「さて……と。」
妹紅と私は現在、竹を少し登った所にいる。何故そんなおかしな所に居るのかというと、この先の地面は色々と罠が仕掛けられているらしいのだ。何でまたこんな人の来なそうな所にあるのか不思議だが、おそらく妹紅向けなのだろう。
が、当の本人はアスレチック感覚でそれを潜り抜けており、いざとなったら燃やせば良いし、とのことだ。
「ま、空から行ったら一発なんだけどさ。何となく、ね?」
「はぁ……?」
暇潰し程度の事なのだろうか。まぁいいや、と妹紅は呟いて空へ飛び立ち、私に手招きした。竹の先端を蹴って空中へ向かうと、眼下はほぼ全面竹だった。道らしい道も無く、全くもって区別の付かない景色の上を飛んでいく。何の迷いも無しに飛ぶ妹紅が、不安になってくる程だ。
「ん、不安か?誰でも最初は色々言ってたからな……」
「こんなところに誰を連れてきたりするって?」
「ははっ……実はこれから行くところは医者やっててさ。ちょっとヤバい奴らなんだけど、腕は確かだと思うよ」
「へぇ……!」
今の情報は着く前に知れて良かったと思う。そこからは直線距離だったためか、5分程度で和風の建物が見えてきた。こんな所に建物が……という感じだ。
妹紅は躊躇無く玄関前に降り立つ……直前に止まって、石畳を蹴飛ばした。すると、其所には何と大穴が開いた。一瞬、妹紅が蹴り破ったのかと思ったが、底に竹槍が覗いているのが見えて全力で前思撤回した。
「ったく……普通の来客が来たらどうするんだか……」
「その時は貴女が付いてくるじゃない?」
「ッ!!」
突如開いた玄関を挟んで、拳がぶつかり合った。いきなりの出来事に、暫く空中に留まっていると、
「……」
「え熱っ!な、何何!?え、ちょ待っ」
――相手が燃え尽きた。
埃を祓うように炎を消した妹紅は、私に向かって何もなかったかのように目線を向けた。そこで漸く反応が出来て、私は穴に落ちないよう妹紅の隣にそっと降りた。
「あ、連れてきてくれたんだ。それならそうと言ってよ~」
「はぁ!?いきなり殴ってきたのはどっちだよ!」
「……。」
もう今更何が起きても驚かない。そう自分に言い聞かせて、私はとりあえず妹紅を睨み付けた。今にも今度は本気の殴り合いを始めそうだったので、ついでに片手に魔方陣も出しておいた。
「……あー、うん。ごめん、燐乃亜」
「……そうそう。連れが居るんだっけね。待ってて」
なかなか察しの良い二人はすぐに手を下げて、妹紅は静かに上がり込み、相手方は廊下を歩いていった(「えーりーん!!!」)。
――――――
数分後、今度は違う人が迎えに来た。頭にはなんとウサミミが生えていて着ているのが制服という、何ともカオスな女だった。
「ど、どうぞっ!お師匠と姫は此方です」
「姫?って……」
「あーうん。さっきの奴。」
「お、おう。」
姫。こんな和風豪邸に住んでいるのだから、優雅なる大和撫子――と、言いたいところだが、先程の様子を見るにそうではないらしい。
木で出来た廊下を歩いていくと、妹紅がいつの間にか居なくなっていた。きっと姫か何かに拉致られたのか、と然程気にせずに歩いていく。
が、そろそろ本当に何かがおかしい。ウサミミは何も言わずに、私の存在が無いかのように進んでいく。かといって、私を追い出す訳でも置いていく訳でもない。奇怪な行動に目を奪われ、私は自分の置かれている状況にすら気づいていなかった。
気づくとそこはただの廊下では無くなっていた。
「えっ……?」
「ようこそ、永遠の回廊へ。燐乃亜さん」
「お前……っ」
「鈴仙・優曇華院・イナバ、ですよ。燐・乃・亜・さん♪」
「ッ!?」
幻想的な周りの場景を見渡していた私の目線が、無理やり鈴仙に奪われる。紅く赤くどこまでも続きそうな瞳に、私は一時的に支配される。数歩後ろに下がると、鈴仙は何か期待した目で私を見つめていた。
が、私には何が何だか分からない。誰か……特に妹紅が居ないかと、また周りを見渡す。
「ど、どうして……」
「?今度は何だ、ウサミミ」
「鈴仙・優曇華院・イナバ!というか、どうして私の"瞳"が効かないんです?!」
「は?」
「……うぅ。分かりましたよぉ……全てご説明しますから、そこに座って下さい……」
私は言われた通りに座る。と、同時にスラッとした脚とローファーが飛んでくる。咄嗟に横に転がって避け、すぐさま立ち上がる。
「何すんだウサミミ!?」
「鈴仙っ優曇華院っイナバっですよっ!」
「ちょっ!?」
本当に意味が分からない。連続で蹴りを入れようとしてくる鈴仙の足を、すれすれで避けながら考える。
確かに此所にはあの姫がいるし、何が仕掛けられてもおかしくは無いのだろうが。それでも唐突すぎる。あまりにも動機が不純すぎるし。
「お、おい!分かった鈴仙!優曇華院!イナバっ!」
「やっとっ呼んでっくれましたーねっ!」
「はぁっ!?」
どうやら名前を呼んでほしい訳では無かったようだ。飛び交う赤い光線を跳んだり飛んだりしながら避ける。とはいえ狭い廊下のような空間で、そう自由に動けはしない。
何も知らないのに、いきなり拉致られ、名乗られ、騙し討ちを受けて。正直言ってもう限界だった。
「……ろ。」
「え?何ですか燐・乃・亜・さ」
「失せろ。」
「ど、どうしたんですか?お、おこ?おこなの?」
「うるせぇっ!!!"新月オール……」
「そこまでよ。」
「ラウンド"って、誰か何か言った?」
「「ぎゃあああああ!!!」」
そこには私の懲らしめたかったウサミミと、別に関係なかった姫が、死に物狂いで光線を避けている姿があった。
……何だこれ。
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