撃となる。その勢いで男を背後から羽交い締めにして、レミリアに攻撃を求める。

 

「お嬢様っ!」

「えぇ、"不夜城レッド"!」

 

躊躇無く放たれるオーラは、いつしか密度の高い弾幕と化して男と美鈴を貫く。美鈴の恐ろしいほどの忠誠心に身を震わせつつ、私達は身を寄せあって空を見上げていた。開けた空にはくっきりと紅い十字架が刻まれている。星とのコントラストがとても綺麗で……残酷だった。

 

「"殺人ドール"」

 

やけに響く宣言の声と共に周りの世界が一瞬反転する。何故か一人分の血を纏ったナイフが空を切り裂いて彼方へ消えた。

肩で息をする姉とその従者を背に追いやり、フランが音もなく前に出る。

此処からでは顔が見えないが、その感情を読み取るには握られた掌だけで充分だった。仲間を傷つけた者への怒り、そして微かな狂喜。

全てを語る隙は無い、フランは握った右手を前に掲げて勢いよく開いた。男を中心に"破壊"の爆発が起きる。

 

終わりを告げる沈黙に、皆が目を伏せる。ふと鋭い金属音が響く。ハッと目を見開くと、黙祷を捧げるような集団の先頭で一人、刀を必死に翳す少女がいた。刀一本と大きな弾幕一つ、当然すぐに弾幕は散った。しかし、あの大きさでは、この密度で立っていた私達に直撃すれば最悪全滅もあり得ただろう。

 

そこでまた私は気づく。殆ど皆が同時に上空を仰ぐと、そこには狂った笑みをさらに倍増させた男が無傷で佇んでいた。

 

「嘘、でしょ……?」

 

幼い涙声に地上に目を戻すと、そこには忠誠心に犠牲になった一匹の妖怪が倒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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