この素晴らしい願い事に奇跡を!   作:赤福餅

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131話

 聖盾が割れて、腕の中から零れ落ちた破片が飛び散り、光の粒子となって霧散する。

 この手に残ったのは中核に填め込まれた蒼い宝玉。もはや盾として機能することのないそれから、話しかけられることはない。

 強くその核を握り締める。握り締めすぎて、手指の表皮が白く染まり、ぶるぶると震えるほどに。

 

(……本当に、親と言い師と言い、勝手に離れて行くのは誰も彼も、過分な期待を置き土産にしてくれる)

 

 涙は出なかった。何故なら己の成すべきことを弁えたから。

 涙で視界が曇る暇が、悲嘆で思考が翳る余裕があらば、とんぬらは勝つことに専心しなければならない。それがこの聖盾が関わった最後の戦いで担い手を務めた者の最低限の義務だ。

 

「とん、ぬら……? えっ? トールって、めぐみんやゆんゆんと同じ紅魔族だったのか!?」

 

 驚くカズマ。本当の名を明かせば、そう戸惑うことは予想ついていたことだ。驚愕の差はあれど、意識のある者はみんな同じように目を見開いている。

 

()()()()()()()()()()()()()が、そうだな、“紅魔族の変異種”などと呼ばれている」

 

 “平行世界から来た”という情報は最後の一線として伏せるが、真名に関してはもはや隠す必要を感じない。いいや、告げるべきだと魂のどこかで何かが叫ぶのをもう無視できなくなっていた。

 とんぬらは、改めて、己が名を告げる。血族の証として、仮面の奥の双眸を紅く光らせて。

 

「我が名は、とんぬら。“トール(とおる)”と言うのは、ご先祖様の勇者の名前でな。それをあやかって、“とんぬら”と名付けられた」

 

 あ、ああ……とうまく呑み込めないながらも、カズマたちはウンウン頷き、理解をしようとしてくれる。

 そこに頭を下げる。

 

「広義的に解釈すれば同名とも取れるかもしれないが、やはり、騙していたことには変わりない。あとで謝罪をするつもりではあったが、すまなかった」

 

「いや、まあ、別にそれはいいんだけど、でもどうして?」

 

「本名を言えば、めぐみんに警戒されると思ってな。魔王軍幹部の間者が刺客として街に送られてきたばかりだと話に聞いていたし、それで、“紅魔族と思しき名前であるが、自分は知らない”となれば、変な方向に想像を膨らませてしまいかねないからな。余計な疑いを招くような真似は控えようと、“とんぬら”の名は伏せさせてもらった」

 

「あ、あー……そう、なるほど」

 

 納得はしてくれたみたいだが、そこで何故かカズマの視線が逸らされる。なんだ?

 

「しかし、もうその必要もない。いや、ずっと前からそうだったのだろうが、臆する俺もやっと決心づいたと言ったところだ」

 

 く……っ! と苦笑のような自嘲を漏らして、

 

「え? え、っと? とんぬら、さんが、トールさんの名前で、紅魔族?」

 

「呼びやすい方で構わないぞ、ゆんゆん。紅魔の血を引く同族ではあるのだし、それに仮面で顔を覆い、名を偽ろうとも、これまでの言動は己の意思でしてきた。無理に態度を変えようとする必要はないし、恥じ入るのは正体を隠している俺の方だ」

 

「いえそんな! あなたがすごくいい人で、信頼できるのはわかってますから! ……それに、別に紅魔族でもあまり問題でもないですし、むしろ相性は……」

 

 彼女に拒絶されるようなことがなく、少し、安堵する。――そして、切り替える。

 

 

「俺は――ここで、負けたまま逃げ帰るのは、承服できない」

 

 項垂れた顔を手で覆ったまま腰を瓦礫の上に落とすミツルギ。その仲間の二人も疲弊していて、爛れた魔剣を前に動けないミツルギをどう声をかければいいか惑っている。他に気を回す余裕はない。彼らはもう心が折れている。ダクネスとめぐみんも無茶が過ぎて、アクア様の治療で容態はやっと落ち着いたと言ったところだ。

 カズマもゆんゆんも余力があるにしても、離脱のための『テレポート』のことを考えれば、もう無茶はさせられない。

 そして、誰か一人でも戦闘不能となれば、離脱すると決めていた。

 それでも、この腕は意地を抱え込んでしまった。

 約束だ。約束した。勝ってやると、大言壮語にも誓った。そうでなければ、あの聖盾に守られるのに見合う価値があったのだと証明できない。ここで尻尾を巻いて逃げるなんて、御免蒙る。

 

 負傷もすでに治療し、最後の疲労回復のポーションの瓶も飲み切った。それでも完全に回復し切ったというにはほど遠い。しかし、今の“仮面(トール)”を外した己は、万全だ。

 残された蒼い宝玉を握り締めて、

 

「俺は、勝ちたいんだ」

 

 

 ♢♢♢

 

 

 …………いやいや。

 

「勘弁してくれって、トール。俺たちは、もう失敗したんだ。ていうかスライムがあんなバケモンだって知らなかったし……そりゃあ、最初は行けるとは思ったけどなあ」

 

 そう言いながら、その場に座り足を投げ出す。

 あと一歩のところまで来たから……と、思ったのだが、その魔王までのあと一歩が果てしなく遠い。まあ、そう物事がホイホイ上手くいくわけもないとは思っていたが、ダクネスもミツルギも一ターンで倒してしまうとかバランスブレイカーにもほどがある。

 

「まだ終わっていない。残るは魔王とあのスライムだけだ。今、かつてないほどにあちらは追い詰められている」

 

 トール……とんぬら、いやもう慣れている方で、トールが、真っ直ぐな目を向けてくる。

 そんなまだ諦めずに盛り立てようとするのは止めてほしい。もう無理だって。魔剣使いの勇者すら折れているというのに、なんのチートも持たない最弱職に頼ってどうしようっていうんだ。ステータスも一般人で、人より運が良いってだけで……自分で思うのもなんだと思うけど、こんな能力で結構頑張ったと思う。

 

「ていうか、作戦は決まっていたろ。誰か死んだら戦闘は中止。死体回収して『テレポート』って。だから、このまま逃げるのが生き残るには最善の策なんだよ」

 

 地面にだらしなく座り込んでしまうこちらに対し、トールは今もなお膝を屈することなく直立する。敗北の直後であっても闘志が萎えていない。困難に立ち向かって、再び挑もうとしている。

 その生き方は、あまりに眩くて。その光を喪失することが、ひどく辛い。

 

「本当にそれが最善だと思えるのならそれでいいが、このまま逃げたところで面倒事は無くなりはしない。そして、一度逃げてしまった自分に自信を持つのは相当厳しいものだと俺は思う」

 

 口を噤む。一度逃げて死ぬまで立ち直ることのできなかったニートには頷けない問いかけだ。

 

「そうだな。じゃあ、別のことを確認しよう」

 

 だがそれでもトールはこちらが話を聞いてくれていると思っているのか、語り続ける。

 

「あんた、この世界が好きか?」

 

 ―――。

 好きか、だって?

 あのな。着の身着のままで異世界に送られて、温室育ちなニートがいきなり馬小屋で寝泊まりして肉体労働されたんだぞ? で、手の掛かる仲間の尻拭いしながら頑張ってるのに、いつの間にか借金まみれになったり、物騒な連中と敵対することになったりと次々と厄介事が舞い込んで来るわで……もうちょっと良い想いをしたって罰当たんないと常々思う。ていうかこの世界に来て、自分でも性格ねじ曲がったなと思う。そりゃあ、性格だって捻くれるだろうさ。……元々ニートなんてやってたダメ人間だけど、それに輪を掛けてダメになった気がするし。

 

「……俺は旅に付き合ったのは短い期間だが、あんたとよく似た人物を知っている。その男はパーティに問題児ばかり抱えて大変そうで、億を超える借金地獄に遭われたり、悪辣な貴族との裁判沙汰で不当に死刑判決を下されたり、運がいいはずなのにしょっちゅう面倒事に巻き込まれる」

 

 何だかよくわからんけど、そいつとは気が合いそうだ。他人のような気がしない。

 

「それでも楽しそうに見えたよ。何だかんだで」

 

 ――と、ひどく呆気からんとした声音でトールは締め括った。

 

 ……ったく、ずるいぞ。

 

「そいつは、結構な事だな。バカなんじゃないかそいつ」

 

「俺もそう思う」

 

 フォローしてやれよ。何、肯定してんだよ。自分の事じゃないけど、同情するぞ。

 

「まあ、そんなバカ者とカズマは似ていたから、俺がスライムの相手をすれば何とかしてくれるんじゃないかとつい期待してしまってな。誘いをかけてしまった。許してくれ」

 

 それは、残念だが見込み違いだ。そんな大層な人物じゃない。

 と言おうとして、気づく。

 

「トールがスライムの相手をすれば、って今言ったか?」

 

「ああ、魔王と言う大手柄は譲るさ」

 

 肩を竦めてなんて事のないように。

 たとえ勝率1%かもしれなくても、勝つ道筋があると言い張る。不敵な笑みさえ浮かべて。

 

「トールって、さっき話した奴のこと言えないくらいバカなんじゃないのか?」

 

「ああ、自分でもそう思う」

 

 それで、トールは歩き出した。

 魔王と最凶の災厄が待ち構えている方へと。

 

「……まあ、無理強いはしたくない。いけそうだと思えたら、来てくれ」

 

 

 ♢♢♢

 

 

 また、あの背中を見送ることになった。

 それにゆんゆんも、こちらにペコペコと頭を下げつつも、やっぱりついていく。

 

(いけたら来て、って最後もっとちゃんと誘えよ。それだと普通に遊びに行くみたいじゃねーか)

 

 いや別に真剣に迫られても困るだけだ。そうだよ、迷う必要などない。逃げるんだ。

 死ぬぞ。間違いなく、お前が今考えているどうしようもないおろかなアイデアを手放さなければ、絶対に死ぬぞ。それはわかっているな? わかっている、わかっているとも! ああもうくそったれ!

 

 とうだうだそんなことを考えていると――こっちの空気や心情を一切読まない声が聴こえてきた。

 

「カズマさーん! カズマさーん!!」

 

 今話しかけてくれるなよ。こっちがいろいろ悩んでる時にと苦情を入れてやろうとしたが、

 

「ダクネスとめぐみんの意識が覚めたわよ!」

 

「何本当か!」

 

 ハンスの猛毒をもろに食らったダクネスと無茶をして爆裂魔法をぶっ放しためぐみん。アクアはその二人の治療を行っていた。そして、こうして命からがら逃げ伸びたところで本格的に集中し始めて、今その成功を嬉々として報告した。

 

 よし、これで……――って、何を考えてんだ!

 ブンブンと頭を振って、駆け寄ると、薄くだが目を開けてるダクネスが、

 

「すまない、カズマ……、お前から貰った鎧をこんなボロボロにしてしまって……」

 

「んなこと気にすんなよダクネス。それよりかよく無事だったな。あんなん受けたら即死が普通なのに、死にかけても五体無事なんだとか」

 

「硬さだけが取り柄だからな」

 

『瀬戸際でも堪え切ってみせる堅固な壁役を担ってくれる『クルセイダー』のダクネス殿も心強い。爆裂魔法と言う消耗の激しい飛び道具を存分に振るえるのは、頼れる守護者がついてくれるからこそだ』

 

 ああ、そうだよ。

 ウチの自慢の『クルセイダー』は硬いのだ。世界で一番硬いのだ。

 

「ああ、これまでにない凄まじい痛みだった。それにサイズもなんと見事なスライムだ。毒さえなければ持って帰り、我が家のペットにしたいところだ!」

 

 ただ、頭が残念だけど。

 おいアクアちゃんと回復したんだろうな? まだ脳が溶かされっぱなしだぞ。いや、この変態の発言は元からこの調子だった。

 

「もう、大丈夫だカズマ。まだ終わってないんだろう? なら私を頼りにしてくれ。パーティの盾として必ず守る」

 

「お、おいおい、何バカなこと言ってんだよ」

 

 起き上がろうとするダクネスを押さえて横たえさせる。もうやたら好戦的にさせる加護(のろい)が付与された鎧も破損してるというのに、まだダクネスはそんなことを言う。

 するともうひとりからも声が上がる。

 

「バカなことを言っているのはカズマの方ですよ。私も、ダクネスもまだ死んでいません。誰も殺されていない以上は、撤退するのはまだ早いのではありませんか」

 

「めぐみんまで」

 

 鼻から血を噴いてぶっ倒れたはずなのに、まだ興奮が収まりつかないと瞳が赤いめぐみん。

 

「まだこちらもカズマがプレゼントしてくれたマナタイト結晶(プレゼント)があります」

 

「つっても、これ以上爆裂魔法は無理だろ。今のめぐみんの状態じゃ本当にポンってなるかもしれねーんだぞ」

 

「爆裂魔法を放って死ねるのなら本望です! ええ、皆と一緒ならあんまり怖くはないものです!」

 

「やめろ! 本気で止めろよめぐみん!」

 

 なんて、物騒な爆裂思考をしているんだこの『アークウィザード』は。

 目の色がかなり本気っぽいし。“魔王を倒して自分が新たな魔王になる~”とか思っていそうだ。

 それでまた噴き出た鼻血をチーンとハンカチで拭ってやりながら

 

「お前、あんま無茶すんなよな。さっきだってギリギリだったろ」

 

「高価なプレゼントをもらったんですから、私だって、カズマにお返しをしたいんですよ。……もっとも、誰かはそんな事気にもしてないようですが」

 

「えっ? あっ……! 私か? 私の事を言ったのか!?」

 

「それで、私にしてやれることと言ったら、カズマが討伐したがっていた魔王を爆裂魔法でぶっ飛ばしてやることくらいじゃないですか」

 

『これまで魔王軍幹部を撃破したというのも納得する。パーティでも、一撃で強敵を倒せる、劣勢な状況を一発逆転で覆し得る『アークウィザード』がついているのは心強いことでしょう』

 

 まったく、頼りになる。

 最高品質のマナタイト結晶のお礼に、魔王討伐って、おつりがデカ過ぎんだろ。

 そこで、アクアがこっちをじっと見て、

 

「……ねえカズマ。どうしてそこまで魔王退治にこだわるの?」

 

 不安気に、そして、少しだけ何かを期待しているようなそんな顔から、アクアが“お前のタメだ”とかそんな格好良いセリフを期待してるのが見て取れる。

 さっきのめぐみんの言葉を拾ってから目をキラキラさせているし、こいつ絶対、勇者を送り出す女神的な状況に酔ってるだろ。

 

「…………別にっ、別に、お前のタメなんかじゃないんだからな!」

 

「ツンデレ! カズマのツンデレッ! こんな時ぐらい“あなたの為です女神様!”とか、歯の浮く様なセリフ言えないの!?」

 

「それならお前だってもうちょっと女神様らしい活躍とかしろよ! 今んとここっちの評価は勝手に家出した挙句、城で迷子になったどうしようもない構ってちゃんだぞ!」

 

「はああああっ! ちょっとカズマってばあたしのことを何だと思ってるの? 女神よ女神! それもエリートの女神なのよ? あたしにかかれば、神聖な力でもって一時的に魔王の能力を弱体化させる事ができるんだから!」

 

「マジで!? なにそれ、本物の女神みたいだ! ……って、ならどうしてそれをさっきやんなかったんだよ」

 

「あ」

 

 忘れてたなこいつ! そんな最終決戦でカギを握る重要な仕事をうっかりするとか本当にエリート女神なのか。

 

「で、でもね、弱体化させられると言っても、身体能力に魔法抵抗力、魔力、その他諸々の基本的なステータスまでで、一番厄介な、モンスターの能力を引き上げる特殊能力までは封じられないのよ」

 

 ――だけど、その一番厄介な特殊能力の恩恵を受けた超級スライムを、どうにかすると言った。

 だけど、そこで、その魔王と超級スライムを分断できてしまえば……

 

 そう。『冒険者』の低ステータスでは、中級魔法でも上位魔獣に対してダメージを与えられない残念な具合だが、ひとつだけこの城の魔族兵にも通用した魔法がある。

 もし魔王に魔法が通じるようになれば、それで――

 

 いやいやいや、それでも無茶だろ。だいたい魔王だって“あれ”が使えるんだろうし、誰かがそれまで時間稼ぎをしないと。

 そういえば、確かウィズとバニルが『最後は勇敢な冒険者と派手に戦い、派手に散る。それが魔王と言うもの』だとか言っていたような……

 

「それで、カズマも行くんでしょ?」

 

 一番魔王と戦うのを怖がっていたくせに、アクアがそんなことを訊いてくる。

 ダクネスもめぐみんも復活したばかりだというのに、こっちの指示を待つように見つめている。

 

「なんだよ、俺が真正面から格好良く最後まで戦う男だとでも思ってんのか? ニートってのは諦めが早いんだよ」

 

「知ってるわよ。諦めが早いのも臆病なのも。雰囲気に流されやすいのもヘタレなのも」

 

 アクアの発言に、ダクネスとめぐみんもウンウンと頷く。こっ、こいつら……!

 

「……あと、何だかんだで最後には必ずなんとかしてくれる事も知ってるから、死なない程度にもうちょっと頑張ってきなさいな」

 

 なんとも自信あり気なドヤ顔を決めて、アクアがそう言ってくる。

 

『活躍できるよう自身のスキル構成を考えて立ち回るカズマ殿、これはなかなかできる事ではない。『冒険者』ではあるが、上級職揃いのパーティをまとめられているのもその器があるのだろう』

 

 ああ、もう。

 さっきから三人が好き勝手言ってくれるせいで、余計なものまで思い返してしまう。ダメ押しだ。肯定し、褒め称えてくれた。弱いなりに才能がないなりに考えた在り方を、お世辞とかではなく称賛してくれたことを、“嬉しくない”と言えば嘘になる。

 喉元まで出かかっている衝動が呑み込み切れず、とうとう、吹っ切れた調子で大声を吐き出した。

 

「しょうがねえなあああああああああああああああ!!」

 

 

 ♢♢♢

 

 

「……ほう、てっきりハンスから命からがら逃げ帰ったものだと思ったが、また来るとはな。これは予想外だ。しかし、貴様らだけか?」

 

 魔王の間には、不定形な魔物を従える老人、魔王。

 遠距離から『メドローア』で狙い撃つという策は使えない。あれはタメが入るし、この間合いからでは凌がれる。

 あの超級のスライムは、瞬時に変形が可能。『デッドリーポイズンスライム』の変異種が張り巡らす被膜は迫りくる物理攻撃を融解し、魔法攻撃の耐性の高いスライムの防護膜は上位魔法すら弾き得る。極大消滅魔法で貫通し得るにしても、威力は削られるだろうし、軌道を逸らされる。先程、突入時にハンスの半身が消し飛んでいたのも、咄嗟に魔王に迫る光の矢に割って入ったためだと推測する。

 つまり、あれは魔王の最強の僕であり、魔王を守護する闇の衣。変幻自在な『デッドリーポイズンスライム』の変異種は、まさに攻防一体の完全兵器として魔王の剣となり鎧となるのだ。

 黒く濁った巨大クラゲのような形態で無数の触手を躍らせているハンスを周囲に侍らせて警戒は取らせつつも、魔王は悠然と王座に腰かけたままこちらを見据え、

 

「なるほど。そなたは、この魔王と戦うに値するだけの強さを持っている。だが、我が最強の配下であるハンスには敵わない以上、その手がワシに届くことはない。快進撃を続けたようだが、これ以上の奇跡は起こらないのだ」

 

 無謀な道を行こうとする若者を頭から諭させる老人のように滔々と説く。警戒心を露にせず、無防備にさえ見せて、そして、相手を称賛する。

 

「そなたのような若者をここで亡くすのは惜しい。故に再び挑んだ勇敢さに敬意を表して、一度だけ問いかけをしようではないか。もしワシの配下になればこれまでのことを許そう。どうだ?」

 

 そんな、学校の図書館で読んだ物語の定番(テンプレ)な台詞ではあったが、つい失笑してしまう。

 

「信用できない相手の配下になる気はない」

 

「なんだと?」

 

「あんたは、かつてこの魔王城へ突入を果たした相手に、配下となる代わりに『無辜の人間を襲わない』という中立の条件を交わしたが、駆け出し冒険者の街へ魔物の大群を差し向けた。これが配下の勝手な暴走なのだと言い張るのならば、あんたは娘一人の幉も握れないということ。そんな老いて落ちぶれたカリスマで忠義を買えるなどと思わない事だ。そして、街を襲うのが魔王自身の指示であるのなら、条件を守り通す気は端からなかったという事だ。

 総評して、信用できない、と言う他ない。

 もし俺を本気で従えたいと思うのなら、『アクセル』を侵攻した指揮官であるあんたの娘に罰を与えろ。話はそれからだ」

 

 一笑に付して突き返せば、魔王はわずかに目を細めて、表情を険しいものにする。そして、心を落ち着けさせようと深く息を吐いてから、

 

「…………立場が、わかっていないようだな小僧。ワシは、慈悲を見せているのだぞ?」

 

「魔王だろうが筋が通っていない真似をしていることに変わりはない。それに、あんたのは寛容ではなく、おためごまかしというんだ。威厳もくそもない戯言を囀るようでは、魔王として格好がつかないな」

 

 ギリッ、と魔王が歯を食い縛る音が澱んだ魔王の間に響く。

 

「どうしても、ワシに刃向かうと言うのだな! 愚か者め! 思い知るが良いっ!」

 

 魔王の怒りに呼応して、ハンスが動く。

 鞭のように無数の触手が一気に伸びて、襲い掛かる。

 最凶の災厄という不幸へぶつけんと、とんぬらは溜まりに溜まった感情を、声にして吐き出す。

 

「それに」

 

 容赦は無用。一片の情けすら不要。目前に迫りくるのは、単なる敵だ。

 ならば、最大戦力を以て降すのみ。

 

「奇跡は起こらないから奇跡というやつがいる。だが、そんな誰も信じられないような出来事が起こらなければ奇跡という言葉は生まれやしない!」

 

 迷いも憂いも捨て去った蒼穹の瞳で声高らかに、瘴気に穢れた魔王城の最深部に響き渡る。

 左手で掴んだ宝玉は仮面の奥の双眸と同じく遥か彼方の天空を映し出すように蒼い、聖盾の神器の核。そこに『龍脈』スキルを繋げるや、内に竜の模様が刺青のように浮かび上がった『ドラゴンオーブ』と化し――虹霓の魔力光が弾けた。

 

 

「さあ、我が肢体が繰り出す奇跡をとくとご覧あれ! 『ドラゴラム』――ッッ!!!」

 

 

 瞬く間にその足元より旋風が噴き上がり全身を呑み込む白霧が発生するや、『デッドリーポイズンスライム』の変異種の毒手を悉く凍てつかせ、蒸発させる。

 極寒にして聖域。液体で魔性の災厄の立ち入りを拒む霧の繭より、魔王ですら聞いたことのない快音を鳴らして、解き放たれる魔力波動。

 やがてゆっくりと身を起こす竜の影を映し出されて、スクリーンの霧霞は羽ばたきが起こす烈風に払われた。

 

「なん、だと――!!?」

 

 視界が晴れて、露わとなったそこに君臨するのは、白銀の鎧装甲の竜。

 それもこの世界に知る者はいないが、変異がある。白銀の装甲、その上にまるで黄金の装飾が施された聖盾のように黄金の紋様が走っている。

 そして、その守護竜の傍らには、少女がひとり――

 

『契約者に、俺が持てるチカラを与えん! ――『パルプンテ』!』

 

 

 ♢♢♢

 

 

「…………ゆんゆん」

 

 魔王の間へ行く道中、当然のように彼の後についていくと、ふとその背中が立ち止まった。すぐに足を止め、彼の隣に立ち並ぶと、トール……じゃなくて、とんぬらさんがこちらと向かい合った。赤に、青に、光の加減で移り変わるよう目の色を変える仮面の奥の瞳は、冷静と情熱の狭間で揺れ動く彼の心境をあらわすよう、とても綺麗に輝いていた。

 とらわれたように、動かなくなる。

 いいや、動きたくなくなる。

 どうしてだろう。

 この人と見つめ合うだけでそうなってしまう。たとえほんの数秒であっても――一分一秒が黄金よりも貴重だとしても――その時間をわけてやりたくなるくらいに。

 そして、仮面を外すよう感情が露わになる。ひどく苦しそうに顔を歪めて、石から水を絞り出すみたいに口を開く。

 

「……俺は、君がついてきてくれたことを嬉しく思うし、頼もしく思う。そこは勘違いしないでほしい。だけど、同時に怖い」

 

 声が、床に落ちた。

 これまでああも大立ち回りを演じてきた青年とは思えぬ、年相応の声だった。

 ずっとずっと仮面の下に忍ばしていた、元々のとんぬらさんの声であったろうか。

 

「あ……」

 

 その声音に、思わず息を止めた。

 冒険者であるのなら、魔物に殺されることも覚悟しなければならない。その覚悟ができないのなら、冒険者ではないと非難されてしまうかもしれない。

 だけど、ここでこの人が案じるのは自分自身ではない、そう他の誰でもなく、(ゆんゆん)のこと。

 私の左手を取る彼の両手は、この一時何よりも大事そうに握られていた。たとえ物語のお姫様であっても、これほど優しく、これほど心を込めて触れられたことはなかろうと思われた。

 そんな想いが伝わるからこそ、何も言葉が思い浮かばなくなり、こういう時にしどろもどろになってしまう自身の対人経験のなさに自分でがっかりしてしまう。

 

「え、えと……! その……とー、んぬらさんを心配させてしまいますけど、足手纏いにならないように頑張りますから」

 

「違う。そんなことはない……ゆんゆんは、足りない一手を埋めてくれる切り札になれる」

 

「本当ですか! 私、とんぬらさんのお力になれるんですか!」

 

 左手を取る彼の手に、私の右手を重ねて、やや前のめりに問い質せば、その勢いに胸を衝かれたように一瞬呼吸を止めたとんぬらさんは、大きく息を吐いて、

 

「この選択は、後で君を傷つけることになるかもしれない。だから……」

 

 一体、何を憂慮しているのか、私にどうしてそんなに遠慮しているのか理由はわからないし、そう距離を取られてしまうのは何故か寂しく思える。

 だけど、それが何であっても、私はこの人のことを信じたい。ううん、ずっと傍にいられるようにありたいと思っている。

 

「ぁのっ、その……!」

 

 だから、言ってほしい。上手く口が動いてくれないから精一杯の態度で示す――躊躇を挟む隙がないほどに目力を入れて見つめ続ければ、それを汲み取ってくれたように一度目を瞑った仮面の奥の双眸は、純黒に落ち着いていて、

 

「……まったく、本当にゆんゆんの相手は困るな」

 

 半ば言葉通りに、半ばはもっと様々な感情を封じ込めながら、とんぬらさんは口にした。

 

「ああ、だけど……それでも、ゆんゆんには、生きてほしいんだ」

 

 微笑を浮かべ、胸の奥の、とても柔らかなところに触れてくる声音で。

 そして――

 

「俺と契約して、マスターになってくれないか?」

 

「はいっ??」

 

 

 ♢♢♢

 

 

 ――『パルプンテ』!

 竜となったとんぬらが、奇跡魔法を行使した途端、繋がったパスを通ってゆんゆんの全身に電流が走り抜けた。しかし、その激しい刺激は力を吸い取られる際のものではない。むしろ、体内で何かが爆発したような感覚だった。

 

 熱い……!!

 熱が体内を駆け巡っている。走って走って走り回って、全身を沸騰させていく――

 

「ハンス!!」

 

 ゆんゆんの側の変化、異常を見取るや魔王はこれ以上見に徹する余裕なく、最凶の災厄へ命を降した。直ちに潰せと。

 魔王の特殊能力で強化された超級の『デッドリーポイズンスライム』の変異種が致死毒の触手を叩きつけるが、当たらない。

 彼女の傍には、最強の守護者がいたからだ。

 

「凄まじいな……!」

 

 コケ脅しでも見掛け倒しでもない。鎧の守護竜は、その手の一振りで、ハンスの毒手を払ってみせる。魔法でも何でもなく、そういう生態をあのドラゴンは獲得している故だった。

 そう、魔王も護衛隊長も知らぬ事だが、“『デッドリーポイズンスライム』の変異種の毒性”は初めてではなく、一度喰らったことで耐性を保有していた。

 

『ゆんゆん――』

 

 魔力の塊と言われるほどに高い魔力に溢れているドラゴン。

 そして、契約を交わした『ドラゴン使い』はその魔力を引き出し、操る者。

 

 真っ当な『アークウィザード』に過ぎなかった紅魔族の少女は、今この時、その竜使いとして激変する“奇跡”が起こった。

 

 竜形態時に、展開した奇跡魔法。

 それはドラゴンの特性を起点とするもの。竜の血肉は高経験値食材であり、スキルアップポーションの原材料となる、その魔力特性を拡大解釈させることで、契約者にこの魂の一部を共有させるように経験値を分け与え、『ドラゴン使い』の必須である『竜言語魔法』を自動習得させた。

 

 そう。

 今この時、ゆんゆんは『アークウィザード』にして、『ドラゴン使い』――すなわち、『ドラゴンロード』だった。

 

「めぐみん、使わせてもらうわ!」

 

 ゆんゆんは最高品質のマナタイト結晶を握り締めながら、以心伝心で求められたその『竜言語魔法』を行使した。

 

「――『状態異常耐性増加』!」

 

 

「な―――」

 

 魔王が絶句する。この特殊能力で毒性を増大させている『デッドリーポイズンスライム』の変異種へ接近し、ドラゴンはその金色の紋様走る鎧籠手をその粘体ボディに叩きつけたのだ。

 万物を融解する毒をまるで恐れることなく。そして、たちまちその澱んだどす黒い肉体が腕が突き立った箇所から徐々に真っ白に清く、固く、凍結されていく。

 

「ハンス! 何をしている!! 早くそのドラゴンを仕留めないか!!」

 

 しかし、これは『デッドリーポイズンスライム』の変異種の攻撃は、毒を浸透させて相手を融かし切るもの。

 その毒が通じない相手では、ただのスライムと変わらない。まして、その金色の紋様を眩く光らせるドラゴンは総身からは、魔性を払う聖盾に等しき高純度の神気が放たれており、汚染する前に浄化されている。

 身を大きくくねらせ暴れながら、完全に凍結・洗浄された部位を切り離し、間合いを取るハンス。

 

 怪物め……ッ!!

 ドラゴンもスライムも幹部の中でも相手取れるものは限定される超級同士。しかし、相性が悪い。『デッドリーポイズンスライム』の変異種の毒に耐性を持った、神気持ちのドラゴンなど、あまりに天敵過ぎる。

 ならば、毒が通じぬ相手だというのなら、圧倒的な物量で押し潰す。

 

「これは城を諦めるか」

 

 魔王が獅子の如く吼えた。

 

 

「ハンスよ! すべてを解放することを許す――!」

 

 

 ずぐん、と大きな鼓動が鳴ったように思えた。

 心臓の、鼓動のようだった。

 ひとつの山ほどもある巨大な心臓が鳴れば、こんな音になるだろうか。

 

 その音に圧され、スライムを押していたドラゴンは動きを止めた。

 そして、次の瞬間、ハンスの身体から爆発的に魔力が膨れ上がった。

 膨れ上がる。

 膨れ上がる。

 膨れ上がる。

 まるで積乱雲のように、あるいは暴風雨のように、ありえないほどの速度と規模で空間をたちまち侵略する。

 城に留まらず空も大地も制圧する、巨大過ぎるスライム。触手を二つ両腕のように天へと伸ばすそれは頭のない巨人、だいだらぼっちだ。

 

『ぐお――!』

 

 毒に耐性のあるドラゴンすらこれには防御行動を取らずにいられないほどに魔力の席巻は常識外れだった。

 攻撃的な意図さえなく、ただ存在を爆発的に拡張させただけで圧倒してしまう。闇夜を食らったような別種の暗黒が魔王城に顕現する。

 

『ゆんゆん、無事か――!』

 

「う、うん! 私は大丈夫!」

 

 両翼からの魔力放射で吹雪かせる雹嵐でもって、台風の目の如く不浄の立ち入り禁止区画を確保したが、上半身の膨張までは止められない。足元を凍らされようが構わず、雲にまで届きそうなほどドンドンと膨れ上がっていく。まずい。これは処理能力を超えている。

 『預言者』と同じく、魔界と繋がり、際限なく魔力が供給される魔王が破裂させんばかりに力を注ぎ込む。早くその魔王を止めないと――!

 

(っ……だが、ハンスの膨張を抑えないと一気に――!)

 

 世界へ咆哮をあげるよう暗黒が牙を剥く。

 肉海が沸騰するよう泡立ち、食欲を発狂させて触手が暴れ、混沌の増殖は際限なく。魔力の波動だけで空間を蝕む。すべてここで終わりだと言わんばかりに獰猛な汚染だった。

 

『食べタい』『腹が減っタ』『うまソう』『足りナい』『欲シい』『貪りタい』『喰ウ』『喰ウ』『喰ウ』『喰ウ』『喰ウ』『喰ウ』『喰ウ』『喰ウ』『喰ウ』『喰らウ』――――『邪魔をスるナ』

 

 本能的にタタリは触腕を繰り出していた。

 直径十数mにも及ぶ野太い毒の腕は、『アークプリースト』が十人かかっても浄めることはできぬほど穢れた魔力を有して、凶悪な質量と速度を伴ったドラゴンを砕こうとするが――否、届きはしない。彼の竜が腕を薙ぎ払うだけで、衝突音と共に触腕は蒸発する。続けざまに第二撃、第三、第四、第五から加速度的に滅多打ちが始まるが、概ね同じ動作で迎撃。あちらも速くなるが、それをさらに上回る速さで吹き飛ばしていく。

 

『いいや。許さん』

 

 背後に、少女をつかせて、竜は微塵も揺るがず譲らない。

 神器をも苛む猛毒を克服しているからか。いいや、耐性はあるがそれでも完全ではない。支援魔法を受けたが、それでもハンスの毒はダメージを与えている。彼の竜の鎧装甲は徐々に爛れていくように融解している。こんな我慢が長続きしないだろう。精神が丈夫でも、肉体が耐え切れない。ああ、見ろ。籠手についに亀裂が入る。竜骨の悲鳴が発している。

 それでも。

 

“――大丈夫、今のご主人様は、最高の聖鎧(アイギス)にも負けないわ!”

 

 守護竜の全身に付与された金色の紋様――聖盾の魂の欠片が奮い起こす。不浄の一切を払い除ける神器が、勝利をもたらさんとその力を振るっている。

 そして、彼女が己を信じてそこに立っている。強大なタタリに狙われようと己と共にある。紅の眼差しが背にあるだけで鼓舞される。

 ならば、倒れない。意地でも何でも。『イージス』の一部でも受け取ったものとして、主人の彼女を何者からも汚させてたまるものか! これは俺の――

 

『グオオオオオ――ッッッ!!!』

 

 前方に両腕を構えるその守護竜は、今こそ、聖盾と対になる『聖鎧(アイギス)の守り』を得る。その金色の加護(ひかり)が勢いを削ぎ、毒手の猛攻を的確に防ぎ、一切の隙を見せぬ。

 

 そのとき、そこで、その存在を知覚した。

 神気。間違いようのない女神の神気が発せられた方角へ目線だけ向ければ、魔王の間の入口で、青髪の『アークプリースト』――そして、水の女神アクアが両の掌を組み、目を瞑って祈るようなポーズを取っていた。

 こめかみからうっすらと汗を垂らして、一心不乱に詠唱に集中するアクア。魔王もまたその肌を刺す悪寒に気付き――だが遅かった。

 

 アクアがカッと目を見開き、声高に叫びを上げた。

 

 

「『光よ』!!」

 

 

 それは魔王の効果を直接唱えるだけの、端的な詠唱。女神にのみ許された真なる神聖魔法だった。

 壁となる『デッドリーポイズンスライム』の変異種の身体を透過して突き進んで天照す後光。

 それをもろに浴びた魔王は一気に老け込んでしまったように、その覇気が衰えた。

 

「くそっ、忌々しい……まさか女神が降臨しているとはな! ……駆け出しの街に落ちた光とは、あの緩んだ顔の女神の事か……?」

 

 だが、魔王の有する特殊能力――今もハンスを巨大化させていく力は封印し切れなかった。

 あの魔王を取り除かない限り、最凶の災厄の膨張は止まらないのだ。

 

「――さあ、食らいなさい我が爆裂魔法を!」

「――いけ、めぐみん! 私が守る! 魔王をぶっ飛ばしてやれ!」

 

 続いて、アクアと共に突入していためぐみんとダクネス。

 声高に弱体化された魔王へと挑まんとする。だが、

 

「ふん! そんな立っているのもやっとな状態で爆裂魔法などどうせ撃てまい、ハッタリだ!」

 

 ――と魔王は断定する、がそれはあまりに舐めた発言だ。

 ぴくり、とこめかみが動いためぐみん。今の煽り文句で火がついちゃった。“やる時はやる天災児”だというのを良く知るゆんゆんは、顔を蒼褪めさせた。

 おい! ハンスを押さえるのに精一杯なのに、爆裂魔法なんてぶっ放したら――いや、ひとりいない。

 

(! まさか!)

 

 『アクセル』で最も成果を出しながらも、自滅してしまいそうなピーキーなパーティのメンバーは、アクア、めぐみん、ダクネス――そして、カズマ。

 

 

「――『テレポート』!」

 

 

 中級魔法のようにステータスの魔力値に左右されず、相手を登録した地点まで転移させる『テレポート』。

 目立つ三人の囮に注意を持っていかれた魔王、その背後から『潜伏』スキルで気配を殺して忍び寄った『冒険者(カズマ)』が飛び掛かって、転移した。

 そして、爆裂魔法のポーズを取っていためぐみんが、こちらに叫んだ。

 

「早く! カズマが向こうで魔王を引き留めている間に、そのスライムを仕留めるのです!」

 

 

 ♢♢♢

 

 

 ――震えが来た。

 まさか、まさかまさか! 何かしてくれるんじゃないかと思っていたが、これは計算外――いいや、奇跡だ。

 

 やってくれたな!

 魔王と分断されたハンスは、破裂直前で空気が抜けた風船のように急速に萎んでいく。超級だった最凶の災厄は、幹部級にまで落とされた。この上ない、チャンスが到来する。絶対に、決める! 決死でこの好機を作ってくれた彼らに報いるためにも、全力でもって応じよう!

 

『もはや三度目の因縁。いい加減にケリをつけようか――!』

 

 牙の間から、チラチラと光が漏れだす。

 そして、魔王城が揺れる、破滅的な威力を予感させる、不穏で剣呑な大気の振動。耐え忍びつつ代名詞たる息吹(ドラゴンブレス)を放たず、只管に溜め込んできた力。その虎視眈々と待ち望んでいた勝機が今ここに。

 

 暗黒のタタリが怯え、震え、終わりを悟ったかのように踊り狂う。だが、己を最凶の災厄とした魔王は、今はいない。

 そして、退路を断ち、背水の陣に立ったドラゴンの背中には、守り切った少女がいる。

 

「決めて! ――『エナジーイグニッション』!」

 

 体内に灼熱が自然発火。本来であれば内側から相手を焼き尽くす上級魔法を支援に転用した連携技の『オーロラブレス』。『ドラゴンブレス』版の『メドローア』。守護竜の咢から濁流の如き極光が迸った。

 

 圧倒的な光量で、視界の全てが真っ白に染まる。

 あらゆる抵抗が無意味に思える凄まじさに誰もが目を閉じた。守護竜の背後、ゆんゆん、それにアクア、めぐみん、ダクネスはきちんと安全圏になっている。それでも余波が押し寄せてきた。

 猛烈な圧力。内臓が口からはみ出るんじゃないかと思うほど。

 消滅した空気が突風を呼び込み、暴風となって吹き荒れる。それで大気の摩擦が磁気嵐を促し、七色に揺らめくオーロラに見えた。

 砲台の咢は空へ向けて斜め上へと、それから巨大スライムに沿って、ブレスを放出しながら振り落とし――その一切を消し飛ばした。

 

 

 ♢♢♢

 

 

 魔王を守護する近衛隊隊長ハンスを跡形もなく消滅させた。

 これで魔王が戻ってこようとその特殊能力を活かせる条件は無くなった。

 

 ……しかし、カズマは帰って来なかった。

 向こうで事前に決めていた作戦では、“最大で三分は足止めを果たす”と言っていたそうだが、十分は過ぎても帰って来ない。魔王もカズマも。

 

(まさか、魔王とたったひとりでやり合っているのか?)

 

 そうだった。

 サトウカズマは、転移先の最果てのダンジョン最下層で、魔王が逃げ帰らせぬよう“最弱職の『冒険者』と魔王が一対一の状況”を利用して挑発して、そのまま……

 

 

 ――――――サトウカズマは、魔王を討ち取ってみせた。教えるまでもなく頭に叩き込まれた爆裂魔法、その我が身も吹き飛ばした自爆戦法でもって。

 

 

 魔王が斃されたその瞬間、地上に顕現した水の女神アクアは、その姿を消した。特典として選ばされ、それでその役目が果たされた彼の女神は天に帰ることが許された。

 そして……

 

 ………

 ………

 ………

 

 突然現れた光の柱よりこの世界へ帰ってきた。特典の女神(チート)を連れて。

 

「「カズマ! お帰…………り…………?」」

 

 魔王の部屋に突如現れたカズマに、同着一位で気づいた二人、ダクネスとめぐみんが声を上げ、かけて詰まる。

 首をかしげて、めぐみんが恐る恐るといった調子で帰還を果たしたカズマに訊ねる。

 

「あのう……。その人は、誰ですか?」

 

 カズマの隣に佇む、女神エリスを指差して。

 

「は?」

 

 これまでで二度目撃した御姿を見間違うはずがない。同じだ。この世界の幸運の女神様が――水の女神様ではなく――カズマと一緒にいた。

 これはまったく、完全に予想外の奇跡である。

 

 カズマは、困った表情を浮かべオロオロしている女神に手を向けて、何とも軽い感じに紹介する。

 

「こちら、あの有名な女神エリス様。魔王を倒したご褒美代わりに、せっかくなんで連れて来た」

 

『えっ!?』

 

 そんな簡単な、いや大変ではあるが、女神って天から連れてこれるものなのか?

 

「なんでよ――――――――!」

 

 とまた突然、光の柱が現れて、水の女神様がご降臨なされた。

 

「あっ! お前、なんで自力で降りて来れるんだよ!」

 

「せ、先輩!? 何してるんですか、ダメですよ! 許可も無しに勝手に降りてきちゃ! 怒られますよ!?」

 

 うわあ、女神が地上に降りたというだけで奇跡なんだけど、奇跡のバーゲンセールか?

 “これもサトウカズマの天運か”と羨ましさを通り越して畏れを抱いてしまう。

 

「わあああああああーっ! ガ、ガズマがあああああああ! ふわあああああああ! あああああああああ! あああああああああーっ!」

 

「めんどくせえ奴だなお前は! 調子に乗るから置いてったんだろうか! ったく、ちゃんとしばらくしてから迎えに行くつもりだったのに、どうすんだこのバカ!」

 

 わんわんとアクア様が泣いているけれども(あとエリス様がオロオロされて挙動不審だけど)、全員無事だ。

 ほっと息を吐いた――ところで、魔王の部屋に、

 

「遅れてすまない! だけど、たとえ『グラム』がなくても、僕も…………って、え?」

 

 と、ようやっと、全部が終わってからミツルギ一行が駆け付けてきた。

 彼らもこの状況――女神は二柱存在して理解できないくらい混沌としているが――より魔王が討ち倒されたことは理解できよう。仲間たちの励ましに奮い起こした遅刻勇者は何とも言えない表情で肩を落とす。

 だが、そのパーティの『盗賊』と『ランサー』は、ショック状態からいち早く回復するやカズマとゆんゆんを見つけて声を挙げた。

 

「ねえー! よくわからないけど、もう魔王は倒されたんでしょ! なら、早く帰りましょ!」

「そうよ! 魔王軍が! 魔王軍が、帰ってきたのよ!」

 

 なんだと!

 部屋のバルコニーから外を確認すれば、段々と接近する膨大な土煙。あれは相当数の大群だ。

 だが、こちらもすでに目的の魔王討伐は果たした。

 全員が精魂尽きた状態でこれ以上の無茶はできないし、とっとと引き上げるべきだ。と全員が思った時、気づいた。

 

(あ、そういえば――)

 

 念のための保険としてとっておき……だけど、結局最後まで使われることのなかった最高品質のマナタイト結晶。

 少し考えて、豊潤な魔力を秘めた魔石を手に取り――それから、声高らかに唱えた。

 

 

「神風は二度吹く! 我が奇跡魔法よ、今日最後にまた一度奇跡を起こしてみせろ――『パルプンテ』ー!!」

 

 

 折角だし、貰ったこれを使い切ってしまおう。出番がなかったからって返すというのも違うと思うし。それに、すぐ傍にはエリス様もいるからそう外れが出ないだろう。きっと何かしら……そんなちょっとした出来心でやった。やっちゃった。

 

「あ」

 

 上空を見上げるとそこに煌く流星。

 降り注ぐ無数の流星は、魔王軍の軍勢へと直撃する。

 土塊が間欠泉のように噴き上がり、魔物たちを吹き飛ばす。

 

「いきなり隕石が落ちるなんて!? あれって、とんぬらさんが!?」

 

 こちらが空に手を掲げ、めぐみんからのプレゼントを使って魔法を唱えたのを『一体何するんだろう?』と一挙一動をゆんゆんが窺っていた。これで他の者たちもとんぬらが“やっちゃった”ことを知る。

 

「トールにこんな隠し玉があったとは……――ですが、爆裂魔法の方が上です! 魔王軍最強の魔法使いを降した『アークウィザード』は私の方ですから!」

 

 あ、なんか既視感。

 前に隕石を落とした時、誰よりも動揺した天災児がその後どうしたのかを思い出す。そう――

 

 

「『エクスプロージョン』――ッッ!!」

 

 

 鼻血を噴出させようが、この一線だけは譲らんと最強火力の魔法が、上空から流星群を落とされた魔王軍へと撃ち込まれた。

 まさに泣き面に蜂の極大化。上は流星、下は爆焔の驚天動地の事態に、魔王軍を率いていた魔王の娘も阿鼻叫喚と逃げ惑う。

 

「めぐみん!? ちょ、ちょっとなにしてんの!? と言うかまだやる気なの!? 止めて! 鼻血が出てるからっ!」

 

 そこでめぐみんが魔王軍に対して容赦なく爆裂魔法をぶっ放そうとするのだが、ゆんゆんが慌てて止める。

 

「ワハハハハ! 我こそは魔王めぐみん! この城を乗っとりし、世界最強の『アークウィザード』! 我が城に近づく愚か者ども! 我が絶大なる力の前に消え去るがいい!」

 

「おいやめろ! やっちゃった俺が言うのもなんだがやり過ぎだ! 本当に魔王の所業だぞ! ゆんゆん、俺がめぐみんを止めてるから、『テレポート』してくれ!」

 

「はい……っ! ――『テレポート』!」

 

 リュックからマナタイト結晶を手にしようとするのをとんぬらも止めに入る。

 そうして、最後に次代の魔王軍にも甚大なダメージを与えて、転移魔法で駆け出しの街へと転送した。

 ……結局、“帰りの切符”を手に入れることはできずに。

 

 

 ♢♢♢

 

 

 『アクセル』へ帰還した後、どういうわけかカズマとアクアだけが転移されておらず、めぐみんは何かを察したようで、ちょっと待っていれば帰ってくるという。だけどとんぬらはそれを待たずに別れてひとりとなった。

 

「どうする、か……」

 

 あの『異世界転移の箱』があれば、必ず帰れるという保証があるわけでもない。アレを持ち帰って調べて、平行世界の移動する術理を把握した後でようやっと帰れるかもしれないと言ったところだ。

 いずれにしても、『異世界転移の箱』がなければ始まらない。スタートラインにすら辿り着けていない。

 終わってから振り返ってみれば、後にくるものもあるが、だからといって諦めてはいない。

 

(異世界転移の魔道具が、あれ一つとは限らないし、見本の魔道具がなくても一から理論を構築していけばいい。“ないのなら作れ”が紅魔族の主義なのだからな)

 

 “回り道”で壮大に道草を食って、“帰り道”のための地図を手に入れられなかった。

だけど、歩き続ければ、きっと望む場所に到達できる。後悔を後悔だけで終わらせない。

 そう決意を新たにしたとんぬらは、

 

 

「あっ! とんぬら君、帰ってきたんですね! 無事で良かった! 実はですね、とんぬら君が行った後にバニルさんから倉庫の奥の奥の奥の方を探してみろって言われて探したら、『異世界転移の箱』があったんですよ! ほら、これですよね!」

 

 

 とりあえず、箱の在処の情報(ヒント)を提供してくれたウィズに報告しようと店を訪れたら、ウィズがその箱を持って出迎えてくれた。

 

「……………………え、えー……」

 

 とんぬらは、思い切り肩を落とし、項垂れてしまう。この反応に、ウィズは慌てて、

 

「と、とんぬら君、どうしたんですか!? もしかして違ってましたか?」

 

「いやあ、ウィズさんはやっぱりウィズさんだなあと」

 

 骨折り損のくたびれ儲けだった平行世界の魔王討伐。だけど、赤字(ウィズ)店長はどの世界でも共通して自分(とんぬら)の稼いだ儲けを水の泡にしてくれるようだった。喜ばしいことではあるのだが、徒労感が一気にきて、なんかもう立ち上がれない。

 

「フハハハハハハ! 魔王を討伐してきた小僧を凹ますとは、やってくれるではないかうっかり店主よ!」

 

 で、他人(こちら)の不幸で飯が美味いな仮面の悪魔がさらに追い打ちをかけてくれる。

 

「あんた、俺に後悔するとか予言してくれたよな?」

 

「うむ。だが、“小僧がその『異世界転移の箱』を手に入れられない”とは一言も言ってはないぞ?」

 

 ああ、そうだった。

 本当にこの愉快犯はどの世界でもいい性格をしている。箱が店にあることも全てを知っていて、それで自分に美味しい展開に持っていくために送り出してくれた。知っていたのにその言葉に煽られた自分が迂闊だったが、やっぱり面白くない。

 

「フワーッハッハッハッハッッ! フハハハハハハハハハハッ! 超極上の悪感情をありがとう! いやはや、過去を見通させてもらった時から予感があったが、汝の悪感情は他とは一味違う格別に美味である! これは我輩のために毎日悪感情を作ってほしいと契約(プロポーズ)したいくらいだ!! フハハハハハッ!!」

 

 絶対に嫌だ。

 魔王城に挑んだ自分でもこうも振り回されるとか、この地獄の公爵と最上級アンデッドの揃った魔道具店は裏ダンジョンなんじゃないか?

 

「もうバニルさんは笑い過ぎですよ! とんぬら君、ごめんなさい。私がもっとちゃんとしてれば大変なことにはならなかったはずなのに」

 

「いや、もういいです。この店に箱があってよかったですし、結果的に最善を尽くせたみたいですから」

 

 もしもカズマたちの魔王討伐の旅を追いかけなかったら、『預言者』にこの世界のゆんゆんとアクア様、あとミツルギらがやられていただろうし、箱を探して魔王城の宝物庫へ寄り道をしなかったら聖盾『イージス』と出会えず、ハンスによって全滅していた。

 そう考えるとバニルの予言はこちらをいい方向へ導いてくれたわけで――より一層に歯噛みしたくなる。

 

「おやまた小僧から我輩好みの悪感情が出ている。二度美味しい想いをさせてくれるとは太っ腹であるな! フハハハハハーっ!!」

 

「ああもう、存分にご馳走になれよ」

 

 とにかく、この悪魔には絶対に感謝はしない。

 そして、もう二度と口車に乗せられまいと固く誓った……ところで、また、予言された。

 

「お礼にひとつ予告してやろう。災難小僧は、まだ厄介事に巻き込まれるであろう。是非とも我輩を楽しませてくれたまえ」

 

 余計過ぎるお世話で、仮面の悪魔に立てられたフラグをどうにかして折ってやりたい。

 いや、もう経験上その辺は諦めるから、せめて魔王討伐以上に大変な目に遭うことがないようにと祈っておこう。

 

 

 ♢♢♢

 

 

「――魔剣使いの勇者ミツルギ殿、魔王討伐に出向いたと噂には聞いていたが、見事に魔王を打ち倒したそうではないか」

 

「いえ――私が、魔王を倒したのではございません」

 

 王都冒険者ランキングの第三位として顔が売れているミツルギキョウヤ。

 駆け出し冒険者の街から拠点としている王都へ戻ってきた魔剣使いの勇者御一行を待っていたかのように王侯貴族は歓迎して出迎えた。

 これに長旅での疲れはあるが、王城へと馳せ参じたミツルギ。陛下が留守の間の執政と第一王女の護衛を任された大貴族シンフォニア家令嬢を筆頭とした家臣団は、魔王討伐と言う戦果の一報が嘘か真か、そして、真であればその詳細を聞き出したくて訊ねたのだが、彼の勇者は首を横に振る。

 これに家臣たちは意外と目を瞠ったが、ふつふつと別の期待が沸き起こる。そう、密やかにだが、魔王に挑んだ勇敢な王子がいることを彼らは知っていた。

 

「それは、誰なのですか?」

 

 第一王女は、皆とは違う顔を思い浮かべながら、やや声を弾ませて訊ねれば、しかし返ってきたのはその人物像からは離れた回答(もの)

 

「彼は、敵の策略で危機に陥った僕たちを救い、凶悪な怪物を神器の聖盾の力で討ち取ってみせ、魔王軍の軍勢を魔法で隕石を落として薙ぎ払った。そして、皆が魔王の圧倒的な力に絶望した時もけして折れることなく挑みに行き――魔王を討ち取ってみせました」

 

 肝心なところでいなかった(カズマの活躍を見ていない)、それから魔剣融解のショックで重大な発表も聞き逃していた(本名がとんぬら云々知らないままの)勇者は一部始終を、憶測を交えて語る。

 これに、とある報告を受けていたクレアは、ゴクリと息を呑み、王女アイリスの面前だが、慎重に訊ねた。

 

「その者は、仮面をつけていらしたか?」

 

「はい」

 

「その者の、名は?」

 

「トール、と名乗っていましたが、ダスティネス様からその正体を聞き及んでおります。『ベルゼルグ』の友国であり、魔王軍に滅ぼされてしまった『エルロード』の王子であると」

 

 世間で人格者として信頼されていた勇者の太鼓判で確定だった。

 そして、魔剣使いの勇者一行から取材した、婚約者の王子が人類の悲願である魔王討伐――『ベルゼルグ』のお姫様と結ばれるに足る活躍の程を掲載した新聞がその翌日にも王都中を出回ることになる。

 

 

 参考ネタ解説。

 

 

 ドラゴンオーブ:ドラクエⅤに登場する重要アイテム。人間に姿を変えた『マスタードラゴン』の全ての力が封印された青色の宝玉で、竜の模様が印されている。

 カードゲームだとパーティの受けるダメージを激減してくれる。

 作中では、『イージス』の核が変化したもの。とんぬらの『ドラゴラム』を強化するアイテムに。ポケモン風で言えば、メガシンカをさせるメガストーン。

 

 アイギスの守り:ドラクエⅩに登場する盾スキル。ダメージを1/4カットし、ガード率を上昇させ、クリティカルダメージを軽減する。

 作中では、ドラゴン化した際の『イージス』の防護支援。聖盾の対となる上位神器のようにその装甲を聖鎧化する。

 

 パルプンテ新効果。

 レベルアップ:ダンジョンシリーズ(巻物)や、パロディドラマ勇者ヨシヒコに出てくる効果。ドラクエⅣの『マスタードラゴン』が経験値を与えるイベントと掛け合わせています。


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