新機動戦記ガンダムSEED DESTINY  -白き翼‐   作:マッハパソチ

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2つの世界、2つのコロニー落とし。

それは、何を想い、何を望み、引き起こされたのか。

結果は違えど、それらは確実に世界に変化をもたらす……。



第一話   混迷へ…

A.C.(アフターコロニー)195 OZ宇宙基地MO-Ⅱ

 

 

「大気圏に突入しました!」

 

リーブラAブロックの大気圏への進入を確認した兵士の報告がリリーナ、レディの耳に届く。

徐々に、しかし確実に地球へと降下していくリーブラ。このままリーブラが落ちれば地球に住む人たちは悲しみと絶望に苛まれる、地球とコロニーとの間で新たな争いを生み、悲しく惨めな歴史が繰り返されることになってしまう。

そうなれば、リリーナ・ピースクラフトの提唱する完全平和への道は断たれてしまうだろう。

絶望が管制室を漂う……。

 

―――突如、

 

「…っ! 先行する機体があります!」

 

別のモニターを見ていた兵士から告げられる報告。

 

確認すると確かにリーブラの降下線上にモビルスーツが一機まわり込んでいる。

 

「あれは……ウィングゼロっ!?」

 

 

 

 

「……っ!」

 

ヒイロはウィングゼロをリーブラの進行ルート上に着けると、そのままリーブラに正対しツインバスターライフルを構える。

 

「俺は……」

 

地球の引力に引かれながらの強引な姿勢制御。

 

剥がれ落ちていく装甲。

 

 

「俺は………」

 

悲鳴を上げる機体。

 

定まらない照準。

 

火花を散らし警告を鳴らすコックピット。

 

 

「俺は…………」

 

そんな、1%にもみたない可能性の中、

 

 

人々の希望が詰まった銃口が、

 

    ついに…… 

 

 

    ―――目標を捉える。

 

 

   

     「俺は死なないっ!!」

 

 

 

 

最大出力で放たれたツインバスターライフルが直撃を受け、バラバラに破壊されたリーブラ。

 

「やりました! 破片は、大気圏で燃え尽きます!」

 

兵士の声が管制室に響く。

次々と大気圏内でリーブラの破片が燃え尽きるのを見ながら、希望が管制室を包む。

 

(これで世界は、ようやく完全平和の道に進む事ができる)

 

レディ・アンは胸を撫で下ろし、今後の事に思いを巡らせ―――

 

「これはっ!?」

 

「? どうした?」

 

「それが……ウィングゼロ、反応をロスト。機影も確認できません!」

 

「何っ!…パイロット、パイロットは確認できるか!?」

 

「確認できません!」

 

(……っ、ヒイロ・ユイ……) 

 

 

  「大丈夫です」

 

 

落ち着いた、力強い声が聞こえた。

 

「彼は、生きています」

 

彼が生きていることを信じている。信じさせてくれる、そんな芯の通った言葉。

 

「……リリーナ様」

 

 

 

(ヒイロ……)

 

リリーナの見つめるさきには

未だ砕けた破片が流星となり光輝いている。

まるで、これからの世界を祝福するかのように……。

 

 

A.C.195.12.24 この日、地球側とコロニー側とで地球圏統一国家が協議制定され、

世界は完全平和へと歩み始めた。

 

 

 

 

C.E.(コズミックイラ)71 地球、プラント間における大戦はヤキンドゥーエ宙域での最終決戦は、双方供に大きな傷みを負いながらも地球連合側の停戦申し込みをプラント側が受け入れ一応の終わりとなった。

 

C.E.72 地球連合側とプラント側とで停戦条約としてユニウス条約が締結された。

互いに争いの燻ぶりを残したまま……。

 

―――そして、C.E.73

 

 

 

 

C.E.73 ユニウスセブン破砕現場

 

「なぜ気づかぬか!我れらコーディネイターにとって、パトリック・ザラの採った道こそが唯一正しき道ものと!」

 

「……!?」

 

ジンの一刀をザクのシールドで防ぎながら、放たれた言葉にアスラン・ザラは父であるパトリック・ザラを思い出す。

前大戦の際、自らの復讐のために地球と戦争を行った父パトリック、父の妄念に疑問を抱いたアスランは、父と袂を別ち、父の最後の引き金を断つことで彼の妄念を打ち消した。

 

「……っぐ!」

 

一瞬、自分の考えに気を取られ隙に、機体を押し弾かれ、ザクの右腕を切り取られる。

体勢を立て直すべく、敵機から距離を取ろうとしたとき、

近くでもう一機のジンと交戦していたシン・アスカの駆るインパルスに敵機が組みつき自爆をする。

 

「シンっ!」

 

爆発の衝撃で飛ばされるインパルス。

さらに、自爆した敵機の一部が破砕作業用具・メテオブレイカ―に直撃する。

破壊こそされなかったものの、傾いていくメテオブレイカ―、運の悪いことにぶつかった衝撃でメテオブレイカ―が作動してしまう。

結果、ユニウスセブンは上手く破砕されずに砕けない。

 

 

 

徐々に降下し大気圏へと突入するユニウスセブン。

 

「我らのこの想い、今度こそナチュラル共にっ!」

 

ザクの右脚に組みつき、離脱を許さないジン。

―――そこに、突如朱色の光。

体勢を整えたインパルスがザクの右脚ごとビームサーベルでジンを切り落とす。

 

ユニウスセブンの地表に叩きつけられ大破するジン、インパルスに掴まれ離脱していくザク。

 

スラスターを吹かし帰艦を急ぐインパルス、引っ張られていくザク。

 

―――が、その直後、

大気圏の中、すでに半壊しているザクは引力に耐えきれず、インパルスの手を離れてしまう。

 

宙に放りだされたザクは、ユニウスセブンと一緒に落ちていく、地球へと…。

 

 

 

 

ミネルバ ブリッジ内

 

ミネルバはユニウスセブンの破砕作業継続のため降下シークエンスを開始していた。

 

「インパルスと彼のザクは?」

 

「駄目です! 位置、特定できません」

 

ミネルバの艦長タリア・グラディスは未だ戻らない、二機のモビルスーツの所在を

ブリッジ左側で作業を行っている管制官メイリンホークに尋ねるが、

二機と2人のパイロットの安否はわからなず。心配しながらも、今行われている降下の指揮に再度専念しようと―――

 

 

「―――っ!前方にモビルスーツと思われる機影っ!」

 

していた直後タリアの耳にメイリンからの報告が入る。

今まさに心配していた二機のうちのどちらかと考えた矢先。 

 

「これは!? ……未確認機《アンノウン》です!」

 

再び予想を裏切る結果が報告される。

 

「っ! なんですって!」

 

ミネルバクルーにとって、先日、アーモリ―ワンにて発生した、所属不明部隊による3機の新型モビルスーツが強奪された件はまだ記憶に新しい。

 

「まったく、次から次へと、メイリンっ!そのモビルスーツの映像、モニターに出せる!?」

 

「は、はいっ!………映像でます!」

 

キーを操作しメインモニターに映像を映すメイリン、

そこに一機のモビルスーツが拡大されモニターに映し出される。

 

「―――これは!」

 

タリアはこれまで一度も見たことのない機体を見て驚愕をあらはにする。

一部隊を率いる長として、地球連合、オーブ、ザフトが開発してきた既存モビルスーツ

そのどれを取っても合致しない。

 

現宙域にはテロリストのものも含めザフト製のモビルスーツしか確認できない。

新型ということも考えられるが、ザフトの新型でロールアウト済みの機体は、

現在シンの乗っている、インパルスと、強奪されたカオス、ガイア、アビスの4機しかいない。

他はすべてカーペンタリアにあり、ロールアウトしていない。

 

「ガンダムっ!?…どうして……?」

 

タリアの後方からも声があがる。

 

カガリ・ユラ・アスハ―――オーブの代表としてアーモリ―ワンに視察にきていた彼女はモビルスーツ強奪事件に巻き込まれ、成り行きから、この艦に同乗していた。

 

C.E.で「G」と称されるモビルスーツに酷似した特徴的な頭部、

そして、全身が翼のようなものによって覆われている。

 

 

ミネルバクルーが見つめる中そのモビルスーツは一筋の流星となり地球へと堕ちて行った……。

 

 

 

 

C.E.73.10.3 停戦条約締結から続いた、たった1年間の仮初の平和は終わった。

 

世界は再び混迷の中へと突入していく。

 

 

 

 

オーブ僻地・沿岸部

 

「さあ、みんないらっしゃい。私についてきて下さいね」

 

優しげな女性の声。

地球へと落ちてくるユニウスセブンの破片から避難するために子供たちをシェルターへと誘導する。

子供たちは、自分たちの世界がどうなっているのか、わからずただ誘導に従ってくれる。

 

ふと周りを見渡すと、いつも傍らにいる青年がいない。

 

「?…………キラ?」

 

いつも彼が座っている家の前の椅子を見る。……いない。

さらに、辺りを見渡すと、……いた。

浜辺に立ち、空を見ている。

 

正確には空ではなく、今この地球に降り注ぎ続けている流星を見ている。

 

「……」

 

彼が今、何を想い、この光景を眺めているのか、窺うことはできない、

空を眺めていたキラが目線を下げ、こちらへ一歩踏み出す。

 

―――そのとき

 

「……?」

 

青年の視界にあるものが掠めた。

 

「?……っ!?」

 

視線を戻す、それはすぐに目に入る。自分が立っている場所から20メートルほど離れた波打ち際に人が倒れている様に見える。

 

 

 

 

駆け寄り、確認する。

    

      ―――少年が横たわっていた。

 

 

 

 

―――C.E.73 新たな混迷へと導かれるように現れた少年、彼が目覚めるとき世界に何をもたらすのか。

 

 

                                          

                                   つづく




初投稿です。

誤字脱字等があれば報告お願いします。

小説って、書くの難しい…。

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