NARUTO-空-   作:Teru-Teru boy

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ナルトと九尾

 先日、てっきり血継限界のせいで空気と化していたと思っていた生徒が自分の能力で空気となり、アカデミーの授業をやり過ごしていたことが発覚した。そしてちゃっかり一楽のラーメンをおごる羽目になったイルカだったが、ソラときちんと相対することで生徒と教師の立場をきちんと確立できたことに満足していた。

 

 しかし、そんな感情もすぐさま吹き飛んでしまう。5人の問題児が今日も今日とて問題を起こしたのだ。後数日後には卒業試験もある。特にナルトは体術を除いた成績はどべ中のどべである。このままでは卒業できない。そして卒業間近となって新たに発覚した鬼才溢れる問題児がくノ一クラスにもいることが発覚。授業中寝てようとも注意できない問題児だったが、イルカはことあるごとにソラを注視したため、ソラはこれから真面目に授業を受けるので問題ない。

 

 イルカの悩みが絶えることはなかった。

 

「くそっ、ナルト達どこ行ったんだ!?ソラ!」

「西門と北門の間の柵から外へ出るところです」

「お前ら自習だ」

『やったー』

「自習だと言ってるだろうが!!!」

 

 ソラの感知力はイルカに大層恩恵をもたらせたが、もっと早く知るべきであった。そしてその光景はアカデミー生にはかなり特殊な光景だった。

 

「ソラちゃん、どうしてナルトくんたちが外に行ったかわかるの?」

「私の血継限界で」

 

 生徒たちはソラのことを知らない。ペアを組んだりする際によく相手になるのが、引っ込み思案の日向ヒナタ。そのヒナタがイルカとソラの珍しいやりとりに驚いていた。白眼は気遁を見切る。気配を消しても瞳術からは逃れられない。ヒナタはソラを見つけるのが得意だったこともあり、二人は仲良くなっていた。

 

「ある一定の範囲なら感知できるよ。全員バラバラに行ったらわからなかったかもしれないけど、西門と北門の間でうろつく5人の影なんてあの5人しかいないから」

「そ、そっか。以外と仲良いのかな?あの5人って」

「どうだろうね」

 

 ソラとヒナタのやりとりを聞いていた一人の人物はふんと鼻を鳴らす。

 

「まったく、基本も出来ていない奴らが勉学を怠って忍になれるものか」

 

 超がつくほどの優等生、そして教科書のような存在として認知されている人物だった。

 

「ハザマくん…」

 

 その人物の名をヒナタが呟いた。見た目は優等生っぽくないが、本質がザ・優等生である時任ハザマである。

 

「手裏剣ひとつ投げても真ん中に刺さらん奴らが、僕の勉学の邪魔をされては愚痴も言いたくなるというもの」

「う、うん…、そうだね…」

 

 ソラは面倒な奴に絡まれたと気遁を展開する。ヒナタは生け贄になってしまった。この時任ハザマの近くの席は比較的空いている。理由は嫌いではないが面倒な奴という認識から少し避けられているためだ。ナルトもまたハザマがこの世で一番苦手な奴として認識している。一応嫌いではないらしい。ヒナタは5人が捕まるまでハザマの持論の相手をすることになり、5人が帰ってきた時にはぐったりとしていた。

 

 

 

「ったくイルカの野郎、この俺が力をつけることが木の葉の最大の有益になることを理解していないんじゃねえのか」

「お前が力つけたら被害が拡大するだけだ」

「これだから名家のお坊っちゃまは本質を理解していない。この俺こそが火影に君臨し、木の葉を導く存在となるというのに!」

「人格が著しく火影に向いてねえよ」

 

 天野ツカイと奈良シカマルのやり取りに噛み付いたのがナルトだ。

 

「何言ってやがる!俺が火影になるんだ!」

「技量が著しく火影に向いてねえよ」

「これからどうにかするってばよ!」

「これからってのはいつからなんだろうな、めんどくせぇ」

 

 そしてその横でキバが笑う。

 

「は、火影かよ。お前らじゃ無理だな。天地ひっくり返っても無理だ」

「んだとコラ、キバ!やんのか!?」

「相手になってやろうか?」

 

 キャンとキバの頭上で赤丸もナルトに威嚇する。

 

「どうでもいいけど、僕のお菓子まで燃やしたら許さないからね」

「食いもんを燃やしたら母ちゃんに殺されるからな、そんなことはしねえよ」

 

 なんでそういうところは律儀なんだか、シカマルにはツカイの考えがさっぱりわからなかった。

 

「黙って廊下に立ってろ!!!」

『はーい』

 

 すぐうるさくなる5人に教室から顔を出したイルカの怒声が飛ぶ。

 

「それにしてもなんでこんなに早く見つかったんだ?」

 

 うるさくしなければと小声でキバは問いかける。

 

「確かに、不自然なほど早かったな」

 

 それにシカマルが相槌を打つ。

 

「たぶんソラちゃんじゃないかな」

「ソラ?誰だっけ?」

「何言ってんだ。昨日だってソラちゃんのおかげで逃げられたじゃねえか」

「ああ、あの影の薄い女か」

 

 確信をついたのはチョウジ、以外と機転は悪くないのである。そしてツカイはチョウジの言葉を聞いてソラという存在を思い返そうとするがでてこない。自己中心的な考えが強く他人にはあまり興味がないツカイにとってこの4人以外は名前と顔が一致するのはサスケとイルカを除いていない。ナルトはソラとはよく話す間柄であり、ソラには一楽のラーメンを食べる仲のため、かなり仲が良い。そしてキバの辛辣な言葉だが、それはソラを体現する言葉でもある。

 

「なるほどな、蒼井一族か。聞いたことあるぞ。確か空気を扱う一族だって」

「空気?」

 

 ソラの能力を知らないナルトはシカマルの言葉に食いついた。

 

「ああ、ある程度の距離にいる人物がどこにいるかわかるらしい」

「それなら俺も嗅覚でわかるぜ」

「そう。つまり、キバと同じく感知タイプってわけだ。だから俺たちがどこから逃げ出したかすぐにわかったってこと。にしても、なんで蒼井ソラがいきなり先生に加担したんだ?今までこんなことなかったつうのに、いや逆か、先生がソラの能力に気付いたんだ。蒼井一族は空気に溶け込む力も持ってる」

「空気に溶け込む?」

 

 チョウジも父から蒼井一族のことを少しだけ聞いた程度で詳しくは知らない。だが、先の大戦の一番の被害者ということをシカマルは聞かされているため、蒼井一族には詳しかった。

 

「キバが影が薄いって自分で言ってたろ。それは蒼井一族の能力が原因なんだよ」

「影が薄くなる能力?」

「忍にとって最高の能力だ。隠密の任務だと簡単に熟せるらしいぜ」

「なんかずっこいってば」

「ナルトの言う通りだ。忍の本質を生まれた時から獲得している一族だってこと。まあ、つまりソラの能力でイルカ先生は普段からソラのことを考えなかったが、今日からはソラの能力を使って逃げ出した俺たちを捕まえようって魂胆みたいだな」

 

 シカマルはイルカ先生がソラという武器を手にいれたという。

 

「それってば変、ソラちゃんは最初から教室にいるってば」

「だからそれを認識できないのが蒼井一族の能力なんだよ」

「ふーん」

「お前絶対わかってないだろ…、あーくそ、かったりぃ。ソラのせいで逃げるに逃げられなくなったかもしれんな」

「ソラちゃん悪く言うなよ」

「わーってるよ。悪いのはこっちだし、それにもう少しで卒業だから、今更イルカ先生に捕まるからって気にすることでもねえけど」

 

 ナルトはソラが悪く言われているようで不快感をあらわにしたが、不真面目を体現したシカマルだが、ナルトの意を汲み取り、かつ刺激しないところでソラへの認識を結論付けた。ナルトはソラを気に入っているため、これ以上悪く言ったらまた大声で言い争いになりイルカに叱られる。それはだるいから遠慮したい。逃げ腰ナンバー1の忍者の片鱗はもう現れていた。

 

「え?でもナルトってサクラのことが好きじゃなかったの?」

 

 ソラを庇おうとするナルトにチョウジの率直な疑問だったが、シカマルとキバもまたその疑問を持っている。

 

「うん?好きなのはサクラちゃんだってばよ」

「じゃあ、ソラは?」

「友だちだってば」

 

 ナルトはサクラ以外の女子に敬称をつけて呼ぶことはなかったが、ソラは別らしい。

 

「で、サクラって誰?」

「…お前に火影は絶対無理だな」

 

 ツカイを横目で見ながらシカマルが呟いた。

 

 

 

 卒業試験当日。

 

 ソラは難なく分身の術をパスする。部屋から出る際にミズキの本質を知っているソラは、合格者の中からナルトがいないことを確認し、確信した。

 

 今日、ナルトを嗾(けしか)け、盗みを働く。ソラは合格者たちが受ける講義があるため適当に席に着く。そして気遁を強く展開する。ミズキがナルトを使って木の葉から大事なものを盗み出すのは理解したが、気質は読めても具体性がない。いつどこでナルトが行動を起こすかがわからない。このことを火影に伝えることが一番早いと読んだソラは影分身の術を気遁・姿隠しと併用し、その場を去る。

 

 足早に屋根伝いで火影邸を目指す。速度はそれなりに早い。ソラは体術はそこまで得意ではないというが、くノ一クラスではトップである。瞬く間に火影邸に到着し、見張りの忍に火影の所在を聞く。

 

「ダメだ。火影様はお忙しい身、おいそれとアカデミー生を合わすわけにはいかん」

「そうですか、では事件が起きてから私が証言すれば、あなたは減給になりますよ」

「そういう脅しをいうならもっとうまく言うものだな」

「では」

「え?」

 

 その場をソラは後にする。一番手っ取り早い解決法が断念されたならば次を考える。ソラは頼れる大人の中で一人浮かんでいる人物がいた。もちろんイルカだ。火影と比べると頼りないが、中忍の腕前と自信の能力とナルトへの理解を考えた場合イルカを除いて頼れる存在はいなかった。自分の保護者である祖父母では相手になる実力がない。アカデミーで講習を終えた影分身体から記憶が還元される。講習にミズキはいなかった。すでに接触している場合ナルトはもう行動を起こし始めていてもおかしくはない。

 

 明日から忍の一員。そう言われて額当てを支給された。ソラは一瞬逡巡した後、額当てを付けた。もう涙は流さない。大切な人たちを守る忍。ナルトは私が助ける。

 

 アカデミーの教室を今にも後にしようとしていたイルカの前に息を切らしたソラが立つ。珍しい光景だった。体術においても同世代の同性敵なしだったソラが息を切らしている。そして額当てを付けているのだ。

 

「どうしたんだ?」

「ナルトが、はあはあ、ミズキ先生に、っふぅー」

 

 焦っているのはソラ自身もわかっていた。深呼吸してから落ち着く。

 

「ミズキ先生の気質を読み取りました」

「ミズキの?」

「ええ、今日落第したナルトくんに近づき、何かを盗ませる計画をしています」

「何を言っているんだ、ソラ?だってミズキは…」

「あの人は!あの人は、ナルトくんを利用して騙して、何かを為そうとしています。それはナルトくんのイタズラとはレベルが違います」

「ソラ、少し落ちつ「先生!」」

 

 声を荒げるソラにさすがのイルカも動揺する。

 

「ナルトの味方になれる大人は火影様とイルカ先生以外、私は知りません」

 

 蒼井一族の特性は馬鹿にできないものがある。それはイルカとて理解している。そしてつい先日それを再確認した。

 

「ミズキは敵なんだな」

「間違いありません、幻術に掛かっているか確かめますか」

「すまん、一応な」

 

 軽く幻術を解く印を結んだイルカだったが、それで確信した。しかし蒼井一族は曖昧な状態までしか判断できない。ミズキがナルトを使って具体的に何を為すのかがわからない。

 

「ミズキの口車ならこうか、ナルトに卒業させてやる。言われたことをやれ」

「特にナルトくんにもプラスになることなら説得力は増しますね」

「…禁術の類か?」

「可能性は高いでしょう。ナルトくん自身頭がいい方ではないので、禁術が自分には習得できないって結論までは出ないでしょう」

「…結構辛辣だよね、ソラって」

 

 馬鹿と言っているのに相違なかった。

 

「もしかしたらナルトくんの馬鹿みたいな体力に見合った術とかあれば習得されてしまう恐れもありますね」

「ソラはよく見てるな」

「…蒼井一族は気質に触れられるんですよ」

「…」

「ナルトくんに封印された者の気質にも」

「ソラ!?」

「そうですか、先生も」

 

 意味ありげなことを呟くソラだったが、表に出てきたイルカの隠れた気質に触れ安堵する。

 

「イルカ先生はナルトくんの味方でいてくれるんですね」

 

 屈託のない笑みを見てイルカは理解した。この少女はナルトを助けるために全力を尽くしている。そしてそのために教師である自分でさえ疑いをかけていた。

 

「まったく、ソラは生意気な生徒だな」

「ふふっ、否定はしません」

「俺は取り急ぎ火影様にこのことを伝えてくる」

「お願いします。私は無理のない範囲でナルトくんを見つけることにします」

「ミズキには気づかれるなよ?」

「蒼井一族を嘗めないでください」

 

 二人は各自の行動をとる。

 

 

 

 火影邸についたイルカだが、見張りの忍がいない事態に気づく。中に入ると鼻血を垂らして気絶している三代目火影を起こそうとしている火影側近の暗部が何人かいた。

 

「火影様!」

「イルカ!?何しに来た」

「ナルトのことで火影様に伝えなけばならないことがあります」

「そのナルトだあいつ封印の書を持ち出しやがった。今回ばかりは悪戯では済まされんぞ」

「それだ。これはナルトの悪戯じゃない」

 

 今の今まで気絶したふり(・・)をしていた三代目が起き上がる。

 

「よっこいせ」

「火影様!?」

「まったくナルトのやつなんて術を考えつくんじゃか」

 

 イルカはこの現象に身覚えがあった。おそらく破廉恥な変わり身の術を使ったことが容易に理解できた。火影のヒルゼンが結構スケベな性格をしていることをイルカも知っている。

 

「ほれ、イルカとわしだけで話す。お前らは下がれ」

「ですが!?」

「下がれと言ったんじゃ」

「…はっ」

 

 火影邸に就く忍や暗部はその場を後にする。

 

「ナルトの悪戯ではないとすれば、ナルトは本気で書を盗み出したということか?」

「ええ、ミズキに唆されて、です」

「ほお、ミズキに?じゃが、どうして優秀なアカデミーの教員であるミズキがこのようなことを?」

「それはわかりません。ですが、蒼井ソラがミズキがナルトを唆すことを予知しました」

 

 火影こと猿飛ヒルゼンの目つきが変わる。かの蒼井一族ならば相手の動向を見切ることも容易。そしてそれはヒルゼンの経験からも信頼に値する。何度もピンチを事前に知り、逆にチャンスとして大戦に勝利してきた。最強の間諜の名を持つ一族だ。アカデミー生とて例外ではない。

 

「そうか」

 

 ヒルゼンは下がらせた暗部たちを再び招集する。

 

「任務じゃ、ミズキを捕縛。それからナルトをここへ連れてくるのじゃ。できればアカデミー生の蒼井ソラもじゃ。もちろん無傷でのう」

「火影様!私にも!」

「ほっほっほ、ワシはこの場にいるものに任務を言い渡したはずじゃが?」

 

 真意を理解したイルカは真っ先に動いた。

 

 最低限の護衛が一人、はたけカカシを除いていなくなった火影邸でヒルゼンは嬉しそうに笑う。あのナルトに真なる友がいることを嬉しく思っていた。

 

「ふむ、アカデミーの組み分け考えなおす余地があるやも知れんが、さすがに火影としてナルトだけかまい過ぎるわけにもいかんか」

 

 誰かに呟いたその言葉をカカシだけが聞いていた。

 

 

 

 ソラは感知タイプである。影分身の術を駆使し、里全体からナルトの居場所を感知するまでそう時間はかからなかった。すでにナルトは封印の書を広げ、中身を読んでしまっている。

 

「ナルト」

「ぎくっ!?ソ、ソラじゃねーか。ど、ど、ど、どうしたんだってばよ」

 

 完全に動揺したナルトは背後に身の丈ほどある書物を隠そうとするが、まるっきり隠せていない。

 

「はあ、封印の書を見てしまったのね」

「あれ?ソラ額当て…」

「見てしまった人物を生かしては置けない。任務より、あなたを亡き者にします。ご覚悟を」

「え、ええ!?そんな、俺ってば…」

「嘘に決まっているでしょう」

「えぇ…」

 

 ナルトは脱力する。普段脱力系女子たるソラに目力が篭り、苦無を構えられては本当に殺されるとナルトが判断するのも無理はない。

 

「まったく、誰に教わってまで封印の書を盗み出したのですか?」

「ミズキ先生だってば」

 

 ソラは一瞬だけ目を細める。

 

「なるほど入れ知恵はやはりあの人で問題ありませんね。しかし同時ですか。なかなかどうしてイルカ先生はここがわかったのか」

 

 ソラは近づく二つの気配に気づいた。片方はイルカ、もう片方は件のミズキである。そしてミズキはソラとナルトを見つけると、邪魔と判断したソラに苦無を投擲した。それをしっかりと視界に収め、しかし防御の体制を取らないソラにミズキは疑問を持つ。その疑いはすぐに解決された。

 

「大丈夫か!?ソラ!ナルト!」

「げっ!イルカ先生!ってどうなってるんだってば!?今、ソラちゃんに苦無が飛んできたってば!?」

 

 ナルトはソラに飛んできた苦無の軌道からそこにいた人物を見つける。

 

「ミズキ先生…?」

「ナルトくんに封印の書を盗ませ、その後秘密裏にナルトくんを処理し、封印の書を回収する。穴だらけの作戦にしてはうまくいきましたね。まさかナルトくんが火影邸を正面突破できるとは思いませんでしたが」

 

 ソラの言葉にナルトは訳がわからず、理解するのに時間が必要だった。

 

「ちっ」

「もうお前に逃げ場はないぞミズキ!」

 

 もうすでに自分の所業だということは周知されてしまった。それに気づいたミズキは強行策しか手立てが残っていない。

 

「はっ!アカデミーすら卒業できないドベに、下忍気取りのくノ一に、中途半端な実力しか持たない中忍がいたところで何になる。ナルト!早く巻物をこっちに渡せ!そうすれば俺がお前をアカデミー卒業させてやる」

「ナルト!耳を貸すな、それを渡してしまったらお前は共犯として忍になれなくなってしまう!」

 

 ソラはミズキの言葉もイルカの言葉も正しくナルトに伝わっていないことを理解していた。

 

「はあ…」

 

 ソラはため息をつくと苦無をミズキに投擲する。それを容易に弾くミズキだが、殺気をソラに向ける。

 

「…なんのつもりだ?」

「敵に苦無を投擲するのは忍者の世界では常識でしょう?味方に投げつける忍者なんてまずいません」

 

 ナルトにはわかりやすかった。ソラはミズキを敵だと言っていることを理解する。

 

「で、でもミズキ先生ってば敵じゃ」

「ナルトくん、あなたは騙されたのですよ」

「騙された?」

「ええ、このミズキはナルトくんを誘導して封印の書を盗ませ、その後、ナルトくんからその封印の書を奪う予定だったんです」

 

 ミズキは面白くないという表情を作る。

 

「ったく、変に優秀なくノ一もいたもんだ。どうだ?それだけ優秀なら木の葉より稼げる場所なんてすぐ見つかるぞ?俺と来ないか?」

「失礼ですが、あなたに何言われようとも心変わりすることはありません」

「はあ、ったく利口じゃねえな。そういう奴は早死にするよ」

「あなたほどではありませんよ」

「ちっ、減らず口が」

 

 どっちが、ソラはその言葉を発しようとしたが、瞬時に苦無を構えて手裏剣を弾く。腐っても中忍レベルの実力を持っている。ソラは手裏剣の投擲だけで自分とミズキとの力量差を測る。

 

「ソラ、ナルトを連れてここから離れろ!ミズキに封印の書を渡すな!」

「イルカ、一応実力があるのは認めるが、てめえと俺とじゃ相手にならねえぞ。だがな、てめえを遣るのには足手まといがいた方が片付くの早えだろ?」

「ミズキ!貴様ァ!」

 

 ミズキは背を見せ、ナルトを抱え逃げようとするソラに手裏剣を投擲する。イルカはそれを防ぐため火遁の術を使うが、ミズキにナルト達を追うのを先行される。

 

「さっさとくたばれ」

 

 ミズキが苦無を投げ、それがソラの背に刺さる。

 

「ふん。…なっ!?」

 

 ソラはくノ一クラスで最強の体術使い。変わり身の術の精度は下忍の中でも上位層に食い込むレベル。ミズキはソラの変わり身の術に騙され目標を見失う。

 

「どうやらソラはうまく逃げたようだな」

「ちっ、時間がねえか」

 

 ミズキはイルカを苦にはしないが、上忍が数人くれば万事休すである。できる限り早く決着をつけなければならない。ミズキはイルカをまともに相手をする気などさらさらなかった。

 

 

 

 ナルトとソラが逃げている中、ナルトはソラの額当てをうらやましそうに見ていた。

 

「ナルトくん、今はこれに気をとられている場合ではないのですが」

「でもさ、でもさ、やっぱりソラちゃんってば俺に見せびらかしてるじゃんか!」

「はあ…」

 

 ソラには忍の自負として額当てを任務中は外すのを憚られていた。もちろん正式な任務でもない上に、木の葉に雇われてすらいない浪人のような状態にあることも分かっている。しかし、ソラの意志は固い。外した方がナルトはミズキに集中できるのだが、ナルトは今不安定な状態であること。それを以ってしてもソラは意外と頑固であった。額当てを外す気にはならなかった。

 

「やっと、追いついた!ナルト、封印の書を渡せ!」

「…変化の術なら、ナルトの方が上手いね」

 

 ソラの呟きにさすがにナルトも思考を切り替えた。ホルスターから手裏剣を投擲し、イルカに変化しているミズキに攻撃する。

 

「ちっ」

「イルカ先生はどうした!?」

「あ?イルカのやつならそこら辺を彷徨ってるんじゃねえか?」

 

 ソラはミズキがイルカを巻いた方法を幻術の類と結論づける。

 

「ったく、イルカもイルカだが、お前もなんでナルトのやつの味方になるのか、理解できねえなあ。ああ、間違えたナルトじゃなかった。化け狐のなあ!」

「ミズキっ!」

「遅かったじゃねえか、イルカ」

「お前!?」

「あ?箝口令だったけか?悪いな俺は木の葉の忍じゃないんでな」

 

 頭から血を流して、満身創痍なイルカが駆けつける。そこでミズキは自分の額当てを苦無で傷つけた。裏切りの象徴としてその額当てを身につける。ミズキにも多少の傷はあるが、イルカに比べて随分と傷は浅い。

 

「化け、狐!?」

「ナルトくん」

 

 ソラはナルトくんと一定の距離が離れている。ナルトのそばに近づくにはミズキがいるためあまり身動きができない。

 

「ソラだっけか?どうでもいいが教えてやるよ」

「やめろ」

「12年前、化け狐を封印した事件がある。あの事件以来、里ではある掟が作られた。ナルト、お前だけには絶対に知らせてはならない掟だ。そして今のガキの世代にも伝えてはならない掟」

「よせ!ミズキ!」

 

 なんだってばよ。力なく問いかけるナルトをソラは視界に入れる。

 

「ナルトが化け狐だっていうことをなあ!」

「クソっ!」

 

 ソラはナルトに封印されている存在を知っている。大して驚かないソラにミズキは訝しむ。俺が、化け狐?そう呟くナルトからソラは視線を切る。

 

「信じてねえみたいだな。だが、わかるだろなんでナルトが石を投げつけられ、罵倒されるか。ナルトが12年前、里を襲撃し」

「やめろぉ!!」

「イルカの両親を殺し、たくさんの木の葉の里の人間の命を奪い、里を壊滅させた九尾の妖狐なんだからなァ!!!」

 

 ナルトは怯えるようにソラとイルカを見る。ソラが口を開いた。

 

 知っていますよ。ナルトくんに封印された九尾の妖狐のことは___

 

 ナルトは反射的にソラの方を向く。

 

「ナルトくんは九尾の妖狐ではありません。封印された依り代。言わば九尾事件の被害者であり、九尾を封印し里に害が及ばないようにしている存在。英雄といっても差し違いありません」

「はっ?」

 

 ミズキにはソラの言い分が理解できなかった。そしてミズキは封印の依り代という言葉はわかる。ナルトは化け狐本体と嘯いて動揺させ、葬ろうと画策していた行動が止まる。

 

「何言ってんだ?てめぇ…」

「ナルトくんは木の葉の里の英雄です。生まれた日に九尾を体に封印しているのですから」

「気持ち悪りぃ…、さっさとくたばりやがれ!!」

 

 ソラに辟易したミズキはソラへ向かって手裏剣を投げつける。ソラが手裏剣を弾く一瞬でミズキはソラへの距離を詰める。

 

「終わりだ!」

「避けろぉ!ソラァ!」

 

 ソラはミズキの手に持った苦無で引き裂かれる。

 

「ちっ、幻術か!」

「魔幻・鏡像転置の術」

 

 鏡に映るような虚像を見える幻術であるが、簡単に見切られる上、解除が容易い。

 

「解。そんなもんが効く___!?」

 

 幻術を解く瞬間を狙って手裏剣の雨を降らせる。しかし、寸前のところでミズキは瞬身の術で退避する。

 

「ちっ、トラップか」

 

 相手は中忍、避けた先に起爆札を仕掛けていたが、爆発前にバレてしまう。ミズキは変わり身の術で起爆札の爆発から難を逃れる。ソラは攻撃の手を緩めたら負けてしまうことを理解していた。さらに追撃をするかのように苦無を投げようとするが、すぐに異変に気付く。殺気が完全に気遁を展開し、爆煙に隠れた自分を補足している自体に、ソラは幻術を解除する。

 

「幻術返しだ、オラァ!」

 

 苦無の一撃は防いだが、ボディブローを直に受け、吹き飛ばされてしまう。

 

「結構強えな。イルカより強えんじゃねえか?」

「ごほっ、ごほっ」

「ま、残念だったな。才能も開花する未来がなけりゃこんなもんだ」

 

 ミズキはソラにトドメをさすために近づく。そしてソラとミズキの間にイルカが割り込む。

 

「イルカァ、手負いのてめえに何ができる?」

「ミズキ、ソラは殺らせないぞ…」

「そうかそうか、てめえには面白いもんを見せてやるよ。教え子の脳梁が弾け飛ぶ瞬間をな!」

 

 ミズキはイルカを越えた先にいるうずくまるソラへと向かった。

 

「終わり____!?」

 

 ミズキは前に進めていたはずの身体が大きく後退していくことを感知した。

 

「ぐあぁ!?な、なんだ?」

「イルカ先生とソラちゃんに手ェ出すな、殺すぞ!!」

 

 およそアカデミー生の、否、下忍であれ、ここまでの殺気は出すことができない。ナルトのチャクラは倍増し、赤いチャクラが青いチャクラと重なっていた。

 

「多重影分身の術!!」

 

 ナルトは禁術・多重影分身の術を発動した。分身の術すら使えなかったナルトがそれを遥かに超えるレベルの忍術を使ったのだ。

 

「ナ、ナルト…、本当にナルトなのか!?」

 

 イルカも驚愕してナルト本人か疑ってしまう。そして分身した分身体がそれぞれとてつもないチャクラを発しているのがイルカにもわかった。

 

「な、なんだこれは…!?」

「これはイルカ先生の分!」

「ぐはっ!?」

「これはソラちゃんの分!」

「ごほっ!?」

 

 四方八方を囲まれたミズキはまるでナルトの攻撃に対処ができていない。

 

「それから全部俺の分だ!!!」

「私の分少なくないですかね?」

 

 ナルトの分による猛攻によりミズキは文字通りボロ雑巾になるまでしこたま殴られていた。

 

「おいおい、結局一番やられたの俺だけじゃ…」

「イルカ先生は格好良かったですよ」

「ははは、無傷(・・)の教え子に言われてもな…」

 

 殴られたソラは変わり身の術と影分身の術を併用し、殴られたように見せかけただけ、本体はすぐそばの木陰から常にミズキの隙をうかがっていた。

 

 

 

 しこたま殴られ、骨をいくつも折ってあざだらけになって気絶しているミズキを捕縛した後、落ち着いたナルトがこっちを向く。

 

「先生…、俺…」

「ナルト、…ごめんな、…辛かったよな」

 

 イルカ先生は両親を失ってから孤独だった過去を話す。一人が辛く優秀さを持ち合わせていなかった自分は悪戯や失敗で孤独を癒そうと必死だったこと。ナルトの気持ちをわかっているつもりだったのに、辛い思いをたくさんさせてしまったことを詫びた。

 

「大丈夫ってば」

 

 ナルトはそういった。言い切った。

 

「ナルト?」

「ニヒヒ、俺ってば、もう一人じゃない。アカデミー入る前はそうだったかもしれない。でもイルカ先生やソラちゃん、それにバカやってる4人もいるし、他にもみんな俺をバカだアホだって言うけど見てくれてる。俺もう一人じゃないってばよ」

 

 イルカの抱擁を受け止めながらナルトは笑みをこぼした。

 

「最初に声かけてくれたのはイルカ先生だったけど、二番目にソラちゃんが声をかけてくれたんだ。友だちになろうって、それで俺、ソラちゃんと友だちになってからすぐアカデミーのみんなと友だちになれた」

「そうか、そうだったのか…」

「俺もいつまでもガキじゃねえってば」

「そうだな…」

 

 イルカはナルトを離し、自分の頭に手をかける。

 

「ナルト、卒業おめでとう」

 

 自分の今つけている額当てをナルトに渡した。ナルトの顔が驚きから笑みに変わるのに時間はそうかからなかった。




三人目のオリキャラ登場
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