新機動戦記ガンダムSEED DESTINY  -白き翼‐   作:マッハパソチ

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戦うことしかできない者。

戦いの果てに、変わらぬ世界で生きる者。

もう何も失わないために、力を欲し、戦いに身を投じていく者。

それぞれの想いは彼らをどこへ導くのか…。




第二話   戦士たち(前編)

ツインバスターライフルがリーブラに命中するのを確認したあと、ヒイロはすぐにリーブラの降下線上から離脱を開始する。

―――直後、ウィングゼロを光が包まれる。

 

「……っ!?」

 

ヒイロの視界が白一色に染められる。

光を感じていられたのも数瞬の事だった。

一転、今度は意識が徐々に黒にそまっていき、そこで、一度ヒイロの意識が途絶える。

 

次に目を覚ました時、それは地球へと堕ちていく最中だった。

 

「?……っ!? くっ!!」

 

海面まで残り十数メートル付近でコックピットのハッチが開き空中に身を投げ出される。

咄嗟に身を丸め海面に落ちる衝撃を緩和する。

 

ウィングゼロはヒイロより少し離れた海面に叩きつけれそのまま海底へと沈んでいく、

 

「ぐっ!!」

 

ヒイロはウィングゼロが海面に衝突し発生した波に流されながらも海水を吸って徐々に重くなるパイロットスーツを脱ぎ捨てる、

そこで再び意識を途絶えさせた。

 

 

 

 

次々と地表に激突していくユニウスセブンの破片、

海が、山が、森が、街が、一つ、また一つと無情の流星により蹂躙されていく。

 

とどろく轟音、避難先の地下シェルターにまで衝撃が伝わってくる。

 

「ねぇ、何が来るの?」

「いつまで、ここにいればいいの?」

 

子供たちの不安に充ちた声が上がる

 

「大丈夫ですわ、いいえ、少しの間です。すぐに行ってしまいますからね」

 

子供たちからの不安の声をあやす女性、

―――再び、鳴り響く轟音。シェルター内が揺れ、照明が明滅する。

 

「……っ!」

「ひっ!」

 

「大丈夫ですわ、大丈夫ですから」

 

いくらあやしても、子供たちの怯えを消すことができない。

シェルター内に蔓延していく不安、恐怖、絶望の負の感情。

 

 

   「ーー♪、ーーー♪」

 

―――シェルター内に拡がる歌声

静かだが、優しさに満ちた温かな歌声

 

「ーーー♪、ーーー♪」

 

平和の歌姫、ラクス・クライン。

彼女の歌声によって、徐々に子供たちから負の感情を取り除かれいていく。

 

そんな歌声を聴きながら青年―――キラ・ヤマトは自分の隣で横たわっている少年について考える。

 

シェルターに避難する際、浜に倒れていた少年。

見た目は14、15歳ぐらい、身長は150㎝代半と小柄、ダークブラウンの頭髪。

深緑色のタンクトップに黒色のハーフパンツといった質素な格好である。

 

(どうして……)

 

キラたちが住んでいるマルキオ邸はオーブの僻地にあり、身内以外で近づく者はほとんどいない。

なぜ?どうして?考えても疑問は募るばかりである。

 

ふと少年を眺めながら、少年の境遇と2年前の自分を想い重ねる。

 

―――2年前、前大戦中コーディネイターでありながら地球軍として戦った彼――キラ・ヤマト。

最初はただ、友達を守りたかっただけだった。

戦いたくない、討ちたくない、殺したくない。そんな想いとは関係なく戦いは続く。

敵となってしまった、かつての親友。殺したから、殺されたから、ただ憎しみで親友と討ちあう。

その果てに親友に討たれてしまうキラ。

そのときに瀕死の状態で倒れていた彼を救ってくれたのがマルキオ導師とラクス・クラインであった。

 

そんな、かつてのことを思い出す。

 

   

そして再び変わっていく世界に、今、彼が想うこととは……。

 

 

少年の眼は未だ開かず、世界は回る……。

 

 

 

 

 

地球に不時着したミネルバは、カガリ・ユラ・アスハを送り届けるため、航路をオーブへ向け航行していた。

 

「翼の生えた、モビルスーツ?」

 

アスランは、インパルスの手助けもあり、半壊したザクをどうにか着艦させ、無事にミネルバへの帰艦を果たしていた。

ミネルバの着水シークエンス完了後、カガリから聞かされた話によるとユニウスセブンとともに落下したモビルスーツが

ザク、インパルス以外にもう一機、確認されたとのことだった。

 

「ああ、ミネルバのブリッジから見たんだが、アスランの方で何か確認してないか?」

 

「いや、……あの時はいろいろとありすぎて、そこまで、気を回す余裕はなかったよ」

 

「そ、そうか、なら、いいんだ……」

 

―――しかし、今アスランの頭の中にはユニウスセブンでのテロリストの元ザフト軍人の声が渦まいていた。

 

『ここで無残に散った命の嘆き忘れ、討ったものだと何故偽りの世界で笑うか!?』

『何故気づかぬか!?我らコ―ディネイターにとってパトリック・ザラの採った道こそ が、唯一正きものとっ!!』

 

(……くっ!)

 

前大戦を戦いぬき、実父の妄念を断ち切りようやく手にした安寧の世界のはずだった

だが、先のテロリストは、断ち切ったはずの、自分が悪であると思った父の行いを正義であると言う。2年前に自分がしてきた行いを真っ向から否定されたように感じる。

実際、2年たった今でも世界は変わらずナチュラルとコ―ディネイターの憎しみは無くなっていない。

 

(……キラ、……俺たちのしてきたことは本当に……)

 

アスランはこの場にいない親友に問いかける。

答えは見つからない……。

 

 

 

時を同じくして、ミネルバの別の場所ではメイリン・ホークが

姉のルナマリア・ホークとシンに同じことを話していた。

 

(……オーブか)

 

―――が、シンもまた、これからの行く先について思いを巡らせていた。

2年前、全てを失い、自らに憎しみを生ませた地。

シンはポケットの中に手を入れ、妹の形見である携帯電話を握りしめる。

 

(……マユ)

 

 

「へぇー翼ねぇ、シン、あんたあの場にいたんでしょ。直接、確認とかって……ちょっと聞いてる?」

 

妹からの話を聞いたルナマリアがシンに話を振るが、

返答がない。

 

「ちょっと、ねえ、シンっ!」

 

「っ! ……え? 何?」

 

ようやく反応が返ってくる。

 

「あんた、インパルスでいたんだから、なんか見なかったの?って聞いたのっ!」

 

「……さぁ」

 

「さぁって……」

 

憤りながら、再度問いかけるが、

心ここにあらずのといった返事が返ってくるだけとなった。

 

 

 

 

それぞれの想いとともに、艦はオーブに向かって進んでいく。

 

 

 

 

 

アプリリウス プラント最高評議会

 

ユニウスセブン落下事件を受けての会見を終えたデュランダルは、

議長室に入るとすぐに、通信回線を開く。

 

「回収した例のモビルスーツはどうなった?」

 

『ハッ、現在も継続して修理あったておりますが、未知の技術が多すぎて難航している模様です』

 

「そうか、……では、パイロットの方はどうだ?」

 

『そちらの方は先ほど目を覚ましたとの報告がされています』

 

「会って話をすることはできるか?」

 

『議長自らがですか?』

 

「そうだ、頼めないか?」

 

『了解しました。すぐに、確認を取ります』

 

―――数分後、面会の了承を通信が告げられた。

 

 

 

デュランダルの会見の終わる少し前、その男は目を覚ました。

 

「っ、………ここは? 私は、……生きている?」

 

切れ長の眼に水色の瞳、そして金色の長い髪。

頭部と上半身には包帯が巻かれている。

 

「気がついたかい?」

 

声の方に振り向くと、医者らしき男がいた。

医者は男が寝ているベッドに近づく。

 

「どこか痛むところとかあるかい?」

 

「いや、大丈夫だ……それより、ここは? どこかのコロニーなのか?」

 

「ああ、ここはプラントだよ」

 

「プラント?」

 

「そうさ……最高評議会のあるアプリリウス市さ。そして、ここはザフトの医務室だよ」

 

「………ザフト?」

(プラントというコロニーなど聞いたこともない、……それに、私は……―――っ!?)

 

聞きなれない単語に戸惑う中、男は急に思い出す。

 

「地球!、地球はどうなった!?」

 

「?……ああ、地球は今、ユニウスセブンが落ちて、しっちゃかめっちゃかだよ。まったく、戦争が終わって、ようやく世界が落ち着いてい来たのに、馬鹿なことをする連中もいたもんだよ」

 

「……ユニウスセブン?……地球に落ちたのはリーブラではないのか?」

 

「リーブラ? なんだい、そりゃぁ……? ―――っと、あんたが目覚めたことを報告せにゃならん、ちょっと待っててくれ」

 

医者は男の元を離れ、部屋の奥へとひっこむ。

 

(……どうなっている?)

 

食い違う医者との会話にさらに戸惑う男。

さらに

 

---「おおいっ!」

 

(っ?)

 

考えに耽ろうとしていた男に、医者の呼ぶ声が聞こえた。

男は声のした方を向く。

 

「そういえば、聞くのを忘れていた。あんた名前は?」

 

医者の問いかけに対し、数瞬の思考を巡らせ、

男は、自らの名を口にする。

 

 

         

        「……ゼクス・マーキスだ」

 

 

                       つづく




二話(前編)です。

後編も来週には投稿します。

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