NARUTO-空-   作:Teru-Teru boy

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第11班とチームワーク

 この男を覚えているだろうか。

 

「ふぅー、落ち着け。大丈夫だ。きちんと僕は修学してきた。大丈夫」

 

 教科書のような存在と揶揄される時任ハザマだ。基礎が疎かでは何事も上手くいかない。そんなセリフばかり吐く男である。しかし、その男には教科書には書かれていない緊張をほぐす方法がなかった。平時を意識するのは幻術にかかった時という知識はあるが、それで緊張を解せない辺りかなり頭が固い人間である。ナルトの真逆をいく人物だ。

 

「昨日を乗り切ったのだ。問題はない」

「何してるの?入るならさっさと入って」

「ふぉ!?蒼井ソラ!脅かすでない!」

「教室入るのに邪魔なんだけど」

「すまん、緊張していただけだ」

「そう、どうでもいいけど、ヒナタはあなたが苦手だからさっさと行ってくれる?」

 

 ソラの言葉にソラの背後にいたヒナタと言われた本人であるハザマは驚いてしまう。

 

「ソ、ソラちゃん!?」

「日向ヒナタ!僕のことが嫌いなのか!?」

「嫌いとは言っていないわ、耳ついてんの?」

「む?そうか、あれ?だが…」

「緊張ほぐれたでしょ、早く行ってよ」

「お、本当だ。すまんすまん」

 

 ハザマは今のやりとりで変に緊張していた状態から解放され、教室に入る。中には誰もいない。それほど早く教室に着いた3人だが、中に誰もいないのを見てソラはため息を吐く。誰もいない教室に入るのに緊張って、時任ハザマという男子はこの先下忍としてやっていけるのだろうか。他人を視る癖のあるソラだが、同情したり補佐したりすることは少ない。ソラは自分の手の届く範囲を極端に低く見ているため、あまり仲の良い相手を作ろうとしない。アカデミーにおいてもナルトとヒナタを除けばイルカくらいなものである。ゆえにハザマが下忍の採用試験に落第しようとソラには関係なかった。

 

 

 

「第11班、時任ハザマ、天野ツカイ、蒼井ソラ」

 

 一緒の班に組み込まれるまでは

 

 

 

「はあ…」

 

 ソラは一大事であった。このスリーマンセルの制度、偏りなくと言いつつも偏りがあり、その背景を視たソラには理解が及んでいるが、これ大丈夫なのだろうか。今年採用されるのは12名、第7班、第8班、第10班、第11班ということよっぽどのことがあれば採用されない事態にはならないだろう。他の連中は暗部かまた別の採用をされることになる。去年は僅かに3人を除いて暗部や忍関連の進学や就職を果たしている。今年は12名に当たりを付け、その人員でスリーマンセルが組まれているのだ。しかし、実のいうところコネのように思える人材分けだが、確かに今年受かった30名の中から多重影分身が使えるようになったナルト、座学トップのサクラとハザマを含む12名と他の18名では実力に多大な差がある。ナルトこそドベと言われていたが、体術では上から数えた方が早く、忍術もかなり上のところまで来ている。サクラやハザマもまた座学の成績は凄まじく、一般家庭出身とはいえ、明らかに非凡。上から12名とそこから下では天地ほどの差がある。本当に二人の分身を増やす程度で終わる実力しかない。下忍にはなれてもCランク任務で命を落としかねない。

 

 何が言いたいかというと、ソラにとって、サクラとハザマは完全に出来レースの中でのダークホースの存在。つまり、第7班と第11班は合格が確定していないのだ。もちろん上に挙げた4班以外にも出来が良ければ忍者として認められることもあるが、その可能性は著しく低い。ソラがため息をつくのは忍の名家が集まるこの年代で一般家庭から出てきた非凡という未知なる存在が自分の未来を妨げる要素になるかもしれないからだ。それと一番の理由は第8班と第10班がもう合格していることに対する怒りを持っていて、それをため息を吐く事で押さえ込んでいるのが真相だったりする。この女子かなりイラついているのだ。

 

「ため息吐くと幸せ逃げるっていうぜ」

 

 そしてハザマに並ぶ問題がもう一人。アカデミー5人の問題児の中でナルトレベルに問題児筆頭候補、大人からすればナルトの方を警戒するが、同世代は一番にこいつを警戒する天野ツカイ。忍術に誇りを持ち、忍術の研究が大好きな少年である。そして平気な顔で教室で忍術を試し打ちするドが付くほどの阿呆である。ソラのストレスは右肩上がりで上昇していた。

 

「よし、じゃあこれからについて説明しようか」

 

 担任の上忍の引率の元、他の班とは離れた場所に集う。ソラは気遁を解かず、担当上忍の思考を読み解こうとする。

 

「気遁、解除してくれるかな?」

「わかりました」

 

 されど上忍、下忍の忍術などたやすく看破してしまう。

 

「なんかしてたのか?」

「探りを入れただけよ」

 

 馬鹿に一言で答え、質問の追加を許さない。

 

「それじゃあまずは自己紹介と行こうか、今日からお前たちの担当上忍となる奈良シカクだ。お前らの代には息子が世話になってるな。ほんじゃ次、そっちの姿勢正しいやつから」

 

 問題児の一人奈良シカマルの父親その人である。指名したのは時任ハザマ

 

「時任ハザマです」

 

 固い、恐ろしく固い。

 

「なんかあるだろ。趣味とか将来の夢とか。あー、そういえば俺言ってなかったか、まあどうでもいいか」

 

 どうでもいいけどさ、三人の心境が合致した。

 

「趣味は修行、将来の夢は三代目火影を超えるプロフェッサーになることです」

 

 シカクは呆気にとられた。そして天野ツカイも驚愕する。一方でソラはハザマが教師に向いている人格と、それを目標としていることを知っているため、驚くことはない。

 

「三代目を超える火影が夢というやつは見てきたが、三代目を超えるプロフェッサーか、面白いやつだな」

「ふむ、こんな奴もアカデミーにいたのか」

 

 ソラはツカイのつぶやきにひょっとしてと探りを入れる。ソラの行動をシカクも見ていたが、沈黙。案の定ソラはおろかアカデミー生のほとんどの名を覚えていないようだ。こんな人間初めて見たとソラはツカイを訝しむ。

 

「次は俺だな。名は天野ツカイ、趣味は忍術の研究。将来の夢は一族の血継限界をさらに強くすること。日向にも負けないくらいに」

 

 シカクは問題児とは聞いていた。そして天野一族はこと戦闘忍術に関してのスペシャリストである。それを強化するのが目標というのは危険思想に分類されてもおかしくはない。比較的平和な木の葉だが、世が完全に平和ならすぐに止められかねない夢だろう。

 

「最後(とり)は私か、蒼井ソラ。趣味はいろいろあるけど、没頭しているものもない。将来の夢は大切な人を守れる強い忍になること」

 

 シカクは表情に出ないまでもソラを観察する。蒼井一族の悲劇を知っているものからすれば、蒼井ソラはかなりのマークがついてもおかしくはない。三大血継限界と呼ばれた内の一つ。最弱と呼ばれていたが、それでも木の葉には有益であり、他の二つの血筋よりも優先して狙われた一族だ。知略を以って相手の裏を掻き、戦場を指揮する自分とはまるで異なる司令塔。蒼井一族の後退がなければシカクは先の大戦で大きな戦果を挙げることはなかっただろう。そしてソラは両親を九尾事件で失うことになった。シカクは深い闇を抱えているはずの少女が強く生きている要素が何かわかった。ソラの祖父母の海(カイ)爺さんと小鳥(ことり)婆さんのおかげだろう。歴戦の猛者であり、先々の大戦で大いに活躍した二人だ。かつてのご意見番の立場を去り、今は隠居して子育てをしている。その子がソラだ。

 

「あー、なんだ好きなものとか嫌いなもの聞き忘れてたわ」

 

 先に言えよ、3人の心境がまた合致した。

 

「まあ、それはおいおいでいいか。じゃあ明日演習するから、このプリントに書かれた通り、解散」

 

 そのプリントには今季の下忍採用人数が”通知”されていた。

 

 9人

 

 今季の採用人数枠から脱落率70%の超難解な採用試験だった。そして12人の枠があるとイルカを通して思い込んでいたソラに衝撃をもたらした。

 イルカが嘘の情報掴まされた可能性が高い。ソラは瞬時にそう判断した。そうなると残り一枠をナルトたちの班と争わなければならなくなる。ソラはため息で怒気を晴らすことさえできなくなっていた。ソラの額に青筋が浮かんでいた。

 

「二人とも話があるんだけど」

 

 シカクが去ってからソラは二人に告げる。

 

「「イエス、マム」」

 

 ソラから漏れ出すチャクラ量に二人にNOという選択肢はなかった。

 

 

 

 ソラは自分の血継限界の特徴を話し、今回の顛末を掻い摘んで二人に教えた。

 

「なんか卑怯な気もするな」

 

 真面目な優等生のハザマはソラが試験の真意を掴んでしまう忍術を持ってるのをずるいと評価する。それにはツカイも同意である。

 

「つまり結局受かるのは班でしかないってことか」

「イルカ先生が個々人も心配してたけど班としても心配してたからね」

「結構便利な忍術だな」

「破壊力の塊とは違うのよ」

「んだとコラ!」

「事実でしょうが、破壊力こそ至高って自慢してるのになんで人から言われたらキレるのよ」

「なんとなくムカツク」

「…」

 

 ツカイは性格に難あり。ソラは心のメモ帳にそう記した。

 

「だが、参ったな。班で受かるってことは…、チームワークか?」

「でしょうね」

 

 ハザマとソラの会話の横でチームワーク?と疑問を掲げる人物に、現状最もな不安要素に、二人が気づいた。

 

「はあ、この馬鹿にチームワークのチの字もないよ」

「結構きつい言葉使うんだな、誤解していた」

「そう、はあ…、まあ、別にどうでもいいんだけど。下忍になるのに遠回りはしたくないんだけど」

「それもそうだが…、まさか僕に?」

「ええ、私異性だし」

「いや、そういう問題ではないだろ!」

 

 ハザマは教えるのがうまい。ただ、それだけではツカイにチームワークを教えるのに手間取っていた。すべて自分の忍術で片がつくと信じているからだ。ツカイは自分たちの一族の現状をよく知っている。蒼井一族と同じように天野一族もまた存続の危機に瀕している。有名な家柄で存続の危機にあるのは、うちは、蒼井、天野が筆頭だ。ツカイもまた自分たち一族の利便性を示し、木の葉に必要だと知らしめたいのだ。そして一族が戦闘特化ということもあり、本人はかなり好戦的である。

 

 故に___

 

「何で演習場来てんのよ」

「どうしてこうなった」

「チームワークが本当に強いなら、俺を倒せるってことだよな?やれるものならやってみやがれ」

 堅物は二人いたということ。これにはソラも思わず天を仰いだ。ハザマの方も厄介だが、ツカイはぶっ飛んで面倒なチームメイトだった。

 

「さっさと終わらせるわよ」

「了解」

「ふん、俺の忍術の前に跪くがいい」

 

 喰らったら死ぬから跪けないと思うんだけどとソラは心の中でツッコミを入れた。

 

「行くよ」

「行くぞ」

「来い!」

 

 もう勝負は決まっていた。ツカイは自分の忍術をあらぬ方向へと放ち、隙だらけなところに二人の拳が腹に突き刺さった。ツカイのダメージが回復したところでツカイが愚痴をいう。

 

「幻術なんて卑怯だぞ」

「「それはない」」

 

 負けは負けなので潔くツカイは二人に従う。確かにチームワークに負けたのだ。いつ、どちらが幻術を掛けたのかツカイにはわからなかった。

 

「どっちが幻術かけたんだ?」

「どっちでしょうね」

 

 面白半分でソラが茶化すが、僕じゃないとハザマが言う。致命的なレベルで正直者である。揶揄いがいのない、とソラがこぼす。

 三人はチームワークを深めるためと夕食を一緒に摂ることにした。ツカイは渋々ではあるが、せっかくの仲間である。共に同じ時間を共有するのは好ましいと考えた。料理が運ばれてくる間、三人の特徴を並べるとそれぞれの致命的な欠陥が見えてくる。

 

「私はくノ一で一番体術は強かったけど、その程度だから基本的に近接戦闘はからっきし、中距離も大した忍術はない」

「俺は基本はできているが、臨機応変な対処ができない」

「単独先行、和を乱す。俺だけなんか違くね?」

 

 それぞれの短所を並べあげた。絶望である。ソラの中ではハザマがまだマシといったところだろう。マンツーマンの実力だけならツカイが一番強い。

 

「長所あげよっか、短所だけだと結構凹むんだけど」

「それもそうだな」

「俺はわかりやすいだろう」

「「…」」

 

 当然としたり顔を貼り付けたツカイが偉そうにふんぞり返っている。

 

「私は参謀向き。…もっと何かあるでしょ」

「すまん、ソラのことよく知らないから」

「今日初めてソラを知ったぞ」

 

 ソラの額に青筋が浮かぶ。

 

「で、次は僕か。ええっとオールラウンダー忍者。まあ、当然か」

「没個性かな」

「特徴がねえな」

「何で長所で悪口言われるのか、凹むんだが」

「でも座学はトップだったっけ?」

「そうなのか」

「ああ、そういえば」

 

 短所からして臨機応変な対応ができないキレものってどういうことだろう。ソラのモヤモヤした感情を持て余す。

 

「最後に俺か、破壊力。うむ」

「「…」」

 

 ツカイは置いておいて、とソラは思案する。自分の言葉は二人にかなりの説得力をもたらしたことは大きく、それで二人の欠点をカバーできる。しかし、それだけで大丈夫だろうか。言い知れぬ不安感が拭えないが、この感情を打破するいい案は思い浮かばない。ソラは思考を切り替える。十分な休息を取らないと明日がきつくなる。

 

「もういいでしょ。私、もう帰って寝る」

「そうだな、しっかりとした休息は必要だ」

「おう、じゃあな」

 

 

 

 

 翌日、演習場に担当上忍である奈良シカク、その教え子の時任ハザマ、天野ツカイ、蒼井ソラが集まっていた。

 

「なるほどな、お前ら見る限り、蒼井の嬢ちゃんの入れ知恵か?やりにくいねえ」

 

 さすがにバレている。

 

「じゃあ、予定通りの演習でいいか」

 

 だが、ソラはチームワークを見る演習とばかりに思っていたが、それは容易くシカクに読まれてしまう。

 

「お前らに課題を設ける」

 

 チームワークのテストではカンニングも同然なソラの能力では下忍へと推し量れることはない。そこでシカクは次の一手を打った。

 

 時任ハザマ 第26演習場にある火水土雷風と書かれた奈良シカクの著名入りの5つの式札を見つけ、ここ第11演習場に戻ってくる。

 天野ツカイ チャクラの形質変化の極意を文書で提出。図書館で調べるのは禁止。800字以上。

 蒼井ソラ  奈良シカクとの近接戦闘で一撃を与える。忍術幻術を使ってはならない。ソラは仲間に口頭の会話を禁止、破れば即失格。

 

「制限時間は今日の暮れまでだ。始め」

 

 やられた。完全にチームワークを発揮できない。個々の試験。これが下忍になる選抜試験と言うのか、ソラは会話を禁止されている。だが、先のことを鑑みるに口頭でなければ伝えることできるということ、裏を返せば、書いて伝えることはできる。

 

 そうして意気込んだソラが二人を振り返るとそこに二人の影はなかった。

 

「…あー、もう」

 

 ソラは天を仰いだ。

 

「さて、嬢ちゃん。試験は挑まなくていいのか?」

「一応試験だし、勝てないとわかってても暇つぶしくらいにはなるかな」

「…」

 

 ソラは二人がこの地に戻ってくることを信じ、ひとまず、自力でどこまで戦えるか試すことにする。体術はくノ一クラスで一番だった。ひょっとしたら一撃加えることもできるかもしれない。その薄い希望はすぐに絶たれる。

 

「はあ、はあ、はあ、はあ…」

「結構やるじゃねえか、息切れかい?」

「ちょっと、はあ、小手調べ、はあ、していただけです。はあ、はあ」

 

 完全に息が切れていた。あと少しで届きそう。そういうギリギリの状態でシカクはソラの攻撃すべてを躱していた。ソラはかなりいい線行っていると勘違いをし、すぐに合格できると踏んでから随分と時間が経ってしまった。

 

 一時間。

 

 アカデミー生のときでも体力をつけるために一時間走りこんでもソラは息を切らすことはなかった。緊張、不安、思考、体力は脳を動かせば動かすほど早く消費していた。ソラは自分の状態を振り返る。

 

 最悪だ。

 

 もうほとんど体が動かない。チャクラの9割以上を使い果たしてしまっている。私は今、何が足りていない。体術か?違う。そういうことじゃない。体術じゃ現状天地がひっくり返っても勝てない。そのことに気づくまでに時間を大いに使いすぎていた。ソラは不測の事態に自分が強いと考えているが、それは誤りである。シカクはそれをきちんと見抜いていた。

 

「く…、ふぅー」

 

 一先ず深呼吸して落ち着く。足がガクガクと震える。こんなに早くへばるとは思っていなかった。ソラは次の一手を考える。そして何故か思考が止まっていたのか驚愕する。

 

 二人を合格させる時間も刻一刻と減っている。

 

「はあ、はあ、こんなことしてる場合じゃないのに、くっ」

「ふ、もう少し考えてみることだ。やり方は一通りじゃねえだろ?」

 

 シカクを見据える。気遁や幻術、結界術も使えればこの課題は比較的簡単になるが、それはできない。自分に何が足りないのか考える。

 

 考える。

 

「は、はは」

 

 ソラはかなりのキレ者、されど自己の欠点というものには気づきにくいことである。そしてそれが今になってわかった。

 

 自分は何か考えて行動していることにまるで慣れていない。

 

 行動方針が明確に固まっているからほとんど思考しない。何故二人が自分より下だと、自分の方が臨機応変に立ち回れるだ。固定観念の塊じゃないか。

 

 蒼井一族特有の思考回路がソラの邪魔をしていた。蒼井一族は気質に敏感である。ゆえに何が正義か何が悪か、善行悪行、善事悪事を瞬時に判別してしまう傾向があり、蒼井の若い世代はさらにいえば、思考の短略化が加速する。蒼井一族は間違った判断はしない。それはすべてが想定の範囲内に納まりやすいからに他ならない。人の気質に触れ、数多ある思考感情から最適解を取る利点がある。ゆえに想定以上のものに出くわす事態には完全に蚊帳の外の出来事となり、それは通常の人間よりも遭遇回数が圧倒的に少なく、不慣れなことである。戦争時に一族が狙われていることは想定内だったが、他の要素があることに気づいた時には完全に一族は滅びの一途をたどっていた。

 

 ソラは凡人か非凡かと問われれば非凡である。いくらシカクがヒントを与えたとして、それに気づける一族の若い連中はいなかっただろう。もちろん今の若い蒼井一族はソラを除いて他にいないが、もしも歴代の蒼井の者に同じ質問をし、自分が固定観念の塊であると気づけた者はいなかったに違いない。

 

 ソラは考える。シカクに昼ご飯を食べると宣言し、その通りに食事を始める。食事をしながら回復に努めつつ、思考の海に浸る。シカクはソラの対応につい言葉が漏れた。こいつは相当な娘っ子だな。その言葉はソラには伝わる事がなかったが、シカクが何か発言したことにソラは気づく。何か言ったか尋ねるが、なんでもないという回答しか返ってこない。

 

「ほんじゃ、まあ、行きますか。私感知タイプだし見つけられるよね?」

 

 食事を終えたソラはシカクに背を向けて走り出した。

 

 

 

 ソラはシカクのチャクラに長い時間触れていたため、シカクのチャクラを覚えている。チャクラの微量な空気への影響をソラは感知できる。それは人それぞれ異なるもののため、よく観察すればシカクのチャクラだと気づく。

 

「ん」

「ソラ!?なんでここに!?」

 

 ハザマは5つある札の1つも見つけることができていなかった。

 ソラは地面に文字を書く。

 

 固定観念に囚われるな、これはチームワーク。

 

「どういうことだ?って会話していいのか?」

 

 私が禁止されているのは口頭の会話のみ、書通であれば問題ない。

 

「そういうことか」

 

 ハザマの課題を熟すのはハザマでなければならないとは言われていない。

 

「え?そんなのいいのか?」

 

 いいの!

 

「そ、そうか…」

 

 こうも簡単にチームワークを試す試験とわかっていながらチームワークのチの字も出てこなかった自分に腹を立てているからか、ソラはかなり憤慨している様子はハザマに伝わっていた。

 

 

 

 5つの札を見つけたソラはハザマを連れて第11演習場に戻ってくる。これで一つ目の課題は終わった。ソラはハザマの首根っこを掴んで、次の目的地に向かう。ソラは座学は優秀な方だが、サクラやハザマほどのレベルではない。アカデミー生を卒業したばかりで里の頭脳と言われてもおかしくない暗号解読班と互角の知識はない。だが、ハザマにはある。形質変化の利点を800字でまとめ上げることくらい容易だろう。それは図書館に通わなくてもだ。

 

 休業中のアカデミーに忍び込み、上唇と鼻でえんぴつを挟んで唸っていたツカイを見つける。ツカイを見つけるまでに2時間も要した二人だが、事の説明をハザマにさせ、ツカイは安心して倒れる。

 

「脳みそ沸騰したぞ」

「…」

 

 とりあえず、ソラはツカイの頭にゲンコツを落とした。ツカイの代わりに文章を書いている。

 

「まだだ、ツカイ」

「なんだ?」

「まだ、ソラの課題が終わっていない」

「ソラの?なんだっけ?」

 

 物覚えの悪いツカイである。

 

「シカク先生に近接戦闘で一撃与える事」

「それってつまり俺が一撃与えてもいいって事か?」

「そういうことだ」

「はっはっは、騙されてこっちも頭にきてるから手加減はできそうにないな」

 

 超好戦的な一族である天野の麒麟児なだけはある。もうすでに性質変化の片鱗がチャクラと共に漏れ出していた。

 そして口頭会話が禁止されているソラは心の中でツッコミをいれる。騙されてんじゃなくて自分たちが勘違いしていただけなんだよね。それにしても酷い。それぞれの課題は与えられているわけではないと気づける方がおかしい。

 

 お前らに課題を設ける。

 

 お前たちそれぞれとでも言えば、確かに個々で課題を突破しなければならないのだろう。だが、そんなセリフは一度たりともシカクは言っていない。勝手に3人が勘違いしていただけに過ぎない。

 

 ハザマはしばらく時間がかかるという事なのでソラとツカイはシカクの待つ第11演習場にきていた。最後の課題を熟すため。

 

「お、今度はツカイを連れて来たか」

「へっへ、形態変化はさっぱりだったが性質変化ならお手の物よ」

「忍術禁止って書いてあるはずだが?」

「え?」

 

 性質変化の忍術をぶっ放す気でいたツカイが一気に脱力する。

 

「そんな…」

 

 地に手をついて倒れ伏す。しかしツカイのコントに付き合っているほど時間の猶予があるわけではない。ツカイに構わずソラはシカクに最後の力を振り絞って立ち向かう。

 

 チャクラの九分九厘まで使い果たしている。最後の最後までソラは力を振り絞った。だが、ないものはないのだ。根性などでどうとかなるものではない。

 

「ぁ…」

 

 最初の攻撃を躱されたところでソラは掠れた声を上げるだけだった。そのまま倒れる。このままでは地に顔から落ちてしまうソラを支えたのはシカクだった。一番奔走していたソラはチャクラ量で見るならナルトに次ぐレベルで保有しているが、最初のノンストップの近接戦闘で9割以上を失っている。ある一定の休息はとってはいたが、限界はもうとっくの昔に来ていた。それでも強い意志だけで踏ん張っていたが、それも限界だった。完全に脱力した人間は簡単に抱えられる。シカクはよく頑張ったと心の中でソラをたたえた。

 

 ただ、空気を読まない莫迦はシカクとて想定外である。

 

「ソラの仇!!!」

「いや、死んじゃ___ぐはぁ!?」

 

 その後意識を取り戻したソラは第11班全員が揃っているのを見る。

 

「あ、あれ?…どうなったの?」

「ふははは、俺が一撃食らわせたから合格だぞ」

「大きいたんこぶ付けながら言われても説得力ないんだけど…」

 

 顔を腫らしたシカクに確かに一撃を叩き込んだようである。

 

「まあ、演習お疲れさん」

「はい」

「今回のことで全員いろいろ考えなきゃいけねえことを理解できただろうが、そいつは後回しだ。とりあえず、お前たち第11班は今日を以って正式な忍班として活動することになる」

「わーぱちぱちぱち」

「棒読みで言われてもなあ、というよりお前らが祝福される側なんだが」

 

 祝うならメシ奢れ。

 

 シカクの頬が引きつった。

 

 そしてわかっていたこだったが、結構怒っているらしい。忍たるものと説教を言う気にはなれない。自分でもかなりインチキくさい採用試験になってしまった。本来ここまでの試験を課すことはほとんどない。書類審査を出す頃にはだいたいの筋書きが通達されている。しかし、今回はかの蒼井一族の忍がいる。テストをすべてカンニングするような一族だ。これには火影も実のところ困り果てていた。蒼井一族が全盛期だったころとは違い、今はたった一人。その子だけ違うテストを用意するわけにもいかない。だから蒼井一族と対抗できる策略家のような存在が必要だった。

 

 シカクは亡き友人の娘のことを頼まれたこともあり、再び担当上忍に返り咲いた。第一線級から外れることは木の葉にとって大きな痛手だが、それでも火影はシカクの希望を許可した。理由は蒼井ソラ対策のテストを用意できる存在であるから。しかしシカクの言葉は火影としても初耳である。若い蒼井一族に見られる傾向を逆手にとれば簡単に術中に嵌められることを知っているかどうかであり、シカクの頭脳はそこまで必要としない。

 

 結果、蒼井ソラは大きく成長するきっかけにもなり、一石二鳥ならぬ、一石を投じた結果ボロボロと鳥が落ちてくるといった具合だ。得られた成果は大きかった。

 

 バカ高い外食料金に頭を痛めつつも、今日を振り返る。そして横を見る。

 

「「はあ…」」

 

 ため息が被る。シカクは息子のため息の理由を理解していたが、反対にシカマルは理解できなかった。

 

「親父が同期の班の担当上忍って、すげぇ嫌なんだが」

「はあ…」

 

 ため息つきたいのはこっちだ。シカマルはかったりぃと呟いて寝室に戻る。シカクはそのシカマルの背中を見ていた。

 

「随分と小せえ背中だな、おい」

 

 かつての自分を思い出して嫌な気もするが、担当している下忍たちに比べてもソラと精神年齢は同等程度、忍の力量に至っては担当する3人に組み込めば圧倒的にどべだろう。ただ一つ自分と同じ才能だけはシカマルの唯一の力になる。




採用試験とか結構雑になってしまった
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