ラブライダーゴースト サンシャイン   作:島下 遊姫

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結城玲は婚約者である黒澤ダイヤとの登校途中に眼魔に襲われ、その命を終えてしまった。
しかし、英雄の眼魂を15個集めて生き返る為に仙人によって仮面ライダーゴーストととして、再び蘇った。
飛行機眼魔に大乗寺健を殺され、復讐の戦いを挑んだ玲。しかし、復讐の先に何も残らないという事実を知り、さらに健の話を聞かなかったことに罪悪感を抱く。
しかし、鞠莉のおかげで他人を守る為、仮面ライダーとしての覚悟を決め、玲は立ち上がり、前に進み続ける。

残された時間は後 71日


俺の怒りは爆発寸前!闘魂ブースト魂!

「う……うん……」

 

月が雲に隠れ、街灯の少ない内浦は闇に飲まれる。不穏な空気が市中に広がる頃、梨子は違和感を感じ、ゆっくりと目を覚ます。

 

「もう……何なの」

 

何かを知らないまま、梨子は周りを見回す。特に目立った様子はないが、ただ一つ言うなら時計が短い針が2を指していたらことだけ。

 

「薄気味悪い……」

 

午前二時と言えば、望遠鏡を担ぎ、ベルトにラジオを結んで、踏切に行きたくなる時間でもあるが、同時に幽霊等の此の世ならざる者達の活動する時間でもある。

偶然にしてはタイミングが悪いと梨子は背筋が凍るような恐怖を囚われる。

 

「早く…….寝よ」

 

しかし、ただ単に薄気味悪いだけで、結局目立ったことはなく、先程の違和感は思い違いと思い、直ぐに寝ようと布団を被る。

 

〜ぽろん〜

 

「えっ!?」

 

突然、ピアノの旋律が聞こえ、梨子は跳び起きる。

 

「ど、どうして!?」

 

心臓が破裂するのではないかと思うほど激しく動く。全身からぬめりとした嫌な汗が吹き出て、喉の渇きを覚える。

 

「私は触ってないわ!」

 

ベッドから手を伸ばしてもピアノには全く届かない。もう一度、周りを見回しても両親も誰もいない。

普通なら誰も触ってないピアノから音が出る筈がない。だとすると何が原因か。

 

〜ぽろんぽろんぽろん〜

 

「や、やめて!」

 

思考を遮るように鳴り始めたピアノに梨子は震えながら、身を隠すように布団を被る。

 

〜ジャジャジャ〜ン〜

 

「嫌!やめて!」

 

梨子は逃げ場のない恐怖に襲われ涙を流す。ピアノは一向に鳴り止まず、鳴り止んだ時は日が昇る頃であった。

 

♢♢♢

 

「死ねぇぇぇぇ!」

 

内浦の上空で、高速で風を切る音と銃撃音が響く。

 

「チッ!」

 

背後から来る銃弾を、仮面ライダーゴーストフーディーニ魂は重いGに耐えながら旋回して避ける。

 

「ちょこまかと動くな!弟の仇が取れん!」

 

銃弾を放ってきた張本人、飛行機眼魔は苛立ち、舌打ちする。以前、この飛行機眼魔は戦った飛行機眼魔は兄であった。

弟の死を知り、その仇であるゴーストは殺そうと現れたのだ。

 

「知るかよ!そんなに弟が大事なら一緒にいさせてやるよ!」

 

だが、ゴーストは飛行機眼魔兄の言い分などゴミクズのように投げ捨てる。

フーディーニ魂のシュトゥルムローターを回し、さらに推力を生み出し、一気に飛行機眼魔兄に迫り、拳を浴びせる。

 

「それから!」

 

攻撃を受け、飛行機眼魔兄がよろめいたその隙にフーディーニ魂の本体に仕組まれているタイトゥンチェーンを発射し、拘束する。

 

「小癪だがこの程度では捕まらんぞ!」

 

「いいや、少しでも動きを止められれば!」

 

だが、飛行機眼魔兄はチェーンを引きちぎる。しかし、それもゴーストは想定済み。ゴーストはフーディーニ魂の飛行ユニットをグライダーモードへと変形させ、その上に乗る。

 

《カイガン!ノブナガ!》

 

そして、ゴーストドライバーにノブナガ眼魂をセットし、パーカーゴーストを纏う。

 

《我の生き様!オケハザマ!》

 

仮面ライダーゴーストノブナガ魂。

丁髷のような物がついた紫のパーカーに、フェイスは2つの火縄銃が重なったようなペルソナウォーロードに変わる。

 

「さぁ、戦の始まりだ!」

 

グリントアイから腕のような火縄銃、ガンガンハンドを取り出し、指を鳴らす。すると、周りにガンガンハンドが現れ、その数は15丁。

 

「放て!」

 

ゴーストの合図共にガンガンハンドは火を吹く。

 

「クソ!」

 

飛行機眼魔兄はマニューバを描きながら回避行動を取る。しかし、銃弾はひたすらに狙い続ける。

 

「よく逃げるな。屍になるのも時間の問題。」

 

ゴーストは仁王立ちで飛行機眼魔を睨みつける。

 

「しまった!」

 

やがて、1発が飛行機眼魔兄に命中し、次々と銃弾が命中していき、飛行機眼魔兄は落ちて行く。

 

「ここが好機!一気に決める!」

 

《カイガン!ベンケイ!》

 

フーディーニ魂グライダーモードから飛び降り、加速度的に落ちながらもゴーストはベンケイ魂をドライバーにセットし、パーカーゴーストを纏う。

 

《アニキ!ムキムキ!仁王立ち!》

 

仮面ライダーゴーストベンケイ魂。

白いパーカーに、ベンケイの七つの武器を模ったペルソナウォリアーモンクとなったフォーム。

 

《ダイカイガン!》

 

グリントアイから先端にクモランタンが合体しまガンガンセイバーハンマーモードを取り出し、グリントアイからエネルギーを送る。

 

《オメガボンバー!》

 

「砕け散れ!」

 

頭部にエネルギーが集まったガンガンセイバーを大きく振りかぶる。

そして、落ちていく飛行機眼魔兄の真上から勢いよく振り下ろす。

 

「グォォォォォォ!」

 

腹にハンマーが捻じ込まれ、飛行機眼魔兄は呻き声をあげる。

上空、1万メートルから落下とハンマーの重さが合わさり、2人は流星のように勢いよく地面に落下する。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

そして、ものの数秒。飛行機眼魔兄を下敷きに誰もいない採石場に落下し、爆発が起きる。

落下した地点は隕石が落ちたようなクレーターが出来上がり、その中心に、正にベンケイのように潔く仁王立ちするゴーストがいた。

 

《オヤスミー》

 

「全く、ハリウッドでもこんな危険なスカイダイビングはねぇよな」

 

変身を解き、玲は大きく深呼吸をする。すると、ポケットに入っていたコブラケータイに着信が入り、そっと左耳に当てる。

 

「あぁ、おれおれ。どうした、ダイヤ?」

 

『何処の詐欺師ですか!……まぁいいですわ。少しだけ玲に相談したいことがあるのですが』

 

「何?眼魔絡みか?」

 

「わかりません。とりあえず、今から部室に来てください」

 

あまり詳しいことはわからないまま電話が切れる。ただ、ダイヤがわざわざ自分に相談を持ちかける内容と聞くと、おそらくただ事ではないのは安易に予想できた。

 

「まぁ、行ってみるか」

 

タイミングよく空から降りきたマシンフーディーをバイクに変形させ、玲は浦の星女学院に向かっていった。

 

♢♢♢

 

「夜遅くに騒音。そして、朝起きると部屋が散乱か」

 

今、玲はとある人の家に来ている。

 

「一応、確認しとくけど夢遊病とかは患ってないよな」

 

「うん……」

 

確率が0に近い問いに梨子は青い顔を縦に振る。

ダイヤが相談したかったことは梨子の家の怪現象についてであった。

3日ほど前から真夜中に突然、ピアノの音が鳴ったり、何かが歩き回る音。そして、朝起きると部屋が散乱していること。

誰がどう聞いても、心霊現象としか思えないこの事件を同じ幽霊である玲に相談したのだ。

だが、いくら幽霊とは言え、自身以外の幽霊にまだ出会っていなかった為、口に出してはいないが玲はあまり力になれると思っていなかった。

しかし、ダイヤの頼みであれば、友達の悩みならば拒否するのはあまりにも非情。それに、眼魔の仕業の可能性もゼロではない為、すぐに引き受けたのだ。

そして、現在。思い立ったが吉日ということで早速、梨子の家を調査しているのだ。

 

「どう……霊感とか……感じる?」

 

「いや、全く。多分、見たり聞いたりしないとわからない」

 

家の前に立っていても気配や寒気などは感じない。幽霊屋敷という重苦しさはなく、ただの綺麗な一般的な家だ。

 

「とりあえず、桜内の部屋に行こう」

 

「……うん……」

 

そう言って、玲は軽い足取りで家の中へと入っていく。しかし、余程恐ろしいのか。青ざめた表情と震えた脚、縮こまった体で梨子はゆっくりと歩いていた。

 

「……桜内」

 

すると、玲は驚く程冷たい梨子の手を取る。そして、ゆっくりと手を引き、抱き寄せる。

 

「ゆ、ゆゆゆ結城君!?」

 

「心配するな。必ず俺が解決してやるから……絶対に守るからさ」

 

玲の大胆な行動に梨子は顔を真っ赤にし、慌てふためく。

言っておくが玲は別に下心があってやっている訳ではない。純粋に梨子を安心させたいがための行動だ。

 

「よし、行くぞ」

 

「……うん!」

 

そして、玲は何事もなかったようにまた歩き始める。

感触として残る玲の暖かさ。そして、頼もしい玲の大きな背中を見て、梨子の恐怖心は次第に薄れていった。

 

「ここが桜内の部屋だな」

 

「うん」

 

いよいよ、事件の現場である梨子の部屋に着き、2人の間に緊張が走る。

 

「さぁ……開けるぞ」

 

幽霊にしても眼魔にしても、超常的存在には変わりない。何が起きるかわからないという不確定で最も恐ろしい状態に身構えながら、玲はゆっくりとドアを開け、隙間から部屋を覗く。

 

「結城君……何かあった?」

 

梨子が聞いた瞬間、玲はドアをそっと閉じた。

 

「バリバリあった」

 

溜息を吐き、玲はゴーストドライバーを腰に巻き、グリントアイからガンガンセイバーを取り出す。

そして、今度はドアを完全に開け、あらかじめ用意していたクモランタンで梨子の部屋を照らす。

すると、部屋にはよくある音楽室に飾られている音楽のクルクルと巻かれた白い髪に、赤い服を着た音符眼魔と歪な顔に左腕にパレットを持った画材眼魔が2人を不思議そうに見ていた。

 

「あれ?今日は男の人がいるわね?」

 

「彼氏なのかな?でも、変なおもちゃ持ってるね。強面のくせに子供っぽいのね」

 

「可憐なりこちーには勿体無いね。この汗臭そうな男」

 

音符眼魔は女口調で、画材眼魔は子供らしい口調で、玲を小馬鹿にする。

 

「あ"?聞こえてんぞ」

 

「「え?」」

 

「てめぇら眼魔だな!眼魂置いてケェ!眼魂置いてケェ!眼魂ねぇなら、首置いてケェ!」

 

悪魔のような笑みを浮かべながらガンガンセイバーを振り上げる玲。その玲に恐れ慄き、逃げ惑う眼魔。

 

「ひ、ひぇぇぇぇ!なんで僕達が見えるのさ!」

 

「どうしましょ!私達、戦える手段はないわ!」

 

「知らんわ!初対面の人間を馬鹿にしやがって!ぶった斬ってやる!」

 

散々の言われように玲は怒り狂い、眼魔を斬ろうと振り上げた時、梨子は床に落ちていたある紙に気づき、拾い上げる。

そして、その紙を見た瞬間、恐怖が消え失せ、代わりにある思いが生まれる。

 

「ちょっと待って!結城君!」

 

「桜内!?どうして!」

 

ガンガンセイバーの剣先が真上を向いたまま固まったように止まり、玲も腕を上げたまま動かない。

 

「倒すのは……一旦やめて!」

 

「こいつは眼魔だぞ!桜内を怖がらせたのはこいつらなんだぞ!」

 

「わかってる!でも……訳があるようなの!」

 

すると、梨子はゆっくりと眼魔の所に歩み寄り、膝を抱えて震える眼魔に視線を合わせるため、しゃがんで紙を見せる。

 

「ねぇ、あなた達がこれ書いたの?」

 

「うん……」

 

「綺麗な絵ね」

 

「本当に!」

 

梨子が持つ紙には綺麗な色使いので染められた海の絵が描かれていた。

すると、描いた本人である画材眼魔は子供のように目を輝かせて喜ぶ。

 

「ねぇ、結城君。少しだけでいいから話させてもらってもいい?」

 

「……気乗りはしねぇが……少しだけだ」

 

玲は仕方なく、ゆっくりとガンガンセイバーを下ろし、グリントアイに仕舞う。

 

「ありがとう!」

 

梨子は満面の笑みで感謝を述べる。しかし、別に玲自身は眼魔に対しては梨子のように心を許しておらず、むしろ疑っていた。

 

「ねぇ、あなた達はどうして私の部屋に?」

 

「それは……りこちーの奏でるピアノの音が綺麗で……つい引き寄せられて」

 

「てか、当たり前のようにあだ名で呼ぶのか」

 

2人の眼魔による梨子のあだ名に玲はツッコミを入れる。

 

「りこちーのピアノを聞けば私のスランプも彼のスランプも克服出来そうな気がして……」

 

「スランプ?」

 

「そうなの。僕達……スランプに陥っちゃってね。僕も音符も納得のいかない作品が作れなくて」

 

「眼魔もスランプになるのか。意外だな」

 

あまりにも人間臭い2人の眼魔に玲は心の中で衝撃を受ける。

今まで対峙してきた眼魔達はあまりにも身勝手の者達ばかりであった。否、この2人もスランプ克服の達に梨子の気持ちも知らずに怯えさせていたが、他の眼魔達とは違い、明確な悪意というのは感じられない。

ただ、純粋にいい作品を納得のいく作品を作りたいという願望で動いている。

 

「りこちーのピアノ。すごい心地いいんですの。でも……最近はあまり心地良くない気が……」

 

「それはお前達が来たせいだろ」

 

「でも、1ヶ月前はそんなことはなかったわ!心地良くなくなったのは2週間前くらいで……」

 

「思ってた以上に長く滞在してたな!」

 

2人の眼魔が梨子に妙に慣れ親しんでいるように見えたの長い時間、一方的にだが一緒に生活してたということと知り、玲は驚きをかくせず、ツッコミを入れてしまう。

だが、こんなのはまだ序の口であって、後にさらに衝撃を受けることになる。

 

「……私、決めた!この子達とスランプ克服する!」

 

「はあぁぁ!?」

 

突然の梨子の決意に玲は耳を疑った。そして、あまりの衝撃に開いた口が塞がらない。

 

「正気か!相手は眼魔だぞ!俺たちの敵だぞ!」

 

「でも!この子たちは!」

 

「違うと言うのか!確かに今のところいい奴に見えるかもしれない!だがなぁ、こいつらは猫被ってるだけかもしれないんだぞ!」

 

「そんなことない!」

 

玲と梨子の言い合いに眼魔は心配そうに震えていた。

人の夢を、命を奪ってきた眼魔と戦ってきたからこそ玲の言葉は確かな説得力があった。

しかし、梨子は他人の確かな経験を切り捨て、自分の直感を信じた。

そして、玲に2人の眼魔は決して悪い人ではないと認めされる為に画材眼魔の描いた絵を見せつける。

 

「玲君はこの絵を見てわからないの!人を騙すような人がこんな綺麗な絵を描けるわけがないの!」

 

「桜内……」

 

はっきり言って、別に絵を見たところでその作者の性格や人格など玲は理解できない。

しかし、梨子の決死の様子を見れば、自ずと理解してしまう。

 

「私もね……最近……なかなか曲が浮かばなくて……。でもね!この2人となら克服できそうな気がするの!」

 

「りこちー!」

 

梨子の決意に眼魔は腕を振って賛成する。

その熱い炎が宿ったような瞳。鉄のように固い意志。

玲を退けるには十分な意思表示であった。

 

「このまま言い合っても埒があかないか……。仕方がない。今回は俺が引き下がる」

 

「結城君!」

 

頭を掻き毟りながら玲は不服そうに梨子の提案を求める。

そんな玲と反対に梨子は目を輝かせて喜ぶ。

 

「全く……一体どうなることやら……」

 

予想外の状況に玲は深くため息を吐いて

♢♢♢

 

「それで、玲君は認めたんだね」

 

「まぁな。不服だけどな」

 

次の日、千歌に軽い愚痴を零しつつ、玲は千歌の部屋の窓際で隣の家--梨子の家をじっと観察していた。

 

「それで、どうして千歌ちゃんの家にいるの?」

 

次のライブの為の衣装を作りながら曜は玲に問いかける。

 

「本当は桜内の家に居たいんだけど、部外者がいると気が散るらしくてね。なら、隣の高海の家から監視しようと」

 

「監視っていうか狙撃だよね」

 

「そりゃあ、眼魔相手だしな」

 

窓の縁にガンガンセイバーガンモードを置き、銃口と視線を狙撃対象に狙いを定めるその画は正にミリタリー映画のスナイパーのよう。

 

「でも、ずっとそんなに張り詰めてたら疲れるよね?お茶でもどう?」

 

「確かにな。それならありがたく頂こう」

 

千歌に煎れてもらった緑茶を貰い、ホッと一息つく。舌が火傷してしまいそうな熱さだったが、深い味わいが口の中に広がり、とても美味しかった。

 

「美味いなこのお茶。お茶自体も良いのだろうけど高海の煎れ方も上手いな。これなら毎日でも飲んでもいい」

 

「そ、それは!」

 

玲の素直な感想は千歌に良からぬ勘違いをさせ、顔を赤らめさせる。

 

「全く、お前は少しはお茶のように言葉を濁すように言葉も濁すことを覚えろ」

 

「誰!このおじさん!」

 

「仙人……俺の家ならまだしも他人の家に勝手に上り込むのは褒められたことじゃないな」

 

当たり前のように千歌の部屋でお茶を啜っていた仙人に千歌と曜は飛び上がる程驚く。

 

「それについてはすまないと思っている。だが、お前の家で待ってるにはちと遅いと思ってな」

 

「何?遅いだと?何か起きたのか?」

 

「あぁ、眼魔達の活動が一層活発になった」

 

「活発に?」

 

仙人の神妙な面持ちから放たれた言葉に玲は疑問を抱く。

その疑問を晴らそうと口を開いた時、言葉を発する前に千歌が話し始めた。

 

「ねぇ、おじさん。眼魔って何で人間を襲うの?」

 

「それは……世界を征服する為だ」

 

玲の疑問とはほんの少し違っていたが、千歌のおかげで質問する手間が省けた。

そして、仙人の衝撃の事実に千歌と曜は驚きを隠せない。

 

「世界を征服!?」

 

世界征服などまるでテレビの中の話にしか聞こえない。普通の人間ならフィクションや妄言にしかとられられないだろう。

しかし、眼魔という超常的存在のおかげで虚構は現実へと色づいていく。

 

「どうして世界征服なんかするんだ?」

 

一方で玲は異様な程冷静であった。

そして、仙人は眼魔の目的の成り行きを語り始めた。

 

「眼魔には元々住んでいる世界があった。だが、数年前にその世界が滅んでしまったのだ。故郷を失った眼魔達は新たな故郷を作り出す為にこの世界を征服しようとしているのだ」

 

成り行きを語っている仙人はいつもの何を考えいるのかわからない無表情ではなく、ほんの少し悲哀の表情が混じっているように見えた。

 

「世界が滅んだの!?どうして!?」

 

「愚かな戦争が原因だ。強大な力を無闇に振りかざした所為で世界は耐えきれず、滅んでしまった」

 

「そんな!自分勝手にも程があるよ!」

 

仙人の話を聞いて、千歌は正論を放つ。これには曜も頷き、2人の眼魔に対する考えが黒くなっていく。

 

「本当に……本当にそうなのか?」

 

「玲君?」

 

仙人の言葉に納得のいかなかった玲はゆっくりと眼魔に対する持論を述べていく。

 

「俺は今まで眼魔と合間見えてきた。確かにあいつらは自分勝手な存在だ。そう……あくまで自分勝手なんだ。自分だけの欲望の為に眼魔は行動していた」

 

「何が言いたいの?」

 

「わざわざ他の眼魔と結託して世界征服とか新たな故郷を手に入れるとかそんな大それた大義で行動しているように見えない」

 

曜は口をあんぐりと開け、玲の鋭い眼差しを見つめる。

今さっきばっか仙人の言葉より、それなりに一緒にいた玲の言葉の方がより一層、曜の心に突き刺さるのだ。

 

「そう見えただけかもしれんぞ?」

 

「確かに実際に沼津を吹っ飛ばそうとした奴もいた。それでも行動理由は奴の興味本位だった。それに、今回の眼魔は人を襲うなんてことは全く興味を示していない」

 

「ほう……お前はそう思うのか」

 

「あぁ……あんたとはまるっきり正反対の考えだな」

 

仙人は玲を睨みつけ、逆に玲は何も読めない仙人の表情を見定めるように凝視する。

千歌の部屋に険悪なムードが漂い、蚊帳の外にいる千歌と曜は息苦しさを感じる。

 

「……まぁ、それはあくまで一部なのかもしれない。もっと全体を見れば、仙人の言ってることもきっと事実なんだろうな」

 

ゆっくりと表情を和らげ、玲はお茶を啜る。お茶は既に冷めており、一気に飲み干すことができた。

 

「まぁ、何でもいい。俺はみんなを守れればそれでいい」

 

「お前も自分勝手な奴だな」

 

相変わらずの玲のマイペースさに仙人は呆れつつ、笑顔を浮かべる。

そして、何かを思い出すように窓から雄大に広がる空を見上げる。

 

「……空が青いな」

 

誰も聞こえない程、小さな声で仙人は呟いた。

 

♢♢♢

 

梨子の部屋にさざ波のように穏やかで繊細なピアノの音色が響き渡る。

その音色にAqoursメンバーと玲はうっとりと聞き惚れる。

 

「どう……かな?」

 

会心の一曲を弾き終え、梨子は緊張しつつ、さらに心配そうに感想を求める。

 

「すごい!すごくいいよ!」

 

だが、梨子の心配は空回りに終わる。

千歌は目を輝かせ、褒め称える。

 

「ありがとう千歌ちゃん!」

 

「良かったね、りこちー」

 

側で見守っている音符眼魔と画材眼魔も梨子が安心した同時に我が身のように喜ぶ。

 

「へぇ〜眼魔って、みんなが悪い人じゃないんだね」

 

「話せばわかるならそれは平和でいいね」

 

玲や善子、鞠莉から眼魔の話を聞いていた、メンバーは眼魔に悪い印象を抱いていたが、今回の件でそれは綺麗さっぱりに振り払われた。

むしろ、花丸と果南は良い印象を抱いた。

 

「まさか……眼魔と曲作りなんて……」

 

「梨子、本当に何もされなかったの?」

 

曲が出来て、殆どのメンバーが喜ぶ中、善子と鞠莉は複雑な心境でいた。

2人とも眼魔によって被害を受け、眼魔に対してはあまり良い印象は抱いていなかった。鞠莉に関しては、間接的にだが眼魔に大事な人を奪われ、寧ろ恨んでいた。

 

「うん!ただ普通に作曲しただけだよ」

 

「そう……ならいいの……」

 

しかし、梨子の真っ直ぐな笑顔を見ると善子と鞠莉はこれ以上、問い詰めることが出来ず、渋々身を引く。

 

「まさか……やってのけるとはな」

 

教室の後ろで腕を組んで、黙って梨子のピアノを聴いていた玲がポツリと呟く。その様子は隙間一つない石の壁のよう。

すると、梨子はピアノから離れて、玲の元へと駆け寄る。

 

「ありがとう、結城君!」

 

「はぁ?」

 

突然、お礼を言われ、玲は困惑する。

 

「あの時、結城君が認めてくれたから……今こうして、スランプも克服出来て……友達も出来て!」

 

「違ぇよ。別に俺のおかげでも何でもない。全部、桜内が自分で掴んだものだ」

 

「結城君……!」

 

梨子の勘違いを正そうと玲は淡々と本音を話す。

確かに梨子がスランプを脱し、眼魔との信頼関係を築き上げた背景は玲にあるかもしれない。

しかし、それはあくまで背景であって実際にやってのけたのは梨子の力によるもので、殆ど玲は関わってない。

 

「どういうわけだ。だから、もっと自分に自信を持て」

 

「うん!」

 

玲の偽りのない後押し、梨子の真っ直ぐな笑顔を浮かべる。そして、深々とお辞儀をして、他のメンバーのところへと戻っていく。

 

「玲、これでいいの?」

 

「そうよ!相手は眼魔なのよ!」

 

今度は鞠莉と善子が不安に満ちた表情で駆け寄ってきた。

 

「大丈夫だ。大丈夫だってのを桜内が証明してくれたじゃないか」

 

「でも!」

 

「玲を信じましょう」

 

「ダイヤ!」

 

眼魔と合間見えてきた玲の確かな言葉ですら、眼魔を恨んでいる鞠莉にはろくに効かない。

仕方がないと諦めていた玲に手を差し述べるようにダイヤが話に入ってきた。

 

「それに玲は一度信じると決めたら、絶対に裏切らない方です。言うだけ無駄ですわ」

 

「まるで自分のことのように言うな」

 

「だって、あなたの妻ですよ。それくらいわかってて当然ですわ」

 

「流石、ダイヤだな」

 

自分のことをまるで手に取ってるようにわかっているダイヤに感心しつつ、これから生涯、共に生きていけることに喜びを覚えつつ、逆に隠し事は出来ないと自分の肝に命じる。

 

「よ〜し!それじゃあ、早速練習しようよ!」

 

「ちょっと!待ってよ千歌ちゃん!」

 

4人が会話が終えると同時に、やる気に満ち溢れた千歌が早速練習を始めようと学校に向かおうと梨子の部屋を後にする。

他のメンバーは自由奔放な千歌に呆れつつ、逆にそれも千歌らしいと笑いに変え、後をついていく。

 

「おい、キュビとピア」

 

Aqoursメンバーについていこうとする画材眼魔のキュビと音符眼魔のピアの背後から玲が冷ややかな様子で話しかけてきて、2人は怯えながら対応する。

 

「どうしたの?」

 

「……桜内と一緒に生活できて良かったか?」

 

その氷のように冷ややかな様子とはギャップのある暖かく、優しい言葉を玲はかける。

2人は一瞬、拍子抜けするがすぐに答えを出す。

 

「うん!すごく楽しかった!」

 

「そうか。ならいい」

 

2人の偽りのない答えを聞き、玲は満足気に笑みを浮かべる。

 

「ほら、いくぞ。早くしねぇと置いてかれるぞ」

 

「うん!」

 

そして、3人は急いでAqoursの後を追い、海岸沿いの道を走り、息を荒げながらも合流する。

そのまま、学校に行き、楽しく練習する……筈だった。

 

「あ、あいつは!」

 

すると、突然、画材眼魔が酷く始め、続いて音符眼魔と携帯電話のバイブのように小刻みに震え始める。

 

「どうしたの!?2人とも!?」

 

「みんな!下がれ!」

 

梨子が動揺する横で玲は眼魔達に視線を移すことなく、ただ前を睨みつけ、メンバーと眼魔達を背後に隠す。

 

「あの……人……」

 

ルビィは前から迫ってくる恐怖に気づき、体を震わせながら、指を指す。

指の先に金色の装飾をした黒い軍服を着こなし、無精髭の中年の男が堂々した足取りで玲達に迫ってきた。

 

「君達は我々が見えるのか」

 

「てめぇは何者だ!」

 

気圧されぬよう、玲は威勢良く、無精髭の男にタンカをきる。

 

「……君達に名乗る必要はない。私が用があるのはそこの同志だ」

 

「ヒッ!」

 

だが、無精髭の男は玲達に目もくれず、玲の背後に隠れる眼魔達を睨みつける。

その鋭い眼光に眼魔達は悲鳴をあげる。

 

「眼魔であるにも関わらず、人間と戯れるなど……眼魔の風上にも置けん。よって、処刑する!」

 

「処刑!?」

 

衝撃の一言にAqoursメンバーは驚きを隠せない。

そして、無精髭の男は拳を鳴らし、再び迫ってくる。

 

「君達、退きたまえ。私は君達に危害を加える気はない。……妙な真似はしないのならな」

 

圧倒的な覇気の前でAqoursメンバーは一寸たりとも動くことは出来ない。一方で、玲は動けるにも関わらず、動こうとはせず、ただ状況を見定めるように、じっと観察していた。

 

「りこちー、逃げて!これは……私達の問題だから!」

 

「……嫌よ!友達を見捨てられるわけないでしょ!」

 

眼魔達は足を震わせながらも、必死にAqoursメンバーを逃がそうと促す。

しかし、言うことを聞かず、梨子は眼魔達の前に立ち、守るように手を広げる。

 

「立ちはだかるか、可憐な少女。……全く、憐れであるが、その勇気は賞賛に値する。名を名乗れ。せめて、私の胸の中では生かしてやろう」

 

梨子の勇敢、あるいは蛮勇の行動に騎士道を重んじる無精髭の男は賞賛する。そして、名誉の死を与えようと梨子の元へと迫る。

だが、どんな理由であれ、人間に危害を加えるというなら玲は黙ってはない。

 

「そいつの名は桜内梨子。人間でありながら、眼魔と友達になった女だ」

 

無精髭の男が玲の横を通り過ぎる時、恐怖に震える梨子の代わりに玲が梨子の名前を名乗った。

 

「なるほど、少女らしい幼気な名前じゃないか」

 

梨子の名前を聞き、無精髭の男は柔らかな笑みを浮かべる。

玲は笑みを浮かべる無精髭の男に、人間らしさを感じる。

 

「なぁ、少し話が脱線するがいいか?お前達は何が目的ではなんだ。何故、人を襲う」

 

「その言い草ではまるで我々が無闇に人間を襲っているようではないか。まぁ、あながち間違いではないがな」

 

そして、玲の問いに無精髭の男は眼魔達の日頃の行いに呆れつつ、目的を語り始めた。

 

「我々の目的は英雄の眼魂を揃え、故郷である眼魔世界を取り戻すこと。英雄の眼魂を集める為なら……私は望まないが人間の犠牲等……同志達の犠牲も問わない」

 

「そして、この世界をその眼魔世界へ変えるのか?」

 

「それはあくまで最後の手段だ。出来ることなら再び眼魔世界を創り上げられるなら、そうしたいと私は思っている」

 

「私は……か」

 

「どちらにせよ人間と眼魔はあい入れてはいけない関係だ。その関係を破ろうとする奴らを私は許せないのだ」

 

どうやら仙人の言ってることは正しいようだ。

だが、この世界を眼魔世界へと変えるなら眼魔全体の総意ではないようで、少なくとも眼魔無精髭の男は人間と眼魔を棲み分けたいと思っていた。

その無精髭の男の考えには玲は賛同していた。

 

「……なるほど、あんたの言いたいことは正論だし、理解出来る。でも……やらせるわけにはいかない」

 

「何故だ?」

 

「友達を死なせるわけにはいかねぇしな。それに……奴らはいずれ、人間と眼魔の架け橋になる可能性がある。それをおいそれと潰させるわけにはいかない」

 

「結城君!」

 

梨子の表情がパッと明るくなる。今まで眼魔に対して否定的な考えだった玲が、今回の件で共存という考えに改めたことに何とも言えない喜びを梨子は感じた。

 

「なるほど……私も君の言いたいことは理解できる。だからこそか!」

 

無精髭の男も物分かりが良かった。だからこそ、無精髭の男は拳を構え、玲に鉄拳を振るう。

 

「私達は戦わなければならない!」

 

「話がわかりやすい!」

 

無精髭の男と同時に玲も拳を突き出し、無精髭の男の拳とぶつかり合う。

 

「人間の割には……いや、少し違うか。まぁ、いい。名を名乗れ!少年!私はブライ!」

 

無精髭の男--ブライは始めて名乗り、玲に激しい殺気を向ける。

騎士道を重んじるブライにとって名乗りというのはとても重要な意味を成す。

 

「俺の名は結城玲!又の名を!」

 

ブライの名乗りに答えるように玲を自らの名を名乗る。

そして、ブライから一旦離れ、ゴーストドライバーを出現するさせ、オレゴースト眼魂を取り出す。

 

「仮面ライダーゴースト!」

 

《カイガン!ゴースト!》

 

すぐさま、ゴーストドライバーにオレゴースト眼魂をセットして、仮面ライダーゴーストへと変身する。

 

《レッツゴー!カクゴー!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》

 

「いくぞ!ブライ!」

 

ゴーストは拳を握りしめ、戦闘態勢を取る。

 

「そうか!君がゴーストか!面白い!」

 

玲のもう1つの姿が巷で話題の仮面ライダーゴーストとしり、ブライは興奮が沸騰する。

強い相手と死力を尽くして戦う。強者と戦うことに喜びを感じるブライにとって、数々の眼魔を倒してきた強者であるゴーストと合間見えることは戦士としてとてつもない名誉であり、喜びであった。

反面、数々の同士を討ってきたゴーストは眼魔であるブライのとって憎悪の対象でもあった。

その複雑な心境でありながらもやるべきことは単純というなか、ブライも変身用の眼魂を取り出し、真の姿である眼魔スペリオルへと変身する。

 

「来い!玲!」

 

スペリオルも構えを取り、両者は睨み合う。

 

「「うおぉぉぉぉぉ!」」

 

張り詰めた空気、風と波の音が響く中、両者は同時に飛び出し、再び拳を交える。

 

「ハッ!」

 

「セイ!」

 

両者の実力はほぼ互角。ゴーストが拳を突き出しと、スペリオルは拳を弾く。

次にスペリオルが蹴りを入れるも、ゴーストに防御され、カウンターを貰う。

一進一退の攻防。入る隙もない両者の戦闘はあまりにも美しく、蚊帳の外であるAqoursメンバーと眼魔達はただ魅入るだけであった。

 

「ハハ!楽しいな!これほどの強敵の拳を交えられるとはな!君もそうだろう!玲!」

 

「あぁ!昂るよ!こんなに拳が熱くなったのは!心が熱くなるのはあんたが初めてだ!ブライ!」

 

激しい殺し合いの中でもゴーストとスペリオルは笑っていた。

血肉を削り、死力を尽くして戦うことに両者は激しい喜びが沸き立っていた。

この激しい喜びは戦うことが定めだった男の性か。戦うことが運命の戦士の性か。

否、2人はその両方だろう。

戦うことしかできない2人にとって唯一の喜び。それが命を懸けた戦いというものなのだ。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

「ハアァァァァァ!」

 

再び、2人の拳がぶつかり合う。その衝撃は凄まじく、辺りに衝撃波が起き、50メートル程離れているAqoursメンバーと眼魔達が立っているのがやっとなほど。

 

「玲……」

 

衝撃波に耐えながら、ダイヤは愛する人の名を心配そうに呟く。

 

「みんな!今の内に逃げよう!」

 

衝撃波が無くなったと同時に果南が決死の様子で言い放つ。

万が一、玲が戦いに敗れれば眼魔達おろか、自分達も殺される可能性。それ以前にこのままでは戦いに巻き込まれて、死ぬ可能性も大いにあった。

Aqoursメンバーも眼魔達もその可能性は重々承知しており、玲を心配しつつも足早にその場を離れようと戦場に背を向ける。

 

「全く、熱血なのは嫌いでねぇ」

 

振り返った瞬間、ネットリとした怪しげな声が発せられたと同時に銃弾が襲いかかってくる。

 

「危ない!」

 

「え?」

 

咄嗟にキュビとピアは銃弾からAqoursを庇う為に前に出る。

そして、次の瞬間、銃弾は爆発し、キュビとピアはその爆発に呑まれてしまう。

 

「う……うそ……」

 

あまりの唐突なことにAqoursメンバーは状況を読み込めていない。

 

「ふぅ……取り敢えず、これで借りは返せたかな?」

 

嵐のように巡るまじく変わる状況にAqoursメンバーはやっと受け入れることができ、徐々に真実が露わになっていく。

 

「ピ……ピアちゃん……キュビちゃん!?」

 

1つ。ピアとキュビは爆発に巻き込まれ、今は死体のように力なく横たわっていること。

 

「ど、どういうこと!?」

 

2つ。眼魔達を手にかけた者は……仮面ライダーゴーストに似た者であったこと。

しかし、ゴーストとは違ってオレンジ色の部分は白となっており、目つきも鋭くなっていた。

 

「仮面ライダーが……2人!」

 

新たな戦士が現れた同時にゴーストもブライとの戦闘は一旦、休戦せざるを得なかった。

 

「仮面ライダーねぇ……。あんまり気にしてなかったけど、似たような奴がいるからなぁ……」

 

白のゴーストは眼魔達から腕を外し、ゴミのように捨て、ゴーストとブライに注目する。

 

「お前は一体何者だ!」

 

「そうだねぇ……君とは姿は似ているけど……君と比べて僕は悪だから……。なら、ダークゴースト。これから仮面ライダーダークゴーストと名乗ろう」

 

高々と自らの名を名乗り、ダークゴーストはゴーストを倒す為、ゆっくりと迫る。

 

「……し……て……」

 

「何だね?」

 

「返して!私の友達を!」

 

背後から膝をついた梨子の涙の混じった悲痛の叫びがダークゴーストに向けられる。

 

「……はぁ。全く、異種族に肩入れするなんて、おめでたい頭をしているねぇ」

 

ダークゴーストは梨子を見下ろしながら、気怠そうに自論を述べる。

 

「でもねぇ、これは等価交換なんだ。この前、眼魔が力を貸してくれたから今度は僕が力を貸してあげなくてはならないんだ」

 

「この前って……まさか!」

 

この前とは一体なんなのか。殆どのAqoursメンバーが疑問を浮かべる中、鞠莉だけ心当たりがあった。

 

「確か……大乗寺って奴を殺しを手伝ってくれたんでねぇ」

 

「あ……あなたが!」

 

「そうか……お前なのか!お前なんだな!お前が橘会の長!橘咲斗なのか!」

 

ダークゴーストの口から放たれる事実にゴーストと鞠莉を激しい怒りを露わにする。

 

「よく、知っているねぇ」

 

「お前が!全ての元凶か!なら!」

 

ダイヤを危険な目に遭わせ、鞠莉の大切な人死ぬことになったのは目の前にいるダークゴースト--咲斗がいたからだと思うと、ゴーストはマグマのように怒りが込み上げる。

そして、怒りを拳に乗せ、殴りかかろうとしたその時、脳内に大乗寺の言葉が駆け巡り、熱くなった心を冷静に冷やす。

 

「ん?どうしたのかい?急におとなしくなって?」

 

「結城先輩!?」

 

「どうしたずら!?」

 

「玲……まさか……」

 

「危ねぇ……怒りに囚われるところだった」

 

ゴーストの様子にダークゴーストは不思議そうに首を傾げ、善子と花丸も驚きを隠せない。

だが、鞠莉だけはゴーストの思いは理解していた。

怒りに囚われ、復讐に囚われたその先に何もない。ただ虚しさしかない。

それをゴーストは先日、痛いほど知った。

だからこそ、ゴーストは敢えて、沸き立つ怒りを抑え、踏みとどまったのだ。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

ゴーストの横から風のようにブライが駆け出す。怒りを抑えるゴーストの代わりにブライが激しい怒りをダークゴーストにぶつけた。

 

「貴様!何故我が同士を討った!」

 

「あらら、折角手助けしてあげたのにねぇ。まさか、暴力で返されるなんて」

 

「黙れ!彼ら同志は私が始末するのが筋だ!同志の罪を私が背負い!そして、同志の思いを背負い!同志を殺めたという罪を背負う!殺めるというのはその者の全てを背負うこと!貴様のやったことはただの殺戮!そこに情も美しさも何もない!」

 

ダークゴーストに拳を振るいながらブライは叫弾する。

同志を殺すというのは友を殺すことに近い。それはとてつもないと程大きな罪であり、殺した本人に大きな傷を与える。

しかし、それでいいのだ。大きな罪を背負うと共に同志の思いも一緒に背負う。そうすることでこれから先、

だが、ダークゴーストが行ったのは殺戮。ゴーストのように大切な者を守る為に殺すというものでもなく、する必要もなく、ただ借りを返すという大義も何もない薄汚れたものであった。

ただ、ダークゴーストはブライの語ったことなど微塵も共感しない。

 

「殺すことに情や美しさも罪など感じている時点で君は弱い。殺すということは邪魔な壁を壊すだけ。自らが安全で有意義に生活するための1つの行為でしかないだけでねぇ」

 

「ぐは!」

 

ブライの拳がダークゴーストの仮面に迫る。

その拳をダークゴーストは軽くいなし、代わりにブライの腹に蹴りを入れる。

ブライが蹌踉めいたその時、好機と言わんばかりにダークゴーストが猛攻を始める。

殴り蹴り、首を掴んでは地面に叩きつける。そして、馬乗りになってひたすらに顔面を殴る。

まるで作業のように無機質に戦うダークゴーストにゴーストもAqoursメンバーも得体の知れない恐怖を感じる。

 

「さぁ……死ね!」

 

《ダイカイガン!ロビンフッド!オメガドライブ!》

 

虫の息のブライの首を掴み、ダークゴーストは首を圧し折ろうと力を加えたその時、無数の矢が五月雨のように降り注ぐ。

 

「チッ!余計なことを!」

 

咄嗟にダークゴーストは矢を容易く避ける。

 

「あの数の矢を避けるか。……侮れないな」

 

分身しているゴーストロビン魂は矢を放ち終わると、1人のゴーストに重なり、分身が解ける。

避けることは不可能だと確信していたゴーストは一抹の焦りを抱く。

 

「君も眼魔を庇うのかい?」

 

「勘違いするな。お前の所為でブライとの決着が着いてない。その前に死なれちゃ後味が悪いからな」

 

「君も美学に殉ずる人間か。愚かだねぇ」

 

大きく溜息を吐き、ダークゴーストはゴーストに一気に飛びかかる。

 

「チェンジ!ムサシ!」

 

《カイガン!ムサシ!決闘!ズバッと!超剣豪!》

 

ムサシ魂へとゴーストチェンジしたゴーストはダークゴーストに二刀を振るう。

しかし、ダークゴーストはまるで軽々と避け、いつの間にゴーストの懐に入っていた。

 

「何!?」

 

「弱いねぇ!」

 

そして、ダークゴーストは回し蹴りを決め、ゴーストを吹っ飛ばす。

 

「お義兄ちゃん!」

 

「玲!」

 

軽くあしらわれるゴーストを目の当たりにして、黒澤姉妹の不安が大きくなる。

 

「こいつ……強い!」

 

「違う、君が弱いんだ!」

 

英雄の力を持ってしても太刀打ち出来ず、いつもは冷静な玲もこればかりは動揺してしまう。

 

「何だと!」

 

蹌踉めきながらもゴーストは立ち上がり、再び二刀を振るう。だが、攻撃を受けてもダークゴーストはビクともしない。

まるで鋼の肉体のよう。

 

「そんな力で君は彼女達を守りたいのかね?」

 

ゴーストの単調な攻撃に飽き飽きとしてきたダークゴーストは遂に猛攻を始める。

 

「グォッ!」

 

「無理だね。今のままじゃ君は何も救えない」

 

ダークゴーストの百裂拳がゴーストを直撃する。

 

「弱さは罪だ!」

 

「やめて!玲君を傷つけないで!」

 

友達が一方的に嬲られている状況に千歌は居ても立っても居られず、止めに入ってしまう。

すると、ダークゴーストはピタリと動きを止め、ゆっくり振り返る。

一方、ゴーストはあまりのダメージに変身が解けてしまう。そして、玲は膝から崩れ落ち、地面に死体のように力なく倒れていく。

 

「君達は何もわかってない。これは殺し合いなんだ。どちらかが死ななくては終わらないんだ。つまり、止めたければ彼を殺さなくてはならない」

 

「玲は死にません!」

 

「お姉ちゃん!?」

 

自信に満ちたダークゴーストの言葉をダイヤは正面から否定する。

あまりの行動にルビィおろか、他のAqoursメンバーも驚きを隠せない。

 

「それは……彼が死ぬことができないゴーストだからかい?」

 

「違います!玲があなたに勝つからです!」

 

「ほお……」

 

「玲は誰かを守る為に力を使っています!あなたみたいな自分の為に使うような人より弱い訳がありませんわ!」

 

ダークゴーストのドス黒い威圧にも憶することなく、ダイヤを威勢良く事実を述べる。

ダイヤは気に食わなかった。玲が死ぬと宣言されることが。

時にはやり過ぎてしまうことがあるが、それでも確実に正しさの中にある玲が、絶対悪であるダークゴーストに負けて欲しくなかった。

玲の真の強さと願いが合わさった故の行動であった。

 

「……馬鹿にされてるのかな……僕は。久々に……キレちゃったよ……」

 

自分より弱い存在に馬鹿にされ、普段は大人しいダークゴーストも今回ばかりは怒りが込み上げてくる。

 

「指から丁寧に削ぎ落としてあげる。そこら腕、胸、脚の順に引きちぎってやる」

 

拳を強く握りしめながら、ダークゴーストはゆっくりとダイヤへと迫る。

 

「さ……せる……か!」

 

「まだ立つんだねぇ」

 

ダークゴーストの背後で生まれたての子鹿のように立ち上がる玲。

その姿は明らかに限界が垣間見えているが、玲から発せられる覇気は未だに燃え尽きてはいない。

 

「みんなには……ダイヤには手を出させねぇ!」

 

「そうかい」

 

すると、ダークゴーストは仮面の奥でニヤリと笑う。そして、玲の覚悟を無下にするようにダイヤの目の前まで迫り、ダイヤに手を挙げる。

 

「くっ!」

 

「ダイヤ!」

 

ダイヤの頬にダークゴーストの平手が当たる。

 

「ほら、手を出しちゃったよ。どうする?」

 

「貴様!」

 

「そうだ。怒れ。怒りの力を僕にぶつけるんだ」

 

敢えて玲の逆鱗に触れ、挑発するダークゴースト。

沸々と煮え上がる怒りに玲は歯をくいしばり、睨みつける。

 

「……力……そうだな。この怒りを力にしねぇとな!」

 

この時、突然だが玲はある言葉を思い出した。

『力とは使いよう』

任侠一家の長である父親がよく言っていた言葉だ。

他人傷つけることが出来ると同時に自分を、部下を守ることも出来る。それが力というもの。

正反対の性質を同時に持つ力をどう扱うか、扱う人間によって決まる。

 

邪魔な他人を殺す為に使うか。

 

世間を仇なす犯罪者を殺す為に使うか。

 

己を守る為に使うか。

 

他人を守る為に使うか。

 

だが、正義であれ悪であれ、どんな理由であれ力というものどこまで行っても力。

根本的なものは何も変わらない。怒りに囚われていてもだ。怒りに囚われても、溺れてもその力は他人を傷つけると同時に他人を守ることができる。

 

ならば、自ずと道は見えてくる。

 

「俺はこの力を……怒りの力を振るう!みんなを守る力としてな!」

 

玲の瞳には一切の迷いはない。人々を守る戦士として、仮面ライダーとしての覚悟が玲にはあった。

 

「俺は怒りは……何かにぶつけない!」

 

震える拳を握り締め、玲はダークゴーストを睨み付ける。

 

「怒りを剣や拳にしない!誰かを守る盾にする!」

 

もう同じ過ちは繰り返さない。己の欲に溺れ、道を踏み外さない。

明確な決意が玲にはあった。

 

「……そうかい」

 

玲の決意にダークゴーストは不快感を覚える。

力の溺れ、力の殺されていく姿を見たかったにも関わらず、反対に力が玲に魅入られたことにダークゴーストは軽い嫉妬心を抱く。

 

「俺の怒りは!今!爆発する!」

 

地面がめり込むほど右脚を踏み込み、右手を出す。すると、炎が右手に集まり、丸い何かへとなる。

そして、玲はその炎の玉を掴む。すると、炎の玉は黒と赤の眼魂、闘魂ブースト眼魂へと変化する。

 

「眼魂が生まれた!?」

 

「ほほぅ」

 

目の前で新たな眼魂が生まれ、Aqoursメンバーは驚きを隠せず、一方でダークゴーストは興味深そうに観察する。

 

「さぁ、魂諸共燃やし尽くしてやる!」

 

《一発!闘魂!》

 

闘魂ブースト眼魂をゴーストドライバーに勢い良くセットする。

 

《バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

グリントアイから赤と黒のパーカーゴースト、闘魂ブーストゴーストが現れ、玲の周りを暴れるように浮遊する。

 

「変……身!!」

 

《闘魂!カイガン!ブースト!》

 

デトネイトトリガーを引き、玲は新たな力を身に纏う。

いつもは黒のインビジブルスーツではなく、真っ赤なインビジブルスーツを纏い、さらにパーカーゴーストが覆い被さる。

 

《俺がブースト!》

 

炎のように真っ赤な肉体に黒いパーカー。

 

《奮い立つゴースト!》

 

ゆっくりとパーカーを外すと、トランジェントは燃え盛るような炎のような意匠。

 

《ゴー!ファイ!ゴー!ファイ!ゴー!ファイ!》

 

正に炎を体現したようなその姿にAqoursメンバーもダークゴーストも見惚れてしまう。

 

仮面ライダーゴースト 闘魂ブースト魂

 

怒りを、覚悟を、命を燃やして生まれる炎は悪を滅し、弱き者を守る。

 

「さぁ、地獄の業火で焼き尽くしてやる!」

 

拳を鳴らし、ゴーストはダークゴーストに殴り掛かる。

 

「速い!」

 

爆炎の如く、荒々しく突っ込んでくるゴースト。先程とは比べ物にならない程の速さにダークゴーストは避けることが出来ず、正面からゴーストの炎のパンチを受けることになる。

 

「グゥ!」

 

ダークゴーストの鋼の肉体を突き破るかのような重い一撃。ダークゴーストは自然と苦悶の声を漏らす。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

反撃の隙を与えず、ゴーストは炎のアッパーをあびせ、ダークゴーストが空高く舞う。

そして、ダークゴーストは砂浜に落ちる。クッションの代わりになったおかげで衝撃はそれほどではなかった。

しかし、今まで圧倒していた相手に今では逆に圧倒され精神的な衝撃は凄まじいものであった。

 

「調子に……乗って!」

 

「それはこっちのセリフだ!」

 

怒りに震えながらダークゴーストはグリントアイからガンガンセイバーガンモードを取り出し、ゴーストに狙い撃つ。

 

「精確な射撃!」

 

強化されたゴーストなら弾丸を避けることは容易い。しかし、弾丸は全て頭に向かっており、ダークゴーストの実力の高さを再び思い知らされる。

 

「なら、斬り落とすまでだ!」

 

今度はゴーストからグリントアイからサングラスのような物に刀身と銃口が合わさった武器、サングラスラッシャーを取り出し、銃弾を斬る。

 

「チッ!」

 

「いくぞ!」

 

ゴーストはひたすら向かってくる弾丸を斬り落とすながらダークゴーストに迫る。

 

「銃はキツイ……ならこちらも剣で!」

 

ゴースト銃が効かないこと学習し、ダークゴーストはガンガンセイバーをブレードモードに変形させ、ゴーストに立ち向かう。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

「ハァ!」

 

両者が剣の射程距離に入った時、ゴーストは左斬り上げ、ダークゴーストは袈裟切りが振るわれ、火花を散らして鍔迫り合いが始まる。

 

「ぐぅぅ!この馬鹿力が!」

 

「馬鹿でも結構!てめぇを倒せるなら馬鹿にでも悪魔にでもなってやる!」

 

圧倒的なパワーにダークゴーストは押されていき、終いにはガンガンセイバーが弾かれ、丸腰になる。

 

「さっきの!倍返しだ!」

 

そして、ゴーストはサングラスラッシャーを我武者羅に振るい、ダークゴーストを斬り裂いていく。

 

「この僕が!負ける!?そんなことはありえない!」

 

明らかにダメージをくらっているにも関わらず、ダークゴーストは薄汚いプライドと信念で立ち続け、攻撃の隙をついて、ゴーストの腕を掴んで、攻撃を止める。

そして、ダークゴーストは渾身の拳をゴーストの仮面に浴びせる。

 

「まだ、こんな力があるのか!人のことは言えねぇがよ!」

 

脳が震える程の拳に、ゴーストは歯をくいしばって耐える。

あれ程攻撃を受けても、まだ余力のあるダークゴーストに危機感を抱き、早急に決着を着けるべきと考えたゴーストはデトネイトトリガーを操作する。

 

《闘魂!ダイカイガン!ブースト!オメガドライブ!》

 

「ハァァァァァァ!」

 

音声とともにゴーストの右脚に炎が集まる。

 

「決着を着けるか!」

 

《ダイカイガン!ダークライダー!オメガドライブ!》

 

同様にダークゴーストもデトネイトトリガー必殺技の構えを取る。

 

「ディヤァァァァ!」

 

「ハァ!」

 

そして、両者は高く跳び、ゴーストは右脚を出し、ダークゴーストは左脚を出し、「ライダーキック」が激突する。

 

「負けるかァァァァァ!」

 

「グゥ!」

 

ライダーキックの衝突による衝撃は凄まじく、空気を震わし、波を立たせ、500m程離れた木々が折れてしまうほど。

1秒も気を抜くことが出来ない戦況の中、徐々にゴーストがダークゴーストを押していく。

 

「砕け散れぇぇぇぇ!」

 

「この!僕が!?押し負けるだと!?」

 

終いにはダークゴーストのライダーキックを弾き、ゴーストのライダーキックが直撃する。

そして、ダークゴーストはまるで流星のよう勢いで砂浜に叩き落とされる。

地面に叩き落ちた衝撃で辺りに砂塵が舞い上がる。

 

「ど、どうなったずら!?」

 

戦闘の結末はどうなったかとAqoursメンバーが勝利を祈りながら見守る。

 

「ハァ……ハァ……」

 

そして、少女達の純粋な願いは叶うことになった。

砂塵の中から死体のように倒れるとダークゴースト。

そして、膝を震わせ、激しく肩を上下させた血だらけの玲が立っていた。

 

「玲!」

 

「玲君!」

 

「結城君!」

 

真っ先にダイヤは玲の元に駆け寄り、続くように他のAqoursメンバーも駆け寄っていく。

 

「みんな……」

 

激しく辛い戦闘が終わり、玲はAqoursメンバーを見ると、大きな怪我がないことに安心し、気が抜けたように地面に倒れそうになる。

しかし、間一髪のところでダイヤに抱き抱えられる。

 

「玲……無事で……良かった……」

 

「ダイヤこそ……大丈夫か?」

 

「玲に比べたらこんな傷なんて、些細なものですわ」

 

涙を流して玲の無事を喜ぶダイヤを見て、玲は大袈裟だと思いつつ、泣いてまで喜んでくれたことにこの上ない幸せを噛み締める。

 

「この……クソガキが!」

 

だが、そんな幸せを破るようにダークゴーストがゆっくりと立ち上がり、怨嗟の声を吐き始める。

 

「許さんぞ……ゴースト!よくもこの僕をコケにして!いずれはこの屈辱を恨みとして晴らしてやる!それまで……恐怖に震えて生きろ!」

 

「上等だ……返り討ちにしてやる」

 

ダークゴーストに畏れ多のくAqoursメンバーを庇うように玲はよろよろと立ち上がり、睨みつける。

睨み合いはたった10秒程続くとダークゴーストが踵を返し、宙に目の紋章を描く。

そして、紋章が瞼のように開き、その中にダークゴーストが入ると、瞼のように閉じ、消えていった。

 

「へへ……負けい……ぬが……」

 

言うだけ言って、逃げていったダークゴーストに玲は滑稽に思い、鼻で笑う。

だが、今の玲には笑う余裕もないほど限界であり、そのままゆっくりと意識を失っていった。

 

♢♢♢

 

玲が目を覚ますと目に入ったのは真っ白い天井であった。鼻に刺さるよう消毒液の匂いに周りは白い壁に白い家具と清潔さを感じさせる部屋の作り。

 

「ここは……病院か……」

 

半覚醒で頭が上手く回っていない状態でもその特徴的な空間で今、自分がいる場所が理解することができた。

 

「玲、目覚めたのですか?」

 

右に目を移すとそこには玲の手を大事そうに両手で握っているダイヤがいた。

 

「あぁ。ダイヤはずっとここにいたのか?」

 

「えぇ。Aqoursメンバーの了承も得ました」

 

「そうか……ありがとな」

 

ダイヤの献身的な優しさに少し照れ臭さを覚え、笑顔を浮かべる。

しかし、笑顔の片隅には何処か暗い影が見えていた。

 

「玲……どこか痛むのですか?」

 

「……いや、やり切れなさがあって」

 

玲は喜んでばかりではなかった。たった一つだけ、心残りがあり、それについて拭えない罪悪感を抱いていた。

 

「あいつらを守れなかって」

 

人間と眼魔の共存の架け橋、何より梨子の友達であるキュビとピアを守れなかったことを玲を悔やんでいた。

 

「あの……玲……その件については……」

 

「ダイヤまで言うな。俺はあいつらの導いた可能性を閉ざさない為にも、前に進むしかないんだ」

 

だが、玲はそんな後悔に溺れまいと気を確かに持っているとダイヤに語る。

 

「結城君!」

 

「桜内……よぉ……」

 

タイミング良く、否、玲にとってはタイミング悪く、大きな鞄を持った梨子が現れ、自然と顔が引きつってしまう。

 

「目覚めたんだね!良かった……!」

 

「……あぁ」

 

あまりの気不味さに玲の態度が自然と素っ気なくなってしまう。

だが、そんな気不味い玲とは正反対に梨子はところてんを押し出すように話していく。

 

「そうだ。これ」

 

「絵……まさか」

 

「うん。キュビちゃんが描いたの。玲君の為にね」

 

梨子は鞄からある一枚の絵を取り出す。

その絵には真っ青な海と砂浜を背景にAqoursメンバーと玲、そして、キュビとピアが満面の笑みで描かれていた。

 

「そっか……これが遺作になるなんて……」

 

「あの……何か勘違いしてません?」

 

「え?」

 

絵を眺めて悲しみに暮れる玲が流石に憐れに思えて、ダイヤは本当の事実を述べる。

 

「お二方は生きてますわ」

 

「……あっ、マジか」

 

事実を聞いて、喜び、安堵したものの、勝手に死人扱いしたことに玲はまたしても気不味くなる。

 

「でも、もう2人はいないの。結城君が寝ている間に自分探しの旅に出ちゃって……」

 

だが、2人はもう居ないと聞いて、玲はショックを受ける。

今まで、眼魔ということだけで、かなり攻撃的な態度を取ってきたことに謝りたかったのだが、それが出来ないとなると心苦しい。

 

「そうか。謝りたかっけど……長くここに居てもブライに狙われるからな。妥当な判断だ」

 

だが、玲は自分で結論付けて、我儘を終わりにする。

2人が決めた道をうだうだと言うのは男としてどうなのか。男なら見守ってやるのが定めなのだと自分に言い聞かせる。

 

「お礼が言えない分の代わりだって」

 

「全く……十分過ぎる」

 

キュビの描いたを絵を眺めながら、玲は柔らかな笑みを浮かべる。

 

「また、会えるよね」

 

「あぁ、会えるさ。生きていればな」

 

梨子の言葉に玲は真っ直ぐな言葉で返す。

玲はふと窓から空を見上げる。空は雲一つなく、青色の絵の具のように鮮やかな空。

今頃、2人は何処にいるのだろう。この果てしなく広がる青空の下で楽しいを旅を出来ているのだろうか。

2人の旅の幸せと安全を玲は青空に祈るのであった。

 




次回 ラブライダーゴースト!

突然、花丸は予知夢を見るようになる。初めはただその日の晩御飯がわかる程度のものだった。しかし、善子が不幸な目にあうタイミング、殺人事件の瞬間など、日に日に予知夢の内容は残酷になっていく。
そして、玲が眼魔に殺される夢を見てしまい、花丸は酷く動揺する。
果たして、花丸と玲の運命はいかに!

次回! 「俺の運命は俺が決める!カイガン!ヒミコ魂!」

運命の鎖を解き放て!

如何でしたか?
書きたいと我武者羅に書いていたら2万文字越えとは
途中で切りたいの山々なんですが、中途半端になってしまうので結局、こうなってしまいました。
さて、いよいよ闘魂ブーストが解禁されました!
次回からは闘魂ブースト限定フォームがわんさか出ます!
お楽しみに!
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