この素晴らしい願い事に奇跡を!   作:赤福餅

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123話

「『ヒール』」

 

「おおっ、これはこれは素晴らしい回復魔法の腕ですな。その歳で私に勝るとも劣らない。しかし、もっと詠唱は元気よく唱えてくれないといけませんねぇ」

 

「文句があるんなら、自分で治癒したらどうなんだ? 特にその頭を重点的に」

 

「はっはっは、自分で治してもいいんですがね? やはり、若い人にかけてもらう『ヒール』は一味違うので! 傷だけでなく、心にまで癒しが染み渡るようで格別ですよ!」

 

 関係上は一応、加害者(トール)被害者(ゼスタ)へと慰謝料代わりに回復魔法で怪我を治療しているのだが、仮面で覆われてもわかるくらいに物凄くトールは嫌々そうだった。

 

「それに驚きですねぇ。あのパトリシアちゃんがこうも従うとは。私、以前、ステディになろうと馬小屋(ねや)で一夜を共にしたことがあるんですが、触らせてももらえず、それで辛抱たまらんと思い切って襲おうとしたら蹴っ飛ばされてしまいましてね。一晩中気絶してしまいましたよ」

 

「その気持ちはよくわかる。俺も今そうしたい気分だからだ」

 

「おおっ、わかりますか! 牝馬とくんずほぐれつしたいという」

「変態に言い寄られるパトリシアの気持ちがだ! 断じて変態にではない!」

 

 気持ちはよーくわかる。

 今も周りから、『穴があればオークもいける! がゼスタ様の座右の銘だ!』やらと“さすゼス!”と信者たちに囃し立てられて、(アクシズ教徒に大変魅力的な)トールに回復魔法をかけられているのを羨ましそうに見られている。憐れトール。だが、代わってはやれない。自分(カズマ)も『ヒール』は覚えているが、その狂信者の中でもとびっきりの変態であるアクシズ教最高司祭とは関わり合いたくないのだ。

 

「ほら、もう傷は癒えただろう? 残念ながらその頭は手遅れだが」

 

「ええ、あなたの愛で元気百倍です」

 

「そんな感情は微塵も込めていない」

 

「しかし、あんな手酷い仕打ちを受けられてはもう、お詫びとしてアクシズ教団に入っていただくか、私とステディな内弟子になっていただくかしか、選択肢はありませんな」

 

「あのとき、敵寄せの『フォルスファイア』を使わなければ、そのまま事故なくスルーできていたわけだが。どんだけ厚かましいんだあんたは!」

 

 一応このおっさんは教団の一番偉いトップなわけだが、さっきから、ろくな事を言わない。そろそろ変態に絡まれるトールが可哀想と言うか、あんまり立往生を食らうわけにもいかないのでいい加減に話を進めさせたい。

 そんなこちらが動く気配を察したのか、若者(トール)との会話を楽しんでいたゼスタがカズマたちの方へと顔を向け、

 

「これはこれは、アクア様のお仲間の! お久しぶりです、覚えていますか? アクシズ教の最高司祭兼、教団責任者のゼスタです! いつぞやは、私が警察にお世話になっている間に旅立たれてしまった様で。別れの挨拶が出来ず、残念でしたよ」

 

 とゼスタから解放されたトールであるが、それと同時に堰を切ったように、次から次へとアクシズ教徒が押し寄せる。

 

「お兄さんてすっごいいけめんだよね! ねえ、“お兄ちゃん”って呼んでもいい?」

「構わない。呼び方ぐらい好きにすると言い」

「あの……。“お兄様”って、呼んでもいいですか?」

「構わないが、あまり近寄るな。それから背後に立つな。衆道には興味がない」

「あの! 貴方様に触ってもよろしいでしょうか! その身体から発するアクア様のご加護にあやかりたいのです!」

「手つきがいやらしいし息が荒いから遠慮したいんだが」

「そんなお預けだなんて高等なプレイをお望みで!」

「わかったわかった。握手くらいならしてやる」

「ありがとうございますありがとうございます! もうこの手は一生洗いません」

「では、私はぺろぺろをご所望します!」

「却下だ。してきたらその舌を引っこ抜くぞ」

 

 老若男女入り乱れての目まぐるしい混沌具合を、彼の聖徳太子よろしく複数人同時に変態どもを捌くトールは実に大変そうだ。こちらに意識を向ける余裕もなさそう。巻き込まれたくないが、あとで労わってやろう。

 

 

 ――でだ。

 ここには、既に疲弊した、アクシズ教徒ではない異分子がいた。

 

「なんか随分とやつれてんな、お前」

 

 泣き黒子が特徴的な大人の女性……。

 彼女はかつて『アクセル』で一時幅を利かせていた魔王軍の諜報員(スパイ)で、幹部でもあった『ダークプリースト』セレナだった。

 最初のお淑やかな猫被りなど取っ払っており、やさぐれた調子で、

 

「うるせーよ……。チッ、なんでお前がこんな所にいるんだよ。ここから先は、魔王軍との前線基地になっている小さな村ぐらいしか見るものなんてねーぞ。ああ、気分悪い……! 変な集団に絡まれたと思ったら、一番見たくねえ顔を見ちまったよ!」

 

 それはこっちの台詞だ。

 脱走したと騎士たちから話には聞いていたが、邪神の崇拝者とこうもバッタリ遭遇してしまうとは。

 

 ただ、今はトールのように(変態的な)レベルの高いアクシズ教に囲まれていたせいか、げんなりしていた。

 おそらく、ゆったりとした白い神官服みたいなローブというプリースト然とした服装のせいで、魔獣掃討作戦をしていたアクシズ教徒に絡まれ、存分にセクハラされたっぽい。

 

「何なんだよ本当に、この頭のイカれた集団はよ! 唾を吐きつければ喜びやがるし、そこのオッサンに至っては、頭を下げる振りしてパンツ覗こうとしてくるしよ! ああもう、訳が分からねぇ連中だ!」

 

 ご愁傷様――などとは思わない。街を滅茶苦茶にしようとしてくれて、一度死の呪文で殺してくれた相手だ。

 

「そんで、あいつは何だ? 前に見かけなかったが新顔か」

 

「ええ、私達のパーティに加わった、隣国の王子ですよ」

 

 めぐみんがこめかみをピクつかせて、杖を構えながらセレナに簡潔に答えてやる。すると、へぇ、と嘲笑うよう顔を歪めてみせる。その反応からして、トールがお仲間の魔王軍ではないのは明らかだが、何か知っていそう。

 

「あれが、ラグクラフトが報告していたバカ王子か。惨めだねぇ、国を追われた王族ってのは」

 

「何? それは一体どういうことだ?」

 

 ダクネスが眦をつり上げて詰問すれば、セレナはとっておきのネタ話をするように教えてくれた。

 

「おや、知らないのかい? もうとっくにウチら諜報部の工作で隣国の『エルロード』は魔王軍に堕ちているんだよ。だからあそこにいるのはてっぺんの王座から転がり落ちた、大うつけもんの没落王子なのさ。ま、散々苦汁をなめさせられた王族は絶対に始末してやるってラグクラフトは息巻いてたけど、ここにいるんじゃあ、逃がしちまったみたいだな。手ぬるい奴だ」

 

 なん、だと……!?

 トール、お前、道中一緒にいた俺達にもこんな壮絶な過去をおくびにも出さず、魔王城へ挑もうとしていたのか……くっ、魔王軍からの刺客ではないかと浅はかに疑ったのが申し訳なくなる。

 そして、それを笑い者にするセレナはやっぱりムカつく。

 

「それを言うんなら、お前は幹部のくせに国どころか街ひとつも満足に占領できなかったじゃねーか」

 

 そう揚げ足を取るよう指摘してやれば、にやにやとした嘲笑を引っ込めて、こちらを睨む。

 

「ああ、そうだよ。っていうか……おいカズマ。そもそも、なんでお前はピンピンしてるんだ? 確かに、お前にはあたしの『デス』を食らったはずだよな?」

 

「アクアってプリーストがいただろ。あいつは、腕は確かでな。蘇生の魔法(リザレクション)で生き返らせて貰ったんだよ。……それで、その時のことは今思い出しても腹が立つけど、質問に答えてくれれば、今回はお前のことを見逃してやっても良いぞ」

 

 魔王城へ向かう前に、こうして幹部と会えたのはタイミングが良いと私情を堪えて、交渉を持ち掛けてみれば、セレナは腰の後ろに括り付けていたメイスを取り出し、それをこちらに向けながら、侮蔑するような強い口調で言い放つ。

 

「へっ。バカも休み休み言え。なんであたしが、お前なんかの質問なんかに答えなきゃいけないんだよ。なんだ、また、あたしに対価でも支払うか? もっとも、もうお前なんかを傀儡にするのはごめんだけどな」

 

 段々と調子の出てきた魔王軍幹部の『ダークプリースト』は不敵に笑みを強めて、

 

「それとも、力尽くで吐かせてみるか? レベルを下げられたとはいえ、ここにいる連中をどうにかするぐらいの力はあるんだぜ? ……それに見たところ、『リザレクション』が出来るって言うあのプリーストはいないみたいだな。どうする? それでもやり合うか?」

 

 レベルが落ちたとはいえ、魔王軍幹部。有象無象にやられる気はないと自信と余裕に満ち満ちている。

 ダクネスが音が聞こえるぐらいに固く拳を握りしめ、めぐみんが爆裂魔法の詠唱を口ずさむのを見てもその態度を崩さず、セレナはさらに過激に挑発を吹っ掛けた。

 

「しかし、アクアとか言ったかあの女。お前なんかじゃなく、あの女の方を殺っておくべきだったね。失敗したねぇ、まったく……――」

 

 

 ――その言葉が発せられた途端、場の空気が凍てつくように固まった。

 

 

 トールの周囲にもみくちゃに群がっていた老若男女が一斉にその動きを停止させたのだ。

 それはまるで大津波の前に潮が引くような、不気味な静寂。

 そして――

 

「今、なんと?」

 

 会話の最中にコソコソとセレナの下着を盗み見ようと、地面に這いつくばった姿勢で歩伏前進していたゼスタが、すっと膝の土を払いもせずに立ち上がる。それから恐ろしく静かに問いを投げる。

 この、場の空気が変わった事に気付かない、それほどにこれから始める蹂躙劇の予感に酔い痴れていたセレナは、こちらに突き付けていたメイスを肩に担ぎ、鼻で嗤いながらその質問に応じた。

 

「なんと? って聞こえなかったのかボケ共が。アクアとか言った、あのすっとろい女を殺っとけば良かったなって言ったんだよ。――で? どうすんだカズマ。いい加減、あたしも限界に近いんだわ。助けて欲しけりゃ命乞いしな。お前が厄介な相手だってのは知っている。相手をするのは面倒臭いし、見逃してやってもいいぜ?

 ああ、もっとも――この連中は、駄目だ。お前の知り合いみたいだが、ちょっとあたしをおちょくり過ぎたな。ここまで魔王領に近くなれば、もう、あたしを追って来れる騎士もいないだろうな。……さあ、どうする?」

 

 この場の絶対者は己だと知らしめるよう、余裕たっぷりな笑みを浮かばせて、最後通牒を言い放つ。

 慈悲なく裁きを与える。生きるか死ぬかは己の胸三寸にあるのだと。

 

「カズマ殿。こちらのお嬢さんがどこの誰だか、私に紹介してはいただけませんか?」

 

 これに、トールに絡んでいた時の雰囲気など何処かへ吹き飛んだゼスタは――そのトールも目を瞠るほど――抑揚も感情もなく、淡々と問いを続ける。

 

 セレナはこれにも不敵な態度を変えることはなく、自信たっぷりに返事を返す。

 

「紹介してやんな。どうせ、この連中は生きて返してやるつもりもないさ。精々、あたしが誰だかを知って後悔するといい」

 

 そんなわけで。

 当人からの許可が出たので、サトウカズマはそれぞれの紹介役を仕切るとした。

 

「こちらは、『復讐と傀儡を司る邪神』レジーナを崇める『ダークプリースト』にして、アクアに散々嫌がらせをして傷つけて、アクアが街を出て行くキッカケを作ってくれた――魔王軍の幹部の、セレナです」

 

 とセレナへ指し示していた手をゆっくりと対面のゼスタ、完全に静まり返り、全員が真顔になっているアクシズ教徒の方へと振って、

 

「こちらは、『アルカンレティア』からやって来た、あの悪名高いアクシズ教の最高司祭のゼスタさんと……。そして、アクシズ教団の皆さんです」

 

 ――ドスッ、と重い物が地面に落ちる音。

 それは、顔面を蒼白にし、びっしょりと脂汗をかいて震えるセレナが、手にしていたメイスを地面に落とした音。

 

 

 そうして、一方的な蹂躙劇が始まった。

 

 

 ♢♢♢

 

 

『吊ーるーせ! 吊ーるーせ!!』

 

 Q:興奮した紅魔族でもないのにアクシズ教徒の瞳が赤いのは?

 A:血走っているから。

 

 完全にブチ切れたアクシズ狂徒らによって、魔王軍幹部は道外れにある一際背の高い木に吊るされる。落ちたら洒落にならない高さである。

 セレナはもう顔中を涙と鼻水塗れでぐしゃぐしゃにしながら泣き叫んでいた。

 

 これを目の当たりにするアクシズ教徒以外の面子は、エリス教徒への嫌がらせがあれでもまだ慎みがあるのだと知る。

 魔王軍からも敬遠される変人にして狂人集団のアクシズ教の信徒たちが、この地に顕現なされた水の女神様を蔑むどころか“殺せばよかった”などと宣われては、筆舌に尽くしがたい赫怒を覚えるのも無理はなくて、相手への慈悲もない。

 

「ごごご、ごべんなざいっ! 許してくだざいっ! 知らなかったんです!」

 

 セレナが恐怖に引き攣った顔で必死に訴える。

 

 お互いの紹介後、異様な迫力を前にセレナは慌てて、取り落としたメイスを拾おうともせず、一目散に背を向けて逃げようとしたのだが、あっさりと捕縛。

 その後、ミノムシの如くロープで簀巻きにされたセレナは、ああして木に吊るされてしまっているわけだが。

 

「あああ、あの女が、女神だなんて知らなかったんですっ!」

 

「あ? あの女っつったかお前。偉大なる我らがアクア様を、あの女呼ばわりしやがったのか」

 

「ヒイッ! ごご、ごめんなざいっ!」

 

 しかし、おふざけなしでブチ切れているアクシズ狂徒は、一言一句に細心の注意を払わなければ逆に火に油を注ぐ結果にしかならなかった。

 もはやセレナが何と言おうが刺激にしかならず、外野が割って入らないと収まりがつきそうになかった。

 

「え、えっと。悪いが、ちょっとそいつに聞きたい事があるんだよ」

 

 どこに出しても狂信者としか思われないアクシズ教徒の行動に軽くひきながら、カズマは声をかける。

 これからそいつに尋ねる事はアクアの為にもなることだ。

 だから、ここは我慢して、協力して貰えないか。

 と気を遣いながら丁寧口調で交渉を持ち掛けた。カズマはまだ見ぬ魔王軍幹部、そして魔王の情報を、これを機に得ようとしているのだろう。これに高所にぶら下げられているセレナも懸命に声を張り上げて、

 

「助っ……! 助けてくれ! 答えてやるから助けてくれっ! なあ、カズマ、あんたとあたしの仲だろ!? 一時は、同じレジーナ教徒だった間柄じゃないか! わがまま言うあんたを贅沢させてやったし、毎日内職して養ってやったろ? 最後はその……お互い、戦う事になったけど! それでも、同じ屋根の下、長く一緒に寝泊まりした深い仲じゃ――っ! 痛い、止めろ! こらっ、止めろっ! いきなり何すんだ!」

 

 発言の途中で、めぐみんは身動きの取れないセレナへ目掛けて石を投げた。

 石を額にぶつけられたセレナにコブができると、めぐみんの額にもまた同じようにコブができる。

 

 やられたらやり返す――それがこの邪神レジーナの信徒に与えられる『復讐』の加護。セレナへ迂闊に手を出せない理由。

 

 共同暮らしのことが琴線に触れためぐみんは、呪いでコブができようとも躊躇わず石を投げ続けるのだがダクネスが堂々と押し止めて、カズマが額のコブへと『ヒール』をかける。

 

 ああ、なるほど、とトールは事情を把握した。

 道中にて、この世界のカズマパーティの冒険譚を教えてもらう際に、魔王軍幹部のセレナの話は聞いていたが、これで委細把握できたと思う。

 

 そして、そのめぐみんの額にコブが出来上がったのを見て、己が加護を思い出したセレナはここぞとばかりに強気にまくし立てる。

 

「そ、そうだ! あたしを殺せば、今みたいにレジーナ様の力で、お前達も死ぬ事になるぞ! レジーナ様は復讐の女神。あたしにやった事は、全てそのまま返ってくる! とっとと開放しろ! こんな高さから落ちたら当然死ぬ! あたしを縛り上げて吊るした連中は、命を落とすと思えよ!」

 

 だが、こんな脅しがアクシズ教徒に通じるはずもない。

 『死後は崇め奉る女神様の導きで“日本”なる自由な楽園のような世界へ転生させてもらえる』と本気で信じ込んでいるアクシズ教徒は死すら恐れないのだ。現に勝ち誇ったセレナに対し、アクシズ教徒らは眉一つ動かすことなく、まったく動じずに『それがなにか?』とばかりに首をかしげている。

 

 とはいえ、これ以上の暴走はあまり見過ごせるものではない。

 

 

 ♢♢♢

 

 

「俺から皆に、頼みがある」

 

 この場の紛糾する混沌模様を忘れさせてくれるような、鮮烈な声でトールは言う。

 

「これ以上見苦しい真似は信奉する神様とて不快となろう。きちんとその報いは知らしめる。だからどうか、この場は俺に預けてはくれないか」

 

 この言葉は、アクシズ教徒に聞き入れられた。ゼスタが、自分(カズマ)、めぐみん、ダクネスらへと確認を取るよう目配せをするがそれに頷けば、吊り上げられていたセレナは地面へと降ろされる。

 

 して、トールは鉄扇を片手に、芋虫のように這いつくばるセレナへと歩み寄る。

 助けてもらったことになるが、このトールの行動に納得がいかないセレナは不審のある眼差しで、

 

「な、なんのつもりだ? 言っておくけどあたしには、拷問の類は効かないよ。なぜなら、拷問を行えばあんたにそのまま返ってくるから!」

 

 吐き捨てるようにそう言うと、震えながらも笑みを顔に張り付けるセレナ。

 強がってはいるが、体が微かに震えている。

 こいつも、なんとか生き延びようと必死なのだろう。それで、“憐れに助けてくれた”と思われる、話が通じそうなトールを相手になんとか取引をしようと言う腹な訳だ。

 

「いいや、あの状態では話をし辛いだろうと思ってな」

 

「話だって?」

 

「ああ。望む力を望むだけ手に入れて、神の力を己がものだと思い込み、敬う心を忘れている愚か者にいい加減に自覚してもらわなければ、女神とて可哀想だろう?」

 

「……えっ?」

 

「いや、自覚ではなく、こう言いかえるべきか。いい加減に目を背けるのはやめたらどうだと」

 

 アクシズ教徒らに比べてだいぶ穏やかな口調だが、鋭いメスに切り込まれたようにセレナは動揺を見せた。頬が引き攣り、身をよじりながら後退り、仮面の奥の視線から逃れるように首を振る。それは、その先を聞きたくないという意志表示か。

 トールは容赦しなかった。

 

「『復讐と傀儡を司る邪神レジーナ』は、与えた痛苦と言う借りを相手に返す『復讐』と支払った勤労に報いる貸しを強制的に相手に返させる『傀儡』の権能を持つ。これより、“貸し借り”を大事にする神様なのだとも解釈できよう。つまりは、神様の加護を借りっ放しで、何も報いようとしないニートをいつまでも守ってくれるとは到底思えない」

 

 トールの宣告するような口調に、セレナは声を荒げる。

 

「あたしが、ニートだっていうの? そんなはずがない! そんなはず……」

 

 セレナは激しく首を振り、血走った目でトールを睨みつけた。

 

「いい加減なこと言うんじゃねーよ!」

 

 その怒声にも怯まず、あくまで冷ややかにトールは告げる。

 

「ならば、どうして、『復讐と傀儡を司る神レジーナ』の信徒は、あんた以外にいない。嘘偽りで喧伝して、傀儡化させて信者にさせようとも本気の信仰ではないそれは所詮お人形遊びと変わらず、勧誘などとはとても呼べない。まさか傀儡にした信者で水増しすれば神様は誤魔化せる、自分ひとりいれば神様は満足していただけるなどと傲慢にも思っているのか? いいや、そんなはずはない。何故ならば、そこにいるカズマ殿を神レジーナは信徒だとお認めになられたのだから」

 

 その場の空気が停まったように感じた。

 

「そして、あんたは信徒でありながら、カズマ殿が信徒であるのを強引に辞めさせた。神様の加護とは、本来、信者全員に公平に分配されるもの。だから、これまで独占してきたものが半減されてしまうことを恐れて、折角の己に比肩し得る神レジーナの信者を排除した。――そう、信仰を広めるプリーストなのではない、ただ神の力を欲しただけの“俗物”なのだとあんた自らがその行動で証明してしまったということだ」

 

 鉄扇で指して言い放ったトールの糾弾に、わなわなと唇を震わせながらもセレナは反論できなかった。それは、もしかすると、心のどこかで彼女もそう思っていたからなのかもしれない。“貸し借り”にこと厳格な邪神の性質であれば、この怠慢をいつまでもお許しになるはずがないと。

 体中の力が抜けていくように、顔からは生気が失せ、崩れ落ちるセレナ。ブツブツと僅かに開いた口から自分で自分に必死に言い聞かす姿は、少し小さくなったようにも見える。

 

「目が覚めたか? 他人の信仰の在り方にケチはつけたくはないが、あんたのはあまりにも酷い。崇め奉る己が神様を、便利な使い魔か何かだと思っているも同じ。その態度を改めなければ、天罰が降ることになるぞ。

 そうだな……――アクシズ教徒らの爪の垢を煎じて飲んでみることをお勧めしよう」

 

 そこまでで、堪忍袋が限界だったか。

 この信仰を切り崩してくる輩、背教者を取り除かんと『ダークプリースト』は吼えるように唱えた。

 

 

「『デ―――ス』ッ!!」(「『リフレクト』」)

 

 

 後出しながら先手打つほどの早撃ち(クイックドロウ)な魔法展開。間髪入れずに、トールはカウンターを挟んだ。

 光芒も、衝撃もなく、決着がつく。

 両者の間に挟まれた、扇を変形させたその鏡、その反射に映し出された自分の顔を目前に、セレナは――ぷつり、と糸の切れた操り人形のように倒れ伏す。

 

「人を呪わば穴二つ――やったらやり返されるのが、『復讐』の道理だ」

 

 毒を以て毒を制す。トールは、相手の土俵でセレナと論議して、相手の道理で応じてみせたのか。

 邪神の崇拝者の自尊を、邪神の崇拝者の信仰を、弁舌でもって大きく揺るがし、最後は邪神の崇拝者の呪いでもって自滅させた。

 

 まったく、なんて奴だ。

 あんな性質の悪い魔王軍幹部を、こうも鮮やかに攻略してみせるとは。

 

「トール、その……セレナをやっちまったのか?」

 

「いいや、カズマ殿。分散させるよう反射させたから呪いの効力も薄まっている。心臓を止めているだけです。死んではいないし、仮死状態は回復すれば十分治癒できる」

 

 『ヒール』と唱えれば、ビクン、とセレナの身体が跳ねる。数秒ほど停止した鼓動は活動を再開させる。

 

「そして、復活させた“借り”というのは、中々にデカいわけだが」

 

 そして、トールはその場で跪くと、恭しく乞うた。

 

「『復讐と傀儡を司る女神』レジーナ様、貴方様の痛切な想いを、この神を畏れぬ不遜な貴方様の信者へと代弁したしました。この働きが報いるに値すると思うのであれば、今一時、そのお力をお貸りすることをお許しくださいませ」

 

 

 ♢♢♢

 

 

 神を見極め、神を慰め、神と対話をすることを許されたもの。それが審神者。

 幼き頃より、それを目指し、神々に気に入られるものになるべく、感謝を奉納する神楽の舞を鍛錬するだけでなく、普段の立ち振る舞いから発声に至るまで細かに気を配れるよう英才教育を施された。

 

 人間だって孤独に弱音を吐いてしまうよう、神様だってきちんと祭られなければ寂しいし、変異を起こして周囲を祟る邪神となってしまう。

 

 だから、その逆もまた通じる。

 哀しい荒魂こと邪神の寂しさを、楽しませることで浄化をする。元来、神の心を慰める技こそが“芸能”と呼ばれるのだ。

 

 

「『風花雪月・猫騙し』! それから『花鳥風月』!」

 

 束ねられた鉄扇が紐解かれて、真上に放られるや球状に組まれて、ミラーボールのように輝き乱舞する光玉と化す。

 それから空に吹き通る、ノリのいい陽気な春風の上で傘回しのように転がり滑るよう、くるくると浮遊する。

 さらに水芸。元が扇であるミラーボールから霧吹きのように細やかな水滴。それが光を反射・屈折させるプリズムの役目を果たす。

 

 天上にて陽光を浴びて、七色の虹をあたりに振り撒くよう賑やかに拡散する視覚的な舞台演出に続き、仮面の青年は手に細い横笛を携える。

 すう、と仮面の下の唇が横笛に吸い付く。

 吐息。

 高く柔らかく、透き通る笛の音が、祭囃子を奏でる。

 同時、仮面の青年はステップを踏む。

 踏み込む動作さえも見分け難く、ただ滑るように、袴の衣が揺れる。

 存在感はそのままに、緩急を気取られることなく流麗な動作で観客らに残像を生む。

 そして、廻る照明と流れる音楽が絡み合う陽気なリズムは心を躍らせて、自然、目を奪う彼の神楽舞に合わせて体も踊り始める。

 

 まずはノリのいいアクシズ教徒らは秒で引き込まれた。それからカズマ、めぐみん、ダクネスらも最初体を揺らす程度から段々と激しく――

 

 そして、意識が覚醒していたセレナは、いつの間にか自分の身体も踊り始めていることを知る。

 

「っ!? これはどうなっている!? どうして体が思う通りに抗えない!?」

 

「なんだ、わからないか?」

 

 アクシズ教徒たちが手拍子してリズムを取ってくれる中で、一旦、フルートから口を放したトールは仄かに笑いながらお答えする。

 

「ご先祖様より脈々と受け継いできたのは、多神教なる複数の神様の在り方を認める複合宗派。八百万の神々を祀れるよう、古今東西あらゆる洗礼を採集し、時には封印やご神体を他所の土地から引き抜いてきた寄せ集め。であれば、この思想の範疇内であれば、俺もまたその加護を受けるに値する信徒だと認められる」

 

「そんなふざけた理屈が……」

 

「通じるからこその、今だろう」

 

 神はそれごとに属性が異なるというのに、その信仰を共存させるなど不可能。しかし、彼の一族は、不可能を可能にする奇跡魔法の使い手でもある。

 

 この世界には存在しない神主、その複数の神々を相手することを前提とした神職、一神教が通例の中では異色の在り方は、その『復讐と傀儡を司る女神』をも祀る対象にある。そして『不思議な踊り』なる舞いで『怠惰』の権能を借り受けることができる、一族伝統を受け継いでいる彼からすれば、それは十分に可能な範疇にあった。

 

「これぞ、女神レジーナを崇める神楽舞――『さそう踊り』!」

 

 セレナからすればそれは詐術に等しい信仰ではあるが、神がその加護を貸し与えるのはこの在り方をお認めになられているに他ならない。

 音頭からラインダンス、フラメンコにキレッキレのムーンウォークのダンスを決めるトールに、セレナの体は追従してしまう。そして、踊るたびにその意志まで呑まれる。

 やがて、音楽が止み、証明が止まり、手拍子までなくなってもまだリピートで踊り続けるセレナは完全に、『傀儡』の状態異常に掛かっており、

 

「――では、色々と教えてもらおうか。魔王軍に関する情報を」

 

 この質疑に対する思考抵抗力はまるで見られなかった。

 

 

 ♢♢♢

 

 

「今日の日付から言って、幹部の一人の魔王の娘は、既に軍を率いて城を出ているだろう。つまり、城にいる幹部はあたしが知る限り一人だな。魔王軍きっての大魔法使いで、城の結界の根本的な部分を維持したり、あと、占いなんかもやっている奴だ。そいつの占いで、『アクセル』の街に強い光が現れたと出て、ベルディアの奴がお前らの街に派遣されたんだよ。

 そいつの戦法は、遠距離から、強力な上級魔法で敵を一掃するタイプだな。そして、弱点は無い。こいつは、魔王城の中に魔界から、直接魔力を引き込む魔法陣を設置していてな。おかげで、魔王城から遠く離れられない代わりに、城の近辺では絶大な力を振るう事が出来る。絶えず濃い魔力が供給され続けるおかげで、受けた傷も即座に回復するし、自身に強力な結界を絶えず張り巡らせているおかげで、並の攻撃はまず通じない。

 倒すのは無理だろうな。余程の火力じゃないとあいつの結界に遮られるし、たとえ傷を与えても、回復力に追い付かない。紅魔族の連中が総掛かりで魔法を撃ちまくって、それでようやく押し切れるとか、そんなレベルじゃないか? やり過ごすのは、まあ、城の門番みたいな事も兼任している奴だからな。目端の利く『預言者』だから、こっそりと城の結界に穴でも開けられたとしても突入のタイミングが把握されているだろうし、盗賊の潜伏スキルと姿隠しの魔法を併用しても、バレるんじゃないか?

 まあ、ある意味魔王よりも厄介な奴かも知れないな。あたしが知る限り、この世で最強の魔法使いだ」

 

 じゃあ、魔王について教えてもらおうか。

 

「魔王の奴は、戦闘力自体は、歳のせいでそれ程無茶苦茶に強いって訳でもない。だが、あいつの一族が持つ特殊能力が強力でな。あいつは、そのおかげで魔王をやっていると言ってもいい」

 

 特殊能力?

 

「そう、特殊能力だ。魔王の奴は、変わった能力を持ってるんだよ。それは、一緒にいるモンスターの力を増幅させる能力。魔王の側にいれば、貧弱なゴブリンでも中堅どころの冒険者グループと一端に渡り合える様になる。

 魔王を倒そうなんて事は考えない方がいいぞ。あいつを倒したけりゃ、それこそ、配下が居ない時を狙って暗殺でも考えた方がいい。これでも、その特殊能力は魔王から娘の方にかなり受け継がれちまったんだ。魔王じゃなく娘の方が、魔王軍の大半を率いて王都に攻め入っているのもそういう理由だ。今の魔王じゃ、大軍を率いてもそれらに力を及ぼす事は出来ない。……だが、魔王の部屋の中にいるモンスターには力を及ぼす事は出来るだろうな。魔王がそこに健在な限り、魔王の側の親衛隊連中は、その一人一人が幹部クラスの力を持っていると思っておいた方がいい。

 ……あと知ってることといえば、歳をとってからできた娘をめちゃくちゃに可愛がっているとか、アレで何かと人材管理に苦労しているだとか、そんな事ぐらいなんだけど」

 

 このくらいか。

 確認として、カズマたちにも目配せすれば頷かれる。

 では、仕上げとしよう――

 

 

「最後だ。これより命を救った貸しの残りを返し切るまで、神様の敬い方を学ぶためにアクシズ教に修行を受けるんだ」

 

 

 ♢♢♢

 

 

「なんというか……すごいなトール。魔王軍幹部をああも嵌めるなんて」

 

「何、追い詰めたのはカズマ殿で、俺はそれを詰ませただけだ。彼女はもうすでに負けていたんだ」

 

 言ってしまえば、詰めチェスのようなものだ。

 アクシズ教を頼って強引に口を割らせる必要もないくらいに、あのセレナの盤上は詰んでいた。

 

「ほらっ、下っ端! いつまでもメソメソしてないで、とっとと行くぞ!」

「は、はいっ! すいません先生!」

「おい、先生って響き良いな……! 俺も先生って呼んでくれ!」

「ヒイッ! ……な、なんでしょうか、せ、先生……っ!」

「おいこら下っ端、チヤホヤされて調子に乗ってんじゃないわよ。取り敢えず、ここにいる全員分のネロイド買ってこい。私は、冬期限定の地獄極楽甘辛ネロイドな」

「せ、先生……、今、夏なんですけど……」

「なんか言った?」

「言ってません! か、買ってきます! 色んな街を巡ってなんとか買ってきますから!」

 

 そして、セレナは、これよりアクシズ教の総本山である『アルカンレティア』にて、これまでの行いを懺悔させて過去の罪を贖わせ、そして、下っ端としてこき使われながら指導される。『傀儡』の効果が抜け切るまでは、状況から抜け出せないだろう。かつての自分と同じ境遇だ。気をしっかり持たないとアクシズ教に改宗されてしまいかねないが、頑張れば行けるはずだ。自分もできたからそれは確かである。

 

 とりあえず、これで一件落着。

 もうここに留まっている理由はない。

 というか、

 

「はっはっはっ! いやいや、貧乳もムチプリも等しく需要がありますが、こうも並んでいるところを見ると、一度は優劣を決めたくなりますね。どうです? その気があるのなら、お二方とも、私にペロンとその胸を見せてご覧なさい」

 

「おいおっさん、俺の仲間にセクハラすんな。それは俺だけの特権だからな」

 

 これ以上、あの変態司祭に付き合いたくはない。

 まったく、気が狂う。先を急がないとならないのに――

 

 

「――若者がそう急いてどうします」

 

 

 停めていた馬車の御者台に乗ろうと踏み台に足かけた時、めぐみんとダクネスにセクハラを働いて、カズマに追われていたはずのゼスタが、白馬を挟んで向かい側にいた。

 

「焦ったところで、人生の終着地は同じです。私も君も、そこにしか行けません。ならばゆっくり行くべきですよ。道中の景色を見れることが、人生を楽しむコツです。これを忘れると大事なものまで見落としがちになる。ですから、この私を見習うと良いですよ。何なら指先をしゃぶって私の爪の垢をいただいてもよろしいですとも」

 

「……結構だ。残念だがあんたは、反面教師にしかならん。道草を腹いっぱいに食い過ぎているみたいだな。いい加減に歳なんだし、セクハラも控えたらどうなんだ?」

 

「私の存在意義が八割方無くなってしまいますよ。それに私は生涯現役ですので」

 

 そうだろうよ、と思いっきり溜息を吐いて、御者台へと飛び乗る。

 

「カズマ殿、めぐみん殿、ダクネス殿、馬車へ乗ってください。このままここで立ち往生しては野宿になる。早くこの先にある村へと出立しましょう」

 

 呼びかければ、変態と鬼ごっこをしていたカズマもこちらに返事をして、馬車へと乗り込んだ。

 

 ………

 ………

 ………

 

(……ああ、まったく未熟だな俺)

 

 あの変態の説法に、不覚にも胸を衝かされた。

 納得するのに重要なのは正解かどうかではなく、自分が認められるかどうかだ、と思う。

 変態に焦りを見抜かれるとは、己の基準では未熟となる。そう決めている。素直に享受する。それは、決して悪いことではないはずなのだから。

 

 あんな師匠ではない師匠に説かれたことが非常に癪ではあるが、少し気持ちに余裕が出てきたからか、馬車の揺れが先より穏やかに感じられた。

 流れる景色は平凡で、それが視覚に優しい。

 この世界に来て初めて、ただぼんやりと何も考えずにこの世界の風景を見られた、と思う。

 雲を追い越すようにして走る馬車。

 

「さっきは制止を聞かず、急がせてすみませんでした」

 

 不意に、謝罪が口から出た。

 振り向かずに幉を取っているが、背中に息を呑む気配を覚えたから突然のこの発言に驚いているのだろう。

 それで、これに返答したのは、意外にも、このところ何やら敵視されていたカズマだった。

 

「いや、気にすんなよ。その……トールにもそう急ぎたい理由があったんだからな」

 

 これは、どうやら焦燥が彼らには気づかれてしまっていたのか。なるべく表には出さないように努めていたのだが、これはだいぶ自身の未熟さが浮き彫りであるようだ。

 

「別に気にすることでもありませんよ。こちらにも魔王城へと向かわなければならない事情があるように、あなたにもあるというだけの話です。道が同じであれば私達は仲間でしょう。ですから、その……」

 

「ん?」

 

「……(疑ってしまい、申し訳ありませんでした)」

 

 ポツポツとめぐみんが何かを言ったみたいだが、馬が蹄で地面を蹴る音にかき消される。再度復唱をお願いしようとする前に、今度はダクネスが、

 

「そうだな。トールにも背負っているものがあるのだろうが、今は同じパーティなんだ」

 

 少し、この反応は意外であった。

 ダクネスはとにかく、めぐみん辺りからは暴走の一件で小言のひとつでもぶつけられるかと思っていたが、こうもあっさり片づけられる。なんというか甘んじて受けるつもりだっただけに肩透かしを食らった気分だ。

 

「そうです……いや、そうだな。せっかくだから、俺もあんたらの仲間として、この道中を楽しみたくなった」

 

 元の世界へ帰る。それから、この世界の彼らと魔王を倒す。

 旅の目的が二つになって難易度は上がってしまっているが、それはいつものこと。

 そう、俺の世界ではないが、これは俺の物語であるんだから――覚悟はここに決まった。

 

 

 参考ネタ解説。

 

 

 さそう踊り:ドラクエシリーズに登場する踊り系特技。独特の振り付けで踊って、相手にも同じ踊りをさせて、一ターン休み、もしくは魅了(守備力を落とす)する。

 作中では、復讐と傀儡を司る女神レジーナの『傀儡』の力を借りた踊りで、相手をマイナー神しかできないような極めて特殊な状態異常の『傀儡』状態にする。




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