女性Pと関裕美ちゃんがオーディションで負けて立ち直るお話 作:白黒熊
関ちゃんから見た今回のオーディション
「勝負は実力と運で決まるの。今の時点でこのオーディションの一次審査を通れたあなたなら、そのどちらも十分だって信じてるわ」
そういって、プロデューサーさんは私の頭を撫でてきた。
頭、といっても私が髪の毛が乱れるのが苦手なことを知っているプロデューサーさんは、いつも頭の上ではなくおでこを撫でてくる。
子供扱いされているみたいで、正直どうなんだろうと思うこともあるけれど、こうしてプロデューサーさんと触れ合うのは……嫌いじゃない。
「でも、この番組っていつも今の私よりも高いランクの人たちが出てる気がするんだけど……」
「大丈夫よ。今の裕美には勢いがあるの。このチャンスを無駄にするなんてもったいないわ」
そういうプロデューサーさんは、なんだかいつもよりも少し押しが強い気がしたけれど、その言葉からは私に対する信頼が伝わってきたので、その時の私は期待に応えなければ、と思った。
「全員、集まりましたか? では、今日の参加者の確認を行います」
頑張ろう、と気合を入れて会場に向かってみれば、そこに集まっていたのはやっぱり私よりもランクの高いアイドルばかりだった。
テレビで見たことのある人から、雑誌の表紙を飾っている人まで……唯一見つけられた同じランクのあの子は、そんな中でもいつもの彼女のままで、それを見て私も全力を出そうと思った。
集まっているアイドルの中にこの間共演したアイドルの子がいたので、挨拶をした方がいいのか迷った私はプロデューサーさんに聞いてみることにする。
「プロデューサーさん」
……返事がない。聞こえていないのだろうか?
そう思いもう一度声をかけなおすと、少し焦った感じでプロデューサーが言葉を返してきた。
「どうしたの、裕美?」
「あそこにいるの、伊吹さん……だよね? この前共演させてもらった」
「え、ええ。彼女も参加していたのね。オーディション開始まで少しあるから、挨拶でもいってきたら?」
「さっき全員の名前が呼ばれてたのに……ぼーっとしてたの?大丈夫?」
どこか悪いのかと心配になって質問してみたけど、どうやら問題はないらしい。
改めて、行っておいでとプロデューサーさんから声をかけられたので、私は彼女へ挨拶に向かうことにした。
しばらくして、オーディションが始まる時が来た。
「そういえば、今日は芸能記者さんが、取材にみえているそうですよ」
「チャンスにするか、それとも、ピンチにするかは、あなた達次第ですよ」
そういった審査員さんの言葉に目を向けると、そこにはこの前私を取材してくれた善永さんがいた。
これは一層頑張ろう、と思っていたら、審査員さんから突然声がかかった。
「では8番さん、皆の代表として、意気込みなんかを話していただけますか?」
(何を言えばいいのかな……)
急に振られて真っ白になった頭に、いつもプロデューサーさんに言われている言葉が浮かんだ。
「笑顔で楽しもうと思います」
そういった顔が笑えていたかは分からないけれど……
「大変良いお答えですね。今日のオーディション、期待していますよ」
私らしい答えはできたかな、と思う。
そして回ってきた私の出番。正直言って実力不足を感じるしかなかった。
3人いる審査員さんの内、最後までしっかり見ていてくれたのはひとりだけ。
……やっぱり私なんかが勝てるオーディションじゃないのかな。
そう考えていたけれど、私ならきっとできる、と言ってプロデューサーさんが連れてきてくれた今回のオーディションを無駄にしたくなくて、私は少しでも次につなげるために他の人の演技をしっかりとみてみることにした。
しばらく見て分かったことがある。
(……ああ、これは勝てないな)
私と他の子たちの演技は、“何か”が違う。
何が違うのかは人によって違う。でも、絶対に何かが違うのだ。
例えば、今の子はダンスがとってもうまい。その前の子の歌は引き込まれるような声だったし、そのどちらもできる子もいた。
たぶん、今の私にはあの子たちのようなアピールポイントが足りないのだと思う。
そうやってこの先何をするべきかを考えているうちに、結果発表の時間になった。
「お待たせしました。合格者の発表です」
「本日のオーディション合格者は……」
「……番の方です。おめでとうございます」
結果は当然不合格。
やっぱり負けちゃったのは悔しいけど、その分次に必要なことが見えてきた気がする。
……私だけの、アピールポイント。
オーディションも終わったし、とりあえずプロデューサーさんと合流して今の気持ちと考えを伝えてみよう。
そして、今日ここへ連れてきたことに対してお礼を言おう。
そう考えて、私は待っていてくれているプロデューサーさんの所へ向かうことにした。
関ちゃん的には負けたことはあんまり気にならないみたいです。
次回予告
プロデューサーが立ち直るお話