……ところで、ネタってついつい挟みたくなりません?
※注意※
今回の話は不謹慎な描写がありますので、閲覧の際はご注意ください。
もしかしたら修正するかもしれません。
……うつうつします。
内心で何言ってんだこいつと自分で自分にツッコミを入れつつ、男女比が異常な程偏った教室内で、俺は今か今かとホームルームが開始されるその時を待っていた。
はっきり言おう。此処すごく居心地が悪いです。どれくらい悪いかと言うと、江田島にいた頃、教官の機嫌が悪かったときくらい居心地が悪いです。すみません、やっぱり今の教室のはとても快適です。
改めまして、皆様おはようございます。2度の転生経験を持つヘタレ、川内紫月でございます。こう書いて、「せんだいしづき」と読みます。「かわうち」ではありませんよ?前世では田沼業正って名前だったので、少しだけキラキラしてない?なんて思ってます。
ところで、気付いた人もいるかもしれませんが、日本海軍の5500トン型軽巡洋艦『川内型軽巡洋艦』のネームシップと同じ苗字なのです。川内とは第三次ソロモン海戦で一緒だったんですよね。その時俺は綾波に乗ってたけども。
さて、私は現在IS学園なるところの1年1組の教室にて、担任の先生及び副担任の先生が来るのを待っている最中でございます。最も、先生を待っているのは俺だけじゃあ無いのですけれども。
そうです、本日ついに世界初の男性IS操縦者である織斑一夏が、ISの操縦者や整備士の育成を行う教育機関『IS学園』に入学を果たすのです。世界で二番目も同じ日に入学するんだけれどもね。
講堂で入学式が行われ、生徒会長や学園長の話を聞いて、各々のクラスに散らばっていった生徒の例に漏れず、織斑一夏ともう一人の男もまたクラスに入ったわけですが、先程言ったとおり少し居心地が悪い状態です。
運が良かったのか、私は中央の列、教室の一番後ろの席を陣取る事が出来た……もといその席だったのですが、織斑一夏はなんと一番前の席。しかも私と同じく中央の列というおまけつき。やったね一夏くん、みんなから注目してもらえるよ!女の子の視線を攫っていくなんて、とんだ色男だね!
まあ、本人の様子から察するに注目を浴びるのに慣れていないというか、彼にとっては今の状況は針の筵のようなものなんだろうけども。あれだ、加賀に乗るよりここはずっと天国だとでも思ってくれ。俺も乗ったこと無いんだけども。それか、俺がいるだけましだと思って耐えてくれ。実際俺の方にも幾つか視線が向けられてるんだから。
そんな、織斑が9、俺が1くらいの割合……?で視線が向けられ小さくざわつく教室の中に、廊下から足音が聞こえてきた。先生が来たのだろうが、足音が一人分であることに疑問を覚える。もしかして担任だけ?
俺の些細な疑問が解消されたのは、教室の前の扉からが現れた先生の自己紹介を聞いてからだ。なるほど、大方担任の先生は会議か何かで遅れているのだろう。
ひと目見て生徒と大して変わらないと思う程の身長、生徒のそれとは一線を画する胸部装甲、そして童顔という1度目の人生でも2度目の人生でも見たことのない素晴らしい容姿の持ち主だ。個人的に低身長で大きいのは良いと思います。何処がとは言いませんが。あれ、もう遅い?
「副担任の山田真耶です」
黒板の前でにっこりと微笑む彼女は、きっと思春期の男子生徒共からしたら憧れの的になったのだろう。だが、如何せん此処は女子校だ。なにより、彼女より人気な教師がいる。
そして後で気付いたのだが、この人の名前って回文になってるのね。ところで、なんとなくドジっ娘的な雰囲気を醸し出しているが、ちゃんと先月と先々月の家賃は払っているだろうか。多分大丈夫か、教師だし。大きいし。
「皆さん、これから一年間よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします」
反応するのは俺一人。他の皆は織斑一夏に夢中で返事もしませんでしたとさ。相手が
教師としてまだ歴が浅いのか、それとも気が弱い性格なのか……いや、織斑と俺のせいか、生徒が全然返事をしていないのは流石に不味いと思うから、ちょっとくらいは威厳を持って欲しいです。まあ、ここで教師が出来るってことはきっと優秀な先生なのでしょう。
どれだけ上から目線だって思わなくもないけれど、私、今15歳。加えて、前世では43歳まで生きてます。更に1度目の人生では20と5年程生きています。つまり、私はお爺ちゃんです。それでも100超えないんだけども。
まあ山田先生には今後に期待するとして……。一先ず山田先生は、一人返事をしてくれたからってすごく嬉しそうにするのは止めてください。
「それじゃあ、出席番号順で自己紹介をお願いします」
そう言った山田先生の指示に従い、出席番号1番の人から自己紹介を始める。なんというか、アピールって点では間違ってないんだけども、それ、織斑一夏向けだよねって自己紹介を聞きながら、ついに織斑一夏の番がやってまいりました。
ただ、どうやら彼は自分の番が回ってきたことに気がついていないらしい。此処まで余裕が無いと、少し可愛そうにさえ思えてきてしまうが……まあ頑張れ、若人よ。
「えーっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」
先生に呼びかけられ、漸く気がついた彼は少し慌てた様子を見せるも、なんとか気を取り直して自己紹介を始めたのだが……その続きは?おうこら、あくしろよ。どうでもいいけど、俺はホモじゃないからね?
まあ兎に角、女子生徒達からしたら残念ながら、それ以上言葉が続くことはなかった。
「―――以上です!」
思わずずっこけている生徒さえちらほら見える。どれだけ期待していたのやら……いいぞもっとやれ。
「あ、あのー」
中央の一番前ということもあり、後ろを向いていた織斑一夏の背後から忍び寄る鬼の影……。流石に不憫だと思ったのか、山田先生が声をかけるも虚しく終わる。
このクラスの担任であり、元世界王者にして今なおその人気が健在の女性、織斑千冬の登場だ。
鬼のような形相というわけではないが、かつての教官たちに負けず劣らずの威圧感に、「おぉ怖い怖い」と内心で呟いてみる。先程も言ったけど、あくまで教師だから……ね?あと、実技試験とか言ってイジメるのは良くないと思いますよ?
そんな織斑千冬と織斑一夏の茶番があったが、此処では割愛しよう。
「織斑先生、もう会議は終わられたんですか?」
「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」
「いいえ、副担任ですから、これくらいはしないと」
彼女の人気は生徒だけではないのか……と思わせる、山田先生の若干熱のこもった声。まあ、ブリュンヒルデだしね、しょうがないよ。
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になるように育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聞き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」
うん、すごく優しいね。小学生みたいな感想しか出ないけど、超優しい先生で助かったよ。いや、皮肉とかじゃなくて。まじで。だって、出来ない者には出来るまで指導してくれるんだよ?優しいじゃん。体罰はあっても暴力は無いんでしょ?まぁ、いいけどさ……。
でも、今の世代の子達が聞いたら……と少し心配したけど、無意味な心配でした。
「キャーーー!千冬様、本物の千冬様だわ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」
「あの千冬様にご指導いただけるなんて感激です!」
もうね、黄色い声が凄い響くのよ。なんとなく微笑ましいな、なんて思って聞いてたんだけども、どうしても最後だけは聞き逃すことが出来なかった。
『私、お姉様の為なら死ねます!』
……そうか、凄いな彼女は。
俺は死ぬのが怖いよ。誰かのためでも、やっぱり死ぬのは怖いし、死なれるのも怖い。
だから、俺は彼女を尊敬しよう。名前は……なんか言ってたっけ……忘れたけども。兎に角、君の勇気を称してISではなく回天の使い方を学ぶ事をお勧めするよ。使い方、そんなに難しくないよ?俺はあれ嫌いだけど。それか零式艦上戦闘機の方がいい?所謂『零戦』ってやつ。俺、整備も出来るし操縦方法も教えられるよ?
……これ以上はやめよう。流石に不謹慎が過ぎるし、何より彼らを思い出す。
俺に出来ることなんて限られていたけれど、それでも助けられるのなら助けたいと思った、若い彼らの命。
何時だったかの特攻作戦でさ、決められてたのより少し多めに燃料を入れたり、こっそり海に不時着出来るようにマニュアルも仕込んだんだよ。それで逃げてほしかったから。でもさ、みーんな敵さんに突っ込んで行くんだよ?まだ若いのにさ、もっと欲張って欲しかったよ。金が欲しいとか、女を抱きたいとか、なんでもいいからさ。で、俺はお船の上で生きていると。嫁さん娶って子供がいたら、多分自分の息子くらいかな?そんな年齢の彼らがだよ……本当に、最低の気分だったよ。
さて、娘子への皮肉はこれくらいにして……小さく深呼吸して気持ちを落ち着かせねば。ほら、ちょっと意識したら眉間にシワが寄ってるのが分かる。これじゃあせっかくのイケてるメントスな俺のフェイスが台無しだよ。
あんな簡単に紡がれる死ぬだの死ねだのなんて言葉、小さい時から聞いてきたじゃないのよ。今更だとは思わんのかね?……多分無理なんだろうな。未だに悪夢に魘される事もあるし。地震も戦争も、兎に角あの時代は色々と精神的に優しくない。滅茶苦茶トラウマ植え付けられたもの。
「毎年毎年、よくもまあこれだけ馬鹿者が集まるものだ。寧ろ関心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ集中させているのか……?」
織斑先生の言葉に意識が戻ってくる。毎年毎年この騒ぎを聞かされるなんて……先生、ご愁傷様です!人気は金で買えないと考えると、少しは気が楽になるかもしれませんよ?知らんけども。
何やら鬱陶しがっている様子の織斑先生に畳み掛けるかのように、更に女生徒共が騒ぐが……今度は耳を塞いでいるので少しはましかな?あれだよ、若い女性の甲高い悲鳴はある種の武器だよ。
「で?挨拶も満足にできんのか、お前は」
「いや、千冬姉俺は――」
「織斑先生と呼べ」
先程の茶番でも叩いていたが、織斑先生はどうやら出席簿で人の頭を叩くのが定番らしい。顔が腫れるほどのビンタとかじゃなくて良かったよ。
「さて、時間もないことだ。これで自己紹介も終わり……といきたいところだが、諸君らも気になっていることだろう……川内」
「はい」
時計を見ると、本当に時間が少なくなっている事に気付く。スムーズに言ってたら丁度全員分自己紹介できたんだろうけども……まあしゃあない。
時間が中途半端なのを見て、俺を最後にして余った時間は授業のための準備にと言うことなのだろう。ちくせう、織斑君め。もっと時間を稼いで潰して俺の自己紹介タイムを無くしてくれれば良かったものを。どの道、ちょっと時間をオーバーしてもさせられてたかもしれないか。
先生の指示に従い、小さくよっこらせと溢しながらその場に立ち上がる。一番後ろの席だから一々振り向かなくていいのはありがたいね。
一度、周りを見渡してから、自己紹介の言葉を発する。
「川内紫月です。川の内と書いて、せんだいと読みます。趣味は……甘いものが好きなので、ケーキとか食べることかな?IS学園はご飯やデザートが美味しいって聞いてるので、実は楽しみにしています。1年間よろしくお願いします」
趣味の所に何か言いたげな表情を浮かべたが、まあ及第点だったのだろう。
「……まぁ良い。さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISに関する基礎知識を半月で覚えてもらう。その後は実習だが、基本動作は半月で物にしろ。いいか、良いなら返事をしろ。良くなくても返事をしろ。私の言葉には返事をしろ」
念を押して、兎に角返事をしろという言葉と共に、お許しをもらいました。
いや、まあ甘いものを食べるのは嫌いじゃないし、どっちかというと好きだけど……趣味って程でも無いのよね。趣味らしい趣味と言えば機械をいじることなんだけど、でも流石にそれはと思って先程言った趣味にしてみました。
「よろしい」
俺の趣味云々は今は置いておくとして、先程言われた通り、今度は全員が返事をしたのを聞いて頷く織斑先生。軍でもそうだけど、やっぱり学校も返事は大切だよね。だから、皆さんも今度からは織斑先生が相手でなくても返事をしようね?
織斑先生の言葉を最後に授業の準備に入るのだが、正直不安しかありません。希望なんてものは持てません。
はてさて、この先どうなることやら……。
前回の後書きで作者は歴史に弱いと書きましたが、ミリタリーにも弱いと追加しておきます。