NARUTO-空-   作:Teru-Teru boy

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ガトーの護衛と絶対絶命

 第7班と合流した次の日。

 

「ナルトくんは寝坊ね」

「どうする?」

「うーん、いざとなったらサクラとサスケでお願いします」

「そうしよう」

 

 作戦の一部を変更し、ナルトとサスケを借りる可能性があったが、ナルトの代わりにサクラが作戦に組み込まれた。

 

「それでは先に出発します」

「おう、さっさと終わらせてくれると助かるんだがな」

 

 カカシに見送られる形で第11班は行動を開始する。空はもうとっくに明るくなっている朝7時。ガトーに気づかれないルートで行動を開始する。近くにあるアジトと思しき場所はハズレだった。次もガトーはいない。その次も。時間がかかるが、それが最善として行動している班員に、まだ疲れは見えない。

 

「ハザマ、どう?」

「なんとか持ちそうだ。だが、もし戦闘になるとすればできれば50箇所以内に見つからないときついかもしれない」

「わかった」

 

 ハザマは空間・口寄せ用に口寄せ動物をカカシに預けている。そのため召喚とともに口寄せ動物のチャクラが減っていき、それを補うためにはハザマ本人が口寄せ動物にチャクラを渡さなければならない。今はまだチャクラの消費がない状態であり、口寄せ動物のチャクラの減少量を見てハザマが逆算。ハザマの結論はこの速度では50箇所あたりで空間・口寄せをするだけのチャクラを残せないというものだった。およそ7割のチャクラを消費する大技のタイムリミットは短い。

 

「予定を変更します。50箇所を回ってからは再不斬と遭遇次第退却します」

「「了解」」

 

 4、5、6、…18、19、20。

 

 とてつもなく早い速度でガトーのアジトがあると思われる場所を調べ回る。その中に人影は幾つも存在するが、肝心のガトー本人が見つからない。

 

「行けるか?」

 

 シカクはまだ5分の1しか調べ終えていないにもかかわらず声をかける。

 

「はあ、はあ、まだ、っ、大丈夫です」

 

 気遁を常時使っていることに慣れているソラがすでに息切れしていた。慣れない土地とリーダーとして考えることの膨大な量がソラのスタミナを奪っていた。ソラの状態を見てハザマが懐から何かを取り出す。

 

「ソラ、これを食べろ」

「これは…、兵糧丸…」

「ああ、今のソラはチャクラ量が減っているわけじゃない。体力を一刻も早く回復した方がいいだろう」

 

 ソラはハザマから受け取った兵糧丸をかじる。苦味が口に広がり、それに不快感を露わにするが、表情とは打って変わり体力は徐々に回復し始めた。

 

「これなら」

「大丈夫そうだな」

 

 兵糧丸か…、とソラは呟く。ソラは兵糧丸を持ち歩くことが少ない。あまり必要と感じたことがなかったからだが、この調子ではこの忍具を持ち歩いた方が自分のためになるだろう。そう感じるほどにソラは自分の好調が感じ取れていた。

 

 

 

 第7班の面々が行動を開始した際に、サスケはカカシが持つ動物を尋ねる。

 

「そのカラスどうしたんだ?」

「うん?ああこれ、第11班の時任ハザマくんの口寄せ動物」

「いや、だからなんでハザマのカラスがここにいる」

「まあ、一応波の国での任務だから連絡取り合えた方がいいってことで」

「ふーん」

 

 サスケはそれ以上情報が得られないとして興味を失う。

 

「よし、準備ができたぞい」

「行きましょう」

「おう」

 

 タズナの準備ができたため橋に足を運ぶナルトを除いた第7班一行である。疲れ切っているナルトはタズナの家に休ませ、3人で護衛任務に就く。橋に着けば橋職人たちが何者かに襲われていた。

 

「な、なんだぁこりゃ!?」

 

 タズナは仲間たちが傷ついて倒れている状況に驚愕する。

 

「何があった、お前ら!?」

「やはり生きていたか…、そして…、こっちに来ていたとはな」

 

 カカシは巻物を広げ、手をあてがう。それを怪訝そうな顔で見ていたサスケだが、あたりに霧が立ち込めると意識を変え、これから来るだろう忍に集中する。

 

「サスケ、サクラ、来るぞ!」

 

 タズナを守るように3人が一箇所に固まる。

 

「ねえ、カカシ先生。この霧ってあいつの、霧隠れの術よね」

 

 サクラが確認を取る。

 

「待たせたな、カカシ」

 

 鬼人・再不斬に第7班が遭遇した。ハザマのカラスはその場を飛び立つ。

 

 

 

 再不斬がガトーの命令を無視し、勝手に標的であるタズナの暗殺に向かったことに腹を立てていた。

 

「ちっ、タズナを殺せばこのことは不問にしてやる。だが、増援があったとならば話は別だ。おい、あいつらはどうなってる!」

「はっ、今は他の部屋で待機させています。ここの護衛を兼ねてですが」

「まあいい、しばらくしてから橋に向かうと伝えろ」

「は?」

「再不斬共々殺したら再不斬に渡す依頼料の半分をやるとでも伝えておけ。あれも抜け忍、金は少しでも欲しいはずだ」

 

 ガトーはタズナの護衛が増えたと勘違いをし、苛立っていた。そして同時に再不斬への不信感から新しく抜け忍を再不斬に黙って雇っていた。

 

「ふふふ、元土隠れの抜け忍、三獣と恐れられた忍たちなら、再不斬、木の葉の忍、そしてタズナのヤローまとめて皆殺しにできる!!!くくく、ふふふ、はーっはっはっは!!!」

 

 ガトーの手下が三獣と呼ばれる抜け忍の3人の控え室を訪ねる。

 

「お前たちに任務だ…って、いない?」

 

 しかし、待機室はもぬけの殻だった。

 

 

 

 第7班からの赤色の信号が届く。

 

「再不斬たちは第7班の方に現れた」

 

 巻物を見張っていたツカイが声を上げる。ソラは息を整えて指示を出す。

 

「このままアジトを探します」

 

 すでに60以上の地点は回った。その中にガトーのアジトは4箇所しかなかく、そこにガトーはおらず、ガトーカンパニーの社員しかいなかった。次の63箇所目の地点に建物があり、そこを気遁でソラが探る。

 

「巻物をこちらに」

「忍か?」

「ええ、しかも気づかれました」

「気遁に気づけるレベルか…、想定外もいいところだな」

 

 ソラはカカシたちに黄色の信号を送る。巻物をしまい、そばにある雑木林に逃げ込み、敵の行動を注視する。

 

「こちらにまっすぐ向かってきます!迎撃の準備を!」

「早すぎる。お前ら下がれ!」

 

 シカクが急遽指揮を取る。ソラもそれに異を唱えたりはしない。圧倒的に相手の忍が、自分たち下忍とは一線を画するほどの手練れということを感じ取っていたからだ。

 

「敵はスリーマンセル。実力はほぼ全員が同じくらい___」

「ほお、感知タイプか」

 

 一気に距離を詰めてきた相手にソラは戦慄する。

 

「こいつ、一瞬で!?」

「1人じゃねえぞ、ハザマ」

「な!?」

 

 完全に囲まれていた。

 

「つまらねえ護衛任務かと思えば、木の葉の下忍とお付きの上忍様か?」

「この上忍は知ってるぜ、木の葉の猪鹿蝶トリオの1人、奈良シカクだ」

「他の二人がいねえなら問題じゃねえだろ」

「そうかもな」

 

 新たに現れた2人が11班の背後を取っていた。

 

「こいつら…、岩隠れの里の抜け忍、元特別上忍の灰牙(かいが)3兄弟か!?」

「ほお、俺たちを知っているのか。しかし、まさか下忍連れで暗殺ごっことはな。木の葉は忍をなんだと思っているんだか…」

 

 長男と思しきリーダーのような存在がシカクの疑問に答え、そして忍からの護衛と聞いて来た相手が想定外の弱さと判断してあざ笑う。

 

 特別上忍。上忍ではないまでにしても特異な能力で一部の事情ならば上忍扱いされる階級出身ということ。つまり並みの中忍とはレベルが違う。

 

「分が悪いか」

 

 シカクは即座に印を結ぶ。

 

「さっそく開戦か。お前らこいつに好きなようにさせるな!」

「「おう」」

 

 シカクに襲撃する3人は下忍の3人に目もくれず、その上を飛び越す。一番の危険要素から排除する狙いだろう。しかし、11班の下忍は只者ではない。注意を怠り過ぎていた。

 

 動いたのはソラだ。

 

「結界術・風網(かざあみ)」

 

 風のようなチャクラが網状に構成し、それらがシカクの背後から襲い掛かる2人の弟分を捕らえた。

 

「何!?」

「ちっ、面倒な術を」

 

 2人が一瞬だけでも捕らえられたことにより、襲撃のタイミングがずれる。

 

「ちっ、てめえら何してやがる!?」

「遅い。土遁・三重土流壁!」

 

 地中から雑木林を三等分する巨大な土の壁が現れる。木々の十倍はありそうな高さだ。越えようとすれば相手の忍者に攻撃されてしまう。

 

「ちょっ、先生!?これではチームワークが発揮できませんよ!?」

 

 壁の奥にいるシカクにハザマが声をかける。

 

「班として発足してから時間が経ってない俺たちよりも、相手の方がチームワークは上だ。それなら分断した方がまだ勝機はある」

「そ、そういうことですか…」

「いいか、お前ら!俺が一人片付けるまで生き残れ。すぐに向かう」

「「「はい!」」」

 

 シカク、ツカイ、ソラとハザマの三人はそれぞれの相手を見る。

 

 ツカイは相手の出方を疑う。

 

「…ちっ、おい兄貴。上忍相手は厳しいだろ。すぐ終わらせるから待ってろよ」

「早くしろよ」

「遊んでるうちにくたばんじゃねえぞ。ったく、あの嬢ちゃんにはしてやられたな。偶然にも虚を突かれるとはな」

 

 後ろ髪を掻きながら怠そうにツカイを見下げる。

 

「さっさと終わらせるか」

「偶然じゃねえよ」

「あ?」

「ソラはてめえらに隙があると判断したから妨害した。てめえらの油断だ。偶然じゃねえよ」

「…生意気なこと言うじゃねえか。さっさと死にな!」

 

 手裏剣を投げる。ツカイはそれを苦無で弾き飛ばすが、手裏剣に気を取られている内に間合いに入り込まれる。

 

「早い!?」

「てめえがおせえんだよ」

「くっ、雷遁・雷撃!」

「なっ!?」

 

 完全にツカイの懐に入り、確実に仕留めたと確信した敵だったが、一瞬で印を結んで術を発動させたツカイになんとか反応し、掌から放たれる雷撃を反らすため、苦無を握っていない左の手でツカイの忍術が発動する右手を弾き、かがむ。ギリギリのところでツカイの忍術から敵は難を逃れる。

 

「あぶねえな…、てめえ案外つええな」

 

 自分よりも確実に術を発動させる速度がずば抜けて早い。それを見た相手はツカイへの認識を改める。

 

「速度勝負じゃ安全とは言えねえか。てめえ、名は?」

「は?」

「ガキを殺しても自慢にもならねえが、てめえはただのガキじゃねえ。名を知っておけば、土産話くらいにはなるからな」

「人にものを尋ねるなら自分から言え」

「ちっ、可愛げのねえガキだな。この灰牙3兄弟の次男、灰牙銀火(かいがぎんか)が本気で相手にしてやるんだ。つまらねえ結果は残すなよ?」

「木の葉の天野ツカイを舐めんじゃねえぞ」

 

 銀火は手裏剣を取り出し投擲。そのまま印を結ぶ。

 

「さっきと同じ畳み掛けならもう通用しねえ」

「どうかな?土遁・土流槍」

 

 地面から無数の土の槍がツカイを襲う。ツカイはそれを避ける。そのまま空中へと避けた先には先ほど銀火が投擲した手裏剣が飛んできていた。ツカイはそれを避けられない。

 

「あまり変わり身はうまくねえな」

「ちっ」

 

 銀火の右側に変わり身で回り込んだツカイだが、瞬時に変わり身を看破されてしまい、効果がない。

 

「土遁・土龍弾」

「ふっ、雷遁・雷撃」

 

 五行の相性。それはツカイの扱う雷遁は銀火の扱う土遁に強い。龍から放たれる土の弾幕も掌から放たれた雷撃にすべて弾かれる。

 

「ちぃっ」

「五行の優劣関係は忍の基本だぜ」

「まあ、それはそうだな」

 

 背後から聞こえる声にツカイは驚愕する。

 

「土遁・土中映魚の術って言ってな。土の中を泳げんのよ。土遁はな」

「だからどうした!雷遁はてめえの忍術を上回る!」

「やってみな」

「雷遁・網蜘蛛!」

「火遁・火龍弾!」

「なに!?」

 

 網蜘蛛の術を飲み込む上忍レベルの火遁忍術。今まで土遁を使っていた敵がいきなり火遁を使う。意表を突かれたツカイはなんとか直撃は避けるが、衝撃で近くの木に打ち付けられ、火の龍にかすった箇所を火傷した。

 

「他の性質変化が使えねえとは言っていないぜ」

「くそっ」

 

 相手の力量の差にツカイは悪態をついた。

 

 逃げる。

 

 ツカイは決定打を失っている状態だ。隙がないかと攻撃の合間に観察するが、力量が離れすぎているためツカイには銀火の隙がわからない。一方で未だに接近戦に持ち込めない銀火は次第に焦る。遠くからは仕留めきれず、間合いに入っても術スピードでどうしても後手を取ってしまう。

 

「急がねえといけねえし仕方ねえか。下忍相手にこれを使う羽目になるとはな」

 

 そう言って自分の指を苦無で傷つける。一定の距離から攻撃を受けていたツカイは攻撃の雨が止み、銀火を見る。

 

「はあ、はあ、…まさか!?」

「そのまさかだよ。口寄せの術!」

 

 銀火は追い討ちをかけるように口寄せの術を行使した。煙が舞い、それが晴れた時には二本の巨大な犬歯が覗く猛獣が現れていた。

 

「虎!?」

「行くぞ!岩技(がんぎ)!下忍でも甘く見るなよ!」

 

 獰猛な口寄せ動物。それ一体だけでもツカイは相手取るのが難しいというのに、特別上忍レベルの敵がもう一人いる状況。懐に入られたら上忍レベルの忍術を使っては間に合わない。だからといって、中忍レベルの忍術ではどちらか一方を撃退するのが限度。確実に出し抜く手立てがない。それを本能で理解した時、初めてツカイは恐怖した。敵と戦う際に格上の相手をしたことがなかったが、今回は格上も格上、レベルが違う相手だということがはっきりと、今、理解した。

 

 足が震える。

 

「…死んで、死んでたまるかよ!」

 

 震える足を叩き、必死に自己を鼓舞して立ち向かう。

 

「俺は、俺は!木の葉の里の天野一族だ!!!」

「終わりだ小僧!」

 

 虎の爪がツカイを切り裂く。

 

 

 

 ソラとハザマの二人は灰牙3兄弟の三男と対峙していた。先ほど次男の銀火と長男が話していた内容から、シカクとソラ達下忍と対峙する2人がどちらが先に片をつけるかという戦いになってしまったことを把握する。

 

「しゃあねえか、俺もさっさと助けに行かねえとな」

 

 ソラは奥歯を噛みしめる。未知数の敵相手に二人とはいえ、すでにチャクラを大きく使い果たしている下忍では相手にならない。なんとか自分たちの土俵に引きずり込んで、戦いを長引かせる方法を考える。

 

「ソラ…」

「まずは目の前のことに集中して、あの2人なら私たちよりは大丈夫だから」

 

 ソラはハザマの動揺を抑え込む。

 

「なんだ?てっきりガキ一人の方がヤバイ状況にあると思ってたが、お前らの方が弱いのか?まあ、あまり興味がねえんだけど!」

 

 苦無が3本飛来する。

 

「早い!?」

「ソラ!?避けろ!!」

 

 その速度は集中した状態ですら避けるのにギリギリといった速度である。間一髪ソラはそれを避ける。

 

「じゃあ、半分の距離じゃ避けられねえだろ?」

 

 確実に避けられない距離からの苦無の投擲。ソラはそれを避ける。

 

「何?今のは避けられないはず…、ちぃっ、幻術か。いつかけられた!?」

 

 シカクによって分断される瞬間にソラは敵になる忍に幻術をかけていた。

 

「解!」

 

 幻術を解いた時、もうすでにハザマが間合いに入って攻撃していた。

 

「終わりだ!」

「くっ!?」

 

 ホルスターから手裏剣を弾く要領で飛ばし、ハザマの苦無の切っ先を反らす。そして体を無理にでも傾け、チャクラの反発を利用して頚動脈を狙っていた苦無から逃れる。

 

「なっ!?」

「っと、あぶねえ、あぶねえ、寿命が縮んだぜ」

「あの状態から、避けるだと!?」

「随分と手荒な真似するじゃねえか」

「…当然だ。命が懸かっている」

「まあ、そうだな。…俺を殺し損ねた詫びに冥土の土産話をくれてやろう。灰牙3兄弟三男、灰牙銅水(かいがどうすい)の手によって散るが良い」

 

 銅水は印を高速で結ぶ。

 

「もう一人のガキは潜伏しているみたいだが、これで炙り出してやるさ。水遁・水衝波!」

 

 近くの小川から水が集まり、辺り一面を覆うほどの水量が大波を作る。

 

「ソラ!逃げろ!」

 

 ハザマが叫ぶも、ソラは行方知れず。だが、ハザマはソラが水衝波から逃げのびたと信じ、次の交戦の準備をする。辺り一面が水没したため、ハザマは水上に立つ。

 

「水面に立つくらいのチャクラコントロールはできるか」

「元岩隠れの忍って聞いていたんだが…、水遁が使えるのか」

「水遁も、だ!」

「っ!?」

 

 言葉とともに放たれた手裏剣に、ハザマは息を飲む暇もなく回避行動をとる。苦無で一つの手裏剣を弾き、他の二枚はバク転で躱す。

 

「そんな避け方じゃあ隙をついてくださいって言ってるようなものだぜ」

 

 ハザマが後退して躱した真正面に銅水が立つ。

 

「そうでもないよ」

 

 しかし、銅水の背後にソラがいた。

 

「ふっ、そうでもあるだろう。隠れるのうめえのに、出てきたら意味ねえだろ」

 

 銅水の手は印を結んでいた。

 

「しまっ!?」

「水遁・水牙弾!」

 

 抉るような鋭利な水の塊が回転しながらソラを穿つ。

 

「ふん、この程度か」

 

 ソラは血潮を飛ばしながら倒れる。

 

 が、それは変わり身の丸太である。

 

「何!?変わり身だと!?しかも起爆札!?」

 

 変わり身した丸太には起爆札が付けられ、着火していた。

 

「まずいっ!?」

 

 水を巻き上げるほどの爆風が吹き荒れる。その衝撃は急いでその場を離れたハザマが吹き飛ばされるかと感じるほどに強い。水面をえぐる威力の爆発を至近距離でまともに食らった銅水は致命傷を避けられない。

 

「やったか!?」

「まだよ」

 

 ハザマの隣にソラが立つ。

 

「何?起爆札を直に受けたというのにか?」

「水の中に逃げて威力を殺された」

 

 起爆札の煙が晴れると、水中からぼこぼこと気泡が出てくる。そして水の中から水面に立つようにゆっくりと銅水が浮上してきた。側頭部から血を流しているため、ダメージを与えることには成功した。しかし、致命的な傷ではない。

 

「もう、許しはしねえ」

 

 側頭部から流れる血を親指で掬う。

 

「口寄せ!?」

「させると思うか!」

「待って!ハザマ!間に合わない!」

 

 ソラの忠告を無視し、ハザマは走りながら手裏剣を投擲し、印を結ぶ。

 

「間に合わないって忠告、ちゃんと受け取った方が良かったなあ。口寄せの術!来い!岩体(がんてい)!」

 

 召喚された虎が即座に手裏剣を前足で弾き飛ばす。

 

「ぬるいな」

「何!?」

 

 口寄せされた岩体が呟く。ハザマレベルの手裏剣はいくら投げても岩体には通用しない。そして印を結んでいる最中のハザマに身の丈3メートルを超える虎が迫る。

 

「避けてぇ!!」

「遅い」

 

 ハザマが噛みちぎられた。

 

 

 

「参ったね、どうも」

「それは俺のセリフだよ」

 

 敵戦力を分断したのはいいが、シカクは早急に敵を倒す作戦を思案する。

 

「猪鹿蝶の奈良シカク。確か影を操るのが得意だったか?」

「どうだろうな」

 

 互いに沈黙。しかし、時間が経てば経つほどこの戦いではシカクが有利になり、全体の勝敗としては不利になる。焦る気持ちを抑え、冷静に相手を分析する。

 

「確か、灰牙3兄弟といえば口寄せ忍術が得意だとか。そして3人合わされば里長、五影レベルの実力を発揮するとか」

「買いかぶりすぎじゃねえか?五影の連中はみんな化け物だよ」

「まあ、そう言うな。褒めてんだ。だからこそ分断するほかなかったわけだからな」

「賢い選択だな。もっとも、分断したところで互いに不利になっただけ、マイナスの度合いはお前たちの方が大きいだろ?」

「そうでもないさ」

「試してみるか?」

「ああ、お手柔らかに頼むよ。灰牙金雷(かいがごんらい)くん」

「心にもねえことを!」

 

 シカクは苦無を取り出し、分身の術を駆使して残像で目をくらませる。ただの分身ならいいが、歩法と組み合わせた分身の術はどこから仕掛けてくるか咄嗟に判断ができない。

 

「分身の術ごときでこのレベルか!?」

 

 金雷は瞬時に分身の術だと理解したが、すでにシカクの本体を見失う。木の葉の上忍の中でも上位層に君臨するシカクの戦闘力は並外れている。

 

「影は距離を詰めるほど危ねえか…、鼻から全力だ!土遁・土流大河!」

「土遁・土流壁!」

「土遁で?ふん、甘いぜ」

「ん?」

「雷遁・雷鳥」

 

 雷でできた鳥が土流壁をぶち破る。

 

「雷遁が使えるのか…」

 

 その鳥をシカクは右に避ける。

 

「雷遁・雷撃」

 

 避けた先に金雷の掌から雷が走る。その雷はシカクを通過した。

 

「ちっ、分身か…」

 

 金雷はすぐに立っていた場所から離れる。影に捕らえられるわけにはいかないので、素早く居場所を変えることで影に捕らえられる確率を減らしている。

 

「一筋縄じゃいかねえとは思ってたが、どうやら認識を改めねえとな」

 

 木に降り立つと、金雷は苦無で指を切り、印を結ぶ。

 

「口寄せの術!」

 

 二人の弟たちと同様、口寄せ動物の虎が姿を見せる。

 

「俺を呼ぶのも久しいな」

「今回は格上なんでな」

「ほお?どいつだ?」

「あそこにいる」

 

 シカクが隠れている箇所を金雷は指差した。

 

「あいつは木の葉の上忍。猪鹿蝶トリオの奈良シカクだ」

 

 金雷の説明を聞いていた虎は辺りを見回す。

 

「分断したのか?」

「いや、分断された。相手は下忍連れの子守りの最中だったみたいだからな」

「猪鹿蝶が集まっているわけではないのか」

「それなら分断しねえだろ、相手さんもな」

「なるほど」

「やれるか?岩心(がんしん)」

「俺を見くびるな。たとえ上忍とて俺の敵じゃない」

「…行くぜ」

 

 岩心にまたがり、金雷はシカクの隠れている場所に突撃する。

 

「岩心!」

「おうよ」

 

 岩心は爪で風遁の鎌鼬を巻き起こす。そして金雷は雷遁を岩心の起こした風遁に混ぜ合わせる。

「何!?」

 

 それを見ていたシカクは驚愕する。

 

「旋遁・大牙」

 

 錐揉み状の黒い雷を纏った旋風がシカクを襲撃する。その攻撃の早さにシカクは咄嗟に変わり身で避ける。

 

「ちっ、流石に真正面からの攻撃は避けるか」

「そんなぬるい相手ではないだろう。甘く見過ぎだ」

 

 岩心は金雷を叱責し、戦闘に集中させる。

 

「おい、やるぞ」

「もうやるのか?」

「真正面からとはいえ、あれを見てから避けたんだ。そんなやつは今まで戦ってきた奴らの中には誰一人いなかった。万全を期すのは当然だろう」

「はいよ」

 

 岩心に急かされ、渋々といった表情で金雷は印を組む。次はなんだとその様子をシカクは物陰から観察していた。

 

「旋遁・螺旋武装」

 

 岩心とその上に乗る金雷の周りを包み込むように黒い雷と灰色の風が纏われる。そして岩心の足、爪には特に色濃くその二つが渦を巻いていた。岩心が歩けば大地がえぐれる。

 

「おいおい、これが特別上忍レベルだと!?」

「隠れても無駄だぜ、シカクさんよ。俺は一定の距離にいる動かない生命体なら生体電気を感知する俺には居場所がバレバレだぜ」

「そういうことは黙っておくものだ」

「種明かししたところであまり意味ねえだろ?あんたには俺が感知タイプだということもバレてるしな」

「それもそうだ。生体電気を止めては俺が死んでしまうからな」

「それと、もう一ついいことを教えてやる」

「ん?」

 

 金雷はもったいぶって話を切り、薄ら笑いを顔に貼り付ける。

 

「岩隠れの里を抜けたのは3年前だぜ。その時の俺と同じレベルだと思うなよ?」

「…参ったな、どうも…」

 

 金雷の想定外の実力にシカクは作戦を練り直す他なかった。




チームワークとは一体…
ようやく戦闘らしい戦闘


オリジナル忍術

結界術・風網
網状の風で相手の行動を封じる。柔いので相手が忍者ならすぐ脱出される。下忍レベルの忍術。

土遁・三重土流壁
土流壁を3つ合わせる。三重羅生門のような使い方もできるが、今回は術の中心地から仕切る様に三等分した。

雷遁・雷鳥
雷の鳥を標的に飛ばす。ある程度の追尾機能があるが、当たる直前に大きく避けられると対象を見失う。

旋遁・大牙
血継限界。風と雷の性質。暴風と雷の性質を持ち、貫通力の高い殺傷的な旋風で相手を攻撃する。音に近い速度で攻撃するため避けるのが困難。

旋遁・螺旋武装
血継限界。風と雷の性質。対象に纏わせることにより、攻撃力と防御力と機動力を飛躍的に高める。つまり戦闘力が上がる。
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