この素晴らしい願い事に奇跡を!   作:赤福餅

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91話

「それでは、スタートです!!」

 

 

 数千万エリスの優勝賞金を巡る競争が始まった。

 

「よおし! 皆全速前進! 目指すは先頭よ! ぶっちぎりのトップになるの!」

 

「突っ走るなアクア。良いか皆、無理はするなよ。このままの順位をキープしていけばいいからな」

 

 序盤。先頭集団から二番手の位置にいるカズマたち。まだ周りに人が多い混戦模様を強引に抜け切って無駄に消耗するよりも、体力温存しておいた方がいいと判断。この辺りは事前に話し合った通りなのだが、早速、気合が入り過ぎたアクアが飛び出しそうになった。その襟首をとっ掴まえて、阻止するカズマであったが……パーティの問題児は何もアクアだけではない。

 

「兄ちゃん、ダクネスさんが……」

 

「ダクネスがどうした? まさかあいつ、遅れてるのか?」

 

「いや、そうじゃなくて」

 

 言いづらそうにするとんぬら。

 あれ? いない。指摘されて金髪が周りの視界内に入っていないことに気付いた。ダクネスは、いったいどこに……

 そこで、めぐみんが声を上げた。

 

「あっ、カズマ、あそこです! 先頭!」

 

「って、あいつ! 何で先頭走ってんだよ!」

 

 

「はぁっ……はぁっ……先頭に立つことで、後ろから追ってくる全員の視線が、私に集まって。感じる。感じるぞ。身体の至る所に獲物に飛び掛かろうとする獣のような鋭い眼差しを! くっ、しかし耐えなければいけない! 私はまだ泳ぐことが未熟。陸上の競技で時間を稼がなければ! あぁっ、どこを見ているんだ! 胸かっ、それともっ、ああっ、下半身はいけない! そこは今っ、くっ、くぅぅ、やめてくれぇぇ!!

 

 海の浜辺ではこのダクネスに散々追い回されたのだが、逆の、その時のカズマと同じ立場になっているあのドM騎士は状況をとても満喫しているようである。

 

「楽しそうだな、あいつ」

 

「兄ちゃん、放っておいていいのか?」

 

 いくらダクネスに体力があるとはいえ、この団体競技でチームの輪を乱されるのは困る。

 カズマは前方へ大きな声で、

 

「作戦があるんだから、戻って来いよ変態クルセイダー!」

 

「なっ! この大勢の前で変態呼ばわりするとは! ふふ、カズマめ。日に日に鬼畜度に磨きをかけていくな」

 

 ダメだアイツ。早く何とかしないと。

 とはいえ、わざわざ隣にまで行って、無理やり引っ張ってくるのはこちらが疲れるし……

 

 ドドドドド……!

 

「うおっ!? な、何だこの地響きは? 地震か?」

 

「カズマさん、あそこ!」

 

 ゆんゆんが示した先を見ると、何やら地面が盛り上がっていて……そう、地中に眠っていたそいつが飛び出した。

 

「なっ!?」

 

「ひいっ!?」

「あ、あれは……」

 

 アクアとめぐみんが顔を引くつかせる。

 出現したのは、カエル。駆け出し冒険者御用達でもある、『アクセル』名物のジャイアントトード。牛を超える巨大な体躯で、山羊を丸呑みにするデカい口をした巨大なカエル――――よりも、デカいカエルモンスターが現れた。

 

「ちょ、なんかいつもよりも遥かにデカくないかあのカエル!?」

 

 普通に一軒家くらいありそう、というか一風景の丘と思っていたものが動いてる。山羊どころか馬四頭引き連れた馬車もぺろりと一口で頂いてしまいそうなジャイアントトードを超えるジャイアントトード。この駆け出し冒険者の街に暮らしてからあんなのは初めて見たぞ。

 

「あれは、『まちガエル』か!?」

 

「何、とんぬら知ってるのか?」

 

「昔ベテラン冒険者だった三丁目の肉屋のおじさんが話してくれたレアモンスターだろう。簡単に言うと、ジャイアントなジャイアントトードだ」

 

「そのまんまだな」

 

「それで、街と間違えるくらいデカいカエルだから、『まちガエル』と名付けられた」

 

 この異世界のネーミングは安直過ぎないか?

 

「なんにしても、どうしてこんなどデカい怪獣カエルがいきなりでてきたんだ……」

 

「あたしたちの足音に驚いて出てきたんじゃないかな? これだけ大勢で走ってると、振動もすごいだろうし」

 

 クリスの推理は、的を射ているだろう。

 今年の運動会は例年以上に参加者が多く、それが一斉に街から飛び出したのだから、地盤も揺れるだろう。それで地中深くで眠っていた『まちガエル』が起きたと。

 

「なるほどな。でも、よりにもよって、俺達の向かってる先に出てくるなんて……」

 

 コースにある丘が突如ド級の障害になった。

 しかもこれはカエル。

 

「いやー! カエルはいやああああ!」

「カカカカ、カズマ、引き返しましょう!」

 

 さっきの気合もどこへやらアクアとめぐみんが震えあがっている。

 

「おい待て。落ち着けお前ら」

 

「落ち着くなんて無理よ!!」

「ネバネバ、ほどよく生温かいネバネバ……」

 

 先日は魔王軍幹部の邪神相手にやり合ったこの二人は、ジャイアントトードの主な被害者だ。

 このギガサイズのインパクトに、ネバネバトラウマ組が完全にパニックになってしまって動けない。

 

 一方で、それとは逆の行動を取る者もいる。

 

「ああ、ダクネスがジャイアントトードに!」

 

「食われたのか!」

 

「ううん、向かって行ってる……」

 

「なんだと!?」

 

 こんな時でも相変わらずな変態女騎士に、流石の親友(クリス)も呆れ果てている模様。

 

 

「ええい! 折角いいところなのに邪魔をしおって! うおおおおおお!」

 

 現在、運動会中。貴重品以外は邪魔になるので持ってはおらず、重りとなる剣や鎧も装備していないダクネスが、徒手空拳でギガサイズのジャイアントトードに挑みにかかる。

 

「おお! ダクネスさんが素手で、あんなにも巨大なモンスターに立ち向かっていってるぞ!」

「鎧も剣もないのに物怖じもせず、なんて勇敢なんだ」

「見ろ、あの紅潮した顔を。あんなにも必死に皆の盾になろうとして、格好良すぎる! 憧れちまうぜ!」

 

 しかし、サイズが大きくなっても、カエルはカエル。

 その分厚い脂肪が如何なる打撃をも吸収してしまう。知力と運以外のステータスが高いアクア渾身の一撃でも1ダメージも与えられないカエルモンスターに、今の無装備状態のダクネスが倒せるかと言えば、答えは満場一致で無理(ノー)だ。

 

「無闇に突っ込むな! そいつに物理攻撃は効き難いんだよ!!」

 

 と忠告飛ばすカズマであったが、時すでに遅し。

 

「あ、ああ~~~!」

 

 ダクネス、あっさりとカエルに丸呑みされた。

 いつもは鎧……カエルモンスターが敬遠する金属品を身に着けているが今日はそうでもない。……で、ちょっと嬉しめに甲高い悲鳴から察するに、念願かなったといったところだろう。

 いわんこっちゃない……、と嘆くカズマであったが状況は思わぬ方向に転がり始める。

 

「くそ! あのカエル、レースを守ろうとしたダクネスさんをよくも!」

「俺達もダクネスさんを見習いましょう! このレース、中止になんてさせません!」

「待っててくださいダクネスさん! すぐに助けますから!」

 

 冒険者たちがレースそっちのけでジャイアントトードに向かっていく。これはある意味、結果オーライか?

 

「どうする兄ちゃん、俺達も参戦するかい?」

 

「いや、待て」

 

 仲間のピンチ救出に制止を掛けられとんぬらに訝しまれたが、カズマはふと思うのだ。

 この棚ぼたの状況を美味しくいただかない理由はないよな、と。

 ダクネスの固さを知る者として、モンスターにそう簡単には消化されない、むしろ粘液塗れの状況を楽しんでいることだろうというのは予想がつく。そして、カエルモンスターは飲み込んだものが消化し切るまではじっとしているという習性があるのをカズマは知っている。

 ――しかし、そんなことはあちらもすぐにわかったのか。

 

「なあ、この隙に俺達は先に――」

 

「あぁぁぁぁぁ~~~!!」

 

 ペッと『まちガエル』の口から何か飛ぶ。

 カズマは仲間の説得のためにいったん背を向けたタイミングであるため気づかなかったが、その向かいにいるとんぬらたちには見えていた。

 真っ直ぐ、こちらに飛来する物体を。

 

「兄ちゃん、上」

 

 警告にカズマが振り向けば――ダクネスが。

 

「なっ、飛ばされたダクネスがこっちに!」

 

 このままでは地面に直撃。そして、その落下地点に一番近いというかちょうどその位置にいるのはカズマ。

 

「よ、良し、俺が受け止めてっ!!」

 

 状況的にそう判断したカズマであったが、思った以上に勢いがあって、そして、テラテラと粘液にテカっていた。

 

「あぁぁぁぁぁ~~~!!」

「う、うう……ごめん、無理っ!」

 

 『モンク』の『自動回避』スキルが発動。

 受け止める間際で神回避を見せたカズマ。そして、てっきりカズマが助けると思ったために周りも対応が間に合うわけもなく――頭から墜落したダクネスはヘッドスライディングのように地面を擦った。

 これにいの一番に親友のクリスが慌てて駆け付ける。遅れてカズマも。

 

「ダ、ダクネス!」

 

「おい、大丈夫か!」

 

「ふ、フフ、受け止めると安心させておいてのこの仕打ち――お前は本当に男の風上にも置けないな!」

 

 ひどい目に遭っても、いやひどい目に遭ったからこそ平常運転な『クルセイダー』に心配やら罪悪感やらを抱いたのがあほらしくなるのは間違いだろうか。

 

「うん、ダクネスが喜んでくれて良かったよ」

 

「というわけで、もう一度行ってくりゅ! うっひょぉぉぉぉ!!」

 

 喜び勇んで、再び突撃するダクネス。

 やっぱり最初に止めておくべきであった!

 

「このバカーーー!」

 

「仕方がない。兄ちゃん、ダクネスさんがまた捕まる前に魔法で仕留めよう。ゆんゆん、アクア様とめぐみんをよろしく頼む。俺一人で大丈夫だ」

 

 軽く手を振り、奇術師が何もない所からポンとステッキを出すように一本の杖を取り出すとんぬら。

 いつもの鉄扇ではない、普通に魔法使いらしいその得物は、先端に魔石と翼を広げた竜の像という見覚えのあるデザインの杖で、確か『雷の杖』ではなかったか。

 魔法スキル習得していなくても、魔力を篭めれば『ライトニング』が放てるという魔法武器。

 

「いいや、ちょっと違うな、兄ちゃん。これは、『雷の杖』を錬金強化した『雷霆の杖』だ」

 

 手にした杖をぶんぶんと風切らせながらバトリングしてから、標的『まちガエル』へと照準合わせるよう竜像の杖先を突き付ける。

 

「後輩君、レベル1になったんじゃなかったっけ?」

 

「確かにそうですが、ゆんゆんのおかげでもうレベルは十以上に上がってるんですよ、クリス先輩。ステータスは下がっていますが、それも工夫次第で補える。カエル程度ではそれで十分――『リフレクト』! 『マジック・ゲイン』!」

 

 二種同時に神聖魔法を展開。

 ひとつの反射防壁は筒状にして、杖の前に。

 そして、その射線上に、魔法陣が数珠繋ぎで複数並ぶ。

 

 

「我が名はとんぬら! 紅魔族唯一の『天地雷鳴士』なる者! ――『ライトニングブレア』!」

 

 

 名乗り上げてから炸裂する雷撃魔法。

 爆発的な魔力暴走を発生させながら収束率を高められたその一撃は、レーザービームの如く『まちガエル』を撃ち抜いた。

 

 

 レベルが1になった時はどうしたものかと心配してたんだが……。

 

 巨大モンスターの分厚い肉を突き抜けた貫通力、あの巨体を焼き焦がした火力、そして、数百m先の敵を仕留めた射程距離。

 攻撃範囲こそピンポイントで狭いが、爆裂魔法のような高威力の遠距離攻撃だ。これはますます死角がなくなってきた。

 

「あの巨大モンスターを一撃で……!」

「何か呪いを受けて弱体化しちまったって聞いてたんだが……」

「全然強いじゃねぇかよ、俺達の街のエース様はよ!」

 

 この最近流れていた噂を払拭するためのパフォーマンスとして、『まちガエル』をひとりで相手したのか。そして、この健在ぶりをアピールしたい相手は――

 

「どうだ? 問題児に心配されるほどではないと証明してみせたが」

 

 杖を軽く振って、振り返ったとんぬらは、先と同じ不敵な笑みをめぐみんに向ける。

 

「……本当にあなたという人は、つくづく……――ええ、負けてはいられませんとも!」

 

 さっきまでカエルに震えていためぐみん、今も震えているもその理由は違っている。

 

 とんぬらがレベル1になったと聞いて、めぐみんは責任を感じていた。口には出さないが、気にしているのはあの夜、慰めた時にわかっている。……お姉さん(ウォルバク)を自らの手で倒したことも相俟って、ここ数日の間、日課の爆裂魔法を自粛していたくらい落ち込んでいた。

 しかしだ。そんなのは無用と、とんぬらはその力をもって証明してみせた。

 

「いいでしょう! ならば、とんぬらの猪口才な魔法よりも圧倒的に上であると知らしめ、『アクセル』のエースの看板を奪ってやりましょう!」

 

「ダメよめぐみん! 魔法の使用は問題ないけど、爆裂魔法なんて放ったら、他のジャイアントトードも起きてくるから!」

 

 ライバルに火を点けられ、調子を取り戻しためぐみんが早速爆裂魔法をぶっ放そうとしたが、そこはゆんゆんに止められた。

 

 

 ♢♢♢

 

 

 カエル騒動から難を逃れた先頭集団から離されてしまったが、湖へと到着。

 その遅れを取り戻さんとペースを速めて急いで、中には息を切らしている者もいる。

 

「はぁはぁ、ここまでで結構体力を使ってしまいましたしね」

 

「わ、私、少し、きついです」

 

「そ、そうか、俺もだ……」

 

 めぐみんとゆんゆん年若い魔法使い職の少女二人に、それからカズマ自身も。アクア、ダクネス、とんぬら、クリスはまだいけそうだ。

 

「よし、じゃあ全員水着に着替えて準備だ」

 

 着替えの合間に小休止できるだろう。

 バテ気味なめぐみんとゆんゆんをダクネスとクリスがフォローしながら、アクアを先頭に女性陣は湖近くに設置されていたテントへ。

 一方で男性陣。女性冒険者は着替えるのにテントがあるのだが、見る限り男用のテントはないようだ。

 

「俺達はその辺の草むらで着替えろってか。男女差別だろ」

 

「別に構わんだろ兄ちゃん。見られて困るようなものがあるわけでもないし……しかし、ちょっとおかしいな」

 

「おかしいって何が?」

 

「俺達は先頭集団とは出遅れてしまったが、まだ湖で泳いでいる連中はいない。脱ぐだけでほとんどの着替えの済むはずの男性冒険者たちが、なぜこんなに手間取っているんだ?」

 

「何故って、チームの仲間を待ってるだけだろ」

 

「いいや、違うな。兄ちゃん……着替えが終わった野郎どもをよく観察してみろ。あのおどおどとした視線、全員チラチラとテントを気にしていないか?」

 

「女の水着が見たくて待ってるのかよ!」

 

 ここにいる冒険者連中は皆飢えているのか。

 哀しくなってきたが、でもここで男達が、女性冒険者の着替えを想像して、自分たちの着替え作業の手を止めてしまうのなら好都合だ。

 こちらは下に最初から水着を着込んできているので、とっとと早着替えをしましてしまえるし。

 とっとと――

 

 

「まったく、ゆんゆんは本当にけしからん体ですね」

 

 

 ………。

 

 

「ちょ、ちょっとおっぱいを鷲掴みしないでよ!」

 

 

 !!

 

 

「一体何を食べたらこんな体に育つのやら……」

「ほんとだよ。羨ましいなー」

「お、おいクリス? 同性とはいえ、そんなにまじまじと見られると、さすがに恥ずかしいというか」

 

 

 ………。

 

 

(ねぇ、なんなの? もしかしてまだみんな裸なの? この布一枚隔てた向こうの世界は、夢の国ですか! 桃源郷ですか!)

「――兄ちゃん」

 

 ビクッと跳び上がるカズマ。

 意識をそっちに持っていかれたところで声を掛けられたので驚いた。で、声をかけたとんぬらは、淡々と続けて、

 

「手、止まってるが、着替え、手伝ってやろうか?」

 

 ゾクッ……! す、すごい殺気だぞとんぬら。

 

「い、いや大丈夫だ。ひとりで着替えられるからなとんぬら」

 

「そうか」

 

 そこでふと思い出したような間を入れて、

 

「……そういや、兄ちゃん。めぐみんが前に教えてくれたんだが、『アルカンレティア』に行った時、女子風呂、覗こうとしたんだったな?」

 

 おいめぐみん。お前あとで説教だ。確かに口止めとかしなかったけど、何、とんぬらにとんでもないことを話してくれちゃってんの!?

 

「まあ、それは偶然、意図せずしてそうなったシチュエーションなんだろうきっと」

 

「うん、そうそう、そうだぞ。本当、今の感じで話声が聞こえてきちゃったって感じで……」

 

「だが何が理由だろうと魔が差すものなら――」

 

 ゴキリ、と指の骨を鳴らす。

 

「兄ちゃんが相手でも、一発、だ」

 

 その一発は、一発ぶん殴るということか、それともさっきギガサイズのジャイアントトードをぶち抜いたレーザービームを一発か。

 いずれにしてもヤバい。本気で実行する目である。紅魔族特有の危険信号で、瞳が真っ赤な光が灯っている。

 

(絶対にゆんゆんにセクハラしないよう胆に命じておこう)

 

 一時の感情のままに蛮行に及んで、このドラゴンの逆鱗に触れるような真似はカズマでも慎む。皆もそう思う。

 着替えの手を止めていた連中も、とんぬらの放つオーラに、野生動物が本能的に危険を察知したように、慌てて着替えを終えらせて、湖に飛び込んでいった。カズマも煩悩をスパッと捨てさり、スパッと早着替えしたところで、

 

「どうしたのカズマ? なんか顔が変よ」

 

 ちゃっちゃっと水着に着替え終わり、一番乗りで済ませたアクアが合流。

 

「アクア、随分と早く着替えを済ませたんだな」

 

「水着もサイズがちょうど良かったし、着替えなんてそう時間かからないわよ。それよりカズマの方は今着替え終わったの? あ、まさかテントを覗こうとしたんじゃ」

 

「おいバカこの場の空気を読めアクア! するわけないだろそんな命知らずな真似!」

 

 どうしてお前はこう竜の髭を撫でるような真似をするんだ。その収まりそうだった話題を再燃させてどうする!

 と、あまりの狼狽ぶりなカズマに、とんぬらが明るい調子で、

 

「悪い悪い、脅かしてすまんな兄ちゃん。人慣れしてないせいかゆんゆんはどうにも隙が多いから、つい過保護に目を光らせてしまうんだ。さっきのは半分冗談だから、笑い飛ばしてくれ」

 

「……それ、半分は本気ってことか?」

 

「はっはっはっはー!」

 

 うん、笑おう。笑ってしまおう。

 話題についていけずきょとんとするアクアの前で、残りの女性陣が合流するまで男二人(片方は乾いた笑み)は笑い合った。

 

 

 ♢♢♢

 

 

「ようやく私の見せ場がやって来たわね!」

 

 水の女神だけあって、水中では自由自在に動けるアクア。

 本気を出せばこの湖をひとかきで行けるそうだし、水で支えるから水中でも直立姿勢で平行移動できてしまうというふざけた行動が可能だ。アクアにしてみれば水は手足の延長線上のようなもので身体の一部に等しい。

 この“水を操る”行為が運動会の反則に触れるかどうかだが、魔法など禁止するというルールは特にないためアリだろう。

 

「ねぇカズマ、トップ集団にだいぶ追いついてきてるんじゃない?」

 

「うん、このままの調子ならトップでゴールできそうだな。全員で」

 で、これは団体競技。チーム平均タイムを縮めるためにも、泳げる奴らにはぶっちぎりでトップを獲ってもらった方がいいと思うが、水の女神様が“なんかそれ寂しいしみんなと一緒が良い”などと言うので、知恵者な助っ人はひとつの作戦を提案した。

 

「ねえねえ、カズマ。もし優勝したら、私の貢献度は相当なものだと思わない?」

 先頭をアクアが行き、最後尾にとんぬらがつく、ダブルエースが前後挟む四列構成で、間の二列目はそこそこ泳げるカズマ、クリス、ゆんゆん、三列目は泳ぎが苦手なめぐみん、ダクネスが並ぶ。サッカー風に言えば、1-3-2-1のフォーメーションである。

 

「確かにそうだな。この猛追はお前の働きがあってこそだし」

 

 その作戦は、アクアの水流操作でチーム全員を後押しするというものだ。

 そう、気分は流れるプールだ。ただ浮いてるだけでも進んでいくのでだいぶ楽ができるので、泳げば相当な速度が出る。

 アクアが先頭でその水を操る能力で流れを作り、とんぬらがその補佐――最後尾で水系統の魔法を駆使してアクアの大雑把な水流操作が他所に影響が出ないように散らしたり等、水の流れを整えている。

 競争相手の妨害は禁止されているが、魔法やスキルの利用は禁止されてはいない。

 

 こんな水泳しながら魔力を湯水のように常時放出するようなやり方は、体力魔力(HPMP)量が余りあるヤツにしかできない。該当するのは、『アクセル』においてはアクアととんぬらの二人くらいのものだろう。つまり、こんな芸当ができるチームは他にいない、カズマたちのとっておきの秘策なのである。

 

 それで、アクアがわざわざ自己主張せずとも、水の女神の活躍はカズマも認めるところであるが、しかし、だ……

 

「だったらさ、均等に賞金を分けるのは不平等だと思うのよね」

 

「何が言いたい……」

 

「ええとね? 私が、6割? ううん、7割貰っても罰は当たらないと思うんだけど。カズマはどう思う?」

 

「お前は本当に強欲だなって思う」

 

「うわあああん、カズマー! 私はシュワシュワを片手に好き勝手に飲み食いしたいの! でも、酒場のツケが貯まり過ぎたせいで、注文しても料理を出してくれないの! カズマが払うって言っても信じてくれないし」

 

「お前、いつもそんな調子なのか! カジノでも同じように俺を連帯保証人扱いにしやがったんだな! 大体な、運動会で優勝狙うのはお前が借金作ったからだろうが! 頑張るのは当然だし、借金問題解決するまでお前にやるシュワシュワなんぞ一杯分もないわ!」

 

「わかってるけど、毎日に潤いがないと私死んじゃうー! 今日まで我慢してきたんだから、ちょっとくらいの贅沢は許してよー!」

 

「ああ、もう、鬱陶しい! くっつくな!」

 

 まったくちょっと活躍を認めたらすぐに付け上がりやがって。

 とにかく今は捕らぬ狸の皮算用などとならないよう優勝することだけを考え――

 

「きゃあ!?」

 

「おい、どうした?」

 

 突然悲鳴を上げるアクア。訊ねれば、こちらをきっと睨まれた。

 

「ど、どど、どうしたじゃないわよ! こんな時に何考えてるのよアンタは! 今、私の水着を脱がそうとしたでしょ!」

 

「は? そんなことするわけないだろ?」

 

「とぼけないでよ! ぬっちょりと湿った手で私の太股を触ってきたじゃない! セクハラで訴えるわよ!」

 

「いや、俺じゃないって」

 

 アクアが何を言っているのか、わけがわからん。

 

「ひゃあ!?」

 

 そこでゆんゆんが悲鳴を上げる。

 

「ゆんゆん?」

 

「な……なんか今にゅるって……!? 私の水着を剥ごうと……!」

 

「きっとそれはカズマね。カズマ、あんた、ゆんゆんにセクハラスティールをやったんでしょ!」

 

「やってねぇよ! 俺、一言も『スティール』なんて言ってないし! 第一、ゆんゆんにセクハラなんてそんな恐ろしい事するわけがないだろ!」

 

 必至に自己弁明するけれど、ゆんゆんを庇うようその前に出たクリスはカズマに厳しい眼差しを向けてから、呆れた感じに、

 

「まったくキミってやつは……ちょっと、状況を考えてよ」

 

「だから違うって! 俺の手がそんなに伸びるわけないだろ!」

 

 同じ二列目に並んで泳いでいるけれど、そんな手の届くような余裕のないフォーメーションではない。

 

「そんな女の子にセクハラする元気があるなら泳いで発散しなよ」

 

「いやいやいや本当に俺は何もやってない! ゆんゆんとはクリスを挟んで距離があるし。『スティール』だったらまずクリスが被害に遭うはずだ」

 

「ちょっと、その手は何! まさか、今度はあたしの水着を!」

 

「盗らないって! 信じてくれ!」

「きゃ、きゃあ!?」

 

 話の途中でまた悲鳴。今度はクリスから。

 

「え?」

 

「う、う、ううううううっ!! キミってやつは本当に……!」

 

 水に身体を沈めて恨みがましく睨みつけるクリス。

 え、冤罪だ! 濡れ衣だ! 俺は何もやってないぞ!?

 

「ふぅっ……っ……はぁっ……こんなところで、何を騒いでいるんです?」

 

「クリスとゆんゆんの様子が変だが……何があった?」

 

 三列目のめぐみん、ダクネスが追い付いてきた。

 

「カズマが私達にセクハラして、水着を『スティール』しようとしたの!」

 

「だから、やってないって!」

 

 アクアの発言に、視線も険しいものになる二人。でも、まだ被害に遭っていないからか、それともこれまでの付き合いあってか、めぐみんもダクネスも冷静に。

 

「それは本当なんですか、アクア。いくら普段の言動がアレで前科持ちのカズマでも、こんな状況で分かり易い悪さをする度胸があるとは思えませんよ」

 

「そうだな。いつも肝心なところでヘタレるカズマが、直接女性に手を出せるはずもあるまい」

 

 くそぉ、フォローしてくれてるんだけど、好き放題言いやがって……

 しかし、こんなところで立ち往生していれば、当然追いつく。そう、今のカズマがこの状況で会いたくない……

 

「おい、兄ちゃん――」

 

 最後尾のとんぬらがクロールでこちらに迫る。

 頼もしい味方の到来のはずだが、この完全にセクハラ疑惑が拭い切れていない状況で来られるのは大ピンチだ。

 全力で泳いでこの場を離れるかの判断が脳裏に過ったが、とんぬらの第一声は、カズマが思う予想とは外れていた。

 

 

「――水中に何かいる! 『敵感知』スキルを使って探ってくれ!」

 

 

 何だと?

 とんぬらの指示に、カズマが『敵感知』スキルを働かせてみれば、ソナーのように感覚がその存在を捉えた。

 

「本当だ。水の中に何かいる……って、すごくうじゃうじゃいるんだけど!?」

 

 同じようの『敵感知』の御家元の『盗賊』クリスも同じように察知したみたいだが、すごく数が多い。

 足元が埋め尽くされている!

 

「今、何か見えましたよ!」

 

 めぐみんが声を上げる。

 

「む! あの影は!」

 

 ダクネスも気づいた。

 

「ひいいいい!」

 

 そして、正体を見たアクアが悲鳴を上げた。

 

「カエルよ! カエルだわアレ!!」

 

 何やら尻尾のついた影形だが、間違いなくカエルだ。またカエルだ。両生類だが何だか知らないが陸上水中と両方にご出演だ。それも今度は質より量と言わんばかりに大量発生して……

 

 

 これは後で知ることになるが、感謝祭でアクシズ教が出した屋台、金魚すくいのパチモン『オタマジャクシすくい』で売れなかったジャイアントトードの子供をこの湖に放流していた。それからしばらくの時を経て、今、ちょうど運動会の真っ最中に、尻尾がついたままのおたまじゃくしから変態途中のジャイアントトード見習いが、この湖を泳ぐ冒険者たちにバシャバシャと騒がしい水面に引き付けられて――出てきた。つまり、釣ってしまったのである。ウィズの魔道具店にある『カエル殺し』はぴょこぴょこ動いてカエルモンスターを引き付けるそうだが、今の冒険者たちはそのルアーになっているのと同じ。

 スタート前に水着を貸してくれた事には感謝したのに、すぐにこれとは……祀る女神がアクアだからか、評価をマイナスにしないと気が済まないのかあの連中は。

 

 

 そして、今。

 アクシズ教が原因だとは発覚していないため、何故こんなにも湖にカエルが発生するのかわからず戸惑う冒険者たちは対応が遅れ、また水泳している最中にカエルの嫌いな金属装備を身に着けているものなどいないため、次々と無防備なところに伸ばした舌を絡み付かせている。

 

 阿鼻叫喚。カズマたちのすぐ前にいたトップ集団も餌食になっているようで、叩いて殴って徒手空拳で追い払おうとするのだが、打撃無効なカエルにそれが通じるはずもない。しかも、まだおたまじゃくしの変態途中だからか尻尾付きのカエルモンスターには鰓呼吸があるようで、潜水しながら襲い掛かってくるから手に負えない。まだサイズが成長し切っていないためによく見る通常個体の半分くらいのサイズなので、人間を丸呑みにすることはできないが、それも一人に複数体が入れ食いでおしくらまんじゅう状態になっているので被害は大して差がない。救いがあるとすれば、強靭な顎や鋭い牙を持つ殺傷性抜群のワニモンスターでないことくらいである。

 

 カズマは女性陣にセクハラした本当の犯人がわかり、身の潔白を証明できたわけだが……

 

「かじゅま、かじゅまぁぁ! 助けてぇぇぇぇ!」

 

「あー、もう、落ち着け! 毎度毎度カエルモンスターに、水の女神が怯えて、どうするんだ!」

 

 水中では無敵宣言をしたはずの女神様が、泣きながらカズマにしがみついてきた。恥も外聞もへったくれもない。

 

「ッて、アクア、こらっ! こんなとこでくっつくなっ!!」

「助けてカズマさん! カエルは無理! 本当に無理だから!」

「うごぼっ、おい、離れろ駄女神! 溺れるっ、うがあ、俺を殺す気か!」

「別に死んだっていいじゃない。カズマはもう何回も死んでるんだから」

「ごぼぶ! か、回数のもんじゃいじゃねー!」

「また死んじゃっても生き返らせてあげるから助けてよ。かじゅまさああああん!」

「お前、俺の命を何だと思ってるんだ」

「怖い、怖い、怖い!」

 

 ピンチなのはこっちだ。顔面をお腹で抱え込むように密着するのだから前が見えないし、息も苦しい。

 

「カズマああああ!」

 

 ドスン、と背中にぶつかって来ためぐみん。

 あの魔物の軍勢を一騎駆けで突っ切って、邪神の右腕をも一掃してみせた『アークウィザード』ならば、こんなカエルモンスターの大群など簡単に蹴散らし……

 

「助けてください! カエルはダメです! 食べられてヌルヌルベトベトにされたくありません!」

「お前もアクアみたいなことを言いやがってめぐみん!」

 

 めぐみんもカエルはダメだった。

 前後挟まれては動けないこの状況。それもそんな密集した状態になったら、カエル共の格好の餌食のではないか。

 

 そんなパニックの中で、誰よりも真っ先に事態収拾に動いたのは、『アクセル』随一のトラブルバスター。

 

 

「『フォルスファイア』――!」

 

 

 敵寄せの神聖魔法を発動させたとんぬらは、カズマたちが騒ぎ立てている間に一人遠く、湖の中央まで泳いでいた。そして、この今も青い炎を手に掲げながら、コースを外れて遠く遠くへカエルを誘いながら泳いでいる。

 そちらへ、冒険者たちに食らいついていた湖のカエルモンスターが一斉に向いて、一匹残らず引き寄せられる。

 

「ずるい、そう独り占めして! そうだ、お前を独りにはしないぞとんぬら!」

 

 ついでに何かダクネスもそれを追って行ったが泳ぎが遅いので無視するとして、こちらは助かったが、とんぬらひとりでカエルの大群を相手取るのは無理がないか?

 いくら海モンスター相手に無双したといったからって、さすがにこれは……

 

「皆さん! 今のうちに急いで近くの岸まで避難してください! とんぬらが魔法を使います!」

 

 そこで、パートナーのゆんゆんが大きな声で呼びかけた。

 指示が出されたのか彼女にはこれからどうなるのか事態が予想できているようで、その顔色はめぐみんが爆裂魔法をぶっ放そうとしているときと近似している。

 おい、まさか爆裂魔法クラスのものを引き起こそうとしているのか――!?

 

「アクア、めぐみん、今のうちに早くいくぞ! ほら、アクアも、ひとかきで湖を泳ぎ切れんなら早くそうしろよ!」

 

 トップ集団、それを追い抜くほど快速で進むアクアとそれに引っ張られるカズマたち。それが岸に手が届くのとほぼ同時に、カエルモンスターが水上のとんぬらを包囲した。

 

「勝負に水を差してくれた魔物どもよ。冥途の土産に水上限定の奇跡魔法を拝ませてやろう」

 

 とんぬらがひとり皆から離れたのは、カエルを引き離すためではなく、魔法に巻き込まないため。奇跡魔法は爆裂魔法のように敵味方問わずに巻き込むというピーキーな効果を発現することもあるのだ。

 

 

「『パルプンテ』――ッ!!!」

 

 

 絶対の自信と覇気をもって唱えたとんぬら。

 杖要らず、どんな状況下でも発動できるほどに極めた奇跡魔法は――

 

 

 パルプンテ……

  パルプンテ……

   パルプンテ……

 

 

 辺りに響き渡る山彦の詠唱。“おいこれ外れ(スカ)をだしたのか”と思ったカズマであったが、すぐに異変に気付いた。

 

「……っ、……? この感覚、アクアがやらかした時のような……!」

 

 緩やかに足場が揺れ始め、心なしか風が強くなり始める。

 地鳴りは湖の、ちょうどとんぬらのいる中央地点の下底を震源として徐々に強くなり――大噴火のように水柱を上げて、大津波を迸らす。

 

「ああああああああっ!!!!」

 

 天まで届くかという水の壁に呑まれ、異常発生したカエルの大群という地獄絵図(プラス金髪女性)は湖から一掃された。

 

 ………

 ………

 ………

 

「……これ、大会どうなっちまうんだ」

 

 

 ♢♢♢

 

 

 変態途中のジャイアントトードの群れは、とんぬらの魔法によって湖から取り除かれた。

 唯一逃げ遅れた?ダクネスが激流に巻き込まれたが、津波を上手く推進力として利用するよう波乗りしてきたとんぬらに拾われたので、全員が無事に生還。問題ないようなので、そのまま競技は再開した。

 

 でも、優勝はできなかった。

 

 モンスターが出ようと、それを障害のひとつだとし、レースを続ける規則。だが、とんぬら(それにダクネス)は、モンスターを誘き寄せてから湖より退けるために大きく冒険者ギルドが指定していたコースを外れてしまったため、規定(ルール)上失格となったのである。

 どさくさに紛れて、一番にゴールしたはずのカズマたちであったが、繰り上げで二番手のチームが優勝という事に。

 

「すまんな兄ちゃん。助っ人として参加したのに失格になっちまって」

 

「いや、別にとんぬらが謝るようなことじゃないだろ。それを言うならこっちの連中は全員ダメだったし」

 

 陸も湖もカエル尽くしとなった運動会ではアクアもめぐみんも役に立たなかったし、ダクネスも己が欲求のままに暴走した結果失格になってるし……結局、ダメだったんじゃないかこれ。

 そう思えばあきらめがついた。それに、無駄骨というわけではない。

 

「こうして得るものは得られたんだからな。半分になっちまったけど1000万エリスが報酬に手に入ったんだ」

 

 ルール上は失格となってしまったのだが、『まちガエル』などのカエル退治に活躍したことがギルドに評価されてか、特別功労賞として1000万エリスの報酬をもらった。

 優勝賞金が半分となってしまったそうだが、繰り上げ優勝したチームも、湖ではカエルに助けられたこともあって、後腐れなく納得したそうだ(この温情のある裁定に、がめつい水の女神は“おおいに納得いかないんですけど”と運営側に抗議しているが)。

 

「不届きな魔物に誅を下したのですからとんぬらは健闘したと思いますよ。もっとも我が爆裂魔法でもモンスターを一発で仕留めてみせましたでしょうが」

 

 めぐみんが爆裂魔法なんて放ったら周りのモンスターが凶暴化して運動会どころじゃなくなるだろ。

 

「私もとんぬらには多大な感謝をしているぞ。波に呑まれ視界が暗転した後の、水中で上下さえもわからなくなるあの恐怖は――正直たまらなかった」

 

 ダクネスは己の欲望に忠実過ぎるだろ。お前も(しかも無駄に)失格したんだし少しは気に病めよ。

 というか、こっちが偉そうに文句を言える立場じゃない。賞金がもらえたのもとんぬらの活躍があってのことだし、ぶっちゃけて自分たちは何もしていないのだ。カズマとしてみれば同じチームというだけで分け前がもらえるのは申し訳なくなるくらい。

 でも、とんぬら、それにゆんゆんやクリスにも(まともで)有能な連中にはまた是非ともお金稼ぎには付き合ってほしいところで……

 

「うん。なんか優勝を逃したのは悪い気がするからな。今後も協力しよう。それでいいか、ゆんゆんも」

 

「うん、私は良いわよ。お、お友達のためだもん!」

 

「あたしも今は暇だからね。また何かあったら付き合うよ」

 

 

 うん、借金返済出来たら何かお詫びをしよう。カズマはそう心に決めた。

 

(そうだな。今度はとんぬらにあまり負担のかからないように配慮しよう……)

 

 

 ♢♢♢

 

 

「ご主人様、おかえりなさいませだにゃん♪」

 

 次回の金策で、とんぬら、メイドにチャレンジ。

 

 

 参考ネタ解説。

 

 

 まちガエル:ドラクエクエストモンスターズ・イルルカ(リメイク版)で登場するギガサイズなモンスター。街に擬態するモンスターで、主人公が接近すると地面から姿を現す。“街”と“カエル”を“間違える”が名前の由来。

 走攻守賢にHPMP、全ステータスが戦闘開始時に0.5~1.5倍に変動するというギャンブル特性持ち。

 

 雷霆の杖:ドラクエⅨに登場する『雷の杖』の強化版。『雷の珠』5個と『賢者の聖水』1個に『雷の杖』で錬金してできる。

 『ライトニングブレア』は、『どらごんたらし』に登場する雷撃魔法。

 

 パルプンテ解説。

 山彦効果は陸上ではスカであるも、水上で発現すると津波を起こして、敵全体を消滅させる(経験値ゴールドはなし)。




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