ISの世界で3度目の人生を歩みます。   作:ヨーシチ

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お気に入り登録して下さった方が増えたり、評価していただけたり、激励の言葉を頂いたりと、喜びのあまり調子に乗りはじめた作者です。


あ、ありがてぇっ……!


のほほんさん

 

 パン……授業!授業です!

 

 SHRが終わり早速授業が行われるIS学園は、日本のごく一般的な学生からしたら鬼畜この上ない環境じゃないのかと私は思うわけでありまして……。

 つまり何が言いたいのかというと、超ありがたい。言っておくが、私はMでは無い。

 

 どうも皆様、入学式初日から授業があることに若干ながらも辟易としていたはずが、今ではすっかり助けられたと感じているチョロい男、川内紫月でございます。

 なんせまあ先程までの、SHRが開始する前や織斑先生の登場前にはあった視線が今ではすっかり無くなり、皆が授業に集中しているお陰でゆっくりまったりと過ごすことが出来るというわけなのです。皆優秀な子達ですから。

 とは言うものの、授業が終われば皆が一斉に、再び俺と織斑一夏の方へと視線を向けるのが予想されるので、今から既に辟易としていますが。ついでに言うと、授業もあと少しで終わります。なので、この素晴らしい授業(休憩)時間に祝福を送りつつ、頭のなかに逃走経路を思い浮かべる。ごめん、無理でした。まだ全然この学校のこと知らないのに、逃走経路なんて思い浮かぶはずがないんだよ。

 こういうときはアレだよ、旅は道連れ世は情けって言うでしょ?取り敢えず織斑のところに行ってみるか、若しくは織斑をこっちにこさせるかすれば少しは気が楽になるのではないかと言うものだよ。え、意味が違うって?こまけぇことはいいんだよ。

 しかしこの道連れ作戦には少し問題がある。勿論大丈夫な可能性もあるが、世の中にはこの様な格言があるという。故に警戒していて損はないだろう。

 

 ―――ホモが嫌いな女子なんかいません!!!!

 

 本当に、誰が言ったんだろうね、こんなセリフ。

 一先ず冗談は此処までにしよう。ちょっとネタにされるくらいなら別に構わないからね。流石にホモであることを押し付けられたり、勘違いされたり、薄い本が出回ったりするのは勘弁して欲しいけれども。

 

 ところで、男の同性愛者の事をなんでホモっていうんだろうね。

 因みに、天一号作戦の少し前に行われた輸送作戦で、同期がホモ船団なるものを護送していたはずなんだよ。此処で言うホモは、香港から九州の門司ってところまで行くから、その二つの頭文字をとっただけなんだけどね。そう言えばこのときにアイツが死んだんだったな。

 

「はい、それじゃあチャイムがなりましたので1限目の授業は終了します」

 

 山田先生の言葉に意識が戻ってくる。チャイムの音も聞こえないのに人の声はちゃんと聞こえてくるって、凄く都合の良い耳をしているよね。これもカクテルパーティー効果の一種かな?違うか。

 それにしてもまさか、ホモでもトラウマを刺激されるとは思わなかったよ。普段はホモなんて一切考えないから初めて気づいた俺の新しいトラウマ。凄いね、今日だけで2つもトラウマを刺激されたよ。片方は自爆だったけど。

 

 ……自爆、か。

 

 2度の転生を経て、後から知った話なんだけども坊ノ岬沖に参戦してた磯風って駆逐艦、この戦いの後で自沈処分されてるんだってね。太平洋の大海戦のほとんどに参加して、金剛や大和型三姉妹の大和、武蔵、信濃と言った大戦艦――信濃は途中で空母になっていたが――大鳳や蒼龍と言った空母達の最後も見届けたんだっけか。真珠湾攻撃に始まり、ミッドウェーや第二次ソロモン、マリアナ沖やレイテなど、色々活躍したこの磯風は最高の武勲艦であるとも言われている。

 武勲艦と言えば、大和と同じく坊ノ岬で沈んだ浜風もそうだろう。金剛や武蔵、そして信濃の最後を見届け、大和と共に沈んだ。加えてこの浜風、乗員239人に対し、様々な戦いで約5000人の命を救った武勲艦だ。これは大戦果と呼ぶに相応しい成果だろう。

 だがまあそれでも、うちの綾波には勝てないんですけどね!贔屓目で見ているって言われそうだけど。

 

 取り敢えずあれだ、ちょっとは気持ちも落ち着いたんじゃねえの。巫山戯られるくらいにはさ。

 というわけで、織斑を巻き添えにして突き刺さる視線を和らげちゃおう作戦、開始!

 ……え、自沈と自爆は違うって?さっき言わなかったっけ?こまけぇことはいいんだよ。

 

「おっす!」

 

 自然と取っていたゲンドウポーズを解き、いつの間にか来ていた織斑の声に顔を上げる。こっちから行く手間が省けて良かったよ、うむ。

 片手を上げて砕けた感じで声をかけてくるこのイケメン様だが、きっと俺が同じようにポーズをとってもきもがられるだけなんだろうな。ケッ。

 自虐はともかく挨拶をされたならば返さねばなるまい。相手が砕けた調子で挨拶をしてきたのならば、こちらは……

 

「おう」

 

 同じように砕けた口調で返事だ。溜めたのは何だったのかって?別に意味なんて無くたっていいじゃない。ここであえてきっちりとした挨拶をしても良かったんだけど、流石に皆の目が痛いと思ったんですよ。

 

「にしても、同じ境遇の男がいて本当に良かったよ。俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」

「わかったよ、一夏。改めて、川内紫月だ。まあ、よろしく頼む」

「ああ、こちらこそ。紫月って呼んでもいいか?」

「大丈夫だ、問題ない」

 

 それにしてもこの織斑一夏ってやつはコミュ力が高いな。初対面でいきなり名前呼びって流石都会の人間は違うよ。

 こうして改めて自己紹介をしてファーストコンタクトを果たしたので、改めてついでに彼について少しだけ観測してみる。

 背丈は俺より低い170の半ばといったところか、特別身体を鍛えている様子はなく、しかしどこか格闘技かなにかをしていた様な名残も感じられる。人当たりもよく、まさに爽やかな好青年と言ったところか。

 

 凡そだが彼の評価を決めた所で、俺達の会話に割って入ってくる声が聞こえた。いや、別に良いんだけれども。

 

「……ちょっといいか」

「え?……箒か?」

 

 先程SHRのときに自己紹介をしていたような、そうでないような……確かまだ聞いていないよね。

 初対面、若しくは暫く振りに会ったであろう異性の名前を呼び捨てにするって流石っす!なんて思いつつ、事の成り行きに身を任せることにした。

 

「すまない、一夏を借りて行ってもいいだろうか?」

「ええよええよ。授業までには帰ってきいや」

 

 突如として現れた謎の少女は、雰囲気からして大和撫子という感じだが、一部がお淑やかではなく随分なじゃじゃ馬のようだ。

 そして、少し頬を赤らめる少女を見て色々と悟る。そうか、一夏は既に攻略済みの女の子と同じクラスになったわけか。

 ただし、一夏に自覚があるかはまだ何とも言えないが。なんせまあ、一夏の声音が旧知の友人に久々に会ったときのものだったし。きっと幼馴染ってやつなんだろう。

 

 もう一度謝り、そのまま一夏を連れ立って教室を出て行く少女の背中にサムズアップをして送り出す。頑張れよ、若人。おっちゃん応援してるから。

 傍から見たら何してんだろコイツってなるかと思い、一先ずサムズアップを解いてゲンドウポーズへと戻ろうとする。

 しかし、突然誰かに肩を突かれる感じがしたので、そちらの方へと振り向いてみる。

 

「かわちーって大阪から来たの~?」

 

 なんか小動物がいた。

 いや、小動物じゃなくて人間なんだけど、なんというか雰囲気が小動物を思わせるというかなんというか。

 

 クラスで一番小さいのではと思わせる背丈、そしてそれに拍車をかけるぶかぶかな制服、子供っぽさが残る髪飾りとツインテール。なるほど、これが所謂合法ロリと言うやつか。いや、知らんけども。

 この娘っ子が、俺が大阪出身と勘違いしたのは先程の返答からかな?

 

「いや、違うけど……え、かわちー?」

「うん、かわちーの苗字って、川の内って書くんでしょー?だから、かわちー」

 

 ああ、うん。分かるんだけど、俺の苗字、かわうちじゃないって自己紹介のときに言ってなかったっけ……言ってなかったかぁ……。そういやあれ、内心の独り言的な、所謂心の声ってやつだったよ。

 冗談はさておき、俺の苗字はあくまで川内だ。かわうちではない。なので、訂正するなら今のうちだろう。

 

「俺は『かわうち』じゃなくて『せんだい』なんだが……」

「かわちー、チョコ食べるー?」

「どうも、かわちーです」

「かわちーで良いんだ!」

 

 合法ロリ……は流石に失礼か、名前も知らない少女との会話を聞いていたであろう近くの少女にツッコまれるが、別にニックネームぐらいなんだって良いじゃないのよ。

 そう思いながら、貰ったチョコレートを口に含む。うん、やはり日本人ってチョコレート大好きだよね。美味しいし。

 

「ありがとう、美味かったよ。えっと……」

「私は布仏本音だよー。よろしくー」

「そうか、布仏本音か……じゃあのほほんさんかな?」

 

 目には目を歯には歯をって言うでしょ、だから俺もニックネームをと考えたのだけれども、出てきたのがそんなのしかありませんでした。

 「のほ」とけ「ほん」ねということで、雰囲気と合わさって凄く良いニックネームのような気もするけども、女子につけるニックネームでもないような気もすると思いきや、本人の反応は意外にも悪くない。なので、これからはのほほんさんと呼ぼう。

 

「ところでのほほんさんや、今日の放課後って時間ある?」

「うん、あるよー」

「じゃあさ、学園の中を見て回りたいんだけど、案内してもらっても良いかな?」

 

 トレーニングルームとか、その他ISに関わる施設とか、兎に角色々と見ておいたほうが良いと思っていたので、試しにと聞いてみたら「いいよー」と二つ返事で了承してもらえたので、放課後はのほほんさんと学内デートをする運びとなりました。

 学内デートは言い過ぎにしても、これで直ぐに施設の把握が出来るのはありがたいよね。

 

「本音だけずるい!私も一緒に案内させてもらってもいいかな?」

「私も私も!」

 

 どうやら一夏だけでなく俺もそれなりの需要があるらしい……まあ直ぐ落ち着くんだろうけども。

 結局、谷本さん、鏡さんも合わせて、4人で学内を周る事になりましたとさ。やったねかわちー!両手に花だよ!

 

 とは言うものの、思いの外嬉しくないというか、普通というか……いや、嬉しいんだけども。

 ほら、私って2回も転生してるじゃん?だから、累計年齢は83歳と、既に爺の域まで達してるわけ。故にね、異性として見るよりも先に孫娘的な目で見てしまうのよね。ただ、身体が若いから相応の性欲はあるんだけれども。いずれはいい人が見つかれば良いな……。

 

「やったねかわちー!両手に花だねー」

 

 内心で思っていたことを、実際に声に出して言われると結構怖いもんですね。

 少しだけドキッとしながら、丁度のところで鳴った予鈴のチャイムに合わせて次の授業の準備に入る。

 兎にも角にも、ありがとう、のほほんさん。お陰で、廊下にまで押し寄せてきていた他学年や他クラスの女子生徒の目を気にせずに済んだよ。

 




駆逐艦って良いよね。
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