ラブライダーゴースト サンシャイン   作:島下 遊姫

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結城玲は婚約者である黒澤ダイヤとの登校途中に眼魔に襲われ、その命を終えてしまった。
しかし、英雄の眼魂を15個集めて生き返る為に仙人によって仮面ライダーゴーストととして、再び蘇った。
高海千歌と出会い、スクールアイドルと千歌と一緒にいることの楽しさを知った玲は新たな力、ムサシ眼魂を手に入れ、千歌の夢を守ることを決意したのだった。

残された時間は後88日


ピラメキはいつも突然!カイガン!エジソン魂!

「チッ!またかよ!」

 

手元のスタンドライトが消え、ハードロックの音楽を垂れ流していたラジカセからも音が消え、玲は勉強する手を一旦止める。

 

「なんか、最近停電が多いな。」

 

頻繁の起こることなどで、もはや怒りを通り越して呆れてしまう。

一週間ほど前から内浦全体で不定期に停電が起こるようになった。別に天気が荒れているという訳ではなく、送電線が切れたということもない。

 

「これも眼魔の仕業か?」

 

「いや、それだけではないな。」

 

「仙人。」

 

突然、霧のように現れた仙人によって、仮説が事実へと変わる。

 

「今の言葉、どういうことなんだ。」

 

「今回の事件は眼魔にしては規模が大きすぎる。ここまで世界に干渉しているとなるとおそらく、人間を操っている可能性が高い。」

 

「外道だな……。」

 

ただでさえ、人間よりも十分強い眼魔が、人間を操るという卑怯な手段を使うなど、反吐が出そうだと玲は嫌悪感を覚える。

すると、玲はスッと立ち上がり、何やら出かける準備をし始めた。

 

「止めに行くのか?」

 

「あぁ、このまま停電続きは迷惑だしな。それに俺だけだろ?眼魔を倒せるのは。」

 

「だが、眼魂が手に入らないかもしれんぞ。」

 

「その時はその時だ。」

 

利益など玲は考えてはいない。ただ、自分のやるべきこと、力を持つ者としてやるべきことをするという責任感で動いている。

そして、玲はそのまま靴を履き、外に出ようとした時、ふとあることが気になり、足を止める。

 

「そう言えば、俺はあんたに聞きたいことがある。個人的なものだから無理に答えなくていい。」

 

「何だ?」

 

ゆっくりと振り返り、玲は真剣な表情で言い放った。

 

「あんたは眼魂のことを知っていた。それなのに、何であんたは眼魂を集めない。願いが叶えられるっていうのに。」

 

普通の人間なら願いを叶えられる方法を見つければ、直様その方法を試すだろう。しかし、仙人に関しては知っていながらも、願いを叶えようとはせず、寧ろ玲に願いを叶えられると助言した。

そのことが玲には理解出来なかった。人間ならもっと貪欲で強欲でなければいけない。その素ぶりが全く見えない仙人に対し、ちょっとした違和感を感じていたのだ。

 

「……私は仙人だ。既に悟りを開いた存在だ。煩悩も欲も持ち合わせていない。」

 

「……なるほどね。仙人ってのは辛いな。」

 

いまいち納得出来ない答えだったが、無理に答えなくても言ったのは自分だ。玲は一言礼を言うと、眼魔を探しに行った。

 

「願いか……。たかが眼魂を15個集めて叶えられる願いなら……とっくに叶えている。」

 

誰もいない暗い部屋で仙人はそう呟くと、霧のように消えていった。

 

♢♢♢

内浦の外れのとある工場に、騒がしい機械の作動音と老人の狂った笑い声が木霊する。

 

「くっはははは!これで!これで俺の研究が完成する!!」

 

その細い目をかっ開き、三田は目の前の3mほどの大きな長方形の機械を前にして激しすぎる喜びを露わにする。

 

「これで散々バカにしてきた奴らに仕返しが出来る!」

 

「お、おじさん……。」

 

すると、今まで物陰から不安そうな表情の善子がゆっくりと現れ、三田に近づく。

 

「善子ちゃん……どうしたんだぁい?」

 

舌を出し、焦点の合わない瞳の三田に善子は酷く怯え、後退りしてしまう。

善子と三田は幼い頃から面識がある。以前の三田は変人ではあったが、優しくいつもくだらない発明品を作って失敗し、よく爆発の影響で頭をチリチリにひていた。善子はそんな三田の作る発明品がそして、愉快な三田自身も好きで、毎週欠かさず遊びに行っていた。

しかし、そんな三田が変わったのはつい最近。一週間ほど前から突然、人が変わったように無口になり、善子が遊びに来ても道端に落ちてる小石のように気にも留めない。

その時はただ単に機嫌が悪いのか集中したいのかと思って、何もせずに帰った。

そして、また一週間後の今日、訪ねてみても、三田の異変は解決しておらず、流石の善子は不安になってしまう。

 

「叔父さん……どうしたの?……すごく……人が変わったみたい……。」

 

「そーかなー?」

 

ゆらゆらと体を揺らしながら三田は返事をする。今の三田は変人ではなく、ただの狂人にしか善子は見えなかった。

 

「そ、そういえば、その大きな機械は何なの?」

 

そして、善子は三田の後ろで嫌でも主張する機械に話題を移す。その機械は至る所にパラメーターがついており、一眼で精密な機械であることがうかがえる。

さらに気になって善子は不用意にその機械を近づくと、三田が工場内に響き渡る程の怒鳴り声をあげる。

 

「近づくんじゃない!!」

 

その怒鳴り声に善子は思わず、身を震わせてしまう。優しい三田が怒鳴ることなどなかった全くなかったため、酷く驚き、今にも泣きそうになる。

 

「これは、俺の最大の発明品なんだ!気安く近づくんじゃない!!」

 

激しく怒る三田は近くにあったペンチを善子に投げつける。善子は何とか咄嗟に腕でカードするが、鈍い痛みに腕を抑える。

 

「どうしたの……どうしたのよ!急に変わって!」

 

「うるさい!黙れ!俺の発明を理解出来ない人間は邪魔なんだよ!消えろ!」

 

「もう……嫌!」

 

暴力を振るわれ、激しい拒絶を受け、善子は涙を零しながら、工場から飛び出し、雨の中を気が落ち着くまで走り続けた。

♢♢♢

厚い雲が空を覆い、停電も相まって町中がどんよりとした暗さ沼津駅前は停電という理由なのか、人々は全くおらず、ただ異様な静寂に包まれていた。その静寂の中に、善子は顔を落としながら当てもなく彷徨っていた。

あの優しい三田が凶変したこと。そして、

恐怖や失望。何より、自分は何を信じれば良いのだろう。行き場のない哀しみに打ち拉がれていると、前からいる筈のない人間が現れる。

 

「てめぇは津島だっけ?こんな時に散歩なんて変わってんな。」

 

ふと、顔を上げるとそこには先日、Aqoursのマネージャーとして加入した玲が、強面で善子を見下ろしていた。

 

「あんたは……結城……先輩。先輩こそ、こんな所で何をやってるんですか……。」

 

善子の曇りがかった心がさらに暗くなる。善子はあまり、玲が得意ではない。強面の見た目もしかり、そのきつい口調は善子にとってただ恐怖でしかない。それこそ、善子にとって玲は幽霊と同等な存在だ。

 

「まぁ、私的な用事だ。津島は関係ねぇ。」

 

頭をかき乱し、玲はぶっきらぼうに答える。そして、玲はそのまま善子を置いて、眼魔を探しに行こうと善子の横を通り過ぎると、善子の白い右腕に、小さな切り傷を発見し、立ち止まる。

 

「おい、怪我してんじゃねぇか。」

 

玲は直ぐさま、ポケットから絆創膏を取り出し、傷口に貼り付ける。玲の迅速な行動に善子は意外だと驚きを隠せない。

 

「あ、ありがとう……ございます。」

 

恐る恐るお礼を言うと、善子は数秒、何かに取り憑かれたように玲を見つめる。そして、急に玲から顔を背け、その場から逃げるように駆け出す。

善子の不審な行動に当然、玲は放っておくことは出来ず、聞き出そうと咄嗟に善子の手を取る。

 

「……何があった?」

 

「別に……何もないです。」

 

しかし、善子は頑なに何も答えようとしない。玲のさりげない優しさのせいで、三田との思い出を思い出してしまい、涙がこみ上げそうになっているのだ。他人に簡単に不甲斐ない姿を見せたくない。そして、心配をかけてはいけないという思いのせいで善子に玲から離れたのだ。

 

「あぁ、もう面倒くせぇ!」

 

だんまりの善子に玲は苛立ちを募らせる。気持ちなど、行動や言葉で示さなければ理解できるわけがない。理解出来なければ、何も解決することも、はたまた解決の糸口すら見つからない。何も出来ないもどかしさは短期の玲にとって毒でしかない。

しかし、玲は一つだけ善子の気持ちを理解していた。

 

「泣きてぇなら泣け!見ないようにこうするからよ!」

 

玲は逞しい右腕で善子の頭を、自らの胸に抱き寄せる。

 

「えっ!?」

 

突然のことに善子の頭は真っ白になる。急に男に抱き寄せられた。それも、自分の先輩と婚約している男。もし、この状況を誰かに見られていたら、ダイヤに知られたら、おそらく修羅場と化すのだろう。

玲もそのことは十分承知の筈。もしや、玲はこのスリルを、女子に手を出すことを楽しんでいるのでは思ってもいた。

しかし、善子のそんな妄想など最初から外れていたのは既にわかっている。

玲はただ、純粋に善子を救いたいと思ってる。そうでなければ、こんな行動を起こすこともないだろう。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁん!」

 

厚い雲から大粒の雨が滝のように降り出し、2人の体を濡らす。その中でも善子は玲の服を強く掴み、玲の暖かさを感じながら、縋るのであった。

 

♢♢♢

雨が工場の屋根に止めどなくあたり、耳障りな音が鳴る中、三田の絶叫が雨音をかき消す。

 

「おお!遂に!遂に!完成するぅぅ!」

 

天を仰ぐほど体を大きく仰け反らせ、三田は激しい喜びを体で表現する。

今回の発明品は三田が今まで作った発明品の中で、最も完成度が高く、満足の結果となり、喜びを抑えれないのだ。

 

「流石だな。さぁ、早速その機械を作動させろ!」

 

三田の背後では今回の事件の黒幕である電気眼魔が高々に笑っていた。

 

「目に見えない物を信じるなんて馬鹿らしいなぁ。」

 

すると、入り口の重い扉を開け、ある男が入ってくる。

 

「科学者なら、信じるのは目に見える実験の結果じゃなくてか?」

 

「お前は誰だ!」

 

雨で重くなった髪をかきあげながら、玲は三田の目の前まで行き、メンチを切る。

 

「初対面の相手にお前なんて人聞きが悪いなぁ。まぁ、俺が言えることじゃあないんだが。」

冗談を交えながら喋る。だが、玲の目は笑わってはいない。

 

「それでお前は目的は何だ!遊びに来たわけでないのだろう!」

 

「ご名答。因みに目的は2つある。1つ目はこの事件を解決すること。2つ目はあんたを救うことだ。」

 

「俺を……救うだと!?」

 

「あぁ、あいつの要望でね。」

 

玲が入り口を一瞥すると、そこには小刻みに震え、酷く怯えた善子が玲を三田を見つめていた。

 

「善子!お前って奴は!」

 

自分の発明を邪魔しかねない行動を起こした、善子に三田は激しい怒りを覚え、殴り飛ばそうと、ズカズカと善子の元に向かうとするが、玲に肩を掴まれ、静止させられる。

 

「おい、じじぃ!それ以上、善子に危害加えたらぶっ飛ばすぞ。」

 

ドスの効いた声。このまま睨むだけで殺せるのではないかと言うほど目力。そして、このまま肩を潰されてしまうではかと思うほどの異常な力。

その全てが三田に向けられ、嫌でも恐怖を痛感し、足が震え、動けなくなる。

 

「チッ!」

 

だが、そんな三田から突然、玲が離れ、三田はどうしたのかと呆気に取られるがその直後、玲がいた場所に雷が落ち、ただ呆然とする。

 

「どういうこと!?」

 

「こういうことだ!」

 

突然のことに善子は驚きを隠せない。すると、玲はこの事件の真実を善子と三田に見せるため指を鳴らす。すると、何処からかクモランタンが現れ、工場内を照らす。

クモランタンから発せられる光は人間が通常では見えない存在、つまりは眼魔とゴーストを可視化させることが出来る。

 

「な、何よあれ!」

 

そして、眼魔を目の当たりにし、善子は驚きを隠せない。

 

「眼魔だ。あいつがあのじじぃを操っていたんだ。」

 

「あぁ、バレてしまったか。仕方がない。行け!」

 

別に人間に見られていることなど全く気にせず電気眼魔はゆっくりと手を挙げる。すると、周りから黒いのっぺらぼうのような、眼魔コマンドがゾンビのように現れた。

見えていようが所詮は人間。弱い人間が眼魔に敵うわけがないと電気眼魔は思っており、はたまたそれはこの世界の理だとも思っていた。そして、そんな人間如きに、わざわざ自分が手を下す必要はないだろうと思い、眼魔コマンドを呼び出したのだ。

 

「へぇ、敵が沢山じゃねぇか。まぁ、雑魚は束になっても雑魚のままだがな。」

 

しかし、電気眼魔はある1つのミスを犯していた。それは玲がただの人間ではないことを知らなかったことだ。

迫り来る眼魔コマンドを前に玲は怯むことなく、寧ろ口角を上げる。すると、ゴーストドライバーを現せ、ガンガンセイバーを取り出すと、玲も眼魔コマンドの大群に突っ込んでいく。

 

「うぉら!」

 

眼魔コマンドの一体が玲の強烈な一撃を受けると 黒い粒子となって消える。その後も玲は眼魔コマンドは軽くあしらっていき、ものの数秒で眼魔コマンドは跡形もなく消えてしまった。

 

「何!?」

 

人間が眼魔に敵う筈がないという思い込みが根底から崩れ去り、電気眼魔は驚きを隠せない。

 

「この程度の敵なら変身しなくても十分だな。」

 

「き、貴様!」

 

狼狽える電気眼魔を見て、玲はしてやったと言わんばかりに、腹黒い笑みを浮かべる。

 

「さぁて、次はてめぇの出番だぜ。」

 

ガンガンセイバーに床に刺し、玲は電気眼魔を指名するように指を指す。そして、懐からムサシ眼魂を取り出し、ドライバーにセットする。

 

《アーイ!》

 

グリントアイからパーカーゴーストが現れ、玲の周りを踊るように浮遊する。

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

「変身!」

 

《カイガン!ムサシ!》

 

《決闘!ズバッと!超剣豪!》

 

デトネイトトリガーを押し、トランジェントとなり、その上にパーカーゴーストが覆い被さり、仮面ライダーゴーストムサシ魂へと変身する。

 

「さぁて、地獄に叩き落としてやるか!」

 

ガンガンセイバーを手に取り、二刀流モードに変形させ、ゴーストは電気眼魔へと跳びかかる。

 

「バカめ!」

 

しかし、電気眼魔はニヤリと笑い、手から電撃を撃つ。電撃は不規則な動きをしていたごゴーストにとって、避けることはそこまで難しいことではなかった。しかし、ゴーストは今、あるハンデを握っていた。

 

「なっ!?」

 

二刀が避雷針になってしまい、電撃は吸い寄せられるように刀に移動し、そして刀から伝わった電撃がゴーストを襲う。

 

「ぐぁぁぁぁ!」

 

全身が焼けるように痛みに張り裂けそうな叫びを上げ、膝をつく。

 

「どうだ?痛かろう?これが私の力だ!」

 

「チッ!確かに……死ぬ程いてぇ……。」

 

歯を食いしばりながら、よろよろとゴーストは立ち上がる。そして、このままでは敗北は目に見えている為、一旦、ムサシ魂を取り出す。

 

「悪いな。ムサシ。今回はゆっくり休んでくれ。」

 

英雄の力を上手く使えなかったことを悔やみながら、ムサシ魂からオレ魂にゴーストチェンジする。

 

《レッツゴー!カクゴー!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!」

 

そして、ゴーストは再び電気眼魔へと跳びかかる。

 

「ハァ!」

 

「クッ!」

 

電気眼魔も再び電撃で応戦するも、全て避けられ、眼魔に強烈な一撃を貰い、吹っ飛ばされる。

 

「おいおい、さっきまでの威勢はどうした?」

 

今にも笑いそうな声でゴーストは指をクイッと動かし、煽るように挑発する。

 

「に、人間風情がぁ!」

 

その挑発が電気眼魔の逆鱗に触れ、体からバチバチと電気が発せられる。

そして、今度は電撃眼魔が殴りかかってくるも力はさほどなく、ゴーストは片手で受け止め、腹部に蹴りをいれる。

 

「俺の本気!その機械の恐ろしさを思い知らせてやる!」

 

すると、電気眼魔は巨大な機械に近づくとソッと手を触れる。

 

「なぁ、この機械の正体がわかるか?」

 

「何?」

 

「電磁パルスって知ってるか?」

 

「なっ!本気で言ってるのか!?」

 

ゴーストは仮面の奥で、目を見開き、言葉を失う。

 

「電磁パルス?」

 

聞きなれない単語に善子は首を傾げる。

 

「簡単に言えば電磁波だ。ただ、一瞬でケーブルやアンテナ、ありとあらゆる電子機器をぶっ壊せる程。そして、何より核爆弾より大きな威力を持っているのが、一番やばい。だが、今はまだ、実用化には至っていない……はずだ。」

 

「それが、出来たんだよ!この天才の俺の力があれば!」

 

「何!?」

 

よく映画で見た、最悪の結末がゴーストの脳内に映し出され、冷や汗をかく。電磁パルスというものについてはよくSF映画で見ていた為、ゴーストはそれなりに詳しかった。そして、フィクションだからこそ、増長こそされてはいるが、その恐ろしさも十分理解していた。

 

「あの男に俺の力を与えて、ほんのちょっと脳を活性化させたら、すんなりと作りやがったんだ。全く恐ろしい奴だよ。」

 

電気眼魔は勝ち誇ったように高笑いをする。

 

「でもなぁ、それだけじゃあダメだったんだよ。電気は大量に使うし、持ち運びは難しい。それにこんなものはバレてしまえば、止めようと必ずそれなりの兵力が来るはず。幾ら俺とはそうなれば流石にきつい。そこで、俺は保険としてもう1つ機能をつけた。」

 

淡々と説明していると、電磁パルスから電気眼魔に大量の電気が送られていく。

 

「この機械の電気を俺が貰って戦闘能力はあげる。いわば、バッテリーみたいなものにもしたみたんだが。」

 

ゆっくりと電気眼魔は電磁パルスから手を離す。体から余剰の電気が漏れ出し、青白い筋が体から発せられているのが目に見える。

すると、突然、電気眼魔がゆらりと動いたその瞬間、ゴーストの腹部に激しい衝撃が襲い掛かる。

 

「グハッ!」

 

ゆっくりと腹部を見ると、そこには黄色い蕾ような手。そして、目の前に先ほどまで50mほど離れた所にいた電気眼魔がいた。

 

「因みに3倍強くなるぜ。詳しくはわからんが大体100mを4秒で走れるくらいで、ダイヤモンドだって砕けるくらいには強くなる。そして、電撃の強さも……上がるぜ。」

 

説明しなくとも目にも止まらぬ速さと、その強烈な一撃を受ければ嫌でもわかる。しかし、本当の強さを痛感するのはここからだった。

 

「10万ボルト!」

 

「グアァァァァ!」

 

腹部から強烈な電撃がゴーストの体を駆け巡り、体が内部から千切れそうな痛み、そして焼けるような痛みに襲われる。

 

「クハハハハ!どうだ、これが俺の力だ!」

 

「チッ!なら、せめてあの機械をぶっ壊せば!」

 

高笑いをする電気眼魔の前でゴーストは感覚が麻痺し、生まれたての子鹿のように立ち上がる。そして、どうにかして発生装置を破壊しようと模索する。

 

「止められると思ったか?残念。あれは下手に止めると強制的に電磁パルスが発生する。」

 

「何!?」

 

「あれを止められるのは俺とあいつだけだ!残念!残念!至極、残念!貴様はここで無様に死ぬのだ!」

 

もしかすればハッタリの可能性もある。しかし、本当だった時の場合のあまりにも大きすぎるため、ゴーストは手も足と出来ずにいた。

だが、このままでは電気眼魔の言いなりのままだ。

 

「い……いいや……たった1つ可能性ある……。」

 

「何?」

 

すると、何か閃いたゴーストは一瞬、迷うが直ぐに覚悟を決め、物陰に隠れている善子に糾合する。

 

「津島!てめぇがじじぃを説得して、電磁パルスを止めろぉ!」

 

「えっ!?」

 

善子はゴーストの言っていることを飲み込むことが出来なかった。自分が三田を説得する?昔の三田なら可能だが今の狂った三田など不可能だと思っている。ましてや、か弱い自分だ。

 

「あんな小娘が!?笑わせてくれる!何も出来やしない!トチ狂ったか!」

 

これには電気眼魔も嘲笑し、2人を馬鹿にする。それはそうだと善子はあっさりと認めてしまい、肩身を狭くする。

 

「いいや!津島ならやれる!津島なら……じじぃを元に戻せる!」

 

だが、善子の思いに反して、ゴーストは善子なら出来ると信じていた。理由はない。強いて言うならば願望だ。

 

「わ、私には無理よ!」

 

「無理でもやれ!じゃなきゃ、沢山の人が死ぬぞ!」

 

ゴーストの言う通り、これはやらなければならないのだ。子供のように駄々を捏ねれば、避けられる状況ではない。今、善子には大勢の命が賭けられている。

 

「でも……。」

 

「俺は……津島を信じる!」

 

ゴーストの鋭い言葉が朧気な善子の心に突き刺さる。ゴーストも自身が言っていることは善子には背負いきれない程の重みを背負わせているのはわかっていた。

それでもゴーストは善子なら大勢の命と三田を救えると信じている。

そして、そんなゴーストの思いを汲み、善子は覚悟を決め、三田の元へゆっくりと向かう。

 

「ねぇ……あの機械を……止めて!」

 

「……善子ぉ。俺に楯突くのかぁ!残念だなぁ、昔から可愛がってたのによぉ。恩を仇で返すなんて……。」

 

三田の並ならぬ殺気と狂気に飲まれそうになるが、それでも善子ははっきりと意思を持ち、歯を食い絞る。そして、拳を握り締め、覚悟を決めた表情で、心の奥底で押し留めていた本当の思いを叫び出す。

 

「あなたはおじさんじゃない!私の知っているおじさんはこんな危険な物を作る筈がない!」

 

足を震わせながらも善子は三田に言い切る。

 

「善子ぉ!お前もこの俺を否定するのか!」

 

「私の知ってるおじさんは誰かを笑顔にするために発明をしていたの!例え、それが他人に認められなくても、そのことに誇りを持っていた!」

 

「黙れ!黙れ黙れ黙れ!そんなもの……あんな物は全部、無意味だった!」

 

あの善子に何よりも恐れている自身の否定を突きつけられたと思い込み、三田は狂乱する。

 

「無意味なんかじゃない!少なくとも私はおじさんの作る物が大好きなの!」

 

「なっ!」

 

しかし、善子は三田自身を否定している訳ではない。今の狂った三田だけを否定しているのだ。

 

「お願い!元のおじさんに戻って!私にまた面白い物を見せてよ!」

 

「ぐっ……あぁぁ!」

 

善子の真っ直ぐな言葉に三田は苦悶の表情で頭を抑えながら、その場で跪く。

 

「何!?あの小娘!小癪な真似を!」

 

「行かせるかよ!」

 

三田の洗脳が解ける兆しが見え、焦り始めた電気眼魔は善子を殺そうと、電撃を放とうとするがゴーストは羽交い締めにして、阻止する。

 

「鬱陶しいぞ!貴様!1000万ボルト!」

 

「グアァァァァ!」

 

代わりに電気眼魔はゴーストに電撃を浴びせる。先程よりも威力があり、立っているのもやっとの程。

 

「ふふ!これほどの電撃をくらえば……。」

 

だが、それでもゴーストは戦い続ける。生まれたての子鹿のようにゆっくりと立ち上がり、電気眼魔の肩を掴む。

 

「何!?」

 

「てめぇがどれほど電撃を放とうが!」

 

「ぬぉっ!?」

 

仮面越しに悪魔のように睨みつけ、ゴーストは拳を電気眼魔の顔面に浴びせる。

 

「てめぇが誰かを洗脳しようが!そんなもんは!」

 

「ブゴッ!」

 

そして、腹に渾身の拳を叩き込み、電気眼魔は宙へと飛ばす。

 

「腹にくくった一本槍の前には紙切れ同然だ!」

 

そして、地面に叩きつけられた電気眼魔にはっきりと言い放つ。

その時のゴーストの覇気は凄まじく、並みの人間、否、眼魔すらも怯ませる程。それは電気眼魔も例外ではなかった。

 

「ねぇ……おじさん……?」

 

しかし、問題はここで起こった。善子の震えた声が聞こえ、ゴーストは直ぐ様視線を移す。

 

「待って!おじさん!待ってよ!」

 

善子の目線の先には三田がゾンビのように覚束ない足取りで、機械の元へと歩いていた。

 

「グハハハ!残念だったな!何が信念だ!そんなものゴミでしかない!」

 

善子の言葉も思いも結局届かなかったと電気眼魔は確信していた。信念なんてものは所詮、精神論であり、天才の自分前では何も意味もないものだ。

そして、その信念に溺れ、挙句にこれから無様な最後を迎えるゴーストと善子のことを思うと笑いが抑えられない。

そして、いよいよ三田が機械の元に辿り着き、機械を操作をし始める。流石に無理だと諦めたのか、一歩も動かないゴーストを見て、さらに笑いがこみ上げる。

 

「果たしてそうかな?」

 

しかし、ゴーストの冷ややかな一言が電気眼魔の熱くなった脳を一瞬で冷やす。

始めは負け惜しみだと思っていた。しかし、それは間違いであったと直ぐに気づかされる。何と、機械の出力が徐々に低下していき、終いには完全に動きが止まってしまう。

 

「何をしている!」

 

機械の前で立ち尽くす三田に電気眼魔は叫合する。しかし、三田は電気眼魔の言葉に反応することなく、ゆっくりと振り返り、善子を見る。

 

「すまなかったな善子。俺が如何にかしてたよ。」

 

「お、おじさん!」

 

三田の表情は先程とは大違いで、優しくおおらかなものであった。ずっと一緒にいた善子は直ぐに気づいた。この人は三田だ。紛れもなく、三田だと。

あまりの嬉しさに三田の胸へ跳びかかり、嗚咽混じりの涙を流す。そして、三田は優しく善子を抱き寄せ、柔らかく頭を撫でる。

 

「ははは!悪いな!信念の前では天才の理論も何も通じないようだな!なぁ、自称天才よ!」

 

高々に笑いながら、ゴーストは電気眼魔を煽る。一方で、全ての計画を壊され、挙句に笑われた電気眼魔の怒りは遂に限界を超える。

 

「貴様!もう怒ったぞ!本気で殺してやる!」

 

怒りに身を任せ、電気眼魔は電撃を発生させる。すると、善子と三田の髪の毛が徐々に逆立っていく。

 

「な、何よこれ!」

 

「まさか!」

 

「流石にやべぇ……てか。」

 

善子は何がどうなっているのかわかっていない一方で、ゴーストと三田はただこの状況に焦燥を抱くのみ。

 

「善子!早く逃げよう!あいつは今、雷を起こそうとしている!」

 

「か、雷!?」

 

「そうだ!だから……ん?」

 

正確には雷と同等の威力の電撃だが、そんなことはこの際どうでもよく、三田は善子を促し、逃げようとするが、ふと白衣のポケットが光っていることに気づき、足を止める。

 

「それは……?」

 

ポケットからその光る物を取り出す。それはまさしく眼魂であったが、そもそも眼魂の存在を知らない、2人にとっては不可思議な物でしかなく、目をまん丸にして眺めていた。

 

「あっ!おい、あんた!それ寄越せ!」

 

そして、三田が眼魂を持っていることに気づいたゴーストは直ぐ様は手を差し出し、眼魂を差し出すように促す。

 

「わかった!」

 

そして、三田は下手くそなフォームで眼魂をゴーストに向け、投げる。

 

「よっと。これは……エジソン魂?」

 

大きく逸れた眼魂を何とかキャッチして、その黄色の眼魂、エジソン魂を見る。

 

「一か八か、使わせて貰うぜ!」

 

エジソンの力。一体どのような力なのか?そんなこともわからないまま、ゴーストはその力を信じ、ゴーストドライバーにセットし、デトネイトトリガーを操作する。

すると、グリントアイからパーカーゴーストが現れ、ゴーストに纏おうとする。

 

《カイガン!エジソン!》

 

「死ねぇぇぇぇ!」

 

だが、パーカーゴーストがゴーストに覆い被さるその時、電気眼魔は1億ボルトの電撃、つまり雷に匹敵する程のものをゴーストに落とし、ゴーストは雷撃の中に消える。

 

「先輩!」

 

《エレキ!ヒラメキ!発明王!》

 

「何!?」

 

しかし、ゴーストは雷撃の中から、新たな力を引っさげて登場する。

ペルソナパンティオンは電球のような意匠となった、黄色のパーカーを纏ったゴースト、仮面ライダーゴーストエジソン魂が仁王のように佇んでいた。

 

「Ready?」

 

流暢な英語を放つと同時にガンガンセイバーガンモードのトリガーを引き、弾丸も放つ。

 

「グオッ!」

 

電気眼魔は弾丸を受け、火花を散らしてよろける。

 

「角度を30。衝撃力をこう想定して……そして、重量を計算して……。」

 

「何を!ブツブツと!」

 

呪文のような何かを唱えるゴーストに電気眼魔は電撃を放つが、一向に避けられ、代わりにゴーストから弾丸を貰うばかりである。

 

「そして……導き出される結論は!」

 

すると、ゴーストは何か確信した後、再びトリガーを引き、電気眼魔を狙い撃つ。だが、先程から銃弾を受け続けている電気眼魔も流石に手慣れた様子で銃弾は避ける。

 

「ハハ!どこ狙ってる!」

 

調子に乗った電気眼魔は挑発するも、ゴーストは反応を示さない。そして、電気眼魔は銃弾を避けながらゴーストに一気に近づいていく。

 

「さぁ!これで終わりだ!」

 

そして、ゴーストの目の前にまで迫った電気眼魔は1億ボルトの電撃を直接流そうと腕を出す。

 

「Checkmait。」

 

だが、電気眼魔の拳は未来永劫、ゴーストに届くことはなかった。ゴーストが詰みの一言を呟くと、電気眼魔の頭上から大量の鉄骨が落下してきた。

エジソン魂のフード、スパーキングフードは変身者の脳を電気で刺激して、脳を活性化させる能力がある。ゴーストはその能力を使い、罠を張った。そして、その位置に鉄骨の落ちるタイミングを計算し、その場所と時間に電気眼魔を誘き寄せ、この状況を作り出したのだ。

 

「何だと!?」

 

予想外のことに電気眼魔は逃げることは出来ず、工場を崩れさせてもおかしくはない衝撃と音共に、鉄骨に押し潰される。

 

「く……クソ!小癪な真似を!」

 

鉄骨の中から電気眼魔が顔を出すが、腕と下半身は鉄骨で潰れ、使い物にならないにも大口を叩く。

そして、ゴーストを探そうと顔を上げると、顔面に冷たい銃口が当てられる。

 

《オメガシュート!》

 

「狙いを定めて……撃つ!」

 

「ま、待て!」

 

電気眼魔の制止など耳を傾けず、ゴーストはオメガシュートを撃つ。高威力の電撃の銃弾は電気眼魔の頭を吹き飛ばし、そして、電気眼魔は爆発する。

 

「す、すごい……。」

 

常識離れしたその景色。そして、爆炎のより逆光となり、暗い影にしか見えないゴーストを善子は目に焼き付ける。

一方のゴーストは変身を解き、玲に戻って善子の元に駆け寄る。

 

「津島、よくやった。」

 

「べ、別に!……この堕天使にとっては人間を堕とすくらい、簡単だったわ。」

 

「津島らしいこと言いやがって。」

 

本当はとてつもない程のプレッシャーを感じてたにも関わらず、自分らしく振舞って強がる善子に愛おしく思ってしまう。

その一方で、三田が突然、膝を突き、2人に向け、土下座をする。

 

「すまなかった!俺は取り返しのつかないことをしてしまった!」

 

「顔上げてよ!」

 

もう終わったことなのだ。気に病むことはないと善子はそう思っており、そのまま許そうと思っていた。

 

「そうだ。あんたは取り返しのつかないことをした。本来ならこのまま警察に突き出す事件だ。」

 

「先輩!」

 

しかし、玲はそんな甘い思いなど持ち合わせていない。操られていたとは言え、たくさんの人々に迷惑を掛け、そして、下手をすればたくさんの命が失われていたかもしれない。

そんな事件をもう終わったことという一言で終わらせたくなかった。せめて、何かしらの報いは受けるべきだと考えていた。

 

「だけど、こんな代物が一歩でも世に出れば、それこそ本当に取り返しのつかないことを招く。それに、警察なんて言えばいい?自分は怪物に操られて、作ったって言ってもどうせ笑われるだけだぜ。」

 

だが、報いを受けるにしても今回の不可思議な事件を警察が取り扱える訳がなく、逆に三田の作り出した電磁パルスが悪用される危険性があるため、そうそう公に出すことは出来なかった。だからこそ、玲は迷いながらもある結論を出した。

 

「だから、俺はあんたを警察に突き出したりはしない。代わりに俺があんたを裁く。」

 

「先輩!裁くって!」

 

善子の表情が不安に満ちる。もしや、玲は三田に手をかけるのでは?いや、助けた相手をわざわざ殺すようなことはする筈がない。善子が不安と葛藤しているなか、玲は土下座をし続ける三田に裁きを言い渡す。

 

「あんたは……人々に迷惑をかけた分、そして、津島を悲しませた分だけみんなを、津島を喜ばせるんだ!必ずな!」

 

「君……。」

 

「俺からはそれだけだ。」

 

玲はただそれだけを言い残すと、踵を返して、2人の元から離れていく。

 

「ゆ、結城先輩!ありがとうございました!」

 

後ろから善子のお礼が聞こえたが、玲は振り返らない。別にお礼を言われるようなことではない。ただ、三田には三田らしい償い方をして欲しかっただけだ。

それが誰かを幸せにする。それだけであった。

 

玲が工場を出ると、思わず眩しさに襲われ、手をかざす。先程の厚い雲は嘘のように消え去り、澄み渡る青空が広がっていた。

 

 




次回 ラブライダーゴースト
玲達の前に内浦を乗っ取ろうと、暴力団の橘会が現れる。そして、橘会は眼魔と手を組んでいることに玲は気付く。
だが、橘会は邪魔させまいと、小原グループの1人娘の鞠莉を人質に取ってしまう。
果たして、玲は鞠莉を救うことは出来るのか!

次回 「あばよ涙!よろしく勇気!カイガン!ロビンフッド魂!」

守りし者として、全てを受け止めろ……玲

いかがでしたか?
小ネタなんですがエジソン魂からの戦闘シーンはAqoursのfirstライブのギルキスのstrawberrytrapperを元に書きました
登場は雷の中から
変身した後に発する言葉はReady
トラップを仕掛ける
最後の言葉が狙い定める
などとなっています。

それではまた次回お会いしましょう!
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