この素晴らしい願い事に奇跡を!   作:赤福餅

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12章
111話


 彼女との付き合いは何だかんだで長い。

 学校に通う前、この駆け出し冒険者の街にいた頃のとんぬらは、とてもお世話に……なったこともあるようでないような、むしろよくお世話していた記憶の方がある気がしなくもないが、とにかく周囲と比較すれば親しくしていた方だ。

 王都でも名を馳せた元凄腕冒険者にして、卓越した技量を持つ『アークウィザード』。まだ一人でクエストをこなし始めた時に、とんぬらに冒険者の心得を説かれたり助言をしてもらっていた。

 ただし、その関係は何なのかと問われれば……どうにもうまく説明できない。

 知り合ってから早い時期に彼女の正体に気付いた。夜の墓場にて、ボランティアの除霊を行っていたところを偶然に目撃して。だからといって、リッチーの師匠を持つとんぬらの態度が変わることはなく、距離感が遠くなることはなかった。むしろ正体に気付かれたとき泣き喚くこともなく怖がることのない子供に向こうが目を丸くした。

 

『別にリッチーだけど店長は悪いことしていないんだろ。それにもし店長がその気ならもう殺されている。正体を知った目撃者はこんな子供なんだし、口封じをするにしても手古摺るはずもない』

 

 と至極冷静に推察を述べたら、怒られた。

 もっと自分を大事にしなさい、と……“墓場で最上級のアンデッドに『命を大事に』と説教される”という状況を文章にすると一体どんな冗談なんだと突っ込まれるかもしれないが、彼女は真剣に自分を叱りつけた。

 先達者として指導してもらったこともあるが、師匠ではない。それは言える。

 人格者の彼女と違って反面教師にしかならないアクシズ教の『アークプリースト』を師と呼びながらも、

 彼女と同じ人外(リッチー)である元宮廷魔導士の『アークウィザード』を師と呼びながらも、

 ひとり街で過ごしていた時にしょっちゅう顔合わせしていた彼女よりも付き合いの短い紅魔族随一の占い師を師と呼びながらも、

 とんぬらにとって、彼女は師でも先生でもないのだ。

 

 

「いらっしゃいませ……って、店長ですか」

 

「はい、とんぬら君、今日も来ちゃいました」

 

 何かと当時バイトしていた定食屋に顔を出していた。そのころから魔道具店が赤字経営ではあったので、こんな外食できる贅沢もない。

 

「……それで今日はお父さん、お母さんは?」

 

「いないよ。昨日から『アクセル』を発った。今回は外国へ行くとか言っていたから、しばらく帰ってこない。まあ、別にもうひとりで自活できるから問題ないけど」

 

 『アルカンレティア』でもそうだった。そのころは教会に預けられ、変態師匠という大人……九割九分反面教師にしかならない次期最高司祭に四六時中付き纏われていたが、『アクセル』では大抵ひとり。暮らしているのも宿屋。金がないときは馬小屋で凌ぐことになる。だからせっせと金稼ぎに働かなければならない。

 それがとんぬらには当たり前になっていて、けれどそういうと彼女はいつも表情を曇らせていた。

 

「とんぬら君はまだ子供なんですから、きちんと大人に頼るようにしないとダメですよ?」

 

「だから、いつも言っているが俺はもうひとりで大丈夫だぞ店長。この街は治安も良いし、アクシズ教のような変質者もそういないから、大人に心配されることもない」

 

「とんぬら君、そう強がらないで。あなたはもっと甘えてもいいんです」

 

 そんな毎度言われるのでつい反抗するかのように言い返してしまうが、彼女は根気よく言い聞かしてくる。それで根負けするのはいつも自分で、『わかったわかった』と可愛げなくもつっけんどんに、おそらくそのころから口癖にもなりつつあったセリフを口にして降参した。

 ……それはきっと、当時の自分も彼女が金もないのに定食屋に訪れるのは自分を心配してのことだとわかっていたからなのだろう。

 

 真の実力者というのは裏で黒幕ぶっているものではないのだろうと彼女と接してからよく思うようになった。

 裏の裏は表。それはきっと非常識な高みにいながら日常に寄り添う、冷酷なだけのこの世界の法則を嫌って、当たり前の営みや優しい人間味を大事にする、彼女のようなものではないかと。

 ただし――

 

「それで、今日はおすすめのカエルの照り焼き定食……はちょっとお高いですね。じゃあ秋刀魚の……は今の懐事情では厳しいですね。でもそうすると一番安いメニューも正直……この前仕入れた魔道具で結構お金使いちゃいましたし……あのお冷を、できれば砂糖を入れて砂糖水に」

 

「はぁ……ちょうど店も空いていますし、八百屋のおじさんにいらない切れ端を余分に分けてもらっていますから、少し厨房を借りて何か作ってきます」

 

「いつもありがとうございます、とんぬら君! 今度、新しく仕入れた魔道具をサービスしますね!」

 

「いや結構です」

 

 なんというか、頼りになるのだけど、残念なお姉さんだった。

 

「――ほんぬらふん、これおいひいですね! ニンジンのヘタや菜っ葉の切れ端とかいろいろ混ざっているにもかかわらず生焼けのものや火が通り過ぎたものがありません。これは火の通り易さを考慮して個別に炒めているんですね。なかなかやりますねー。とんぬら君の野菜くず炒め、メニューに出せるんじゃないんですか?」

 

「いちいち感想言わなくていいですから。それに喋る時はちゃんと口のものを食べてから。ああもう、ウィズ店長も大人ならもっとしっかりしてくださいよ」

 

 

 ♢♢♢

 

 

 ―――少し、店長(ウィズ)との過去を振り返ってみたのにはちゃんと理由がある。

 それはこの現況にどう納得すればいいのか、とんぬらの中で折り合いを再確認するためだ。

 

「手紙は読んでもらえたようだな。よく呼び出しに応じてくれた」

 

「……あんなことを言われた後に呼び出されては、来ないわけにはいきませんから……」

 

 街の外の荒野。

 相対する黒いローブを見に纏う男と、野暮ったいローブとエプロン姿ではなく落ち着いた外着のウィズ店長。

 それから……

 

「長かった……。お前のことを探し続け、この街で魔道具店をやっていると聞いた時には耳を疑ったよ。だが、こうして会えたのだ。遥かな遠方の地より、長い時間をかけてやってきた甲斐があったというものだ」

 

「そ、そんなに遠くから、私に会うためだけにいらっしゃったんですか……」

 

 してきた労苦の滲む実感の篭った重い言葉に、わなわなと打ち震えるウィズ店長。

 ……おい、何を圧されているんだあんたは。熱烈アピールされて顔を赤くしてどうする。“どうにかして穏便にストーカーの方に諦めていただきたいのです”とこちらにお願いして、それで自分は――

 

 

「だが――なのに、そいつは何だ?」

 

 

 フードの奥から突き刺さってくる鋭い眼光がこちら――あからさまにウィズの隣に立つ男へ向けられる。

 弁護請負人ことヌラーの……バイザー仮面を外し、白髪ではなく黒髪バージョンで――すなわち、大人の男性に変装中のとんぬらへ。

 

「ここに呼び出した理由はもうわかっているんだろう? 先日会った際にも伝えた通り……。俺は、お前のことだけを考え続け、ただひたすらにこの身を鍛え続けてきた!」

 

 王都勤務へ返り咲いたという検察官セナとの一件を反省し、このような真似は禁じ手にしておきたかった、紅魔族随一の伊達男(プレイボーイ)こととんぬら。

 それに近頃、まだ周りに明かしてはいないが、結婚して、嫁を持つ身になったのだ。

 なのだが、結婚してからドランゴともうまくいくようになった――いい意味で余裕と自信がでてきた――嫁公認で、ニセの恋人役を演じることになっている。

 とんぬらも今回は別に女を口説き落とす真似はしないでいいのだからと受け入れてはいるが、しかし、何というか、これは思った以上に、ある意味想った通りに、面倒くさい展開だ。

 

(まあ、街中でいきなり服を脱ぎ出そうとする変態野郎がストーカーだなんてウィズ店長も気が休まらんだろう。ただでさえバニルマネージャーから虐げられたブラックな職場環境だというのに)

 

 敵意満々な視線という突き付けられた矛先に合わせるよう、こちらもまたふてぶてしく笑いながら睨み返す。

 

「貴様がウィズのことを一体どこまで言っているのかは知らんが、あまりこの女に深入りするな。いいか、これは助言だ」

 

「クッ……! それは戯言か。ぽっとでの男に教えておいてやるが、“知らない”ってのは、大きな『罪』なんだぜ」

 

 瞬間、男は暗器のように忍ばせたナイフを抜き放ち様に突き付けた――

 軽い挑発にもカッとなったのか。黒刃のナイフでこちらの喉元を狙ってきたが、その前にとんぬらも指でナイフの腹をデコピンするように弾いてみせた。

 

「まったく、キレたナイフのような奴だぜ。そんなのは、天に向けたらどうだい。それなら……誰も傷つきやしねぇからな!」

 

「っ……俺の動きに反応するとは、そこらの有象無象とは違うようだ」

 

 アブない奴だ。いきなり人に刃物を向けてくるとかこのストーカーは思った以上にキてるぞ。ウィズ店長が怖がるのもわかる。

 

「モノの強さだけで相手を測るとは浅い。さっきのセリフを返すようだが、ウィズはあんたみたいな小物が近づいていい女じゃない。これはお子様への助言さ」

 

「人里には出てみるものだな。こんな面白い事を言われるとは思ってもみなかったぞ……つまり、まずは貴様を倒せと言っているのだな」

 

「それよりもまずは服のおしゃれを学んだらどうだ」

 

 本当にこの男は何がなんでも力をアピールしたいようだ。強い男はモテると思い込んでいるのか?

 ……いや、確かに体型のわかりづらいローブ姿であるが競り合えば、肉体が常人のそれを超えた性能(スペック)であるのはわかる。その立ち振る舞いから察する実力はこの駆け出し冒険者とは比べ物にならない、ベテラン冒険者とも一線を画す……見立てでは、お転婆なお姫様といい勝負をするかもしれない。そんな最強遺伝子を継ぐ神器持ちに迫るほど鍛えこんできたというのなら、方向性は間違っていてもその努力は評価しれなければならない。

 

「おしゃれだと? そんなのは必要ない! 鍛え上げたこの腕があれば十分だ」

 

 しかし残念かな、裸族でナルシストのようだ。細マッチョの二の腕アピールをしてくるとはよほど己の肉体美に自信があるようだ。かといってストリーキングに走るのはどうかと思う。

 

「だからって、街中であんな行為に及ぼうとするのは良くないと思います!」

 

 とこれにウィズ店長も注意した。

 

「確かに、今思えば街中でのあの行動は早まったな。一応、人目のない路地裏を選んだのだが……」

 

「人目に付かなければいいというものではありませんよ! 自分に自信があるのはわかりましたが、ああいうことは、もっとこうお互いを良く知ったうえで、時間をかけてからですね……」

 

「……なるほど、確かに、こちらだけが一方的に相手のことを知っているというのは卑怯だな。なら、俺も自分のことを話す必要がある、か……」

 

「そ、そうですよ、だって私、まだあなたの名前しか知りませんし……」

 

 ……ウィズ店長、お断りするために俺にこんな真似をさせてるんじゃないのか?

 とはいえ、人の誘いを無碍に出来るような性格じゃないというのは知っている。とんぬらは諦観して事態に流されることにした。

 

 そして、ウィズ店長の提案にしばし悩むも受け入れたローブの男は、深く被っていたフードを撥ね除けた。

 露わとなったのは造り物めいた美貌。女性と間違われてもおかしくないぐらいの中性的な顔立ちだ。

 

(ん……?)

 

 これほど美形なのは予想外だったのか、ウィズ店長は動揺して顔を赤くしている。とんぬらもまた、その美貌に反応したわけではないと断言できるが、何かしら小骨が刺さるような違和感を覚える。

 

「俺の名はデューク。得意とする上級魔法は炎系統だ。氷結系統の魔法を得意とするお前とは、正反対になるな」

 

「わ、私達の相性が悪いことを隠そうともしないんですね。誠実なのは好感が持てますが……。そんなことまで調べたんですか……」

 

 お前のことは何でも知っているストーカー発言に、若干引くウィズ店長。

 しかし向こうはそれを誇らしげに、

 

「当然だ! お前がまだ人間だったころ、『氷の魔女』と呼ばれていたことも知っている!」

 

 この発言にはとんぬらもウィズ店長も目を見張る。

 “()()人間だったころ”、それは裏を返せば、“今は人間ではない”と告発しているともとれる解釈であり、これを秘密にしているウィズ店長も気が気でない。慌てて問い質した。

 

「ま、待ってください! 私が人間じゃないことを知ってるんですか!?」

 

「お前のことは何だって知っている! いわば、俺はこの世で最もお前のことを理解しているものだと言ってもいい!」

 

「ままま、待ってください! そんなグイグイ来られても、心の準備が! つ、つまりあなたは、私がアンデッドであると知ってもなお、怖がりもせず、こうしてやってきたというんですか?」

 

「この俺を愚弄する気かっ! リッチーなど恐るるに足りぬわ!」

 

「そ、そんな……! そ、そこまで言われると……」

 

 ちょっとウィズ店長? なんか靡きかけてませんか?

 ストーカーの激しい攻勢に、タジタジとなり後ずさるウィズ店長。その彼女の身体が斜め後ろへと控えていたこちらの肩にぶつかり、それから、男の視線もまた移った。

 

「さあ、俺のことは教えたぞ! だから、その男のことを教えろ! それとも臆するか?」

 

 なんて挑発じみた物言いでこちらを探ってくる。

 売られたケンカは買う紅魔族の性分を刺激してくるが、とんぬらは努めて冷静に振る舞う。

 

「たかがその程度のことで知ったかぶりになるとは。底の見通せぬ闇(コーヒー)の苦さをちょっと舐めて顔を顰めているのを自慢されているみたいだ」

 

「その程度、だと……!」

 

「ああ、そうだ。序の口に立っただけでいい気になってるって事さ。(味を)語るには、いっぱいの闇を飲み干してからにして欲しいぜ。お子様にはウィズを渡せないな」

 

「貴様、俺が闇を恐れるとでもいいたいのか!」

 

 このストーカー、やたらと堪忍袋の緒が短いというかキレやすい。

 ウィズ店長が押され気味だから、こちらに意識を向けるよう軽口のコーヒートークをしただけなのに、怒り心頭と言ったご様子。

 

「二人が私を巡って言い争いになってる……こ、こういうのが、三角関係というのでしょうか?」

 

 そして、こちらは思考がシリアスからシリアルへとトリップしているご様子。おい。

 しかしまたも刃物を突き付けてくるような取っ組み合いに入る前に今度はウィズも制した。

 

「ええと、その落ち着いてください! 彼は…ブラッドと言いまして、私の、その仕事仲間です!」

 

「仕事仲間だと?」

 

 ストーカーはこの言葉にピクリと反応。

 それから訝し気に問う。

 

「貴様、人間のようだが……『氷の魔女』の仕事の目的を知ってて、協力しているのか?」

 

 ウィズ店長の仕事とは、魔道具屋の店主。そして、とんぬらはその仕事仲間(バイト)だ。

 それでウィズ店長が金稼ぎをする目的とは、契約を交わした悪魔であるバニルマネージャーのアレな夢を叶えるため。

 とりあえず人を脅かす(腹立たせはするだろうが)ことはないので、承知して付き合っている。

 

「ああ。あんたは知らなかったようだが、これでもウィズの下であくせく下働きしているぜ」

 

「ふん、それでこの程度とは……たかが知れる」

 

 なんか馬鹿にされた。

 これにはとんぬらもカチンときた。

 冒険者稼業との片手間ではあるが、これでも店の売り上げには貢献してきたつもりだ。それがぽっとでの男にダメ出しされるのは腹が立つ。

 

「ウィズの悪癖(浪費癖)に悩まされながら、(マネージャーのご飯にされる)苦汁に耐え忍ぶ働きを、たかがこの程度、だと?」

 

「っ……!!? この覇気! なるほど、本気の程を試すような発言であったとはいえ失言だったな。しかし! これほどの従者を飼い殺しにしているとは、やはりその体たらくは看過できるものではない! ――『氷の魔女』よ、俺と勝負してもらおう!」

 

 行ったり来たりする矛先をまたウィズ店長に突き付ける。この急展開にウィズ店長は目を白黒させて、

 

「ええっ!? な、何故そんな話になるんですか!?」

 

「なぜだと? 決まっている! お前に俺の力を示し、今の仕事を辞めてもらうためだ!」

 

「ええええ!?」

 

 ビシッと指を差し宣言する男。

 

「わわ、私に、家庭に入れと……!」

 

 本気の告白に動揺する店長……んん?

 いや、“お前は俺が守ってやるから家庭に入れ”という意訳はできなくもないが……しかし何か自意識過剰な気がしなくもないような……??

 

「お前の仕事はこの俺が引き継いでやる! ではいくぞ! この……」

 

 戦闘態勢に入ろうとしたストーカーに対し、ウィズ店長はこちらの肩にしがみついたまま――

 

 

「『テレポート』――ッ!」

「ちょ」

 

 

 恋愛未経験者(ウィズ)にはあまりに情熱的なプロポーズからの緊急離脱(テレポート)に巻き込まれたブラッド(とんぬら)は、登録先である世界の最果てにある最も深いと言われる巨大ダンジョンに一緒に篭ることになった。

 

 ………

 ………

 ………

 

 ――そして、三日が経った。

 

「とんぬら君どうしましょう。私はリッチーですよ? なのに、俺はそれでもかまわないと、アンデッドになっても美しい、そのままのお前が好きだと言ってくれて……」

 

「えと、そんなことを言ってましたっけ? というか内容盛ってません? なんか同じ話を聞く度に男のキャラが美化されていっているように思えるんですけど」

 

「それに、会ったばかりだというのにいきなり家庭を持ちたいだなんて……。しかも、可憐なお前に危険な仕事は似合わない、これからは俺がお前を守ってやるから、と……」

 

「すみません。その場面をよーく思い返しても、そのようなアプローチはなかった気がするんですが。世の中には一目惚れという言葉があるにしても、いきなり求婚してくるというのは色々すっ飛ばしすぎじゃありません?」

 

「とんぬら君、茶々を入れないでちゃんと相談に乗ってください! 私は真剣なんですよ!」

 

「ウィズ店長も花ばっかり弄ってないでモンスターを狩ってください! こっちも生きるか死ぬか真剣なんですから。働いてくれないと飯抜きにしますよ! 」

 

 一応、ここ冒険者の間では最難関と評され、まだ攻略者がいないとされているダンジョン。

 この最大級のダンジョンは、探索階を一階下に下げる毎に、階層数×4レベルが探索を控えるべきかどうかの基準ライン。

 グリフォンやらマンティコア、はては下級と言えどドラゴンなど高額賞金指定確実の難敵モンスターがオンパレードの中、装備は常時携帯していても物資やらが足りない。ダンジョン内に大きなパンとか落ちているはずがないので、腹ペコゲージを満たすためにはモンスターを倒していかないとならない食糧事情(サバイバル)という二重苦。

 

「魔素を多く吸っているダンジョンのモンスターはきちんと浄化処理しないと食えたもんじゃないし、かといって『聖なる塩』をウィズ店長に影響が出ない程度の塩梅に抑えるのは結構神経使いますし」

 

「う……すみません、とんぬら君。ダンジョンのモンスターは頂けないことはないのですが、こう摂取した魔力の質が胃に重たい感じで、でも、お塩が濃すぎると私も消えかかっちゃいますので」

 

「その辺は大丈夫です。もう大体お清めの匙加減はわかってきました」

 

「とんぬら君が料理できて助かります。あ、いえ、私も作れるんですけど……そうですよね。家庭に入ったら料理ができないとガッカリされちゃいますし……男性の方ってどのようなのが好みなんでしょうか?」

 

「はいはい、悩み事は後にしてください。ほら、モンスターがまた団体様で来てますから、今度は手伝ってくださいよ」

 

「わかりました。――『カースド・クリスタルプリズン』!」

 

 現在、ベテラン冒険者パーティが挑戦してから四ヶ月はかかる九階層――のさらに下層の十階層にて、絶賛ヘルモードの最中に神主的お悩み相談なんてやっていられないのだ。まずは今日の飯を仕留めてからにして欲しい。

 

「というか、自分、このダンジョンに潜るのは初めてなんですけど、こんなに遭遇率が高いもんなんですか? いえ、自分がアンデッド系を引き寄せやすい体質なのは理解しているんですが」

 

 と、ようやく重い腰を上げて戦闘に参加し、『養殖(たお)』しやすいようモンスター達を氷漬けにした武闘派店主は、自慢そうに首から下げていたロザリオを見せびらかしてきた。

 

「それは、きっとこのロザリオのおかげですよ! これは、素敵な出会いがあると言われている魔法のロザリオなんですが、ダンジョン内のモンスターまで引き寄せているみたいで……」

 

「ああ、それなんか見覚えあるかと思ったら露天商で並んでた……本当に頼りになるのかならないのか判断に困るなあウィズ店長は!」

 

「はっ! もしかして、これを身に着けてたからデュークさんに言い寄られて! それはつまりこれは素敵な出会いということに……!」

 

「もしもしウィズ店長。その理屈から言うと、その出会いはモンスターとの遭遇と同程度ということになりませんか?」

 

 まったくどうしてこうなった?

 とんぬらは状況を整理するためにも、婚姻届けを役所へ提出してからしばらくのことを深く思い出すことにした。

 

 

 ♢♢♢

 

 

「ギルルルーッ!! コイツ、抑える!!」

 

 街一番の不良冒険者に教えられた洞窟にて遭遇したそれは“人のやる気を吸い取りエネルギーに変える”魔道具を核とする機動兵器。

 高さは成人男性の二倍ほどだが八本足の巨大なクモのような形状――あの機動要塞『デストロイヤー』と酷似している。言ってしまえば、その縮小版。

 脅威とすれば、巨大な要塞に等しき『デストロイヤー』に劣る。

 爆裂魔法すら防ぎうる魔力防壁は展開されず、小型化されている。

 しかし洞窟にて発見された書物(説明書)によると周囲から精気を奪って活動する性質の悪い構造をしていた。

 よって、沈めるのなら最短最速で――

 

 

「――相応しいカードは決まった!」

 

 

 猛進する小型機動要塞を、背に斧を背負い直した竜ががぷり四つと受け、抑える。ドラゴンの怪力は見事に真っ向から押し止めるも、生体から活力を奪取する動力源はこの組み合っている竜にも働く。つまり、形勢はいずれ傾くことは確実に予見できた。

 ――だから、稼いでくれるこの時間に、敵機を撃沈するための陣形を整える。

 

「清らかなる循環、『節制(テンパランス)』!」

 

 一枚。

 

「活力を与える陽光、『太陽(ザ・サン)』!」

 

 二枚。

 

「共に結ぶ絆、『恋人(ザ・ラバーズ)』!」

 

 三枚。

 それぞれに絵柄の記された銀縁のタロットカードを投擲し、自身らを囲う正三角形となるよう三方へ配置。三枚の札を触媒に展開するのは、神聖魔法の結界術『セイクリッド・シェル』

 そして、これより展開されるのは、支援に特化された奇跡魔法――

 最後、とんぬらは鏡形態にした全開の鉄扇を、この正三角形の結界、否、正四面体の頂点に位置する天へと掲げ投じる。

 

 

「『パルプンギフト』――ッ!!」

 

 

 よどみなく流れるような詠唱に呼応するよう、鏡に虹色の魔力の光が宿る。

 まさに極光(オーロラ)。天を舞い、地へと降り注がれる光は、この正四面体の領域内を満たす。

 注がれる光は敵を討つためでも、滅ぼすためでもない。『体力魔力を全快に回復させる』この奇跡魔法を、継続して結界内に行使し続けることで、無限の魔力供給を可能とする。

 

 

「照らせ! 『ミラクルゾーン』!」

 

 

 奇跡魔法はただ単に攻撃するだけに非ず。味方を支援することもまた真骨頂。

 そして、この恩恵をあずかるのは、自身のみに限らず。

 

「いくぞ、ゆんゆん!」

「ん……ぁ……っ――う、うん、とんぬら!」

 

 魔力を奪われていたパートナー・ゆんゆんが、目に活力を取り戻したかのように赤く光らす。魔力をも徴収しようが、この一時は魔力無制限。

 抑え役を担ってくれていたドランゴは離脱し、進撃する小型機動要塞であったが、それに怯む二人であれば、街のエースは名乗れない。

 

「『ディフューズ・リフレクト』!」「『ライト・オブ・セイバーA(アロー)』!」

 

 自動回避機能が搭載され、脅威となる攻撃に対し縦横無尽に動き回る機動兵器であったが、それは逃げ場などなかった。

 

 赤光の指揮棒(タクト)より空を狙って放たれた光の刃。

 輝く軌跡は、中空に展開された光の膜を通るや、弾ける。淡い光が天空に満ちる。そして、風を切る雨のような密やかな音。それは慈雨のように生易しいものなどではない。豪雨だ。強かに五月雨撃つ。

 ダダダダダダダダ――ッッ!! と。

 乱反射で拡散された光刃――『シャイニング・ボウ』の、回避不能と称せる殲滅力。装甲が張られ頑丈なはずの機動兵器へと無数に突き刺さり、串刺しにして射止めていく。

 

「『カレイド・マジックゲイン』!」「『コール・オブ・サンダーストーム』!」

 

 複雑な機動を可能とした多脚も砕き散らされて、地面を擦るようスリップする機動兵器へ続けて放つ。

 稲妻迸らせる黒雲招来する天候操作に、魔力暴走を引き起こさせる魔法陣が重なる。そこへ更に相乗する乱流を巻き起こす。

 

「『花鳥風月・水神の竜巻(ピンク)』――!」「――『トルネード』!」

 

 春一番を取り入れた神風に上級魔法の暴風が絡み合って、一陣の桜吹雪と化す。それが狂風暴乱の魔法陣に入るや、桃色の嵐『暴走ピンク陣』となり弾けた。

 その威力は凄まじく、小型とはいえ全身鋼鉄の重量級の機動兵器を高々と宙へと吹き飛ばした。

 脚は破損し、機動兵器と言えども飛行能力までは備えていない。そして、文字通り手も足も出ずなすすべなく錐揉み回転しながら自由落下する標的へと一撃必殺の極大消滅魔法を見舞う――その刹那に拾う。

 

「はぁ……んぅ」 ゆんゆん?

 

 すぐ隣にいなければ聞き逃してしまいそうほど小さな、その身が甘く見悶えるような切なげな声が詠唱の合間に漏れる。

 体の奥が甘い感覚に満たされるのを感じ、それを詠唱中で歯噛みできない代わりとばかりに、または彼に甘噛みしていじらしく催促するように、ゆんゆんは指と指を絡めているとんぬらの手の甲へ指先の爪を弱く立てるくらい握り締めて――気を持ち直してみせた。

 

「『風花雪月』!」「『カースド・インフェルノ』!」

 

 『アクセル』のエースにして、紅魔族最強の二人組(ペア)、とんぬらとゆんゆんは、互いの手を取りながら、得物(つえ)を合わせ、個々人のレベルが上がり、そしてより密になった一心同体の連携を魅せた。

 

 

「「『メドローア』――ッッッ!!!」」

 

 

 ♢♢♢

 

 

 小型デストロイヤーという脅威を非公式ながら未然に処理し、洞窟の遺跡内を探掘してから翌日のこと。

 

「………うん、下がっているがまだ熱はあるなぁ。今日も大人しく寝ておかなきゃな、ゆんゆん」

 

「うん……ごめんね、とんぬら」

 

 ゆんゆんの肩をやんわりと押してベッドに再び横たわし、申し訳なく謝罪を吐く口の辺りまで布団を被らせる。

 

「謝らなくていい。それで何か食べられそうか? 薬を飲むにもできれば何かを胃に入れてくれた方がいいんだが」

 

「うん、少し食べたい。お腹空いてるから……」

 

「食欲があるなら大丈夫そうだ」

 

「でもお世話になりっ放しで悪いなぁ……せっかくとんぬらと……」

 

 しょんぼりした声で言うゆんゆん。彼女の少し寝乱れた前髪を整えるよう頭をそっと撫でて、

 

「まあ、風邪をひいたものはしょうがない。ここのところのゆんゆんは張り切り過ぎたしな。今はしっかり治すことだけを考えよう」

 

「はぁい」

 

「じゃあ少し待っていてくれ。雑炊でも作って持ってくるから。あと、水分補給もマメにするように。脇の机にショウガと蜂蜜とレモンを入れたレモネードのおかわりを淹れてあるから、それまで飲んでおけ」

 

 ゆんゆんが風邪を引いた。

 と言ってもコロリン病など伝染病ではない。普通の風邪だ。“お嫁さんになったんだから頑張らなきゃ!”と頑張り過ぎて無理をしていたし、何よりも悪魔の呪いで暴走してからそう日が経っていない時でもあったので、その反動もあった。

 一度竜の魔力に呑まれてしまったせいか、ゆんゆんはとんぬらの魔力に酔い易くなったのである。

 小型デストロイヤーの気力を奪う動力源に対抗するために期間限定無尽蔵の魔力供給『ミラクルゾーン』の支援を受けていたゆんゆんはそれに酔ってしまい、街に帰還する前からもうふらついており、それにいち早く気づいたとんぬらがまともに歩けない彼女の身柄を抱き上げて家へ――そのままベッドへ運び看病していた。

 

(後遺症……というほどのものではないが。しかし、レモネードに混ぜている『理性の種』の粉末が効いているところをみるとやはりあの一件が後を引き摺っているよなぁ……)

 

 原因は疲労というよりも精神的なものだと見ている。

 酒に酔い潰れてから二日酔いになり易くなったのと同じ。“酒を飲むと潰れるかもしれない”と深層心理で感じて、その“思い込み”が拍車をかけてしまっている。ゆんゆんもまた“ドラゴン(とんぬら)から魔力を受け取るとまた暴走しちゃう!”と意識し過ぎてしまっているのである。

 

 しかし、症状は察したが、その改善となるととんぬらは頭を悩ませる。

 克服するにはゆんゆんが竜の魔力に慣れてもらうのが一番だろう。できれば、レインから分けていただいた貴重な『理性の種』にも限りがあるから、薬が尽きてしまう前に。

 だがそれをどうやって慣らす?

 先の喩えに出した酒で考えれば、しばらく飲酒を控え、そのトラウマが記憶から薄れるのを待つともあるが、逆に飲酒の機会がなくなると余計に酒に弱くなってしまうともいう。適度に飲み、それを習慣としていき身体に覚えさせるのがベストであると。

 それから、見通す悪魔より“呆れるほど鋼の精神力”と太鼓判を押されるほど、幼少から心身を鍛え(いじめ)抜かれた自分は竜の魔力に呑まれずに御していることからこの“酒には強い”、つまりは(メンタル)が肝要であろう。

 

 とつらつら考えているがこれだとは言える名案(こたえ)は思い浮かんでこない。

 なんにしても、今はゆんゆんの体調を直すことが最優先事項だ。

 

「ゆんゆん、できたぞ」

 

「ん……ありがとう。あ、これ美味しかったよとんぬら。それに……ふぁ、いいにおい」

 

 薬湯(レモネード)のマグカップが空になってるのを見せるゆんゆんに、とんぬらは湯気立つ雑炊を配膳する。

 

「自分で食べられそうか? 昨日は寒気がするだけじゃなく、関節の節々が痛くて、体が怠いと言っていたが」

 

「………ぅん」

 

 訊ねれば、ゆんゆんは少し思案げに視線を振り子のように揺らして、遠慮がちに甘える。

 

「た、食べ……させてほしい、かな」

 

「わかったわかった」

 

 ベッドに座ると、木製のスプーンで雑炊を掬う。

 

「熱いし少し冷まさないとな……」

 

 ふーふー、としてから、はい、とゆんゆんの口元へと運ぶ。

 

「うん、ありがと……ん、おいしい」

 

 差し出したスプーンについばむように、ゆんゆんが少しずつ口に入れる。とんぬらは食べやすいようスプーンを持ち上げやや斜めに角度をつける。

 

「そうかい。風邪の時はあまり味覚が鈍ってたりするもんなんだがな」

 

「そうだね。でも、いいにおいがするし美味しいと思うよ」

 

「料理上手のゆんゆんに好評いただけて何よりだ。まあ、味見はしっかりしたつもりだが。俺の朝ご飯でもあるし」

 

「うう、ご飯の準備できなくてごめんね」

 

「ああもう謝るなゆんゆん。台所も隅から隅までピカピカだし、整理整頓もいき届いていて使いやすかったぞ。家全体が新居のように、それも一人で大掃除してたんだから。無理はし過ぎだと思うが、ゆんゆんが謝ることはない」

 

「うん、ありがと……やっぱりとんぬらは優しいなぁ……」

 

「あんまり褒められると恥ずかしいからやめてくれ。ほら、まだ食べられるだろ?」

 

「えへへ……はむ」

 

 もう一掬いすれば、二口目はほとほとに冷めてぬるくなっていたのか、今度は一口でスプーンを咥えた。

 

「そういえば、とんぬらって、風邪ひいたことないの? 私が見てる限り、そういうのないし……毒を飲んで具合を悪そうにしてたことはあるけど」

 

「んー……記憶にある最後は、そうだな、昔、『アクセル』にいた頃にかかったことがある」

 

「それって、学校に行く前の話?」

 

「ああ。バイトを休んで、その時はちょうど金欠でな……仕方ないから馬小屋の中で藁を布団に寝て治そうとしていたな。外のサバイバル生活時とは違って雨露をしのげるだけでもありがたいって」

 

「ねぇ、大丈夫なの、って、大丈夫じゃないでしょとんぬら」

 

 じっと睨まれる。あの時の自分は若かったというか、他に選べる手段がなかったのだ。頼れるあてもないし、他人に迷惑をかけるわけにもいかない。

 

「さあ、大丈夫じゃなかったんだろうな」

 

「さあ、ってそんな他人事みたいに」

 

「そう言われても熱にうかされててかあの時の記憶はあまりないから……ああ、眠りに落ちる前は馬小屋にいたはずなのに起きたら普通にベッドに眠っていたから驚いた」

 

「え、それって……」

 

「ウィズ店長だよ」

 

 朧気ながらも憶えている。

 いつもの定食屋で働いていないことを気にかかり、わざわざ話を聞いたそうだ。それで滞在している馬小屋にまで赴いて、ひとりのとんぬらを見つけ、店兼用の自宅にまで連れ運んで、店長のベッドで看病されていた。

 

「随分と世話になった。食うにも困る生活しているというのに、『自分はリッチーですから』と栄養になる食い物まで用意してくれて……ああ、目の前でよだれを垂らしそうな顔をされたからいただきにくかったが」

 

 『とんぬら君、ど、どうぞ、遠慮しないで食べちゃっていいんですよ。ええ、私に気にせず……パンの耳だけでもいただければそれで十分ですから!』と腹ペコ状態なのを我慢していたウィズ店長の表情に思い出し笑い気味に苦笑するとんぬら。

 

「しかし、まあ親にしょっちゅう放置されていた当時の俺にとっては最も傍にいた身近な大人ではあったよ」

 

「『アクセル』に来てから最初にとんぬらに紹介されたしね」

 

 そのころを懐かしむよう目を細めるゆんゆんだったが、ふと妙に改まって、とんぬらに訊ねた。

 

「そ、そういえばさ……とんぬらのご両親は……?」

 

 遠慮がちで言葉少なであるが、彼女の意図はとんぬらに十分に察せる。

 まあ気になるだろう。しかし、とんぬらは嘆息と共に吐露した。

 

「うちの放蕩親共は問題があり過ぎるというかダメ親だ。特に母は、後継は鍛えられても、子供は育てられない、人間関係が超上級者向けの人だな。正直、ゆんゆんにはあまり会わせたくない」

 

 実の親に酷な評価ではあるが、わりと本音である。

 子供に神事を丸投げして、里の外で主に活動している自由人な両親。あの変態師匠と気の合う親友である前神主の父もそうだが、母も母で難解な性格をしている。人付き合いが得意とは言えないゆんゆんに会わせるとどんな化学反応が起こるかとんぬらにも計算できない。まともな会話になりそうにないのは予想できているが。

 

「でも、お、お義母さんに挨拶しておかないと! とんぬらって一人息子でしょ? 嫁姑問題ってあるじゃない? 少し塩分濃すぎじゃないってミソスープの味が気に入らなかったり、お掃除がなっていませんわねって指を窓枠につつーッと溜まってる埃を見せつけられたり……それで、関係がギクシャクしないようにするには最初の挨拶が肝心だって……」

 

 ああ、だから隅から隅々まで気合いを入れて掃除をしていたのか。ととんぬらはここのところの彼女の行動に納得した。

 

「それは余計な心配だ。母は家事がまるでダメな人だから。洗濯物は綺麗に畳めないし、肉魚を焼こうとすれば黒焦げにするし、掃除もすれば逆に物を壊してゴミを増やす始末……というか魔法以外はてんで壊滅的(ダメダメ)だし」

 

 その昔を思い出して頬を引き攣らせるとんぬらはやれやれと額に手をやり、

 

「そもそもどこにいるかも俺にもわからんし。まあ、元気でいるだろうさ。何と言っても……――ああ、本当に俺は今も昔も“あの称号持ち(タイトルホルダー)”に振り回される運命なのか」

 

 あまり思い出したくはないが、忘れはしない。そんな過去の思い出を記憶の片隅へと押しやって、話題を打ち切らせるようやや強引にとんぬらはパンと手を叩き、

 

「それで、他に何かして欲しいことはあるか?」

 

「う、うぅん……その、ちょっとね」

 

「なんだ?」

 

「寝てたら汗すごくて……ね?」

 

 

 ♢♢♢

 

 

 『フリーズ』と『ウインドブレス』を活用して室内の空調は快適に保っていたと思うが、汗が出るのは生理反応だ。熱があって寝込んでいたのだからどうしようもない。たくさん汗をかいて寝巻が濡れているのならだいぶ気持ち悪くなっているのは想像に難くないし、汗が冷えれば身体にも悪い。自分では背中を綺麗に拭うこともできないだろう。

 そうだ、もうすでに互いの裸を知っているわけで、だからといって平気だとかそういうわけはない。むしろ余計に精度の高い想像ができてしまうので――

 

「だから、背中、拭いてくれる、とんぬら?」

 

 と背中を預け預かっているパートナーはこちらの返事を待つことなく、ベッドの上で起こしている身を捻るようこちらに背を向ける。だからといって脱いでいる所を見続けるわけにもいかないだろうから、とんぬらはサッと目を逸らしたのだが、衣擦れの音がやけに耳につく。

 右左と落ち着かなく泳いだ視線は、桶とタオル、元々頭に乗せるために用意していたのを見つけ、これを使うかと定まる。ああそれから着替えも必要だろう。寝室のクローゼットにそれ一式があるし……ただ、下着類も自分が選んで持ってくるべきなのだろうか?

 

(くっ……! どうしてこういうときに頼れる女子(めぐみん)がいない!)

 

 居れば『私が出る幕じゃないでしょう』ととっとと退散していただろうが、いずれにしてもここはとんぬら自身しか頼れない。ドランゴも今は子供たちのいる孤児院にいる。“ええいままよ!”と中を見ずに適当に引き出しの一番上のを取って寝間着(パジャマ)の上下の間にささっと挟み入れた。

 

 それであれやこれやと準備している内に音が止んだので、恐る恐る目を戻すとゆんゆんの剥き出しな背中がそこにあった。

 色白な肌に珠の汗が滴り、艶めいているように視覚効果が倍増されている。

 それでゆんゆんは自分を抱きしめるように体の前で腕を交差させているようだった。だから背中は無防備で、緩やかによじれた腰の曲線が隠すものなく見て取れる。

 そう、背中だけなのだが……

 こう、もっちりしたお尻とか、背筋のライン、それからこちら側からでも零れて見えるたわわな横乳が、めまいを起こさせるほど鮮烈な会心の一撃を見舞ってくるわけで。

 とんぬらは再び目を逸らした。しかし、それが見えているかのように背を向けたままゆんゆんの声が回り込んでくる。

 

「早く、して……寒いから……」

 

 そろそろと目を戻せば、ゆんゆんの背中は少し震えているようにも見える。

 ――彼女は病人。風邪を引いているのだ。とんぬらは己の邪心を恥じた。

 いくら自分から頼んできたと言っても、この状況はゆんゆんも耐えがたい恥ずかしさのはずだ。きっと今日気前よくお休みをくれたお隣のマネージャーは今頃メシウマで爆笑だ。しかしそれを風邪を長引かさないため、必死に我慢しているに違いない。そんなゆんゆんを恥ずかしめるつもりはない。自分の愚かさを呪ったとんぬらは覚悟を決めた。

 戦前に兜の緒を締めるかのように気合い入れて濡らしたタオルを絞り、それからベッドに腰かける。ダブルベッドのスプリングが、二人目の体重にギュッとたわんだ。視界の端でゆんゆんの足指がゆっくりと閉じ、シーツのしわをぎゅっと握り込む。

 触れられるほど近づいても、ゆんゆんは背中を向けたまま動かない。やや俯いたがそれだけで振り向きもしない。

 

「髪、避けるぞ」

 

 努めて冷静に、情けなくもやや声が上擦ってしまうが、そう断りを入れてから、リボンで結ばれることなく解かれている、背中にかかるゆんゆんの髪を方へ引っ掛ける。

 そしてより肌色面積、うなじも露になった背中へと濡れタオルをくっつける。

 

「ぁっ……」

 

「? どうした? 冷たかったか?」

 

「う、ううん、大丈夫。ちょっと、くすぐったかっただけだから……」

 

 ゆんゆんの声もまた揺れている。まだ熱が下がり切っていないのか、息も荒げ。

 

「ぅ~……」

 

「どうした? 気になることがあれば言ってくれ」

 

「えと……汗臭くない、かな……髪もぼさぼさだし……ぅぅぅ」

 

「汗臭くなんてないし、ゆんゆんのなら平気だ」

 

「もう、ばかぁ……」

 

「わかったわかった。とにかくすぐ済ませるよ」

 

 肌に当てていたタオルに慣れたところで、再開。間近で見ると、緩やかに浮かび上がる肩甲骨の間に、じっとりと汗が浮かんでいる。上気したうなじから垂れた一滴が背筋の線に沿って流れ、その行き先へと目が釣られかけるも、己を固く律している。

 あまり力は入れず、けれどくすぐるような弱さではないくらいに押し当てて、背中を拭き上げた。厚めに畳んだタオル越しなのに、触れたところが溶け出しているんじゃないかという柔らかさが指に伝わってくる。

 今度はゆんゆんは声を出さなかった。ただ、ほんの身じろぎ程度に背をくねらせた。緩んだシーツが波めいて乱れ、ベッドを通じて柔らかい揺らぎがこちらの尾てい骨を脅かす。

 

(パルプンテパルプンテパルプンテパルプンテパルプンテパルプンテパルプンテ……)

 

 細心の注意を払い、しかしそうなるとタオルを挟んでも指先の感覚はこの質感を覚えてしまうわけで……――とんぬらはもう無心で、無念無想の域へ達して、ただただひたすら丁寧に手を動かした。

 背中や脇腹、それから少しお尻に触れかける程度に下の方も拭い、そして腕と脇を綺麗にして。

 

「よし、こっちは終わりだ。あとは前だけ」

 

「うん、ありがととんぬら」

 

 洗面器の桶にタオルをすすぐと、固く絞って水気を切り、ゆんゆんへ手渡す。

 そして、ゆんゆんが自分で前を拭いている間にとんぬらは『ウインドブレス』と『ティンダー』を使い、室温を肌冷ない程度に上げて、緩やかな微風を循環させる。

 それで機を計ってから、

 

「……少しはさっぱりしたか?」

 

「うん……本当はお風呂に入りたいけど……」

 

「それはちゃんと熱が下がってからだ」

 

「はぁい」

 

「よし、着替えはそこにあるからな。そしたらまた寝ておけ」

 

 とはいえ、長らく眠っていたせいで眠れないのが病人の性。

 食器や桶とタオルを片付けてから部屋に戻ると、着替えたゆんゆんは布団で口元を隠しながら、こちらを見つめていて、

 

「ね……手、繋いでもらってていい? ……そしたら、眠れると思う」

 

 仄かに頬を赤らめたままそうお願いするゆんゆんに、とんぬらが返せる言葉はもう定例句のように決まっている。

 

「わかったわかった。元より今日はゆっくりできるよう傍にいるつもりだったからな」

 

「えへへ……。何だか今日はとんぬらを独り占めできてるみたいで……たまには風邪もいいかも」

 

 布団の横から出された手を握れば、ゆんゆんはふやけたようにはにかむ。とんぬらは、『そんな阿呆なことを言うんじゃない、ったく』と苦笑しつつも今日は存分に甘やかすと決めており、

 

「それなら、寝つきが良くなるよう何か本でも読んでやろうか?」

 

 ゆんゆんがいつも寝る側のベッド脇に設置された本棚。今はちょうどとんぬらの背にあるそれに軽い冗談を口にしながら適当に後ろ手で一冊取って、

 

「ん……?」

 

 パサッとベッドの上に落ちる。

 それは今取った本の間に挟まれた薄冊子の本で……

 

「これは……小説、か?」

 

「あっ、え? ど、どうしてそれ……っ!」

 

「おっと」

 

 つい反射的に、慌ててゆんゆんが隠す前に先に取ってサッと上に掲げる。

 

「あ、あうぅ……っ!」

 

 病床につきながらも上半身を伸ばし、ピョンピョンお尻で跳び上がって本を取ろうとするが、ジャンプ力が足りないのか豊満な乳房が揺れるばかりだ。

 ……いや、それはそれで目の保養だが。

 

「えっと……そんなにみられたくない本。なのか?」

 

 必死な様子なので本を返しつつとんぬらは訊ねる。

 

「うっ……」

 

「いや、それならこの本にはこれ以上触れないが……」

 

 ゆんゆんはベッドの上で正座して本を胸に抱きかかえつつ、こちらを上目遣いで、

 

「うぅ……でもその……このままだと気にする、よね?」

 

「まあ、多少は……ゆんゆんの読んでる本がどんなのかは気になるし……」

 

「えっと……だから、こういう本……なの……」

 

 おずおずと開いて見せてくれれば、やはり小説――

 しかし思っていた普通の本ではなく、いきなり目に入ってきたのは濃密で過激な描写である。

 

「『初めて契りを交わしたあの夜から、幾度となく彼に快楽を与えられ、絶頂の味をたっぷりと仕込まれた私の躰は、隅々までいやらしく開発されている。だから、もうすぐ触れられる――そう思うだけで胸の奥が甘く疼いてしまい、その瞬間を待ち焦がれるように私は己のいやらしく彼に育ててもらった乳房を揺らし――』……って」

「あうぅ……お、音読しないで……」

 

「あ、すまない……って、エロ小説?」

 

「か、官能小説!!」

 

 すぐさまゆんゆんが訂正するものの、とんぬらにその差はよくわからない。

 ただひたすらに気まずい。背中とはいえ裸体を目の当たりにした直後だけに余計に気まずい。表に出さないように努めているが、心臓が戦いのドラムでビートを刻んでいるかのように五月蠅い。とんぬらは感情を抑えきれず赤くなりつつ瞳を隠すよう目を瞑りつつぽつぽつと、

 

「いやまあ……別に、その……なんだ。気にはしてないから……」

 

「こ、この状況だと気にしてほしい……かも。そうじゃないと私がただえっちな子、みたいになるし」

 

 それなら、あの『えっちな本』を処分した方がいいんじゃないかと思うのだがそこは指摘するのを控えた。

 

「じゃあ、そうだな……何か参考にでもしようと思ったのか?」

 

「そ、そうなの!」

 

 苦し紛れの言葉であったがあっていたらしい。

 

「その……とんぬらと……する想定として、変なこと言ってがっかりされたくないし……できればとんぬらのことよくしたいっていうか……うぅ」

 

「……そうか」

 

 精神統一で閉ざしていた薄目を開けると、太股を合わせて少しもじもじしながらこちらを窺っているゆんゆん。

 うーん、この状況どうしよう。結婚しており、正式に関係上は夫婦なのだが、夫婦の営みとやらにチャレンジするのは時期尚早などではないかとも思うわけで。

 しかし懊悩するとんぬらとは違って、とっくに覚悟が決まっちゃってる系暴走乙女はおずおずと控えめがちにも積極的に、

 

「ねぇ……私を、とんぬら好みに開発しても、いいよ……?」

 

 それは男心にグッとくる殺し文句、勉強の成果が早速出たように思われたが、しかしながらゆんゆんの目は赤くなっているだけでなくグルグル回っていて、冷静さを失っていることが手に取るようにわかる。

 これを見て、とんぬらも定まった。

 

「ん………」

 

 “風邪は移せば治ると言うしな”なんて、囁くように軽口を口ずさみ、柔らかく、ほんの少し汗っぽい肌に触れて――すぐに離す。

 

「おやすみのおまじないだ」

 

「とんぬら……」

 

 このフレンチさに視線が後を引かれるよう――そう、どこか物足りさを覚えたように――ゆんゆんが見上げてくる瞳、それを感じながら、

 

 

「じゃあ、ゆんゆん――まずよく寝る()になってくれ」

「ぁ――」

 

 

 ぼうっとするゆんゆんの期待げな目を覗き込むように見つめながら、とんぬらは瞳を怪しげに光らせる。

 途端、こくん、と寝落ちするゆんゆん。いくら“若気の至り”やら“その場の勢い”という言葉が世にあろうとも、彼女は風邪を引いていて、弱っているところに手を出すとかとんぬらにとってはありえない。

 病人は大人しく眠らせておくのが一番だ。熱に浮かされているゆんゆんを見て、とんぬらは本来の看病の姿勢を思い出した。むくっと起こりかけた妙な気分も引っ込みかけるというもの。

 しかし、だ。

 

「とはいえ、この状況……どうするか」

 

 この状態でもゆんゆんはしっかりと手を握っているから離れられないし、向こうは誘っておいて無防備で眠っている。あと片手を伸ばせる範囲に暇つぶしができそうなのが、その官能小説しかないというこの状況。

 一体どんな生殺しなんだこれ? どれだけ俺の鋼の自制心を試しているのだろうか?  と自問自答するとんぬらは大いに嘆いた。

 

「ああもう……早く元気になってくれ」

 

 正座の状態から寝落ちしたゆんゆんから手を離さないように気を遣いながら、寝やすいよう姿勢を横たえてから足を伸ばさせ、余計な気を起こす前に布団を被せた。

 それから口のあたりを指で擦り――まだかすかに残るゆんゆんの味に欲求不満を呑み込むと――とんぬらは余計な騒音(例とすれば余計な問題作を買い込んだ店長をマネージャーが殺人光線を浴びせるといったお隣のドタバタ騒ぎ)で彼女の目を醒まさせぬよう、『サイレント』の魔法効果が封入された遮音結界のスクロールを読み解いた――そのタイミングであった。

 

 

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

 

 結界に弾かれるも、街全体にギルドの受付嬢のアナウンスが放送される。

 先日の税金徴収の件もあって、怪しみ警戒する冒険者(もの)が大半であったが、反響する声に息を呑む音が混じる。

 

『繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! ……………………冒険者の皆さんっ!!

 

 

 ――『世界樹』です!!』

 

 

 参考ネタ解説。

 

 

 ミラクルゾーン:ドラクエの魔法使いの必殺技。使用する全ての呪文と特技の消費MPが5ターンの間0になる。設定上、これは特技の効果としてMPを分け与えているとされる。さらに上位版、個人に限定せず効果が味方全員に及ぶのが超必殺技の『超ミラクルゾーン』もある。

 作中では、パルプンテ(パルプンギフト)の『MP全快』の効果の応用。

 

 シャイニング・ボウ:ドラクエの弓の特技のひとつ。ドラクエⅨにおいては要『弓の秘伝書』の秘伝技扱い。鋭い光の矢が放たれるや中空で拡散して光の雨となって降り注ぎ、敵全体(もしくは無差別連続)ダメージを与える。光(シャイン)属性で斬撃扱いとなっている。

 

 暴走ピンク陣:ドラクエⅪに登場するゾーン連携技。敵全体に風属性ダメージを与え、高確率で魅了する。厳密には別だが『ラブラブタイフーン』の上位版のようなもの。

 

 

 特技装備仲魔一覧(七章からの更新分)

 

 宴会芸スキル。

 扇スキル。

 花鳥風月。

 ・水神の竜巻:春一番複合。

 風花雪月。

 ・猫小判:氷細工+ゴールド・アストロン。

 ・怒涛の狛猫:軍団召還系。

 鏡花水月:真実の姿に戻す。要太陽の鏡。

 風姿花伝:幻の分身を生む。身代わりの残像。

 

 妖しい瞳:催眠術。スリープと同効果。

 

 二刀流+神楽舞スキル。

 春花秋月。扇の四連打と刀の五段斬りの合わせて九連撃。

 

 神主スキル(神聖魔法スキルも含む)。

 不思議な踊り:怠惰と暴虐の女神の呪い効果。レベルダウン。

 暴走魔法陣:支援魔法マジックゲイン。魔法陣設置型で魔法暴走率(会心の一撃)も上昇。

 カレイド・マジックゲイン:超暴走魔法陣。リフレクト+マジックゲイン。

 ターンアンデッド:要銀のタロット『正義』。

 ディフューズ・リフレクト:拡散させる反射魔法の応用。

 空中ジャンプ:反射魔法を足場に。

 

 魔法使いスキル。

 山彦の悟り:魔法の連続同時詠唱。

 真空波:無詠唱素手の魔力塊発射。

 

 ドラゴン固有スキル。

 龍脈:万物の理を拡大解釈させる竜の特性を取り入れた錬金術。

 砦に活用→暗黒の魔人。命名デンドロメイデン。

 地面に活用→鳴動封魔。

 真空波に活用→竜の爪。

 竜眼:とんぬら版セイクリッド・ブレイクスペル。目が疲れる。

 

 複合スキル。

 分身:氷細工+モシャサス+ヴァーサタイル・ジーニアス。要吸魔石。

 火炎竜:カレイドマジックゲイン+火柱(ティンダー+ウインドブレス)。

 

 呪文スキル。

 奇跡魔法。

 ・冥界の霧。相性逆転。

 ・カモネギ化。レアな高経験値モンスターへの強制変化。

 ・時止め。

 ・モンスターを仲間にする。

 ・装備強化。

 ・混乱して服を脱ぐ。

 ・大津波(水上限定の山彦効果)

 ・地盤崩壊(洞窟限定の山彦効果)

 ・シャナク;物理破壊による浄化魔法。

 召喚。

 テンオツ貴人(エリス様)。

 

 ニャルプンテ:妨害限定奇跡魔法。

 

 パルプンギフト:支援特化奇跡魔法。

 

 パルプンチェンジ:錬金術版奇跡魔法。

 

 確変特技。

 ・ドルマクロス。逆十字の真空波。銀のタロット:『悪魔』+『審判』+『死神』。

 ・サンズ・オブ・タイム。時間巻き戻り。銀のタロット:『魔術師』+『吊るされた男』+『運命の輪』。

 ・ミラクルゾーン。魔力消費無制限。銀のタロット:『節制』+『太陽』+『恋人』。

 

 鋼鉄変化。

 ゴールド・アストロン:相手を黄金化させる妨害版の支援魔法。

 

 天地雷鳴士スキル

 幻魔昇華(召喚)。

 ・バルバルー:ケセランパセランの幻魔。退魔の太刀に宿る。必殺技は剣技乱舞。

 ・カカロン:雪精の幻魔。無双扇に宿る。必殺技はヒーリングオーラ。

 ・クシャラミ:春一番の幻魔。銀のタロットに宿る。必殺技は戦神の舞。

 ・ドメディ:鬼火(アクアウィスプ)の幻魔。雷霆の杖に宿る。必殺技はビックバン。

 天地鳴動の印:幻魔解放。全力()技。

 

 

 ゆんゆん協力。

 ミナデイン:光刃付加+マホプラウス+雷系統魔法。

 ブリザードソード:氷細工(刀)+カースド・クリスタルプリズン。

 グランドネビュラ:グランドクロス+ライト・オブ・セイバーA(アロー)

 バキグラム:ドラゴラム+ウインドカーテン。

 氷雷陣:水芸魔法陣+サンクチュアリ+雷魔法。

 アイアンブロー(猫鉄拳):アストロン+竜言語魔法。

 シャイニング・ボウ:ディフューズ・リフレクト+ライト・オブ・セイバーA(アロー)

 暴走ピンク陣:カレイド・マジックゲイン+コール・オブ・サンダーストームからの花鳥風月・水神の竜巻+トルネード。ラブラブタイフーンの強化版。

 

 めぐみんとゆんゆん協力。

 エボルシャサス:モシャサス+エボルシャス。要超高級マナタイト結晶。大魔導師降臨。

 

 ダクネスとクリス協力。

 アクトバットスター。

 

 クリスとめぐみん協力。

 スピードスター。

 

 クリスとアクア協力。

 スーパールーレット。

 

 アクアとゆんゆん協力。

 スペクタルショー。

 

 カズマ今作オリジナルスキル。

 スタン:金縛り。Web版不死王の手の麻痺限定。

 

 ゆんゆん。

 ゴッドスパーク:ギガジャティス+ジゴスパーク。

 ドラゴネスモード:竜使いの覚醒。

 

 

 アイテム。

 とんぬら装備。

 空のトーガ→天のトーガ。

 退魔の太刀。命名『杓子』。『結界破り』の術式構造があり、仮初の魔法体である悪魔に特化ダメージ。

 必殺の扇→無双扇。変形すれば鏡に。

 雷の杖→雷霆の杖。『ライトニングブレア』を可能とする魔道具。

 

 ゆんゆん装備。

 ドラゴンローブ:紅魔族随一の服屋ちぇけら作成。ドラゴン(とんぬら)素材使用。

 光のタクト→ライトニングタクト。

 

 めぐみん装備。

 理力の杖:紅魔族随一の発明家ひょいざぶろー作成。爆裂魔法の応用ソード・エクスプロージョンをした結果、壊れた。

 

 カズマ装備。

 破幻のリング:幻惑を弾く。

 幸せの靴:歩くだけで経験値。

 

 道具袋。

 シルバーフェザー:吸魔石+ゼル帝の羽。爆裂魔法の魔力消費分を賄えるほど強力な魔力回復アイテム。

 魔法の玉:爆発魔法級の威力。

 マグマ電池:動力源。要マシンメーカー。

 エネルギー物質:炎と氷を融合させて得る莫大なエネルギー塊。要マシンメーカー。ゆんゆん協力。

 超激突マシン:馬車の三倍速い竜車の三倍速い改造車。基本紅魔の里に置いている。

 火炎草:粉塵爆発。レイン提供。

 理性の種:鎮静効果。レイン提供。

 

 錬金器具。

 シャナク魔法台:アイテムの解呪可能。

 マシンメーカー:特典『物作りの才』補正あり。

 

 その他。

 変化の杖。『モシャス』を可能とする魔道具。所有者カズマ→アイリス。

 

 

 仲間モンスター。

 ゲレゲレ:初心者殺しの変異種。現在育児休暇。

 エリー:賢王が造ったお世話ゴーレム。現在修理リハビリ中。

 ホイミン:とんぬらの血で進化したところてんスライム。アクシズ教団のマスコット・ホイミンマンとして広報活動中。基本アクシズ教団の教会に預けられている。

 プオーン:元巨大な悪魔なゆるきゃら。昼夜逆転の『ラナルータ』ができる。『モシャサス』で巨大化も可能。

 わたぼう:綿胞子の精霊。クリス()認定のエリス教団のマスコット。『星占い』ができる。

 ドランゴ:斧持ちのドラゴン。性別は女の子(メス)。若いが人語を解し、人化の術を習得。




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