この素晴らしい願い事に奇跡を!   作:赤福餅

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二万字越えの長文です……(;^_^A


83話

 海と来たら、次は山。

 

 一週間にわたる講師役の特別依頼を終えて、やれることはやってから、すぐに『アクセル』を発つ。

 向かうは王都近くの最前線にある砦……現在、幹部が率いる魔王軍と交戦している砦だ。現在ここに、『ベルゼルグ』王国の最高戦力が集結している。

 強力な魔法を使う邪神に対抗するために騎士団は元より、ミツルギなど神器持ちの勇者候補が多数参戦している。

 その激戦区へ、魔王軍幹部を撃破してきた宮廷道化師も、先日の負傷が癒え次第、援軍に加わるよう王国より要請が来ていた。

 何でも敵の幹部の攻撃が凄まじすぎて、次々と怪我した冒険者たちを後退させているのが現在の戦況。すでに最前線で頑張っておられた陛下や王子も避難されているという。

 

 そして、王都までゆんゆんの『テレポート』で移動。そこから山々の方を歩いて二日の距離を行く道中を、俊敏な豹モンスター・ゲレゲレに騎乗して向かう。

 ……それで、後からこの道を来るであろう面子の為にも、また撤退する負傷兵の安全な退路確保の為にも、ドラゴンゾンビやら山賊など襲ってくるモンスター(荒くれ者)を見かければ、虱潰しにしていくよう積極的に退治(捕縛)していくプランで考えていた。

 なので、一直線で駆け抜ければおよそ半日で辿り着ける移動速度はあったものの、戦闘に思いの外時間がかかった。己の不幸体質がいかんなく発揮して、連戦に次ぐ連戦となったのである。陽が落ち、零時近い深夜。無理に夜間移動することなく中継地点にある山の宿泊施設に寄って朝まで休むことにした。

 

 強力なモンスターが跋扈するこの山岳地帯にて、その建物は頑丈な壁で周囲を囲われて、貴族の屋敷並みの広さがあった。それからここの名物に、温泉がある。

 元々こんな辺鄙な場所に宿泊施設があるのは、このこんこんと山に湧く秘湯の源泉を確保するため。疲労回復肩こり腰痛にも効く万能の湯。魔王軍との戦線に入る前に、疲れを癒すにはもってこいだ。

 

 だが、こういった辺境の温泉宿は大概が混浴で、ここもその例に漏れず。

 なので、ここは家での順番通りに女子のゆんゆんに先に風呂に入るよう促したのだが、『今日はとんぬらがたくさん前に出て戦ってたんだし、すっごくお疲れでしょ! だからとんぬらの方こそ先に入って!』と逆に強く一番風呂を推された。

 これは何か企んでいる。何か、というか、九割九分展開が予想ついていた。過酷な戦いに身を投じる前に男女の仲が燃え上がるというのはよく聞く話だが、とんぬらはここで終わるつもりはなかったし、家の風呂ならとにかく公共の施設にて……その人目がなかろうと人生の称号を増やすのはよろしくない。

 

 ここはとっとと身を清めて、サッと温泉に入って出てこよう……と早風呂を心に決めて風呂場に入ったら、既に赤髪のお姉さんが風呂に入っていた。

 もう深夜零時過ぎで誰もいないと思っていたはずのとんぬらは、そのバッタリと偶然に遭遇した女性の正体に気付いてさらに驚き、そして……

 

 

「『怠惰と暴虐の女神』を信仰する神社の神主にして、勇者サトウの末裔よ。もし、私の味方になれば、世界の半分をあなたに与えましょう」

 

 

 そう、挨拶から始まる会話の最後に、勇者を誘う有名な殺し文句を唱えたそのとき、とんぬらの後ろで、風呂場の引き戸が勢いよく開いた。

 

 

「と、とととんぬら! お、お背中を流しに来……ちゃっ……た――」

 

 

 その声はとんぬらが予想していたものであったけれども、ここで振り向いてそれを確認する気にはなれなかった。きっと目の光が消えてるだろうから。

 まことに残念ながら、ここが城の最奥にある王の間ではなくて、温泉宿の風呂場。

 そこで裸のお姉さんと対峙したこの場面に、居合わせた先日の感謝祭で結婚式(仮)をしたばかりの婚約者(パートナー)が投入……張り詰めた緊張感あるシリアスな固有結界が、別な緊張感で塗り変えられる。そう“ひょっとすると世界の命運がかかってるかもしれないレベルの話”から、“浮気現場を目撃された男女の痴情のもつれな修羅場”へとスケールダウンするのだが、状況はとてもカオスだ。どうすれば収拾を付けられるかわからない、最悪、刃傷沙汰に発展しそうで怖い。遠い『アクセル』の街より水晶玉で覗いていたすべてを見通す悪魔が、『三星小僧を旅させると美味しいシチュエーションばかり作ってくるな!』と太鼓判を押すほど。カッコつけに拘る紅魔族として、もっとこういうのはその台詞を吐く場面に相応しい場所と格好……最低限度のTPOを弁えてほしいとこの温泉好きでどこかうっかりしてる邪神に不躾ながらも文句を言いたくなる。

 

「ど、どどどどどうして! お姉さんが、とんぬらと、二人きりでお風呂にいるんですか……!?」

 

「違うわ! 示し合わせて一緒に温泉に入ったわけじゃないの! 偶然! 本当に偶然よ、勘違いしないで。それで、こんなところで顔合わせちゃって、えと、その都合が良かったから……私の大事な“信者(ひと)”だし、この機会にアプローチをかけてみただけで……」

 

「! とんぬらは私の大事な“婚約者(ひと)”ですっ! 絶対に渡しませんっ!」

 

 『ひょっとして自分は女神と関わるとロクなことが起きないんじゃないか?』と乾いた唾を呑み込みながら、神主志望の少年は思う。

 

 けれども、この『怠惰と暴虐の女神』の恩恵は少なからず得ている。特にここ最近は与らせてもらった。

 ――そう、あの一週間の研修で……

 

 

 ♢♢♢

 

 

 ボンボンと連続して爆発音が海に轟く。

 

「今日はまたやたら景気がいいなめぐみん。……それで、兄ちゃん、大丈夫か?」

 

 それはペナルティの請求料か、それとも目元にクマを作っている健康状態のことか。

 あれからちょむすけを押し付けられて、中々カズマは寝付けなかった。おかげで今すごく眠い。

 

「なあ、とんぬら、今日はお休みにしないか? 折角海に来たんだし、たまには遊んだほうがいい」

 

「そうしたいのは山々だが、こっちも時間はなくてな……。しかし、ダクネスさんまで寝不足のようだ」

 

 ダクネスがこちらの会話に混じれないくらいうとうとしてるのは、縛り付けたまま部屋に朝まで放置していたからである。きっと興奮して寝付けなかったんだろう。

 

「ふむ、そろそろモチベーションが維持できなくなる頃合いと思ってたし、ここらで明かすとしよう」

 

 そういって、とんぬらがまず取り出したのは、ダクネスに預けていたカズマの冒険者カードだ。

 見てみろ、と研修期間取り上げられていたカードを返され、受け取って見る。

 

「はあ!? 何だよ、全然レベルが上がってない!? あんなに『養殖』したのにどういう――って、うおおおお!? なにこれバグってるのか!?」

 

 レベルがまったく変化ない冒険者カード、しかし、そこにひとつ異常が見られた。

 

 スキルポイントが百近くも貯まっていたのである。

 

 これには一気に目が覚めた。驚きに目を見開いたまま、とんぬらを問い詰める。

 

「おいとんぬら! これは一体どういう事なんだ? 海の高級食材ってのはまさかそんなにスキルポイントが稼げるものだったの? それと、あれだけ『養殖』したのに全然レベルが上がってないってどういう事なんだよ?」

 

「落ち着け兄ちゃん。一つずつ説明する。

 まず、兄ちゃんはちゃんとレベルは上がっていた。それも物凄い勢いでな。ただ、俺が反対にレベルを下げていた」

 

「そうだ、カズマ。修行に取り入られているとはいえ、弱体化するレベルダウンはこの私でも躊躇する上級者プレイだからな。私ととんぬらとは違いそちらのレベルも低いカズマにはショックが大きかろうとこれまで黙っていたのだ」

 

「ダクネスは黙ってろ。お前みたいに変態道を邁進する気はこれっぽっちもないから。……って、俺レベル下げられていたのか? いつのまに!? つか、どうして!?」

 

「毎朝、俺が兄ちゃんにかけていたあの祈祷……あれは、『不思議な踊り』という猫耳神社神主のオリジナル芸能スキルでな。社に祀っている怠惰を司る女神の呪いをかけるものだ」

 

 その効果は、“対象を堕落させる”……つまりは、レベルダウンである。

 強力な相手を強制的に弱体化してしまうという、自然の法則をねじ曲げてしまうのが、レベルダウン。一部の大悪魔かリッチー、もしくは、お伽話に出てくるような伝説級のモンスターぐらいにしか使えないレアな呪いだ。それを時間はかかるが『怠惰と暴虐の女神』への祈祷する儀式をすれば掛けられる術を、猫耳神社の歴代の神主は編み出していた。

 

「実戦で使えれば中々強力な効果になるだろうが、あの通り、レベルを下げる分だけ祈祷時間は長くなるし、『不思議な踊り』に集中しなければならないから隙だらけ。

 ――しかし、これにはひとつ大きな利点があった。

 レベルダウンしても、レベルアップの際に加算されたスキルポイントはそのまま。ステータスが下がるのに、ポイントは帳消しにならないし習得したスキルは忘れない。ほら、昨日、ダクネスさんから逃げる時も『盗賊』の『逃走』スキルが使えたし、『養殖』でトドメを刺すのに『ドレインタッチ』をしても何の支障はなかっただろう?」

 

 確かにそうだ。あの体が怠かったのはレベルダウンで体力系のステータスが下がっていたからなんだろうけど、スキルは問題なく使えていた。

 

「レベルが1になってもスキル関連に影響はない。そして冒険者カードを見ての通り、再びレベルを上げれば、スキルポイントはちゃんと加算される」

 

 ……あれ、これってもしかして。

 

「普通は、レベルダウンは致命的だが、スキルポイントの荒稼ぎにはうってつけだ。途絶えさせないよう必ず代々伝授させ続けてきた奇跡魔法を習得するには上級魔法以上にスキルポイントを溜めていかなければならないし、神主は芸能を納めるためにも魔法の他に宴会芸スキルも習得する必要がある。普通の紅魔族よりもポイントを多く求めるんだ。だから、この『不思議な踊り』が開発されて以来、奇跡魔法を修得する際には、レベルダウンを取り込んで『養殖』するスキルポイント稼ぎが採用されることになった。俺が学校入学時に『パルプンテ』と宴会芸スキル各種を修得していたのは、それが大きかっただろうな」

 

 とんぬらが説明してくれているが、ほとんど頭の中に入らなかった。

 これ、もしかして、“最強の冒険者”になれるフラグじゃないのか?

 カズマが就いているのは、“最弱職”などと呼ばれる『冒険者』。この職業は、習得必須スキルポイントが割増しになるも、そのスキルを使う職業の人に教えを乞うだけで、あらゆるスキルを習得できるのだ。

 つまり、これは“最強の勇者”とかになるフラグで……

 

「しかし、あくまで稼げるのはスキルポイントだけだ。ステータスが上がるわけでもない。俺も最初のころに奇跡魔法を習得してからは『不思議な踊り』にお世話になる必要がなくなった。……兄ちゃんも、『冒険者』は、スキルを覚えたところで本職の魔法使いや戦士には到底及ばない。ステータスでは負けてしまっているんだからな」

 

 夢を見る前にあっさり勇者伝説フラグをへし折ってくれるとんぬら。

 ちょっとくらい浸らせてくれても良かっただろ……!

 

 でも、この方法は確かに効率的である。レベルを何度も下げて、再び上げ直していけば、スキルポイントは稼ぎ放題だ。

 だったら、それならもっと他にも広めてもいいんじゃないか?

 

「なあ、とんぬら。これ、他のヤツにもしないのか? めぐみんもレベルダウンさせてスキルポイントを稼がせれば……」

 

「めぐみんはいくらスキルポイントが貯まったところで上級魔法を習得したりはしないし、今レベルが下がったらそもそもの武器である爆裂魔法まで使えなくなる。『髑髏の指輪』をつけてなくても魔力が足らないオチになるだろうな。そんなの断じてめぐみんは認めん。……それに、誰もが『アークウィザード』になれるだけの高い素養を持つ紅魔族は、最初から多くのスキルポイントを持っている。所謂才能というものだ。だから、学校の授業や『養殖』で手伝えば無理なく上級魔法を覚えることができるんだ。奇跡魔法を引き継がねばならない歴代神主は余分にスキルポイントが必要であっただけで、一般的に『不思議な踊り』のレベルダウンは不要だったりする」

 

 パーティの上級職三人の面子はスキルの振り方が、爆裂魔法一辺倒だったり、攻撃系スキルは一切取らずに防護系のみだったり、無駄に宴会芸を習得してたりとおかしいだけで、真っ当なスキル振りをしていれば、ポイントに困ることはそうそうない。

 

「それに、当然、レベルを下げれば弱くなる。生物の本能からして、一時的にでも弱体化する事は容易に受け入れられない。……正直、ここまで種明かししても、平然としている兄ちゃんが俺には不思議なんだが」

 

「え、そうなの? むしろレベルをお手軽に下げてくれるのは利点の方が大きいだろ。駆け出し冒険者レベルになっても、街の外のカエルを数匹狩れば、2、3レベル簡単に上がるんだし」

 

「うん、そこが兄ちゃんに最適な修行法だと俺が思った理由になる。自覚はないようだが、普通、そう簡単にレベルは上がらないものなんだ。『アクセル』から出立する目処になってる目標レベル20になるまで、通常は数年かかる。よっぽどの強敵に巡り合わないと一年足らずでレベル20は超えないし、一日『養殖』しただけでレベルを下げた分を取り戻せるほどになるのは難しい。

 一応、『養殖』を用意するまでの空き時間を無駄にしないよう、紅魔族随一の靴屋に教えてもらった秘伝のレシピ、『ラッキーペンダント』の在庫あまりと不良品の『しわよせの靴』を材料に錬成させた『幸せの靴』――今、兄ちゃんに履かせているのがこれなんだが、これは一歩歩くごとに経験値が入る代物だ」

 

 おおっ! 何だよこれ凄いアイテムじゃん! 動く音が鳴るから『潜伏』するには使えないと思ってたけど、モンスターと戦う危険を冒さずに経験値稼ぎができるなんて最高だろ!

 なるほど、とんぬら、それにダクネスがやたら走らせようとした理由がわかった。

 

「と言っても、入るのは雀の涙ほど。レベル1の初期のころじゃないとそう簡単にレベルが上がるまでとはいかないんだが……しかし、ダクネスさんからの報告だと、兄ちゃんは一周ランニングするだけで5レベルくらい上がっていたそうだ」

 

 言い難そうに顔を強張らせるとんぬら。

 どうしてその反応するのかわからないが、つまりこれは……。

 

「なるほど。これは、俺が特別優秀で、人よりレベルが上がり易い人間だって事か?」

 

「うん。まあ……人よりレベルが上がり易いというのは一種の才能だと言えるな」

「そ、そうだな! 普通はそう簡単にレベルが上がらないのに、ちょっとランニングするだけでレベルを上げられるカズマは選ばれた者、とでも言うのか……、その……! ある意味天才だ」

 

 おお、おおっ! 幸運以外の才能はないと思ってたけど、こんな自分も気づかなかっただけでこんな才能が眠っていたなんて……!

 

 高揚するカズマ。

 そして、口々にカズマを褒める講師役な、とんぬらとダクネスはよいしょしながらも内心で気まずそうに視線を逸らす。

 

 上級職はレベルを上げるのに相当な経験値を稼がないとならないが、最弱職の『冒険者』はその逆に簡単にレベルが上げられる。これは、生まれつき、弱い者、才能の無い者ほどレベルが上がり易いと言うのが、この世界の常識だからである。

 最初からスキルポイント0のサトウカズマは、この反比例の法則的に誰よりもレベルが上がり易い……言い換えれば、“生粋の弱者無能である”と冒険者カードに証明されている。

 

 その真実を教えるといじけて浜辺の砂に、“の”の字を量産しそうなので上級職で講師役の二人は口を噤んだ。

 

「兄ちゃんはレベルが下がろうとも、多くのスキルを覚えているし、それだけでなく、高い運ステータスがある。『モンク』の『自動回避』スキルや『アーチャー』の『狙撃』スキル、『盗賊』の『拘束(バインド)』や『窃盗(スティール)』スキルも幸運補正で達人級。運も実力のうちとは言え、正直、俺は羨ましい限りだ。それに、他の冒険者にはない『ドレインタッチ』という力なく相手を確実に仕留められる手段も持っている。たとえ低レベルであってもやりようによっては高レベルの上級職すら倒せる。というか実際に『ソードマスター』のミツルギに勝ってるしな」

 

 冒険者カードに記載されているのは百近いスキルポイント。それも、やろうと思えばまだまだ貯められる、『不思議な踊り』や『幸せの靴』が揃っていれば、好きなだけ稼ぎ放題だ。

 

「上級職に逆立ちしたってステータスでは敵わなくても、百のスキルを覚えれば最弱職でも圧倒することができる。千のスキルなんて習得したらそれこそ伝説の勇者にすら届きうる。――これが、俺が提唱していた“最強の最弱職”だ」

 

 

 ♢♢♢

 

 

 ――やる気が出た。

 

 そんな話術にあっさり乗ってしまう自分は単純だったのかと悩ましいが、こうなったらこの一週間でとことんやってやろうという気になった。

 同じことをひたすら繰り返す辛く苦しいスキルポイントの荒稼ぎだが、そこは一度嵌ってしまえばコンプリートするまで究めようとしてしまうゲーマーの習性……ゲームでレベル上げを淡々とこなしていた単純作業が、慣れてくると一周回って段々と楽しくなってきたように、このタッチアンドゴーも面白くなってきた。

 

「このエロいだけが取り柄の肉盾が。鈍足のお前が俺に追いつこうなど百年早い!」

「調子に乗りおって! 肝心のところでヘタレる根性無しが、そのペース配分でいつまでも走れるとは思うなよ!」

 

 今ではむしろダクネスに後ろを追いかけさせ、『逃走』スキルの発動条件を意図的に満たさせて、『幸せの靴』の経験値上げのペースを上げている。

 『幸せの靴』を履いてのランニングで消耗した体力は、海の漁師と化したとんぬらが獲ってくる魚介系モンスターに『ドレインタッチ』して『養殖』ついでに回復する。

 その際にも講師役など忘れて挑発にカッカしたダクネスが襲い掛かってくるが、幸運補正の『自動回避』スキルで華麗に避けて、灯台へダッシュで逃げる。

 これを日が昇ってから日が落ちるまで延々と反復する。

 

 冒険者カードはとんぬらに預かってもらっているが、教習の終わりに一日の成果を見せてもらってる。尋常ならぬスキルポイントの加算速度に自分のことながら末恐ろしくなってくるほど。

 この分だと今、冒険者カードに載っている『読唇術』や『クリエイト・アースゴーレム』などなどすでに教えてもらっているスキルのストックを全て習得しても余裕でお釣りが出る。修行後の宿でとんぬらやゆんゆん、それにウィズから何か新しいスキルを教えてもらうつもりだ。また街に帰ってからも冒険者ギルドで使えそうなスキルを持ってる奴に教えを乞おう……アクアに回復魔法『ヒール』や『プリースト』の支援魔法を教えろと言ったが、そこは自分の存在意義がなくなるだとかで断固拒否。代わりに宴会芸スキルを教えてあげるとか言ったが、そんなのはこちらからお断りである。

 

 一方でめぐみん。

 あんなことがあった三日目からの四日目の魔力制御の訓練では、大量にポンポンポン『吸魔石』に過剰供給させて劣化爆裂していたが、その午後から持ち直し、五日目からコツを完全に掴んだのか作業スピードが上がり、六日目では一度も爆発させることがなくなった。

 

 ……アクアは途中、ひよこにも入れるようにと海を真水に浄化しかける事件があったが、ウィズととんぬらが早急に止めに入った。

 

 

 ――そうして、辛く苦しい教習一週間、最終日の七日目。

 

 

 その日は、レベルダウンの『不思議な踊り』はやらずひたすらにレベル上げのタッチアンドゴーをして、レベルを元以上に上げて、仕上げをした。

 そして、午後……。

 

「とんぬらっ! この石ころ全てに魔力を篭めてやりましたよ! 早くこの忌々しい呪われた指輪を外しなさい!」

 

 まだ夜が明けないうちからひとり宿を出て、誰よりも早く浜辺へ行き、ひとり『吸魔石』に魔力を篭める制御訓練をこなし、太陽が真上に上がったころについにノルマを達成しためぐみんが、血走った目でとんぬらに催促する。

 

「わかってるそう急かすなめぐみん。ほいっとな」

 

 綺麗な塩を一摘み掌に取ると、めぐみんに握手するようにその小指に嵌めた指輪を掴んで……あっさりと呪いを外してみせた。

 これで今日まで爆裂魔法を禁じていた枷が外れる。

 その鮮やかな手際を視認した途端、めぐみんは杖を取って吼えた。

 

「――アクア! あのモンスター寄せの魔法を使って、我が復活の爆裂魔法に相応しい相手を呼び出してください! なるべく巨大な魔物がいいですね! そして、ウィズ! 今日こそどちらが『アクセル』随一の爆裂魔法使いなのか試しっこしましょう!」

 

「別に構わないけど、ちゃんと責任とって退治しなさいよめぐみん」

 

 いやな予感がする。アクアにそんな頼み事するなんてめぐみんは血迷っているようにしか思えない。それも一度、死んだ原因にもなったその魔法に頼るなんて不安を禁じ得ない。

 そんな渋い表情をするカズマを見て、パーティの壁役たるダクネスがどんとその胸を叩く。

 

「心配するなカズマ。どんなに強力な海の……(触手)モンスターが出てこようとも、この私が皆の盾となろう!」

 

 頼もしい発言をする守護騎士(クルセイダー)である。

 しかし、その格好は見るからに防御力のなさそうな肌色面積が多い……

 

「ダクネス……だったら、鎧着てきたらどうなんだ? その水着姿で最前線に立つ気じゃないだろうな?」

 

「お前は一体何を言っているんだ? 鎧なんて来たら海のモンスターの攻撃が半減するじゃないか!」

 

「お前こそ何を言っているんだ?」

 

 ダメージが半分になるのを惜しむこのドM騎士はやっぱりダメだ。

 

「そうよ、海のモンスターは触手でにゅるにゅるするのよ。だから、私はゼル帝と一緒に後ろに下がっておくわね」

「そうですね。ダイオウイカ系のモンスターは一度絡み付いてくるとしつこいですから、捕まらないよう離れておくのが賢明ですアクア様」

 

 アクアは逆に憶病が過ぎるも、基本、回復支援を担当するプリースト職は後衛にいるものである。街のカエルと同じように丸呑みされてはたまらない。誰だってそんな目に遭うのはイヤなはず……なのだが、ここに例外がひとり。

 

「にゅ……にゅるにゅる……しつこくにゅるにゅるか……最高だな……」

 

「今、『最高』って言ったか?」

 

「言ってない」

 

「確かに――」

「言ってないっ!」

 

 魔王の手下に手籠めにされる監禁願望を持ちながら身持ちが固く、処女の癖にその熟れた体を夜な夜な持て余している。そして、変態を自覚している癖にそれを指摘されると認めたがらないこの面倒で残念な貴族令嬢。こいつも何かそのダメな嗜好を矯正するような修行をさせたらよかったんじゃないだろうか。

 けれど、ここにいるのはダクネスだけではない。

 

「心配しないでくださいカズマさん。待機している私達が、ピンチになれば講師として責任とって対処しますので」

 

 万が一に備えて、とんぬらとゆんゆんのエースに、ウィズもいるのだ。駆け出しの街の魔道具店を裏ダンジョン並みの魔窟にしているこの面子がいてそうそうな事態には発展するまい。

 

「いつでも助けられるようにします。任せてください!」

 

「爆裂魔法喰らって原形を保てるモンスターなんてそうそういない。何かする前に一撃で片がつくよ」

 

 言われてみれば、かつて機動要塞の多脚を破壊した『アークウィザード』とノーライフキング。頼もしいことこの上ない。先手必滅でケリがつく。

 

「ただまあ……」

 

 とんぬらがめぐみんを見ながら何か言いかけたところで、アクアが勢い良く手を挙げた。

 

 

「じゃあ、いくわよー、『フォルスファイア』――ッ!」

 

 

 アクアの上げた手から撃ち放たれた、照明弾の如く、真上に燦々と光輝く青い炎。

 それが視界にチラついただけで、この一週間海を満喫していた水の女神を引っ叩きたくなったけれど、これがモンスター寄せのアクシズ教の神聖魔法。

 

「本命はクラーケンだ! 巨大イカでも大王イカでもいいな!」

 

「どうして楽しそうなんだよ」

 

 とにかく触手(イカ)系モンスターがお望みである水着騎士はおいておくとして、

 

「ふっ、ダクネスの出番はありませんよ。どんなモンスターが現れようと我が爆裂魔法で一撃です!」

 

 『敵感知』にも反応あり。

 さあ、アクアの魔法で誘き出され、一週間ぶりの我がパーティの最大火力に相応しい相手が顔を出さんと、海面を大きく波立たせ――!

 

「ねぇ、念のためにダクネスに支援魔法を掛け終わって、もう私のやることなくなったっぽいから、先にバーベキューの準備しててもいいかしら? 早めに準備を終えて野良野菜を狩りに行きたいの」

 

「お前は好きにしろよ」

 

 今日の海遠征最後(しめ)の食事になる昼食はバーベキューを予定している。

 それはカズマも楽しみにしていたが、これから戦いが始まろうというときに呑気な発言をしてくれる駄女神である。肩の力が抜けてしまう。

 そうして……

 

 

 ――ザッパアアアン!! と海底火山が噴火したかのように高々と水飛沫を空に打ち上げ、現れたのは天を突く巨大な触手……!

 

 

 沖からこの浜辺まで飛散した水飛沫がかかる顔を引き攣らせているこちらに、ダクネスが満面の笑みを浮かべて、それを指差しながら、

 

「見ろカズマ! クラーケンだ! しかもとびきりの大物だぞ!」

 

「クラーケンというか、これ……いくら何でもデカすぎじゃねーか!?」

 

 紫色の外套膜に、橙色のその差し色及び頭や触手腕のオオイカ族モンスター。それが大型船すら丸呑みしてしまいそうなキングサイズ。

 

「ちょっとあれクラーケンのヌシレベルじゃない!?」

 

「そうだなゆんゆん。そういえば、化け物イカ討伐クエストがあったが、こいつがその賞金首モンスター『クラーゴン』か?」

 

 そんな大当たりを呼び寄せた水の女神様は、

 

「ねぇー! 爆裂魔法で吹っ飛ばす前に触手をひとつ切り落として! 祭では本物を出せなかったクラーケン焼きをバーベキューの一品に加えたいの!」

 

「やかましいっ! 役に立たないなら余計な注文を付けるなアクア! めぐみんいいから構わずやっちまえ!」

 

 浜に近づける前にとっとと片付ける。それが一番だ。

 

「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操る者! 『アクセル』随一の爆裂魔法使いだけでなく、クラーケンスレイヤーの称号をも手中に収めてみせましょう!」

 

 そして、めぐみんは一週間ぶりとなる渾身の爆裂魔法を化け物イカへ放――

 

「…………あ、あれ? カズマ、魔力が足りません!?」

 

「はあ!?」

 

 てず、首を傾げるめぐみん。すぐさまこれまで魔力量半減の呪いの指輪をつけていたとんぬらへ抗議する。

 

「どういうことですかとんぬら! もう呪いは解けたはずでしょう! まさか指輪が外れても呪いだけは残っているというケースですか!?」

「そうなのかとんぬら!?」

 

「いや、普通に魔力不足だろ。だって、ついさっきまで『吸魔石』に魔力を篭めて消費していたんだから。呪いを解除しても半分も魔力ないだろ今のめぐみん。爆裂魔法を発動させるのに魔力が足りなくなって当然だろうに。すぐにでも撃ちたかったんだろうが、もっと自身の状態を把握しておくべきだったな」

 

「冷静に解説してくれるのはありがたいんだが、だったらもっと早く言えよ! アクアが化け物イカを呼び出す前に!」

 

「こういうパーティの状態を推し量るのも冒険者には重要だぞ兄ちゃん」

 

 指摘する前から気づけ、と講師役のとんぬらは言う。

 

「まあ、めぐみんがガス欠でもウィズ店長がいるんですから、そう慌てることは」

「ふ、このくらいで退き下がるものか! むしろうひ……じゅる、おっとヨダレが……――よし! いっくぞー!」

 

 と飛び出していく『クルセイダー』。その顔に恐怖の色はなく喜悦さえ浮かんでいて、躊躇なく『クラーゴン』へ突っ込んでいき――

 

 

「――捕まったーーーっ!!」

 

 

 あっさりと触手の一本に絡め捕られたのであった。

 

「お前、絶対わざとだろおおおっ!」

 

 化け物イカにダクネスが人質に取られてしまった。それを見たウィズは、魔法の詠唱を中断。

 

「ダクネスさんが突っ込んでいったので、爆裂魔法は使えません!」

「同じく、ダクネスさんが突っ込んでいったので、私も魔法での攻撃はできません!」

 

 ウィズもゆんゆんもダクネスがいる限り何もできない。

 この状況に、カズマはゴーサインを出したとんぬらに、再抗議。

 

「このパーティは予想もつかない事するバカばっかりなんだよとんぬら!」

 

「すまん、兄ちゃん。その……これほど意外性に富んだパーティだとは思わなかった。これは俺も予想外の展開だ」

 

 言葉を選んで謝罪するとんぬら。

 まったくである。『アクセル』随一のピーキーな曲者パーティを舐めすぎだ。

 

「きゃ~~~っ!」

 

 こちらが手をこまねいている間にもダクネスはにゅるにゅるに触手に絡みつかれている。

 今度は何だ!? と視線をそちらにやれば、上気して恍惚と顔を赤らめるダクネスが何とも艶めかしい声で悲鳴を上げている。

 

「しょ、触手がうねうねと身体を這い回って……にゅるにゅるで、それでいて激しく絞めつけ……ぁんっ――!」

 

 ………。

 

「とんぬらっ! 『ジゴフラッシュ』――ッ!」

「いきなり何をゆんゆん!? ――ぐあああっ! 目が! 目がああああ!?」

「めっ! 今のダクネスさんは絶対に見ちゃダメ!」

 

 あまりの発禁ものの光景に、ゆんゆん、とんぬらの目潰しを敢行。咄嗟に目を閉じても晦ますほどの強烈な閃光を当てられ、砂浜を転げ回るとんぬら。頼りになるエース様でもトラブルが発生。

 

「く、くそおっ! 俺はどうしてこの異世界に来るのにデジカメじゃなくてアクアなんかを特典に選んだんだ!」

 

「ねぇ、カズマさん、今何かヒドいこと言わなかったっ?」

 

 そうこうもたついている間に、渦中のダクネスはますますピンチに。

 

「ひゃぁぁんっ……! こんな、触手が全身を弄りつつ、絞めつけてくるうううっ! はぁ! これは歴代ベスト5に入りそうな……――じゃない! ……触手なんかに負けたりしない!」

 

 ……もう、あのドM騎士は放っておいてとっとと帰ってもいいんじゃないかな?

 

「クラー…ケンに…揉まれるのが……こんなにすごいとは――っ!? ま、また!? これはやばっ!?」

 

 急に焦り出すダクネス。

 今までにないくらいに焦っている。

 

「どうしたのかしら? 相当に強い力で絞めつけられてるのかも……」

 

 ダクネスの頑丈な(だけが取り柄の)身体を苦しめるとは、まずい。

 

「ダクネス! そんなにヤバいなら今助けるからな!」

 

 弓を取り出す。アクアがバカなことを言っていたが、あれほどの巨大生物に近づくとか、どこかの命知らずの変態騎士だけにしてくれ。デカい的だ。遠距離狙撃でも中てられる。

 しかし、

 

「ま、待てぇぇっ! 今はまずい私のことはいいから構わないで!」

 

 相当焦っているのか早口でこちらに制止を呼びかけるダクネス。

 

「今はちょっと本当にまずいのだ!」

 

「まずいって何がだ! 苦しいんだろ?」

 

「ぅぅ、ち、違う! そうじゃなくてその……水着がズレて……くぅぅ~~……」

 

 ………。

 

「――『ジゴフラッシュ』!」

「ゆんゆーんっ!?!?」

 

 なんか後ろで目をやられて激しくのたうち回る物音がするが、カズマはそんなのは気にならなかった。今、頭にあるのはただひとつ。

 

「――よーしっ! 待ってろダクネス! 今助けるからな! もちろん全力でだっ!」

 

「うぉい待て違うだめだそうじゃないそうじゃないだろ!」

 

 人命優先。『命を大事にだ』。ちょっと裸を見られるくらい我慢しろ!

 

「だいたい、水着も全裸も肌色の面積的に今更そんなに変わらないだろ! ダクネス、ちょっとだけ辛抱しろ!」

「水着と全裸は大違いだ! 待ってくれ、いいや、待ってください! ――ぁぁんっ! またコイツ触手を動かし出して……――きゃぁっ!? やめろ! 何をするこのエロダコが!? この、中途半端に触手を緩めようとするな見える! 色々見えてしまう!?」

「触手を解き始めたのか? よし、でかしたぞクラーケン!」

「何がでかしただ! ぁぁ! 見られてしまう! 貴族の令嬢であるこの私が、皆の前であられもない姿を晒すことに……――きゃ~~! もうダメだ! 誰か助けてくれええええ!」

「今行くぞダクネスーーーっ! 喰らえ、『クラーゴン』! ――『バインド』ッ!」

 

 『拘束』スキルで放つは、怪獣を縛っても破れないミスリル製のワイヤー――しかし、化け物イカ『クラーゴン』の全身を縛るには用意したワイヤーでは長さが足りない。精々触手一本に巻き付いた程度。これでは逆に縛ったカズマの方がモンスターに引っ張られてしまう。

 しかし、カズマは、モンスターを縛り付けたワイヤーをしっかり握ったままで、

 

「ウィズに教えてもらった新スキル! 『スタン』――ッ!」

 

 それは直接触れる、もしくは道具越しに触れている相手に金縛りの呪いをかけるというリッチーのスキル『スタン』。

 こちらから衝撃を与えると金縛りの呪いは解けてしまうが、カズマの幸運補正は成功確率を必中までに高めるだけでなく、強烈(クリティカル)にかけられており、ある程度は許容してしまう。

 

「んでもって、『スティール』――『狙撃(ショット)』ッ!」

 

 そして、ワイヤーから手を放すと弓に持ち替え、『吸魔石』の鏃で作ったマジックアローに『窃盗』スキルの魔力を凝縮させて篭めてからつがえて、金縛りの呪いで抵抗力をなくした『クラーゴン』――に捕まっているダクネスへ放つ。

 かつて、デッドリーポイズンスライムのハンスに取り込まれたアクアを回収してみせたように、ダクネスの身柄を『クラーゴン』の触手から、奪って、救出する。

 ヌルヌルでビキニ水着の着衣乱れるダクネスがカズマの腕の中に納まった。

 

「おっしゃあああ――!」

「こっちをみるなカズマ!」

 

 しかし、ガッツポーズを取るよりも早く、『クルセイダー』のアッパーがカズマの顎を見事にとらえた。

 

 

「おいダクネス! 折角ピンチから助けたのにこの仕打ちは何だ!」

 

「それは確かに悪いと思っているが、仕方ないだろ! こっちは大変だったんだから!」

 

 カズマがダウンした間に素早く水着を直したダクネス。顎を痛そうに摩りながら身を起こすカズマ。

 

「――カズマー! ダクネスー! 何を遊んでるんですか! 早くそこから離れてください! 『クラーゴン』が今にも動きそうですよ!」

 

 めぐみんの警告に、カズマとダクネスは言い合いを止めて、金縛りの呪いが解けかかっているお化けイカを見る。これは、まずい。『金縛り』スキルで無力化にできるのはほんの十数秒程度のものらしい。

 だが、辛く苦しい研修――修行を経たサトウカズマはここで慌てない。

 

「お次はゆんゆんから教えてもらった中級魔法だ! 『ファイアーボール』ッッッ!」

 

 動じることなく素早く手をかざし、ぎこちなくも触手を振り上げる『クラーゴン』に向け、覚えたての火球の魔法を撃ち込む。

 至近からの中級火魔法を直撃されたのだ。これで、こんがり丸焼きにされたクラーケン焼きの一丁あが……

 

「プギシャー!!」

 

 猛り狂うお化けイカ。カズマが撃ち込んだ火球は、そのひょっとこ顔に命中したはずなのだが、焦げ目もついてない。少し突き出てる口先が赤らんでいる程度。

 

「はあ!? 俺の魔法が効いてないぞ、どうなってんだよ! どうなってんだよっ!」

 

「単純に、魔力が足りてないんですよ! 貧弱なカズマの魔力では、ヌシレベルの上位モンスター相手では通用しません!」

 

 なんて残念なんだ!

 せっかく初級魔法よりも強力な、実戦向きとも評判の中級魔法を覚えたのに、魔力の総量が少なすぎてあんましダメージを与えられず、ただモンスターをキレさせただけとか残念過ぎるだろ!

 え、数多のスキルを習得した“最強の冒険者サトウカズマ”の無双伝説が始まると思ってたのに、早速出鼻を挫かれてんだけど!

 これって、行動の幅は広がっただけで、これまで通り器用貧乏だってことなのか!?

 

 

 そうである。

 そのくらいは、講師役を務めたとんぬらも承知している。幸運補正の恩恵を受けるスキルはとにかく、それ以外……魔力や筋力に依存する直接的な攻撃系は本職に格段に威力が劣るものになるだろうというのは読めていたし、ほとんどカズマの頭に入っていなかったみたいだが最初に注意していた。

 ()()であっても、『冒険者』は、()()職。

 とはいえ、これはこれで、いい感じに有頂天な状態から地に足のついたところまで頭が覚めたことだろう。違う言い方をすれば現実を見た。

 そして、これで意識が戻ってくれるはず。サトウカズマという冒険者の本領は、上手く立ち回るズル賢さにあるととんぬらは考えている。正々堂々真っ向から力勝負など、土台無理な話なのである。

 

「ごめんね、とんぬら。その、つい……」

 

「反省会は後だ。で、ゆんゆん、もう目を開けても構わないな?」

 

 ダクネスが救出され、水着もちゃんと着ている。

 視力が回復したとんぬらは、おそるおそる、ゆっくりと目を開くと、その仮面の奥の双眸で、この近海のヌシを見据える。

 その前には、足のつく浅瀬にて、『逃走』スキルを発動させてブーストを受けているカズマと、いつもの重厚な鎧装備と違って水着、重りがパージしていていつもより身軽なダクネスが懸命に背を向けて逃げている。時折、ダクネスが『クルセイダー』の意地なのか敵前逃亡に我慢ならず振り返ろうとするがその度にカズマに、馬に鞭打ちするよう(ケツ)を引っ叩かれてこちら海岸へと急いでいる。

 魔法の射程距離内だが、すぐ後ろに『クラーゴン』がついているため、巻き込んでしまう。あれを二人から引き剥がすには、直接的な攻撃をぶつけるのが最適か――

 

「ウィズ店長、詠唱中断しているその爆裂魔法を空に放って強烈な爆音をお化けイカにお見舞いしてください!」

 

「カズマさん、ダクネスさん、伏せてください! ――『エクスプロージョン』ッ!」

 

 ダクネスが突撃して、詠唱を途中でやめてそのまま維持していた爆裂魔法をウィズは海の『クラーゴン』ではなく、空に向けて打ち上げた。

 空中に閃光が奔り巻き起こる大爆発。その凄まじい轟音と共に生じた衝撃波が海面を激しく荒立たたせて、浜辺にいたアクアやめぐみんも頭を抱えて砂地に伏せた。そして、この砂浜近くまで来ていた浅瀬のカズマ……は、魔法が討ち放たれたその一瞬で前を追い抜かしたダクネスに隠れるように縮こまっている……。

 

「……うん、なんだかんだで先程助けてくれたカズマが何だか格好良く見えてしまい、私の目はどうしてしまったのだと心配していたが、気のせいでよかった」

 

「う、うるせぇよ!」

 

 女性陣より白けた視線をもらうカズマであるも、いい判断であるとはとんぬらも思う。何でも利用する狡猾さが彼の売りなのである。見方を変えれば、鎧などなかろうとパーティのガーディアンたるダクネスの背中が安全地帯だと信用しているのであろう。パーティ間に築かれた信頼も確かにある、そう、紅魔の里の孤高を気取っていた天才様が言うように。

 

 そして、カズマとダクネス達よりも間近に、爆裂魔法の余波を受け、その影響が強いであろう近海のヌシは、ぐわんぐわんと頭を揺さぶられたように目を回し、ふらついている。

 この好機を逃さない。

 

「始めるわ、とんぬら!」

 

「では、参る!」

 

 奇跡と変化、その二つの魔法を同時に行使する巨竜変化魔法の発動――そこへ加算するは『ドラゴンロード』の風の支援。

 

「纏う風、猛り狂いてとんぬらへ――『ウインドカーテン』!」

 

 渾身の魔力が篭められた竜巻の繭。そこに包まれながら仮面の竜が変生する。

 

 

「一気呵成に仕留める、『バギグラム』――ッッ!!」

 

 

 その連携で織り成す合体魔法は、嵐竜変化。

 疾風の支援を受け、より飛行の機動力を増した光り輝く装甲竜は、その扇の如き翼を展開して海上を滑空し、カズマとダクネスを飛び越えて躱すと、爆裂魔法に怯んでいる『クラーゴン』にその爪を突き刺し――

 

 

 ♢♢♢

 

 

「プ……プシャアアァァァァァッ!?」

 

 

 仲間との絆――それが、元凄腕冒険者ウィズが思う冒険者に最も必要なもの。すなわち連携である。

 その観点からすれば、魔法を合わせられるほど息の合いようを見せるあの二人は、街のエースに認められるに相応しいだけの実力はあるのだ。

 これまで講師役らしい講師役をしていなかったウィズは、逃げ切れて息も絶え絶えなカズマとダクネス、それにめぐみんやアクアに言う。

 

「皆さん、仲間との絆が冒険者に最も大切なものです。あのお二人が『アクセル』のエースと呼ばれる所以なんです」

 

「いきなり学校の先生みたいなノリになったなウィズ」

 

「多少問題のある人たちでも仲間と欠点を補い合えば、どんな困難にだって立ち向かえます」

 

 確かにとんぬらとゆんゆんの連携には感服するところはあるが、カズマは自身のパーティの面子を見て思う。

 団結に絆……果たしてそれらは自分らにあるのだろうかと。それに多少問題がとも言うが、阿呆な『アークプリースト』アクア、不器用な『クルセイダー』ダクネス、一発限りの『アークウィザード』めぐみんと抱えている欠点が尖り過ぎているんじゃないか。ついでに性格も曲者揃いである。

 まず真っ先に挙げられる困難が身内というどうしようもないこのパーティ……賞金首『クラーゴン』を瞬殺してきたエース二人に加入してもらいたくなってきた。

 

 本当にステータスは優秀な上級職なのだが……。

 太刀の如き尾からの包丁さばきでもって、アクアの注文通りにクラーケンの触手の一本を切り落としてきたとんぬらが竜化を解いてこの浜辺に着陸する。

 

まとめ役(リーダー)の兄ちゃんは、最も自由に幅が利く職業についている。パーティに合わせたスキル構成をするのが、“最強の冒険者”なんじゃないかと俺は思う。……じゃないと不安だ正直」

 

 これから『アクセル』に帰ったら役に立ちそうなスキルをギルドで屯っている冒険者に教えてもらう気でいたが、本当にそんなことが可能なのだろうか? 

 ウィズから強力なリッチーのスキルを、ゆんゆんからも中級魔法の他に移動に便利な『テレポート』、それからとんぬらにオリジナル魔法を習得してもまだこの一週間で稼いだスキルポイントは大量にあるも、このパーティを活かすようになるには百のスキルがあっても足らないんじゃないか。

 

「スキル以外にも工夫のしようがある。そうだな、例えば……」

 

 そんなリーダー・カズマの苦労を慮って、講師役のとんぬらは励まそうとしたところで、身長よりはるかに上に大型バスくらいはあるクラーケンの脚を捌こうとその上に乗りかかっていたアクアが声を上げた。

 

「――ねぇ! なんか遠くから船が近づいてきてるんですけど! しかも、あれ。何だか嫌な空気を纏ってるんですけど!」

 

「は? 船?」

 

「ほら! あそこ!」

 

 ゲソの上から指をさすアクアが示す方角へ目を細める。

 

「確かに、あれは船だ……」

 

 アクアの言う通りに船。なんだろう? 貿易船だろうか? ここはちょっと『千里眼』スキルで……覗いたら、甲板には動く腐った死体がうじゃうじゃといた。船の様相もオンボロで、不気味な暗いオーラを漂わせている。つまりあれは――!

 

「ゆ、幽霊船だああああっ!」

 

「ぬえっ!?」

「なんだとっ!?」

 

 カズマの言葉に、めぐみんとダクネスも驚き、その地平線の彼方よりこちらに接近する船影を遠目で窺う。

 

「ふむ。そういえば、海に彷徨う幽霊船長『キャプテン・クック』という悪魔族に魂を売ってアンデッドになった凄腕の海賊が、手下の獣人族のアンデッドを引き連れて、海上で船などを襲うという話を聞いたことがある。これも、『クラーゴン』と同じく賞金首モンスターなんだが……普通、陸にはあまり近づかないはず……でも、こっち来てるなアレ」

 

 とんぬらがやや顔を引き攣らせながら、この村で聞いた伝説を語る。

 どうやらアクアの『フォルスファイア』の敵寄せの効力だけではないだろう。アンデッドと言うからにはアクア自身の(一応)女神の気質に惹かれる。あの幽霊船もきっとその類いだ。

 そして、幽霊船が浅瀬までついてしまうと船乗りアンデッド共が降りてくるに違いない

 

「まったく、バーべキューの下拵えをしている場合じゃないわね。この水の女神である私の前にのこのこやってくるなんて随分と命知らずのことね」

 

 そりゃあ命がないからアンデッドだ。

 で、アクアの体質で引き寄せた厄介事なんだからアクアが片付けるのは道理。さっきのにゅるにゅるな触手系お化けイカモンスターは敬遠していたけれども、今日は未来の竜王(予定)なゼル帝にいいところを見せんといつもより気合いが入っている。

 

「この一帯をまとめて浄化してあげるわ! はあああ――!!」

 

「あ、アクア様あああ!?」

 

 輝かしい青い光の波動を全身から放ち始めたアクアが魔力を昂らせたとき、爆裂魔法を放った直後のウィズが涙目になって悲鳴を上げた。折角いいところで止めに入られたアクアは不機嫌そうにしつつも、魔力の解放を中断する。

 

「いきなり抱き着いてきて何よ!?」

 

「浄化魔法だけはやめてください! 浄化魔法だけは!」

 

 ウィズはリッチーだ。アクアが全開で神聖魔法を使えば巻き込まれて一緒に浄化してしまう。

 そんなことは、アクアも百の承知のはずなのだが……

 

「ねぇ、ウィズ。あなたなら大丈夫。清い心を持つあなたなら、きっと私の清い魔法にも耐えられるわ」

 

「あああアクア様! アンデッドに無茶言わないでください!」

 

 ど、どうしたもんかな。

 アンデッド相手なら、『アークプリースト』にして水の女神のアクアの神聖魔法の敵ではない。しかし、それは同じアンデッドのウィズにも言えること。何か事故って巻き込んでしまったら、デュラハン・ベルディアを一掃したときのように昇天させてしまいかねない。

 

「アクア! 何とかならないか?」

 

「そうはいっても……ねぇ、ウィズ、ちょっとくらい痛いの我慢できない?」

 

「アクア様あああ! 我慢どころか消えちゃいますからあああ!」

 

 ウィズの必死な嘆願。これには流石のアクアも浄化魔法を使うのは躊躇う。

 しかし、アクアの力に頼る以外であの幽霊船の上陸阻止できそうなのは……

 

「とんぬら! さっきのドラゴンに変身して、幽霊船を落とすことはできないか?」

 

「できないとは言わないが――遠距離で標的を斃すには適した手段があるだろう兄ちゃん。そこに」

 

 光輝く銀色の羽。それを道具袋から取り出したとんぬらは――カズマの隣にいためぐみんへ投げた。その羽はダーツのようにめぐみんの肩に刺さる。

 

「痛い!? とんぬらいきなり何を――っ!」

 

 羽はめぐみんへの身体へと何かを注ぎ込むように段々と輝きを失い――逆にめぐみんの紅の瞳の光が徐々に強くなっていく。

 

「めぐみんの望むような爆裂魔法分の魔力を補える『吸魔石』なんてない。でも、紅魔族の格言のひとつに『ないならば、作ればいい』というのがある。

 この前のゼル帝が竜化したときの羽……あれは相当な要領の魔力を溜め込んでも破裂しない“器”として優秀な性質があった。ならば、そこに“魔力”を充填させた『吸魔石』ごと錬成の要領で注ぎ込ませて、利用できるようにした」

 

 塵も積もれば山となるように。

 『吸魔石』は、一個だけでは爆裂魔法を発動するには不足であるが、数十個分を一纏めにすればどうか?

 

「『シルバーフェザー』とでも名付けようか。これ一本に蓄積されている魔力は、並の魔法使いの二、三人分を満タンにまで回復するだけの魔力量が入っている」

 

 『とんぬらは無駄なことはしない』とめぐみんが言っていたけれどもこれほどとは驚きである。

 あの感謝祭で騒ぎを起こしたゼル帝の後始末すらも、無駄にしない。あの一件を単に厄介事を押し付けられただけでは済まさず、糧にするという貪欲さ。

 めぐみんに魔力制御の訓練をさせた成果である『吸魔石』と、ネズミ講の被害者たちから回収したアクアの育てたゼル帝の羽を素材にして、講習後の夜中にわざわざこの旅先まで工房から持ってきた錬金釜を使って錬成作業をしていたのだ。

 それが小袋いっぱいに無数詰め込まれている銀の羽に証明されている。

 そして、その小袋をカズマへと軽く放る。

 

「めぐみん当人に持たせておくのがベストなんだが、いざというときのための備えなのに、あっという間に使い切ってしまいそうだからな。これは兄ちゃんに渡しておく」

 

「とんぬら、いいのか……?」

 

「封入されているのはもともとめぐみんが溜め込んでいた魔力だ。それに器もアクア様が育てたゼル帝の素材だし、俺がやったのはその二つを掛け合わせたことくらいだから遠慮することはない。ま、上手く使えよ兄ちゃん」

 

 

 ♢♢♢

 

 

『深淵なる闇の業火に抱かれし(いにしえ)(まじな)い。我が盟約の下に汝の力を示したまえ。

 踊り狂え! 破壊し尽す炎の旋律! ――『エクスプロージョン』ッッ!!!』

 

 腹の底に響く轟音と共に、全てを蹂躙する爆風が荒れ狂った。

 浅瀬まであと少しのところまで迫っていた幽霊船を、それは灰燼に帰す。

 この絶対的な火力、一撃必殺の威力でもって、めぐみんは己の爆裂魔法が、ウィズのに勝る『アクセル』随一であると証明してみせたのであった。

 

 こうして、めぐみんの爆裂魔法で締め括って、一週間にわたる辛く苦しい研修は終わり。

 その後は、アクアが戦闘を他所に準備していたバーベキューをわいわいやって、馳走で腹を満たしたら陽が落ちるまで海で遊び、ウィズとゆんゆんの『テレポート』でもって『アクセル』へと帰還する。

 

 そして、その翌日。

 とんぬらとゆんゆんが、王国からの要請にて、厳しい戦況にある魔王軍との防衛戦線へと出立せんと準備を整えて家を出た――そのすぐ前に、ひとりめぐみんが立っていた。

 

「礼は言いませんよ。私に爆裂魔法禁止なんていうむごい仕打ちをしてくれたんですからね。だいたい、どうして魔力を回復できるものを私にではなくカズマに預けるのですか!」

 

「朝っぱらから出待ちにして何を言うかと思えば開口一番にクレームか。そりゃあ、“禁止にされていた一週間分の爆裂魔法をやります!”なんて言うだろうと思ったからだが。めぐみんにやると二、三日で全部消費してしまいそうだからな」

 

「何を言いますかとんぬら。爆裂魔法を撃てるなら好きなだけ撃ち尽くしますよ私は。だから、一日で使い切ってみせます!」

 

「そんなことを豪語するな。自重を覚えろめぐみん。そもそも爆裂魔法の連発は、反動で術者の体に物凄い負担がかかるってのは、『すごろく場』でめぐみんもわかっただろ。魔法使い生命を終わりにしたくなかったら、一日最高でも三発までに制限しておくんだな」

 

「本当にとんぬらは、口うるさいですね。あなたは私の何なんですか?」

 

「手のかかる問題児の保護者代行だよ。ゆいゆいさん直々に頼まれている。“うちの娘のことをよろしく”と」

 

「はあ!? 何ですかそれ私初耳なんですけど!?」

 

「魔道具店の納品で里へ行く度に、ゆいゆいにはめぐみんの近況を報告している。そうだな、兄ちゃんへのアプローチが弱いとゆいゆいさんは苦言を呈しておられた」

 

「ちょ! とんぬら、私の母に余計なことを吹き込んだら許しませんよ!」

 

「族長に密告屋(チクリ)をしていた仕返しだ。それにちゃんと話題は選んでいる。流石に警察に捕まったことまで話してないから安心しろ」

 

 と軽く言葉の応酬をしていると家の奥から、ゆんゆんの声。

 

「とんぬらー! めぐみんの声がするんだけど、もしかしているのー?」

 

 海でのレジャー気分が抜け切っていないのか、カードゲームやらボードゲームやら今回の出立には余計なものを持ち込もうとしていたから荷支度のやり直しを命じていたパートナーが、ドタバタとしながらも急いで家を出てきたところで、めぐみんはくるりと踵を返して、こちらに背を向ける。

 

「……私も、私達も行きます。今すぐには無理ですが、こちらが到着するまで露払いでもしておいてください」

 

「随分とまた偉そうねめぐみん」

 

 これにはゆんゆんも少々不満げなご様子。ライバルとして下っ端みたいな扱いが気に入らないに違いない。そんな密かに自分たちの見送りにでも来てくれたのかとゆんゆんが期待していた一方で、とんぬらは、この偏屈な娘が素直でないのは重々承知している。

 大胆不敵なようでいて繊細であるし、我慢強狂のようでいて他人に気を遣うところのある性格をしているのだこの娘は。

 

「仕方がありませんゆんゆん。主役というのは遅れて来るものですから」

 

「何なんだその理屈は……」

 

 紅魔族なノリで正当化しためぐみんの遅刻宣言に、とんぬらは呆れた苦笑を漏らす。

 この分だとまだ自分のパーティに打ち明けてないみたいだが、今日のうちにでも話すだろう。

 

「まあ、そうだな、到着したときには全部終わってましたみたいな格好悪い登場にはならないように配慮はしておくさ」

 

「……二人こそ、私達が来るまでにやられてましたみたいなことにはならないでくださいよ」

 

 最後にそう言って、めぐみんはパーティのいる屋敷へと帰っていき、とんぬらとゆんゆんは、『テレポート』にて、王都へと移動した。

 

 

 参考ネタ解説。

 

 

 幸せの靴:ドラクエに登場する靴。幸運値が大幅に上がるだけでなく、“歩くだけで経験値が入る”、または“獲得経験値が二割増し”という特徴がある。

 錬金レシピでは、しわよせの靴+ラッキーペンダント=幸せの靴。

 

 不思議な踊り:ドラクエにて、どろにんぎょうがよく使ってくる特技。通常のシリーズでは“MPを下げる”効果だが、トルネコのダンジョンシリーズにおいては、“レベルを下げる”という効果になっている。作中では後者の設定を採用しています。

 

 クラーゴン:ドラクエⅪにも登場した化け物イカ。小説版では大魔王の八将軍のうちの一体。ドラクエⅪでは、大砲の爆発音に弱いという設定が追加され、村の婆さんからもらう大砲の援護(空砲)によって、数ターン混乱弱体化させることが可能。楽に倒せる。

 

 金縛り:トルネコのダンジョンシリーズに登場する技のひとつ。敵を金縛り状態にする。金縛り状態は一度接触(攻撃など)するとあっさり解ける。ただし祝福状態で行うと多少殴られても解けない強烈金縛りになる。

 素手でも道具越しでも触れた相手に、毒、麻痺、昏睡、魔法封じ、弱体化の中からランダム(幸運補正)で状態異常を引き起こし、敵を無力化にしてしまうリッチースキル『不死王の手』の代用です(『不死王の手』は覚えるのに莫大なスキルポイントを要するので習得に躊躇ったという設定で)。

 素手でも道具越しでも金縛りの呪いを掛けるという仕様に。『不死王の手』の麻痺限定版のようなもの。それでも十分無効化にできる。スキル呼称は安直に『スタン』にしました。

 

 バギグラム:ロトの紋章に登場する合体魔法のひとつ。空を飛ぶ竜に変身する嵐竜変化魔法。

 バギクロス+ドラゴラム=バギグラム。

 作中では、ドラゴラム(パルプンテ+モシャス)+ウインドカーテン。

 

 キャプテン・クック:ドラクエⅤに登場する幽霊船長の強化版モンスター。義眼に義足、そしてフックの義手をした、魔族に魂を売った海賊。

 

 シルバーフェザー:ダイの大冒険に登場するアイテム。万能人な勇者が作成した。羽の根元に魔法力を蓄積する石が使われている。

 作中では、とんぬらが吸魔石とゼル帝の羽を使って錬成した。




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