ラブライダーゴースト サンシャイン   作:島下 遊姫

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結城玲は婚約者である黒澤ダイヤとの登校途中に眼魔に襲われ、その命を終えてしまった。
しかし、英雄の眼魂を15個集めて生き返る為に仙人によって仮面ライダーゴーストととして、再び蘇った。
善子と三田の信じる思いを繋ぎ、そして凶悪な電気眼魔の策略をゴーストは打ち倒したのであった。

残された時間は後 87日


あばよ涙 よろしく勇気 カイガン!ロビンフッド魂!

春の暖かかな日差しの中、玲は鼻歌を歌いながら海岸沿いをツーリングしていた。

 

「絶好のツーリング日和だな。」

 

だが、玲の乗っているバイクは少々特殊だ。青いボディと鎖の意匠。カウルには二本の角があり、少なくとも市販されている車種ものではなく、強いて言うなら改造車にしか見えない。

このバイクはマシンフーディー。とある眼魔との戦闘の時にフーディーニ眼魂と共に手に入れた物だ。

性能はこの世の物とは思えない程の性能だ。H00D-IEというエンジンのおかげで補給なしで約一カ月も動かせると知れば、その性能の高さを嫌でも思い知らされる。

 

「あれは?」

 

マシンフーディーの素晴らしい走りを体感していると右前方に見慣れた金髪が目に入り、不意にバイクを停める。

 

「Oh!Hallo!玲!」

 

鞠莉も玲にその豊かな胸を揺らしながら、玲の元に駆け寄ってくる。

 

「小原か。こんなところで何してるんだ?」

 

「ある人を待っているんだけど……。」

 

すると、玲の背後からエンジン音が聞こえ、後ろを振り向く。そこにはスズキのジムニーがおり、運転席には濃い顔でパンチパーマ、茶色の革ジャンを上手く着こなした男が窓から顔を出し、鞠莉を呼び出した。

 

「迎えに来たぜ、お嬢ちゃん。おや、なかなか良い男だね。ボーイフレンドかい?」

 

「まぁ、そうな感じね。」

 

「違うからな。それであんたは?」

 

あまりのもフラットすぎる鞠莉に玲はため息が出る。

 

「俺は大乗寺 健。お嬢ちゃんのボディガードだ。」

 

「ボディガード?」

 

ボディガードなんて、そんな映画みたいなことがあるのかと玲は驚きを隠せなかった。しかし、鞠莉の家は世界に展開するホテルチェーンかなり

そう考えると、あながち驚きをおかしくはない。

 

「最近、この内浦に怪しい人達がいるんだって。それでお父さんが念を入れて。」

 

「怪しい人……。」

 

「そう。それで俺はその怪しい奴らからこのお嬢ちゃんを守るために活動してるわけだ。」

 

一瞬、眼魔の存在が脳裏をよぎったが、常人には見えないため、それは無いと直ぐに一蹴する。それなら誰だと他を当たると、ふとある団体が頭に浮かんだ。玲自身も深く関わりのある、例の団体。

 

「そいつらは橘会か?」

 

「ご名答。よく知ってんな。」

 

「知ってるも何も俺もそいつらとは縁があってな。」

 

橘会。内浦の土地や組合などを過激な手段で手に入れようとする暴力団である。最近、内浦の海の利権や土地の権利を得ようとこの町に進出してきた。そして、かなり横暴なやり方で権利を奪っていた。

そして、橘会の魔の手は黒澤家にまで伸びている。内浦の網元で漁業組合で黒澤家からそれらの権利を奪えば、内浦の海に関してはほぼ手に入れたことになる。その橘会に手を出されない為に、結城組という任侠一家、つまり玲の家と手を組んだ。

その為に玲とダイヤは婚約関係を結んだのだ。

 

「奴らは神出鬼没。どこかの物陰から見てるかもしれないから。後、こんなことも聞いたぜ。奴らは裏切ったりすると、焼きを入れられるんだらしい。そして、その内容は雪山で土下座らしくて、終わった後は寒さと凍傷で体がボドボドになるんだってよ。」

 

「焼いてないな。」

 

「後、奴らオンドゥル語っていう言語で会話するそうだ。」

 

「そうなのか。よくそんなどうでもいいこと知ってるな。」

 

「まぁ、自慢じゃないが昔はインターポールの捜査官として活動してからな。その時の名残みたいなものだよ。」

 

健から本当にどうでもいい話を聞かされ、げんなりとするのも束の間、衝撃の事実を聞かされ、玲は目を丸くする。

 

「インターポールの捜査官がどうしてこんなことを?」

 

「大きな組織にいるとどうしても動きたいって時に動けないっめ時があってな。そういうのが嫌になってボディーガードや探偵じみたことを始めたんだ。だが、確かに今まで以上に自由にやれるようになったんだが、代わりに今まで出来たことが出来なくなっちまって、結局どっちもどっちさ。」

 

健は自分の過去をおもしろおかしいように話す。別に懐かしんでいる様子なかった。だが、代わりに何か後悔しているようには見えた。

 

「もう2人で何talkしてるの?私も混ぜてよ!」

 

「ごめんなお嬢ちゃん。でも、話は終わっちまったよ。」

 

鞠莉が気になって話に入ろうとするが、時に既に遅し。話は既に終わっておりは不服そうな表情を浮かべる。

そして、健は腕時計を一瞥すると、どうやら時間らしく、鞠莉を車に乗せようとエスコートする。

 

「ん?」

 

その脇にいた玲のスマートフォンから着信が来る。その着信相手はダイヤであり、直ぐに通話ボタンを押す。

 

「どうした?ダイヤ?」

 

『大変です……早く助けに来てください!』

 

「ダイヤ!?何が起きた!?おい、ダイヤ!?」

 

「家に……橘……。」

 

「何!?おい!ダイヤ!」

 

何が起きたのかと玲は早まる鼓動を無理矢理を抑えながら聞くが、その前に通話が終わってしまった。ただ、ダイヤの震えた声にただならぬ事態が起こったのは安易に予想でき、玲は急いでマシンフーディーに跨る。

 

「坊主!どうした!」

 

「あんたらには関係ない!いや……関わらないほうがいい!」

 

健の言葉を玲を一蹴し、そのまま法定速度を無視して、玲はダイヤの家へと急ぐ。

 

「ねぇ、彼、ダイヤって言ってたわよね……。」

 

決起迫った表情の玲を複雑な心境で健が見送った後、後ろで鞠莉が不安そうな表情で健を見つめていた。

 

「あぁ。」

 

「ダイヤに何かあったの……?」

 

「お友達かい?」

 

「……いいえ、親友よ。」

 

親友。それは大切な存在。そんな大切な存在が何かしらの危険な目に遭ったと聞いたら不安にならざるを得ない。

その不安を取り除く方法を健は1つしか知らなかった。

 

「そりゃあ、心配だな。親友なら助けに行かないわけないよな。」

 

♢♢♢

「だから、お前達に組合を渡さないと言っているだろう!」

 

黒澤家の門の前で和服を着た、厳格な男、黒澤明が黒服の男達に反抗していた。その明の後ろでスマートフォンを強く握りしめ、不安そうに見つめるダイヤがいた。

黒服の男達は橘会の者達である。明を組合長とする漁業組合を買収しようと家に押しかけてきたのだが、案の定、拒否され、この状況となっている。

 

「はぁ、物分かりの悪いじじぃだな。まぁ、これを見たら考えは変わるけどな。おい!」

 

しかし、わかっていながら何も対策をしないほど彼らも無能ではない。黒服の一人が合図をすると、残りの男が車からある少女を連れ出してきた。

 

「お父さん……お、おねぇちゃぁ……。」

 

「ルビィ!」

 

男に拘束され、今にも泣きそうなルビィが現れ、明とダイヤは驚くと同時に激しい怒りをあらわにする。

 

「あなたたちは!」

 

「さぁ、どうする?別にプライドが大事ならいいんだけどな。」

 

しかし、黒服の男は悪びれる様子もなく、むしろ尊大な態度を取る。

黒服の男達の態度とやり方には明は今すぐにでもぶっ飛ばしてやりたいくらい怒っていた。だが、生憎そんな行動を取れる立場にはなく、拳を握りしめる。

一体どうすればいいか?組合を守りつつ、ルビィを救うにはどうすればいいのか?必死に策を練るが出るのはどちらかを捨てる策のみ。

なら、どちらを捨てるべきか?そんなこと考える意味などなかった。

 

「……組合を差し出したら……ルビィは返してくれるのか?」

 

「あぁ。……あぁ。」

 

黒服の男は気怠そうに声を発する。

 

「……わかった……だから、ルビィを!」

 

「お父様!」

 

明が黒服の男達の要求を飲んだその時、黒服の屈強な男が、明の腹にパンチを入れ、気絶させる。

 

「悪りぃ、最後になんて言いたかったのか聞くの忘れちまったな。まぁ、組合は貰えるってのはわかったからそれでいいわ。」

 

「ま、待ってください!」

 

「あぁ?何だ、お前は?」

 

そのまま勝手に家に入り、権利書などを掻っ攫おうとする男達の前にダイヤが立ちはだかる。しかし、別に立ち向かうというわけではない。

 

「早く……ルビィを離してください!」

 

「……何で?」

 

「何でって!あなたはお父様との約束に合意したではないですか!」

 

「……あぁ、あれか?俺は気怠くて適当に声が漏れちまっただけなんでけど?」

 

約束通り、ルビィを解放するという約束を果たして欲しかった。別に組合がなくとも家族が一人もかけなければ何よりであった。しかし、黒服の男は約束を元より守る気などなかった。

 

「何ですって!?……外道ですわ!」

 

ダイヤは激しい怒りを露わにする。

 

「あいつが勝手に勘違いしたのが悪い。でも……てめぇが体を差し出してくれるってならいいぜ。」

 

だが、やはり黒服の男は悪びれる様子は全くない。さらに今度はダイヤ自身に条件を突きつけくる。

 

「今更約束なんて!」

 

ダイヤは真っ向から拒否する。敵であり、さらに約束も何も守らない黒服の男達を信じる理由が0%ない。

 

「いいんだぜ?それならてめぇの妹は連れて帰るだけだ。酷いなぁ、てめぇは最愛の妹を見捨てるなんてさ。」

 

「ち、違います!そ、それは……。」

 

だが、黒服の男は信じざる得ない状況を作り出す。精神的に追い詰め、そしてその中で唯一の可能性を提示すれば、自ずと相手はその道を選ぶ。彼らは常にそうやって事をこなしてきた。

 

「なぁ、可能性があるんだ。だったらその可能性に賭けてみるの悪くはねぇ筈だ。」

 

「……でも……。」

 

そして、案の定、ダイヤも黒服の男達の策略のまんまとはまり、段々と揺らぎ始める。

これは時間の問題だと黒服の男が確信したその時、悪魔が悪を裁きに来てしまった。

 

「グギャァァァ!」

 

「な、何だ!?」

 

突然の悲鳴に黒服の男達は一斉に後ろを振り向く。

 

「玲!」

 

「てめぇ……俺の家族に出したのか?」

 

そこには鬼の形相の玲が下っ端の男の関節を逆に折り曲げていた。

 

「何だてめぇ!調子乗ってんじゃねぇぞ!」

 

完全に敵意があると確認した黒服の男達、3人は一斉に殴り掛かる。だが、人間以上の敵を相手にしている玲にとって彼らは雑魚でしかなかった。

一瞬の内にあしらい、そして1人の頭を掴み、そして地面に叩きつける。

 

「俺の質問に答えろ!答えろって言ってんだ!」

 

「ひぃっ!」

 

地面にヒビが入るほど、顔が歪むほど何度も叩きつける。その姿は正に悪魔。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

恐怖に屈し、下っ端の一人が玲に銃口を向ける。

 

「銃を向けるか?なら……殺す気なんだな?」

 

玲の忠告を無視して、下っ端は銃弾を放ってしまう。

 

「そうか……なら……殺されても文句はねぇよな?」

 

その行動が運の尽きであった。玲はいともたやすく弾丸を避け、異常なスピードで男に迫り、そして、腕を折り、銃を奪う。そして、銃口を下っ端の口にねじ込む。

 

「親父は言っていた。『撃ってもいい奴は撃たれる覚悟のある奴だけ』ってな。」

 

普通ならただのかっこつけの台詞だろう。しかし、この状況で殺気を放つ玲が言うと、それは本当にしか聞こえない。

下っ端の男は涙と小便を垂らし、必死に抵抗する。

 

「……流石に露骨に殺すのはまずいか。」

 

このまま引き金を引こうと思ったが、流石に殺してしまうと後処理がかなり面倒だと思い、渋々口から銃を出し、代わりに腹に3発撃ち込んだ。

 

「嘘だろ……。」

 

玲の後を追って来た、健と鞠莉はその玲の獅子奮迅の動きに開いた口が塞がらない。

 

「おい、お嬢ちゃん?あいつ何者なんだ?」

 

「確か……ゴーストって言ってたけど……。」

 

鞠莉の言葉に健は顔をしかめるしかなかった。健はてっきり空手経験者や元犯罪者など言うものだと思っていたが、まさかゴーストとなどとはちゃんちゃら可笑しい。しかし、こんな状況で鞠莉が冗談を言うはずがなく、そして、あの動きを見ていると本当なのではと思ってしまう。

 

「しめた!あの車を奪って逃げるぞ!ついでにあの2人を人質にすれば!」

 

「おう!」

 

そんな風に思考していると逃げ延びた下っ端達が健達に目をつけ、襲いかかる。

 

「大乗寺さん!」

 

「よっと!」

 

不安になって鞠莉が健の名前を呼ぶ。だが、その不安も無駄であったとすぐに気づく。

 

「グヘッ!」

 

「イエェヤァ!」

 

「バフッ!」

 

向かってくる敵を健は軽くいなす。あくまでボディーガードなので必要以上に抑えつける必要はないため、適当に腹に首に打撃を与えて、気絶させる。

 

「こんなものだな。」

 

向かってきた下っ端を倒し、健と鞠莉は玲の元へ急ぐ。

 

「……地獄絵図だな。」

 

健と鞠莉は絶句する。黒澤家の玄関前には血だらけになった男にや体の一部にありえない方向に折れ曲がった男達が倒れていた。

 

「ルビィ?大丈夫か?」

 

「うわぁぁぁぁん!怖かったよ!」

 

その死屍累々の惨状の真ん中で返り血を浴びている玲が怖がって泣いているルビィを胸で優しく受け止めていた。その後ろでダイヤがルビィが助かり、安心したようでもあったが、あまりにもやり過ぎたこの状況に複雑な表情を浮かべていた。

 

「おいおい……これはやり過ぎじゃないか?」

 

この惨状に流石に危機感を抱く健。

 

「そうか?あいつらが手を出してきたのが悪い。」

 

「だがなぁ……まぁわからなくもないが……。」

 

「健さん?」

 

だが、玲は何も感じていないらしく、むしろ正当化しているようで、健は頭を抱える。大切な人が襲われるというのは確かに最も怒ることなのは健自身もわかっていたが、それでもやり過ぎてはいけない。

 

「坊主……あんまり力とか立場に囚われすぎるなよ。……自分をいつか傷つけちまうぞ。」

 

行き過ぎた正義はいずれ身を滅ぼす。それを痛いほど知っている健は知っていた。

 

「……忠告してくれたのは感謝する。でも、俺はダイヤとルビィ、それに鞠莉にみんなを守らなくちゃならない。いや、俺にしか守れないんだ。」

 

「玲……。」

 

だが、玲は健の忠告を純粋にのむことはできなかった。玲にとって力に囚われられなければ何も守れないからだ。

 

「訳ありのようだな……。お前に何を言っても無駄みたいだな。」

 

玲の複雑な表情を見て、ただ健は引き下がることしかできなかった。

♢♢♢

沼津のとあるビルの一室で癖っ毛の男、橘 咲斗は手に顎を置いて、神妙な面持ちでいた。

 

「上手くいかねぇなぁ……。」

 

左手に持ったスマートフォンを机に置き、溜息をつく。たった今、何とか逃げ延びた部下から連絡があり、黒澤家から組合の権利を奪うことは出来ず、さらに返り討ちに遭い、警察に連行されてしまったと聞いて、頭を抱える。

 

「部下をやった奴は何者なんだか……けじめつけねぇとねぇ……。」

 

「いや、あいつはただの人間では太刀打ちできんぞ。」

 

突撃、目の前から声が聞こえ、咲斗はゆっくりと顔を上げる。目の前には白い無精髭と白髪の老人がいた。確か、戸締りはしっかりとしていたはずで、組員以外は入れない筈であったが、彼にとってはどうでもよかった。

 

「どういうことかねぇ……それは。」

 

「君が言っている人物は化け物だ。非力な人間ではゴムまりにされるのがオチだ。」

 

髭を撫でながら老人は言う。

 

「それであなたは何故そんなことをわざわざ私に伝えに来たのかねぇ。」

 

ただ咲斗もただの者ではない。老人がただ、助言だけしに来た訳ではないことは既に見抜いていた。

 

「取り引きだ。貴様に化け物、結城玲を倒して欲しい。」

 

「なるほどねぇ。あなたが奴を倒したい理由は知らないけど……要するに取り引きに乗れば、復讐と計画が成功するし、あなたにも利益がある。でも……私はただの非力な人間だ。化け物に太刀打ち出来るわけがないんだけどねぇ。」

 

「確かにそうだな。だからわしがある程度はサポートしよう。」

 

すると老人はバックからある物を取り出す。それは目を模したようなベルトーーゴーストドライバーと白い眼魂であった。

 

「これを使えば、貴様も化け物になれる。」

 

「毒をもって毒を制すか……いいねぇ。面白そうじゃないか……。」

 

咲斗はゴーストドライバーから発せられる禍々しい空気に思わず、息を呑む。これを一度でも使えば、おそらくただの人間ではいられないことを感じとっていた。

しかし、そのスリルは逆に心を高ぶらせた。何の迷いもなく、ゴーストドライバーをを受け取り、恍惚と表情を浮かべる。

 

「だけどその前にいいかい?先に小原家を片付けたいんだけどねぇ。」

 

「別に構わん。お前のペースでやれ。……そうだな……なら、ついでにその小原家の片付けも手伝ってやろう。」

 

老人は不敵な笑みを浮かべる。一体、老人は何を目論んでいるのか。

こればかりは咲斗も読み取ることはできなかった。

 

♢♢♢

数日後、健は鞠莉の習い事である乗馬クラブからの帰り道をリムジンで送っていた。

 

「なぁ、お嬢ちゃん。最近、坊主に会ってるか?」

 

「いいえ……ねぇ、健さんはどうしてそんなに玲君を気にかけるの?」

 

最近、健はよく玲のことを気にかけているような素振りをずっと見せていた。それが鞠莉にとってずっと疑問であった。

 

「あぁ……なんか……俺に似てる気がするんだ。」

 

「似てるって?どこが?」

 

「まぁ……何とういか……生き方とか……性質がかな?」

 

あまりにも大雑把な答えに鞠莉は納得のいかない様子であった。

すると、健はポツリと身の上話を始めた。

 

「俺はさ、インターポールの時はマグーっていう悪の組織と戦っててな。坊主も……同じように大きな壁に立ち向かっている気がするんだ。」

 

「気がするって、実際に橘会に立ち向かっているわよね?」

 

「いや……あんなちっぽけじゃない。よくはわからんが……俺たちじゃどうにもできないようなことだと思う。」

 

しっかりと前を向きながら運転している為、表情はよく見えなかった。

 

「とにかく……似てるんだ。坊主と俺はさ。だから……怖いんだ。俺と同じ過ちを犯しそうで。でも……仕方がないのかもって半分諦めちまってるところもある。」

 

「健さん?」

 

「少なくともあいつは正直すぎるんだ。許せない奴は許さない。愛する人は目一杯愛する。結構純粋な奴なんだと思う。そう言う純粋な奴ほど道を踏み間違えて、傷つくんだ。」

 

声色が徐々に色を落としていく。いつもの軽い調子ではなく、後悔に染まった暗い調子であった。

 

「健さんには……何があったの?」

 

「それは……ん?」

 

「どうしたの?」

 

鞠莉がより深く健のことを追求しようとした時、何やら健が怪訝そうに前を見つめ、ゆっくりとブレーキをかける。健のいつものお気楽な様子とは真逆の真剣な様子と張り詰めた空気が自然と鞠莉を不安にさせる。

 

「お嬢ちゃん!しっかり掴まってな!」

 

「What!?」

 

すると、何かに気づいた健は一目散にアクセルを一気に踏み、ハンドルを限界まで回し、今来た道を駆け戻る。急発進により発生したGが鞠莉を襲う。

 

「うおっ!?」

 

「今度は何!?」

 

今度は急にスピードが遅くなり、車は急にコントロールを失い、道の中央で止まってしまう。

 

「こんな時にパンクか!くそッ!」

 

突然のパンクに焦りと苛立ちを募らせながら、健は急いで後ろ座席から鞠莉を引っ張り出し、車から離れる。

 

「あれは!」

 

だが、時は既に遅かった。前方と後方から4台ほどの橘会の車が現れ、咄嗟に健達を囲む。そして、車の中から銃を持った男達が10人が出てくる。

 

「お嬢ちゃん!」

 

最悪の事態を想定した咄嗟に健は鞠莉を庇う。その瞬間、銃撃音が鳴り、健の背中に無数の銃弾が撃ち込まれ、血飛沫が舞う。

 

「グッ!」

 

「た、健?」

 

銃撃が終わると同時に、健は糸が切れたマリオネットように倒れる。硝煙の臭さと鼻をつまみたくなるような血生臭い臭いが鞠莉に現実を突きつける。

 

「嘘でしょ……そんな……起きてよ!起きてよ!」

 

鞠莉の目の前には大量の血を流して倒れる健の姿。何度も名前も呼んでも体を揺さぶっても、ピクリとも反応しない。

 

「い……嫌!嫌ァァァァァ!」

 

鞠莉は耐え難い事実に発狂する。健は自分を守るために命を落とした。その罪悪感はまだ大人になりきれない鞠莉にとって、重すぎるものであった。

 

「お前ら、この女を攫うぞ。こいつはいい人質になる。」

 

「……さ……る…か……。」

 

狂い乱れる鞠莉の手を黒服の男達は引っ張り、車の中へと連れて行こうとする。しかし、そうはさせまいと虫の息である健が足を掴んで制止する。その握力は死にかけの人間とは思えないほど強かった。

 

「まだくたばってなかったか……。」

 

「止め、刺しますか?」

 

「いい、どうせ死ぬ。」

 

健の手を思っ切り踏み、無理矢理離れさせ、男達は車へと乗り込み、その場から離れる。

その5分後、良からぬ感覚を感じ取った玲が現れ、倒れている健へと近づく。

 

「大乗寺!しっかりしろ!」

 

激しく揺さぶらず、肩を叩いて、意識の確認をする。すると、ポケットが一瞬光り、健はゆっくりと目を開ける。

 

「あ……あ、坊主か。」

 

「無事だったのか!待ってろ!今すぐきゅう……。」

 

とりあえず意識があることに安堵しつつ、玲は急いで救急車を呼ぼうとスマホを取り出すが、健はその手を掴んで制止させる。、

 

「呼ばなくて……いい。それよりお嬢ちゃんを助けてくれ……。」

 

「何言ってんだ!目の前で死にかけてる奴を見殺しにできるか!」

 

「死にかけてる……か……。」

 

「は?」

 

玲の率直な言葉に、健は何かを思ったように空を見上げる。そして、何やら覚悟を決め、ポケットからある物を取り出し、玲に突きつける。

 

「これは!?」

 

「お嬢ちゃんとのペアルックのお守りだ。持ってけ。」

 

突きつけられたものは緑色の眼魂、ロビンフッド眼魂であった。どうしてこんなものを健が持っていたのか疑問に思ったが、今はそれどころではない。

 

「坊主……いや玲!この先たくさんの苦難があるはずだ!そんな時にこそ仲間に頼れ!例え、お前にしか出来ないことでもだ!そして……もし愛する人、大切な人を失っても自分を見失うな!怒りに……力に囚われるな!復讐は……身を滅ぼすぞ!」

 

玲の手を強く握り締め、健は決死の表情を浮かべ、最後まで思いを伝え続ける。そして眼魂を渡すと同時に力尽きたように玲の方に寄りかかる。

熱き言葉か終わり、静寂に包まれる。その中で一人残された玲は唇を噛み締める。

 

「……そんな……そんな簡単に割り切れるかよ!」

 

健の思いは玲の心に深く突き刺さっていた。しかし、それでも玲には割り切れない思いが打ち勝っていた。鞠莉を攫い、健をここまで傷つけた橘会が許せなかった。

あわよくば報復、復讐をしたかった。二人を苦しめた償いとして、懺悔として。そして、玲にはそれを行える力がある。

背後から悪魔が忍び寄る。力を使えと耳元で囁く。

 

「あんたが良くても……何かしねぇと俺の中で区切りがつかねぇんだよ!」

 

玲は急いで救急車を呼び、場所と健の容体を伝える。それを終えると、バイクにまたがり、フルスロットルで走り出したのであった。

 

♢♢♢

「ははは!上手くいったな!」

 

黒塗りの車の右後ろに座るスキンヘッドの男が目的の達成に高笑いをしていた。

目的である小原家の娘、小原鞠莉の殺害。目的の内容だけ見れば簡単なのだったのだが、健の存在が目的の難易度を最高レベルにまで上げていた。

大乗寺健。かつてインターポールの捜査官として活躍し、世界的なマフィアであるマグーを潰した男。そんな男を相手にしようなどと命を投げ捨てるようなことだ。

しかし、ここで橘会に予想外の幸運が訪れた。何と健の運転する車が突然パンクしたのだ。そして、車から慌てて健が鞠莉を引き連れ出たところを運良く殺したのだ。

 

「一番の山場である大乗寺を殺すことができ、そしてターゲットを誘拐とはなぁ。」

 

左後ろの座るオールバックの男も今回のことに関しては驚きを隠せない。そして、隣に座らせられている鞠莉を凝視する。手足は結束バンドで拘束され、視界も口も縄で塞がれていた。

 

「人質としては十分だな。それに顔も悪くねぇし、体だっていい。アジト戻ったら相手してやらねぇとな。」

 

鞠莉の存在は彼らにとって宝のようなものだった。人質として扱うことで小原家から土地の利権や財産、あわよくば事業をも手に入れることが出来るという可能性。そして、鞠莉の恵まれた顔立ちと体つきは男の欲求を満たすには十分過ぎる。

まさに隅から隅まで無駄なものなどない存在であった。

 

「おい、アニキ。後ろに変な奴が。」

 

男達が高笑いをしているなか、運転しているリーゼントの男がバックミラーに映る男に気づいた。バックミラーに映るのは角のある青いバイクのマシンフーディーと黒いライダースーツを纏った玲であった。

 

「後続の奴らは何やってんだ!おい、撃ち殺せ。あいつの所為で足跡がバレれば全て水の泡だ。」

 

「御意。」

 

スキンヘッドの男の冷酷な命令にオールバックの男はすんなりと受け入れ、拳銃を握る。そして、窓を開け、体を乗り出し、玲に向け引き金を引く。

 

「!」

 

だが、玲はその高度なテクニックで軽々と銃弾を避ける。

 

「クソ!当たらねぇ!」

 

「俺に任せろ!」

 

スキンヘッドの男は贄を切らし、足元に置いてあったマシンガンを取り出し、オールバックの男と同様に窓から体を乗り出す。

 

「死ねおらぁぁぁぁぁ!」

 

そして、狂ったように引き金を引き、銃口から嵐のように銃弾が放たれる。流石にこの数の銃弾を避けられるわけがない。そう、スキンヘッドの男は確信していた。

しかし、その確信は常人にしか当てはまらない。銃弾が玲に当たる直後、まるで元からそこに何もなかったように玲が消える。

 

「き、消えた!?バカな!」

 

目の前で起きた非現実な事象に彼らは酷く怯えるばかり。

 

「お、おいアニキ!横!」

 

すると、リーゼントの男がバックミラーを見て、目を見開き、声を震わす。

 

「ん?」

 

後ろの座席にいる男達は恐る恐る、右横見る。そこには先ほどまでいなかった玲が突然現れたのだ。その現れ方はまるで幽霊のよう。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

オールバックの男は幽霊のような玲に酷く怯え、玲に我武者羅に腕を伸ばし、銃を向ける。だが、その行動がオールバックの男の運命の分かれ道であった。

バイクに乗りながら玲はオールバックの男の腕を掴み、車体から乗り出す形になる。そして、玲に干された布団のような状態のオールバックの男の頭を掴み、ドアに何度も叩きつける。

 

「グエッ!バガッ!」

 

ドアと顔面が潰れる程の力で玲は無慈悲に何度も叩きつける。汚い悲痛の言葉がオールバックの男から漏れる。

 

「や、やめろぉぉぉ!」

 

オールバックの男を痛ぶる玲の姿はまるで悪魔であった。その悪魔に向け、スキンヘッドの男はマシンガンを放つ。車内に銃声が響き渡り、閃光に照らされる。

 

「何!?」

 

だが、悪魔は悪魔らしくやり方で身を守る。玲はオールバックの男を盾にし、銃弾を防いでいた。

 

「良い盾だった。」

 

玲は用済みになるとオールバックの男を窓から引っ張り出し、道端にゴミのように投げ捨てる。

そして、スロットルをかけ、一気に加速し、車の前に出る。

 

「あいつ何する気だ。」

 

理解し難い玲の行動に男達は不気味さを覚える。すると、突然玲がバイクを停め、ヘルメット越しに車を睨む。

 

「な、何やってんだ!あいつは!」

 

このまま行けば、玲は車に轢かれる。しかし、そんな普通のことが玲に通じるのかと男達は疑問に思っていた。突然消えることができ、さらに驚異的にな力を持つ玲がそう簡単に轢かれるものか。

もしかすると、激突する瞬間に玲が車を潰すかもしれない。玲を轢いた瞬間、自分達は何らかの力で殺されるのでは。男達はどうしようもない死という恐怖にただ怯えるだけだった。

 

「轢け!もう轢き殺せ!」

 

「でも!」

 

「どっちにしろあいつを殺さねぇと俺たちが死ぬぞ!」

 

「無茶です!」

 

「言うこと聞かねぇと殺すぞ!」

 

恐怖に負け、言うことを聞かないリーゼントの男にスキンヘッドはこめかみに銃を突きつけ、さらに恐怖を与え、無理矢理言うことを聞かせる。

 

「も、もうどうにでもなれぇぇぇ!」

 

恐怖で気が狂ったリーゼントの男は狂ったように叫びながらアクセルを限界まで踏み、玲に突っ込む。そして、玲は動じずそのまま車を激突する。

 

「はぁ……はぁ……。」

 

玲と接触して、はや10秒。車内は異様なほど静かであった。いや、接触したというのは語弊がある。接触したはずだが何も衝撃もなく、バンパーに傷一つ付いていない。

 

「く……はははは!何だ!何も起きねぇじゃねぇか!びびって損したなぁ!」

 

九死に一生を得ることができた男達は全身から力が抜ける。そして、あれは夢だ。幻だったのだと言い聞かせる。

そうでも思わなければ、あの不可思議なことなど起こり得ず、さらに精神的にも落ち着かない。

そして、男達は気持ちを落ち着かせた、その時、突然、フロントガラスに無機質な表情の玲が顔を覗き込んでくる。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

無機質な表情にも関わらず、玲からははっきりと殺気に満ちた視線にリーゼントの男は恐怖で完全に壊れ、急にハンドルを右に切り、岩の崖へと突っ込んでしまう。

 

「ぐわぁぁ!」

 

その衝撃でリーゼントの男はフロントガラスを突き破って、外に投げ出され、スキンヘッドの男も顔面を思いっきり前の席にぶつける。

 

「う……う〜ん……。」

 

その衝撃で今まで気を失っていた鞠莉が目覚める。しかし、完全に身動きが取れず、さらに喋ることもできない状況に酷く、混乱し、我武者羅に暴れる。

 

「クソッ!何なんだよ!」

 

スキンヘッドの男は咄嗟に運転席に移動し、リーゼントの男を置いて、フルスロットルで車を出し、逃げ始める。

 

「死にたくねぇ!死にたくないんだよぉ!」

 

神出鬼没で万夫不当。そんな玲がスキンヘッドの男にとって化け物にしか見えなかった。

そんな化け物に自分達は目を付けられた。そして、2人の仲間はやられ、次は自分の番だろう。着々と迫る死の恐怖にただ、怯えるのみ。

 

「来て……ないよなぁ……。」

 

恐る恐る、カーブミラーを見て、後ろを確認する。今のところ玲は追ってきてはいなかった。かと言って安心は出来ない。また、何処から現れるかわからない以上、とりあえず全速力で逃げるのみだ。

しかし、時既に遅し。不意にスキンヘッドの男の首に圧迫感が襲ってきた。

 

「グオッ!」

 

段々と締め付けられ、空気の通る道が狭くなり、体も上手く動かせなくなり、思考も鈍くなっていく。

僅かにある意識の中でスキンヘッドの男はバックミラーを一瞥する。そこには不敵な笑みを浮かべながらたった今スキンヘッドの男の首を締めている玲が後ろ座席に座っていた。

 

「ぐ………ワァ……。」

 

いつの間に乗ったのか?そんなことはこの際どうでも良かった。姿を消せる化け物だ。隙さえあればいつだって乗り込むことは出来るのだろう。

今、スキンヘッドの男にとって何よりも大事なこと。それは玲をどう処理するかだ。このままでは自分はただ殺された挙句に鞠莉も解放され、作戦は最悪の結果で終わるだろう。

それだけはプライドが許さなかった。せめて、鞠莉を殺し、あわよくば玲を殺す。例え、命を捨てても。否、所詮失われる命だ。

なら、答えは決まっている。

 

「グゥ!」

 

スキンヘッドの男は最後の力を振り絞り、アクセルを限界まで踏む。

 

「こいつ!」

 

車は一気に加速し、前へと進む。しかし、前に道はない。あるの白いガードレールだけで、その先は断崖絶壁。そして、その下は果てまで広がる海であった。

 

「ゆるさ……ない……いそ……み……ち……づれ!にし……やる!」

 

「ふざけんな!てめぇらが大乗寺を殺さなければここまではしなかったんだ!自分勝手も甚だしい!」

 

そして、スキンヘッドの男は口から泡を吹いて気絶する。終始、彼らの自分勝手な道理に玲は怒りがさらに湧き出る。しかし、そんな感情を優先している暇はない。スキンヘッドの男の首を離し、すぐに隣にいる鞠莉の拘束を解く。普通なら解けない結束バンドも、玲の強靭な力なら紙を破くようなものだ。

 

「玲!?健は!?」

 

「今は……それどころじゃない!しっかり掴まってろ!」

 

拘束が解かれた鞠莉の第一声は健の安否で、玲は複雑な気持ちに襲われる。しかし、今は自分達の命の優先だ。鞠莉をしっかり抱きしめ、玲はドアを蹴破り、一か八か海へと跳び込む。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

玲は雄叫びをあげながら、水柱を立て、海中へと潜るのであった。

 

♢♢♢

「ハァ……ハァ……。」

 

砂浜に玲と鞠莉がずぶ濡れになり、重くなった体を引きずりながら、砂浜に上がってきた。

 

「ハァ……ハァ……私…….生きてる……。」

 

ずぶ濡れになった制服は鞠莉の体に張り付き、その膨よか胸を始め、グラマラスなスタイルを強調されていた。

 

「あっ!玲!大丈夫!?」

 

しかし、鞠莉はそんなことを気にせず、隣で倒れる玲を揺さぶる。玲の表情は如何にも苦しそうで、唇も青く、呼吸も荒かった。

 

「いや……死ぬ程苦しいさ……でも!」

 

だが、玲は生まれたての子鹿のように立ち上がり、キッと前を睨む。しかし、睨むと言っても前には何もなく、鞠莉は不可思議に思う。

鞠莉が呆然としてると、突然、玲は鞠莉を突き飛ばす。その瞬間、鞠莉のいた場所に何かが当たり、砂埃が舞う。

 

「これって!?」

 

見えないところから攻撃を受け、鞠莉は困惑する。

 

「こっからが本番だ!」

 

そして、玲はゴーストドライバーを出現させ、目の前に立ちはだかる飛行機眼魔を睨みつける。

 

「貴様が巷で話題のゴーストか!ほほぅ、おもしろそうな奴だ!」

 

すると、血の気の多い玲を見定め、久々に手応えのある相手と判断した、飛行機眼魔は声を弾ませる。

 

「小原!借りるぞ!」

 

「それはお守り!」

 

しかし、玲は反対に冷ややかで、ドスの効いた声。そして、ポケットから鞠莉の拘束を解いた時にくすねた眼魂、ビリーザキッド眼魂をゴーストドライバーにセットする。

 

「変身!」

 

《カイガン!ビリーザキッド!!》

 

すぐ様ディトネイトトリガーを弾き、トンジェントとなったゴーストにグリントアイから現れた茶色のパーカーゴースト、ビリーザキッドゴーストが覆い被さる。

 

《百発!百中!ズキューン!バキューン!》

 

テンガロンハット風のパーカーにペルソナパンティオンは拳銃を模したペルソナガンストリンガーに変わり、仮面ライダーゴーストビリーザキッド魂へとゴーストチェンジする。

 

「いくぞ!」

 

ゴーストはガンガンセイバー、ガンモードを取り出すと何処からかバットクロックが現れ、そして、ゴーストの手元でガンモードに変形し、二丁の銃になる。

 

「ハァ!」

 

そして、ゴーストは銃をなりふり構わず、飛行機眼魔に放つ。その弾丸は弾が途切れることを知らず、無限に飛行機眼魔に襲いかかる。それもそのはず。ゴーストの胸部や腕部にあるライトニングピュレットのおかげで瞬時にリロードが行われ、弾切れを起こすことなく、撃ち続けることが出来るのだ。

 

「クッ!ならば!」

 

飛行機は浮遊し、避けるも流石に全てを避けらるわけがなく、5発ほどを受ける。しかし、飛行機眼魔も避けるばかりではない。指を出し、そこからゴーストに向け、銃弾を発射する。

飛行機眼魔から放たれる銃弾の数も半端ではなく、例えるなら銃弾の雨。雨など完全に回避することはゴーストには不可能であり、数発受けてしまう。だが、その程度では怯むことなく、ゴーストは飛行機眼魔の羽に1発銃弾を撃ち込む。

バランスを崩し、地面に落ちる飛行機眼魔。だがすぐに立ち上がり、再び銃弾を放とうと手を前に出すと、既に目の前にゴーストがおり、飛行機眼魔の顔面に銃を向けていた。

 

「てめぇはどうして橘会と手を組んだ!」

 

そして、飛行機眼魔と橘会との関係をあぶり出そうとする。しかし、それはあまりにも単純で呆気ないものだった。

 

「別にただの暇つぶしさ!面白いことが起きると聞いて、興に乗っただけだ!」

 

「何だと!?それじゃあ……大乗寺は暇つぶしの為だけに……!」

 

大乗寺はたかだか暇つぶしの為にこんなことになったのか。ゴーストの中で激しく怒りが燃え盛る。さらにここで飛行機眼魔は火に油を注ぐ。

 

「しょうがないんだよ!弱かったあいつが悪いんだ!それにボディーガード?ふざけてる!自らの命を懸けて他人の命を守るなんて馬鹿のすることだ!」

 

飛行機眼魔の軽率の言葉はゴーストの怒りを爆発させるには十分過ぎた。

 

「あいつを……馬鹿にすんじゃねぇ!命を懸けて鞠莉を守ったあいつを!クソみたいてめぇが馬鹿にするな!」

 

激しい怒りを露わにし、ゴーストは闇雲に引き金を引く。しかし、飛行機眼魔は何とか避け、ゴーストに銃弾を放つ。

これでゴーストは銃弾を避けるため、一旦、攻撃を止めるだろう。その隙に態勢を立て直そうと飛行機眼魔は考えていた。しかし、怒りというのは時に人間を狂わし、想定外の行動を起こさせる。

なんと、ゴーストは銃弾を避けることはせず、全てを受け止めたのだ。

 

「何!?敢えて受けただと!命知らずか!」

 

「命の大切さは痛いほど知っている!」

 

痛みに耐えながらゴーストは踏ん張り、引き金を引く。

 

「大乗寺は、こんな痛い目に遭いながら小原を守ったんだ!そんな奴が弱い訳がない!」

 

「グハッ!」

 

一撃を貰い、飛行機眼魔は膝を付く。

暇つぶしという理由の為に命を軽々しく奪った飛行機眼魔に命をかけて鞠莉を守った健を馬鹿にされ、ゴーストの怒りは爆発した。すると、僅かだが、ゴーストの体が一瞬だけ赤くなり、直ぐに元の色へと戻る。

 

「もういい!てめぇは懺悔も何もしなくていい!……俺が直々に死をもって償わせてやる!」

 

《ダイカイガン!》

 

バットクロックとガンガンセイバーを合体させ、ライフルモードへと変形させゴーストドライバーとアイコンタクトさせ、エネルギーを送信する。

 

《オメガインパクト!》

 

「喰らえ!」

 

そして、ガンガンセイバーから高威力の弾丸が放たれ、飛行機眼魔に直撃する。

 

「グワァァァァ!」

 

飛行機眼魔は断末魔をあげ、爆炎に包まれる。

 

「な、何が起きてるの!?」

 

突然、玲が消え、その途端、砂塵が舞い、爆発が起きるという現実離れした状況きただ何も出来ず、呆然と立ち尽くすだけであった。

しかし、そんな鞠莉にどういう状況か見せるためなのか、タイミングよくクモランタンが現れ、光を発する。

 

「嘘……でしょ!?」

 

クモランタンのおかげで今まで見えなかった、玲、もといゴーストが見えるようになり、鞠莉は驚きを隠せない。

 

「終わ……ってないのか……。」

 

ゴーストは何か胸騒ぎを感じ、気を抜かずにじっと爆炎を見つめる。すると、爆炎の中からゆらゆらと片腕の無くなった飛行機眼魔が現れる。

 

「貴様!よくも……この俺を!」

 

片腕でありながらも飛行機眼魔は戦意という炎が消えることはない。しかし、片腕の状態でゴーストに勝てるなど思えるほど飛行機眼魔も馬鹿ではない。

 

「ここで貴様を蜂の巣してやりたいが……このままでは分が悪い。だがら、今回は見逃してやる。次会った時は貴様に復讐してやるからな!」

 

飛行機眼魔はゆっくりと浮遊し、プロペラを回し、負け惜しみを残し逃げ始める。しかし、怒りに囚われたゴーストがそう簡単に相手を逃すわけもなあ。

 

「次なんてねぇよ。ここでてめぇは死ぬからな。」

 

「それは!」

 

ゴーストの手に持つ物は鞠莉にとって至極、見慣れた物で、そして大切な物であった。左拳を握り締めながら、ゴーストは緑色の眼魂、ロビンフッド眼魂をゴーストドライバーにセットする。

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

グリントアイから緑色パーカーゴースト、ロビンフッドゴーストが現れ、ゴーストの周りを浮遊する。

そして、ゴーストはデトネイトトリガーを操作する。

 

《カイガン!ロビンフッド!》

 

ビリーザキッドのパーカーが消え、代わりにロビンフッドゴーストを纏う。

 

《ハロー!アロー!森でアオウ!》

 

フェイスは弓矢をモチーフにしたペルソナアーチャーへと変化し、フードの右側には角。

仮面ライダーゴーストロビン魂へとゴーストチェンジする。

 

「健さん……。」

 

健のお守りによって姿を変えたゴースト。鞠莉の目には一瞬、ゴーストの背中と健の背中が重なったように見えた。だが、ゴーストの背中は健に比べ、まだ小さかった。

 

「これで……決める!」

 

空からコンドルデンワーが現れ、ガンガンセイバーと合体し、アローモードへと変形する。そして、アローモードとなったガンガンセイバーをゴーストドライバーにかざし、アイコンタクトをし、エネルギーを送る。

 

《ダイカイガン!》

 

ゆっくりとガンガンセイバーを構え、空にいる飛行機眼魔に狙いを定める。

 

《ガンガンミナー!ガンガンミナー!》

 

風とさざ波の音を破るようにガンガンセイバーのチャージ音が騒がしく鳴る。

 

「貫けぇぇ!」

 

《オメガストライク!》

 

弦から指を離すと、一筋の煌めきが放たれる。それはまるで流星のよう。その煌めきは一瞬で空を切り、飛行機眼魔を貫く。

 

「な、何ぃ!?」

 

矢に貫かれた飛行機眼魔はそのまま逆さまに落ち始め、海に落ちる。その後、海中で大きな爆発が起き、高い水柱が立ち、辺りに水飛沫が落ちる。

 

「や、やったの!?」

 

あまり状況を飲み込めていはいないが、とにかく敵が倒され、喜ばしいことだろうと思いながら、水飛沫の中、鞠莉はゴーストの元へ駆け寄ろうとする。

 

「……玲?」

 

しかし、ゴーストは純粋に喜んでいなかったのは後ろ姿からわかった。フェイスに水飛沫が当たり、滝のようにつたって流れ、肩を震わせ、静かに膝をつく。

 

「く……あぁぁぁぁぁぁ!」

 

そして、ゴーストは変身を解き、玲に戻り、その直後、その場で膝まづき、絶叫する。

 

「何だよ!これ!何で……こんなに胸が苦しいんだよ!」

 

自らの胸を鷲掴みにし、玲は苦悶の表情を浮かべ、声は震わせ、残った右手を強く握りしめる。

 

「けじめはつけた!復讐だってこなした……なのに!何でこんな虚しいんだ!」

 

戦いが終わり、全てが終わった。復讐は終わり、一種の達成感があると思っていた。

しかし、突きつけられたのは亡き者は帰ってこないということと、復讐の先に何もないという現実だけであった。

 

♢♢♢

飛行機眼魔との戦闘から三日後、雨の中、玲は綺麗に整えられた墓の前で呆然と立ち尽くしていた。

 

「玲……ここにいたのね。」

 

声が聞こえ、玲はふと横を見る。そこには傘を差し、花束を抱えた鞠莉が哀しそうな表情で現れた。

 

「小原……。」

 

今、1番会いたくなく、だが会わなければならない存在に会い、玲は複雑な表情を浮かべる。

 

「なぁ、小原は聞いたか。」

 

そして、再び玲は墓に目を移し、ポツリと呟く。

 

「大乗寺さ……即死だったらしいぜ。……おかしいよな……小原が攫われる寸前に男達の足を掴んだんだろ?それに……俺は確かに大乗寺と話した……おかしすぎるだろ!」

 

涙を流し、玲は大乗寺健と彫られた墓に向け、叫んだ。

戦いが終わり、健が搬送された病院に急いだ二人はそこで残酷な事実を突きつけられた。救急車が到着した時、健は既に絶命しており、手の施しようがなかったという。

鞠莉は大声で泣け叫び、玲は壁を殴り、行き場のない怒りをぶつけた。この怒りは橘会でも飛行機眼魔に対するものではない。自分自身に対したであった。

 

「あいつは……わかっていた!復讐なんて何も残らない!何も帰ってこないってことも全部!それを最後まで俺に伝えてくれた!のに……なのに!」

 

「玲君……。」

 

拳を強く握りしめ、玲を歯を食いしばり、地面を殴る。玲の一連の行動と、感情の表し方を見て、鞠莉は健の言っていたことを思い出し、ゆっくりと玲に歩み寄る。

 

「健さんは……きっとあなたがこういうことするってわかっていたと思うわ。」

 

そして、ゆっくりとしゃがみ、母親のように優しく言い聞かせる。

 

「あなたは純粋だから。純粋だからこそ、道を踏み間違えちゃうの。……でも、大丈夫。あなたには正しい道に引き戻してくれる人がいる。ダイヤやルビィ、Aqoursのみんながいる。だから、あなたは前に進んで!健さんの分まで!」

 

「小原……。」

 

鞠莉の優しく、熱意のこもった言葉にようやく玲は顔をあげる。

 

「あなたは救われていいの。例え、復讐が許されない行為だとしても、それ以上にあなたは人を救ってるし、これからも救うのだから。」

 

だが鞠莉も心の奥底では玲と同様、引け目を感じていた。自分が居たから健は死んだのだ。健は自分が殺したも同然と思い込んでいた。

 

「でも……私は……あなたのように誰も救えないし……守られるだけで……そのせいで……健さんは!私の……所為で!」

 

鞠莉は自分を酷く責める。そんな鞠莉を今度は救おうと玲は手を差し述べる。

だが、それだけでない。鞠莉を救うと同時に戦士として、仮面ライダーとしての使命と罪を背負うこと覚悟を決める儀式でもあった。

 

「……小原……その罪を俺に背負わせてくれないか?」

 

「あなた……何を言ってるの……。」

 

「俺は守る立場だ。何としてでも、悪から人々を守るために戦わなければいけないんだ。……だから、本当は大乗寺のことも守らなくちゃいけなかったんだ。」

 

「どうして……どうしてあなたはそこまでする必要があるの!?」

 

鞠莉には一寸たりとも理解できなかった。どうしてそこまで重荷を背負うとするのか?自分の罪ならともかく、他人の罪までも。

だが、鞠莉が理解できなのも当然であった。力のある者と無き者では価値観も世界観も全てが違うのだから。

 

「これは力を持つ者、仮面ライダーとしての使命なんだ。頼む!」

 

覚悟の座った玲の瞳。それを見てしまえば、嫌でも背負わせてもいいのではと思ってしまう程。

 

「いいわ。でも、一つだけ約束して!誰も……死なせないで!」

 

そして、鞠莉は玲の覚悟に負けた。だが、その分約束を交わした。

誰も死なせない。もう2度と悲しい思いを誰もいさせたくないし、したくなかった。だが、それだけでなく、これ以上、玲に罪を背負わせたくなかったのだ。

 

「わかった。」

 

鞠莉に約束に短く、強く返すと、玲は墓を一瞥する。そして、穏やかに笑うと鞠に背を向けゆっくりと歩き出す。その時に鞠莉の目には玲の背中は以前よりも大きく見え、およそ健と同じ大きさに並んで見えた。

 

「なぁ、大乗寺。俺は……振り向かない。前に進み続けるよ。」

 

雨は上がり、西日の真っ赤な太陽が顔を出す。その太陽をバックに玲は歩き出す。振り向くことなく立ち止まることなく。ひたすら前に進む。

 

「もう泣かないさ……涙は今日でさよならだ。ら。」

 

悲しみと涙を乗り越え、玲は強くなった。仮面ライダーとして、男として。

 

何より一人の大人として。

 

少年は別れを告げた。大切な人に。少年だった自分に。

 

 

 

 




次回 ラブライダーゴースト!
梨子の家で不可思議な現象が起こり、玲が原因を探っていると音符眼魔と画材眼魔が問題を起こしていた。だが、二体の眼魔は悪気があってやった訳ではなく、スランプから脱出しようと試みただけであると聞き、玲は頭を抱える。
すると、同様にスランプだった梨子は二体の眼魔にある提案する!
その最中に、眼魔らしからぬ二体の眼魔に新たな眼魔、眼魔スペリオルが粛清するために迫る!

次回!「俺の怒りは爆発寸前!闘魂ブースト魂!」

怒りを制御し、最強の盾にしろ!

いかがでしたか?
今回は個人的に1番書きたい回だったので、つい熱が入って分量がおかしいことになりました笑
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